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ヒューマンバリューは、1992年からASTD国際会議へ視察ツアーを実施しています。本ホームページには、1998年からの参加報告レポートを掲載しています。
SU208 シュワンズ食品サービス社におけるトレーニング投資のビジネス・インパクトを披露する
ロバート・ブリンカホフ(ウェスタン・ミシガン大学:教授)、スティーブ・セムラー(シュワンズ・フード・サービス、
シュワンズ・ユニバーシティ:ディレクター・オブ・カリキュラム)
主要トラック:測定と評価
概要(参加者の人数など)
400 名定員の会場は、8割がた埋まっていた。セッションの冒頭に参加者同士が行う2〜3分程度の小作業もあり、全体的にインタラクティブな雰囲気で進行した。 Brinkerhoff氏はゲストスピーカのSteve氏が紹介する事例にも丁寧に補足を加えるなど、参加者にエッセンスを伝えようという誠意が伝わる内容だった。
内容
全体の構成
前半はブリンカーホフ氏が、自らの提唱するトレーニングの評価方法“Success Case Method(以下SC法)”の概要を説明し、後半は事例として米国第3位の冷凍食品メーカー、シュワン社における取り組みが、同社のコーポレートユニバーシティディレクター、スティーブン氏により紹介された。
ブリンカーホフのレクチャー
ブリンカーホフ氏は、トレーニングの効果測定とは得られた知見が次の打ち手を導いてこそ意味がある、というコンセプトを中心に自らの提唱したSC法を紹介した。
ありがちなトレーニングの評価方法のもつ限界
カークパトリックの4段階評価(Kirkpatrick’s Four Levels)によりトレーニングを評価し、Level4に達しないケースについて、トレーニングを改善することによりLevel4以上に上げようという試みがかつてあった。しかし、この取り組み方には限界があった。ブリンカーホフ氏によると、Level3以上については、トレーニング内容を実際の場面でどう活用するかがポイントとなるため、いくらトレーニング自体を改良しても、意味がないとしている。
一方、ROIに換算してトレーニングの効果を定量化する従来の手法は、調査に大変な手間とコストが掛かる割に、出てくる結論は「このトレーニングを続けるか止めるか」だけになってしまい、次の打ち手に続かないと指摘した。
SuccessCaseMethodの紹介
ブリンカーホフ氏の提唱するSC法では、トレーニング受講者を「成果を導いたグループ」と「成果につながらなかったグループ」の2つに分け、それぞれにインタビューを実施することで、「どんな条件があって、トレーニング成果が実際のビジネスでの成果に結びつくか」を分析できる。
具体的なステップは、以下の通り。
- トレーニングを実施することで満たされる目標を設定する
- トレーニング実施後数週間でFAXやE-mailなどによる調査を行う
- 調査結果を分析し、成功例とそうでない例を区分する
- 成功例について、どうしてトレーニングが役に立ったか、どのようにして使う機会を得たかなどを面接調査によって明らかにする
- トレーニングによる効果を分析する
- トレーニング効果及びその効果を、さらに向上させるための次の手立てをクライアントに報告する
スティーブ氏によるシュワン社の事例紹介
■SC法導入の背景:シュワン社では、主要なトレーニングに対してROIをベースとしたトレーニング評価モデルを2002年まで適用していたが、数万ドルに上る評価のための調査費用がかかる割に、出てくる結論が次の打ち手につながらないことから、別のトレーニング評価方法を模索し、SC法の試験導入を決定した。
■SC法導入の具体的なポイント:シュワン社では、ブリンカーホフ氏のアドバイスの下、新人ルート営業に対するトレーニングをSC法によって評価した。その際に、次のようなポイントに留意して導入を行った。
- 評価対象は全てのトレーニングではなく、価値の高いトレーニングをリストアップした。その1つがこの新人ルート営業に対するトレーニング。全てのトレーニングにまんべんなく評価を行ってしまうと、無駄が大きい。
- 評価面接の準備として、コーポレートユニバーシティの職員に対してインタビュアー養成教育を行った。これはブリンカーホフ氏のグループによる支援を得て行った。
- 調査を行う時期を、トレーニングの効果が発揮される時期をターゲットにして行った。この場合はトレーニングの4ヶ月後に調査が実施された。
■シュワン社におけるラーニング:SC法導入を行う過程で、次のような実施上のラーニングがあった。
- 面接により引き出せる情報は、インタビュアーの能力に大きく左右される
- トレーニング受講者の勤務状況や勤務地によっては、面接の実施が困難なため、調査を設計する段階で誰と接触可能になるかを考慮しておく必要がある
- 調査活動にはビジネス側オーナーもあまり興味をもたないため、常にこちら側のトッププライオリティとして進行する必要がある
■SC法導入による効果:今回のSC法導入によって、シュワン社では次のような成果を得ることができた
- トレーニングの成果が、成功者の業績向上に役立っていることが明らかになった。これらのデータは、成功者への面接結果によるインプットを基に、詳細まで数値化することができた。
- 入社時に既に高いスキルを持っている新人セールスについては、このトレーニングにはあまり得るものがないことが判明し、これらのセールスに対してはコーチングを中心とした指導を行う方がよいのではないか、という方向性を打ち出すことができた。
■今後の取り組み:2004年度は、SC法による評価を主要な4つのトレーニングに対して行う予定である。本来は対象トレーニング数を増やしたいのだが、インタビュアーの数の限界により、4つを対象とすることとなっている。
所見
“Market & Measure” is one strategy, not two.というブリンカーホフの言葉が示すように、トレーニング評価が次の打ち手につながり、戦略的な意味を持つことが大切だというメッセージが非常に強く感じられた。
この伏線として、ブリンカーホフはこれまでのトレーニングの効果測定方法の進化を3段階に分けて紹介している。かつてはトレーニングはそれ単体で完結するものという位置づけだったのが、受講者の受け入れ体制と受講後のアフターケアにも着目するようになった第二世代、そしてトレーニング自体を戦略的な重要課題と位置づけ、そこからどれだけの結果を引き出すか、各部署と協同してトレーニングの価値を上げるという第三世代に現在は移行しつつある。
この第三世代への移行は、トレーニングが戦略的に他の活動と強くリンクするため、同一の投資に対してより大きな成果を挙げるであろうことは、直感的に感じる。しかしながら、この移行にはトレーニングがもつ戦略的価値を語ることのできるCLOの存在が不可欠になるのではないだろうか。
本セッションは、今回のASTDで注目されているキーワードの1つ“CLO”と強い関連を持っていると共に、CLOがどのようにしてトレーニングの戦略的価値を説明するか、その手段の1つとして効果測定が重要であることを示唆しているように思われる。


