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ヒューマンバリューは、1992年からASTD国際会議へ視察ツアーを実施しています。本ホームページには、1998年からの参加報告レポートを掲載しています。
SU215 「我々」とはいったい誰のことを指しているのか
アリー・ド・ジウス
主要トラック:伝説シリーズ
ASTDによるセッション紹介文
経済専門語で言えば我々は「転換期」に入ったところです。企業成功のカギは資本から知識にとって変わりました。しかしながら我々は言語や、伝統、最も重要なことですが法律においていまだに資本主義時代の専門用語で話される時代に生きています。資本ではなく、知識が今や企業の成功のカギであるという事実は、ウォール街のフォーチュン500社の新しいスターとなっている低資本-高知識の会社においてたいへん明白です。しかし、鉄鋼、自動車、そして石油会社のような高資本の古いタイプの会社も20年前に比べ彼らの行動や製品の中に埋め込まれるもっと多くの知識が必要となってきています。経済的、管理的、そして社会的経過は基礎的なことです。マネージャーは彼らの優先事項を変えなければなりません。資本を最善化するために会社を走り回るかわりに、彼らは人々を最善化する道を発見しなければなりません。競争力をもつために彼らは知識、思考能力、そして頭脳パワーと何でも彼らが利用できるものを最大限にいかす必要があります。人間は「経費のかかる品物」から永続するビジネス的成功の「源」となったのです。この情況のなかで、商業的企業と政府組織はお互いに近ずきあっています。この新しい世界において、マネージメントは団結や、アイデンティティとつながったセンスを持つ組織を創造する必要があるでしょう。言葉をかえれば組織は高レベルの内部的信頼をもたなければならないということです。今日のマネージメントがスタートするべき良い道は人々が「我々」と呼ぶ時、いったい誰を指しているのかをはっきり理解することです。同じことが政府の関係機関にも言えます。それらの機関の責任者が「我々」と持ち出す時、彼らは誰のことを言っているのかということです。
概要(参加者の人数など)
40×16 = 600入る会場に70〜80%。
内容
背景
近年企業には、リーダーシップの欠如や会計の不正といった問題がみられる。そこで、必要となるのは、コミュニティや倫理に焦点を当てることである。
ここでは、企業は生きた組織として考える。こうした捉え方は、最近のビジネス界における新しい捉え方であり、組織を中心的に考えるのも新しい考え方でもある。
歴史的にみると、カトリック教、大学といった組織は古い歴史をもっている。それらに比べれば企業の歴史は新しい。歴史的にみると、会社は新しい存在。会社の重要な成功の鍵を握るのは何かということについては十分検討されていない。また、それを図る物差しは何かを考えてこなかった。
それでは、会社の成功は何か。成長率、採算性、株価などは、会社が成功しているかを図る指標が用いられてきた。それらの指標が良かったら成功していると考えられてきた。こうした考え方は20年前からあり、それは信じて疑われなかった。しかし、最近そのことを疑い始めた。
シェル石油は、1980年代に誰が私たちの手本となるのかを検討した。私たちにやる気を与えるのは誰なのか?ゼロックスは?インテルは?など、他社を検討した。
そこで2つのことがわかった。
- シェルは100年の歴史があり、自己満足に陥っていた。
- シェルと他社を比較する際に、自分たちよりも小さい規模の会社と比較していた。
調査の実施
シェルの従業員、コンサルタント等5、6人のスタディグループをつくった。そこで、「100年以上の歴史がある会社」「その産業で屈指の会社」「アイデンティティは昔のまま」という3つの要件を満たしている会社を探すこととなった。その結果27社がピックアップされた。デュポン、三井、住友、シーメンスなどが挙がった。そのうち、スイスには700年続いたという会社もあった。
また、調査の結果明らかになったのは、数千の会社があるが、その多くは後に倒産、解散した。その結果、会社の寿命は、20年以下であることがわかった。
大手フォーチュン500社に限ってみると。死亡率を逃れて長く生き、成功した会社の寿命をみても40年であった。最近では、それが12年になっている。
つまり生物に例えると、700年生きる会社もあるが、平均寿命は20年以下であるということ。そのような生物は潜在的な能力を引き出していないといえる。
シェルは100年以上の歴史をもって物事をじっくり検討している。なぜ長生きしたのか、そして秘訣について、スタディグループで検討した。
その結果、27社に共通する4つの要件は以下の通りとなった。
- 財政面で保守的な会社 貯蓄率が高い。ビジネスを行うときに自前のお金を出した事業を展開する。その結果、株主のことを考えずに、自分のお金を使うので慎重な経営を行った。
- 周りの地域社会を大切にする(世の中の変化を敏感に察知する) 地域社会に出ると、変化をすばやく認識、それを自分の会社に適用。世の中の変化を敏感に察知できる。
- 結束力があってアイデンティティがはっきりしている 存在理由が何かを認識し、それを誇りに思っていた。はっきりした価値観をもっている。それに引きつけられて、その会社のことを好きだと考えていた。
- 寛大な経営手法 従業員の自発的な行動が可能な会社。「こういうふうにやりましょう」というトップダウンではなく、従業員の自発的な考えを引き出している。自発的な行動が可能。
上記の4つが寿命を延ばした。
外部のリアリティと内部のリアリティの衝突
一連の技術革新があったが、成功している企業はそうした変化に対して敏捷に適応した。成功する会社の定義は、「財政的に保守的」「職員が自分と共に会社を考える」など。この定義に足りないものは?効率性、市場至上主義、収益の最大化、そういった言葉は見つからない。
以前の経済学の本では、「会社はものをつくる、他の人がお金を払う、ものをつくって…」とある。そこでは、「労働力、資本、土地」3つの生産ファクターだった。
人ができないことを機械にやらせる。そして、コストを最小化して、高い値段で売る。それで最適化する。最低のコストで売って、収益を最大化にする。
経済学では、いまだにこういう定義を教えている。それは、明確にどうやって企業を経営するかを示すものである。
しかし、どの会社が成功して、どの会社が消えていったかを考えると、寿命の長い会社をみた場合、成功の条件の中に「収益性」は入っていない。収益は重要だが、それは人間に酸素が必要なのと同じ。人間は、酸素がないと5分も生きていけない。しかし、生きるために息をしているわけではない。では、企業の成功は何か。それは「生き延びることか?」「収益を最高化することか?」、また「違うやり方で企業を経営できるか?」「収益を最高化することと生き延びることは違うのか?」
こうした問いに、2人の教授が答えを出した。
60年の間に収益の最大化を第一優先にしている会社よりもそうでない会社の方が15倍収益性があった。(トップ企業19社)
それでは、経営陣の優先課題は何にすべきか。19世紀は、資本がある会社が生き延びる時代だった。しかし今は、会社が資本にアクセスできるようになっている。
その資本をなるべく最大限に活用。最大化する。そして報酬も高めていく必要がある。
選択肢:お金か人か?
人を解雇して資本のベースを維持する。ほとんどの国ではそういう(収益の最大化を目指して人を解雇する)方策が多く取られている。特に、アングロサクソン、イギリスではこういうやり方が普通になってきた。
株主が会社の所有者。ほとんどの会社も法律でそう規定している。
株主が人を解雇する権利がある。株主はどの株を買いたいか、買った株を維持したいかどうかを決めている。
しかし、本当にすばらしい会社、成長に長けている会社は、自分たちをコミュニティと捉えている。
経済の基本
労働、資本、土地、この3つが経済を変える。
これまで、企業にとって大切なのは資本だった。大学時代までそれが続いた。大学のときに世界が変わり始めた。マーシャルプラン。戦争で焼け野原になった大陸に、米国からの救いの手。援助の恩恵を被って成長した。アメリカも戦後の成長率が上がった。日本もそうだった。長年こういった成長が続いた。成長率が、 1、2%になったときに不安を感じた。
1980年代、貯蓄によって、莫大な資金が生まれ、それが世の中に速い循環で回った。(昔:送金するのに3週間かかった。)その結果、世界の資本市場は、売り手市場から買い手市場に変わった。資本は欠乏しているわけではない。資本へのアクセスは簡単。資本は投資先を探している。資本は、商品化した。
人材の重要性
その結果、資本は生産にとって不可欠ではなくなった。大切なのは、土地でもない、資本でもない。人材だけになった。人材が、会社の決定的な要因になってきている。
具体的な製品を提供する会社の成功は、優秀な人材へのアクセスであり、既存の人を活用し、能力を引き出すことによってもたらされる。たとえばトヨタは、製造現場のレイアウト、マーケティング、どの点においても人材が優秀で、成功している。
経営者は、経営を最高化する前に、人材を最高化する必要がある。
外部と内部の矛盾
「優秀な人材が明日、会社に来るのかどうかわからない」。これは企業にとって、快適な状況ではない。内部と外部の現実が違う。矛盾している。
内部:長期的な視点で人を育成
外部:短期間で収益を効率的に生み出す。
成功をどのように導き、生き延び、収益性を高めるのか。そのためには人材が重要。人材を導き、最高化することが大切。
人材の開発
人材は開発していく必要がある。潜在性を現実にしていき、よりよい人材に育てる必要がある。会社は90%が人でできている。その結果、効率性を高めるには人を解雇しないといけない。しかし、短期間では人を解雇し成果が上がるが、長期間ではどうか?
現在は、短期間でゴールを達成しなくていはいけないというプレッシャーがある。株主に対してターゲットが定められている。うまくいかないと売られてしまう。
外部のリアリティに近づこうとして、効率性を高める必要がある。その場合に、次のことがリスクになる。
今の企業をみてみると、企業と長期的な関係をもっている人がいなくなった。
CEOは、米国では1、2年で交代。株主も、1、2年で株を手放す。もちろん寿命の考えはそこにはない。
企業は、人材を活用し、リテンションをする必要がある。リクルートの資格を引き上げたと多くの人が言う。つまり、10年前に受け入れた人は、今は通用しない。技術は違うところから仕入れられるが、人を外から仕入れることは難しい。その結果、育成する必要がある。なぜ、人を育てるのか。それは、会社が進化し続ける中で、辞めた人の代わりを探すことにコストがかかるからである。4、5年働いた人の代わりを見つけるのに5万ドルもかかる。
報酬は衛生要因。報酬を増やしてもプラスαのやる気をもたらすわけではない。しかし、今の経営手法は、そうなっている。それが、うまく機能しているわけではない。
97%の会社は十分な教育を提供していない(3%の人しか十分な教育を受けていると考えていない)。教育が十分でないと考えて辞めている。
教育をするために、人(コンサルティング会社)を外部から招いて教育をしている。しかし、本来は、各従業員の頭の中に知識がある。それをどう引き上げるのか、知識を集めたいと考えたら、自分で学ぶしかない。
知識を買うという考えがあるが、本当は知識は買うことができない。知識は、学ぶことで手に入る。
ここでも、内部の現実と外部の現実が衝突している。
内部の現実で、従業員の学習レベルを引き上げる必要がある。
しかし、学習をするということにはリスクが伴う。自分がわからないということを認識する必要がある。学習するには、現実を直視する必要がある。また、学習し、自分がわからないということを認めることによって、罰を受けることがない環境をつくることが大切。
こうしたことを実現するには、ハイトラストコミュニティが必要になる。
コミュニティとは、個人が一緒になって信頼し合って、コミュニティを信頼する。そこから形成される。コミュニティを形成したいと思えば、結束力が必要。共通の価値観がある。
有益な実行力のある、ハイトラストコミュニティを作成する必要がある。個人が思いやる、結束力のあるコミュニティをつくるにはどうしたらよいのか?
「我々は」誰か?
「我々」とは誰を指すのか?
12万5千人の会社の取締役5名にこの質問をした。答えは、12万5千人全員が「我々」ではなかった。正社員ではない人は含まれていないという答えであった。答えでは、我々に該当するのは45000人。その中には、レジを打っている人は入っていない。しかし、お客様と話をするのはレジを打つ人である。
会社に属していないと思っている人は、別の会社に行ってしまうかもしれない。労働組合をつくってしまうかもしれない。社内で、会社の一員になっていない人は、外部委託すればよいのではないかということになる。
ここでも外部の現実が内部の現実と衝突している。
所見
具体的な調査に基づき、また、歴史を踏まえ、全体的トレンドを押さえた大きな視点から物事を捉えており、その内容は示唆に富んだものであった。メッセージは明確だが、基本的に「こうあるべき」「こうしなければならない」という説得調の論説ではなく、「Who is Us?」に代表されるように質問を投げかけることで、参加者の思考を深めるというスタンスをとっていた。


