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ヒューマンバリューは、1992年からASTD国際会議へ視察ツアーを実施しています。本ホームページには、1998年からの参加報告レポートを掲載しています。
M116 ROIベスト・プラクティスと基準
ジャック・フィリップス(ジャック・フィリップス・センター・フォー・リサーチ:創立者)
主要トラック:記載無し
ASTDによるセッション紹介文
投下資本利益率(ROI)はその使用と応用において成長し続けています。それは今や世界36ヶ国で測定プロセスとして活用されています。ROIが拡張し成熟するにしたがい、一連のベスト・プラクティスのアプリケーションは、方法論が一貫性を持ち、信頼性があり、そして理論的にしっかりしていることを確実にするための一連の基準と共に進化してきました。この基調講演はROI実施のための連続的進歩や、ROI応用のベスト・プラクティス、そして効果的なROI方法論に必要な基準を探訪します。
概要(参加者の人数など)
400人定員の会場は満席で、開始前から非常に活気に溢れていた。フィリップスは開始前20分程から会場入りしており、参加者と密なコミュニケーションをとり続けていた。ROIのグルとも言えるフィリップスの人間性がうかがえる開始前の雰囲気だった。
内容
ROIベストプラクティス紹介の背景
本講演は、ASTD2004における、評価と測定に関する一連の講演シリーズ「Conference-WithinA-Conference: Measurement&Evaluation」の基調講演として位置づけられている。「Measurement&Evaluation」の分野での代表的な手法であるROIの第一人者ジャック・フィリップス(Jack Phillips)が、ROIに関する彼の手法の基本を振り返るとともに、ここ数年で研究されたROIの活用ベストプラクティスを紹介することで、これから2日間に渡ってROIを中心に受講する参加者を方向づける目的があった。
ROIへの認知度と関心の高さ
フィリップスから会場への問いかけで明らかになったのは、参加者の約2割はすでに自分たちのトレーニング評価にROIを活用しており、4割の参加者はこれからROIを導入することを検討しているという事実だった。このことから、ROIへの関心が非常に高いことが分かった。
ROI基本手法の紹介
フィリップスの提唱している手法は、すでに彼の著書の中で詳細に紹介されている。(『Return on investment”,“How to measure training results』 共にJack.Phillips著)
基本的な流れと、それぞれにおけるフィリップが指摘する注意点は、次の通り。
1.評価計画の作成
そもそも評価対象となる学習が、何を目的としているかが明確でなければならない。さらに、その目的が達成されると、どのような応用がなされ、どのような形でビジネスに貢献するかも明確にしておく必要がある。
2.評価のためのデータ収集
とにかくなんでも構わないからデータを収集すること。また、データの収集方法が複数ある場合は、必ず信頼性が高い方を選ぶ。もしも複数の収集方法が同等の信頼性があり、異なった結果を示している場合は、必ず低い数値の方を採用する。
3.データの解析
学習による成果を、他の要因による成果と切り分ける場合は、どんな方法であっても、とにかく切り分けを試み、できる限りの要素を金額ベースに換算できるようにする。むやみに換算不可能とせず、その代わりに切り分け方法の信頼性が低ければ、それだけ導き出されたROIの信頼性も低いという点を留意しておく。
4.レポートの作成
ROIベストプラクティス
ROIベストプラクティスに関して、フィリップスは主に次のような指摘を行った。
- ROIの絶対値はさほど重要でない。重要なのは、評価をする前に、ステークスホルダーに対して、ROIの期待値をもたせておくことにある。
- ROIは、限られた一部のトレーニングにのみ計算を行うべきである。選び方の基準は、そのトレーニングプロジェクトのライフサイクル、企業戦略上の重要性、トレーニング自体の費用、トレーニングの評価のしやすさ、受講者の数、マネジメントの興味など。
- ROIの各プロセスでは、とにかく信頼性の向上を優先する。
- ROIはトレーニングの成果向上を目的とすべきであり、トレーニングを展開したチームの通信簿として使うべきではない。
所見
ROIの先駆者であるジャック・フィリップスが、ROIの精緻さではなく、どうすればROIが意味のある指標になるかに注力している点が伝わった。
トレーニングに対するROIの適用方法としては大きく分けて2通り考えられる。1つは、ファイナンスにおけるROIと同様に、プロジェクトがペイするかどうか、その絶対値に注目する使い方である(たとえば一般的には、北米地域における投資では「ROIが15%以上でなければ投資すべきでない」とされている)。そしてもう1つは、あらかじめそのトレーニングがどの程度のROIになるかを予想し、その予想値と、実際に算出されたROIとのGAPに注目する方法である。
フィリップスは一貫して後者での利用を勧めている。この使い方の場合、トレーニング以外の投資などと直接比較はできないが、一方で数値の信頼性が低くても、比較対照するトレーニング同士が同じ手法でROI算出されていれば、マネジメントに対してトレーニング間のプライオリティ付けが説明できるようになる。あるいは、経年で同じトレーニングを比較した場合、どのタイミングでそのトレーニングを変革すればよいかの指標にもなる。
フィリップスのROIはトレーニングに対する評価や測定に数多く応用されているが、これらの取り組みを評価する際に、はたしてそれが絶対値評価であるのか、それともフィリップスが提唱する相対比較であるのかが注目点であるように思われる。


