ASTD国際会議

ヒューマンバリューは、1992年からASTD国際会議へ視察ツアーを実施しています。本ホームページには、1998年からの参加報告レポートを掲載しています。

W313 今日、意義を探し求める:あなたの組織のために人々の心の奥にある原型的ストーリーをつくる

アンドレアス・サルチャー(ザ・アンドレアス・サルチャー・カンパニー:マネジング・パートナー)

主要トラック:リーダーシップとマネージメント開発

ASTDによるセッション紹介文

「意義」を求める深遠で情緒的な探求は「意識時代」の中枢的な話題です。
会社はもはや商品の認識度や、信頼性、あるいは付加価値ばかりにフォーカスすることはできなくなりました―それ以上に、会社は人間の集団的無意識の奥に閉じ込められているストーリーを社員や顧客に語ってあげなければなりません。これは「スターウォーズ」や「シンデレラ」の背後に、とても古い恒久的な魅力をもつ物語を我々が見いだす理由です。なぜ真の存在位置設定ための重要な条件が意思決定をする人たちの個人的転換につながるかを学んでください。どうやってメリル・リンチ社や、スターバックス社、そしてアップル社といった会社が自分たちを原型的な道に位置させ、彼らの顧客のなかに内的転換を引き起こすのでしょうか。あなたやあなたの会社のために適した原型を見つけ、引きつける魅力を開発する方法や、あなたの会社の原型的歴史に関する物語を書く方法を学んでくだい。

概要(参加者の人数など)

セッションの前には音楽が流れ、不思議な雰囲気があった。また部屋も薄暗く、部屋に入った瞬間に怪しんで出て行く人もいた。人数は30人強おり、いったん始まると、ほとんどの人が最初から最後まで集中してセッションを聞いていた。


内容

ブランドパワー(ブランドには意味と強力な力がある)

スターバックスのロゴと名前について、ほとんどの人はそれらの意味を知らない。しかし、多くの人がスターバックスに好んで入る。実はスターバックスのロゴと名前には意味があり、スターバックスに入ると海に浮かんだ船の中にいる感覚になるのである。
アップル社のロゴのリンゴには官僚組織への反発の意味が入っている。またロゴには、「渇望、ナレッジ、希望、アナーキー」等の意味が含まれている
コカコーラが以前キャッチフレーズを一新しようとしたとき、世界中から18000もの抗議や反発の電話があった。コカコーラは、会社がそのシンボルとなっているものを変えようとしたときに、顧客から抗議が起こるような力をもっているブランドである。
キーノートセッションでハーレーダビッドソンのマークをタトゥーにしている男性の腕の写真があったが、自分の身体にそのマークを彫り込んでしまう程の力をもったブランドである。
この裏には、何らかのストーリーの原型が存在する。そして、ロゴ以上に何か文化のようなものができ上がっている。

ストーリーの原型とは

C.G. Jungが出しているストーリーの原型理論がある。

たとえば、シンデレラは1つの原型となる
貧しく、かわいそうな女の子

王子に出会う

お城で幸せに暮らす

これは、映画でも再現され、「プリティ・ウーマン」「メイド・イン・マンハッタン」にもまったく同じ構造で使われている。
ダイアナ妃もこのストーリーが現実になったものに近い。

OJシンプソン事件が、なぜあれほど話題になったのかも実はストーリーの原型だからだ。OJシンプソン事件や「オセロ」という映画も同じストーリーの原型である。

ストーリーの力により、我々は何度も繰り返し同じものを聞きたくなる。

なぜストーリーが必要なのか

ストーリーテリングはもともと民族が、焚き火の周りに座って行ったものである。この方法でナレッジを保持していた。
また、良いストーリーは、人生に意味、意図、意義をもたらす。(ハッピーなストーリーが必ずしも良いストーリーとは限らない)
ストーリーはC.G.Jungのいう無意識化(Subconsciousに働きかける)。自分自身の下には両親・家族、文化、さらに無意識化という部分があり、この無意識化は文化をまたいで人が共通してもつ部分であったりする。
これまでは「情報の時代」であったのが、「意識の時代」へと移り変わっていく。

原型とは

原型とは、見えないパターンやメタファーのことである。

原型がブランドに変わるとき

原型のストーリーがブランドになるのはどのようなときなのか。
金融企業であるリーマンブラザース・ソロモンスミスバーニー・メリルリンチのうち、どの会社のロゴマークを知っているのかと聞くと、一般的には、多くの人はメリルリンチしか思い浮かばない。
メリルリンチの牛は、人間が最も最初に洞窟に書いた絵をもとにしている。この絵は、そのころ多産や産出力、豊富さを表す象徴だった。メリルリンチを通して、お金が生み出されるという意味をもっている。もちろんこのロゴを作っただけでは何も生み出さない。これにストーリーがつくことでブランドに変わる。
ナイキのマークも、勝者を象徴する神の羽をイメージして作られている。そこには、「すべての人が勝者になりますように」という意味が込められている。

ブランディングの4つのレベル

レベル1:ブランドネームとロゴが競合との区別をつけさせ、認知されている。
レベル2:期待通りのものが得られる−マクドナルドのように、どこに行っても同じ味が食べられるという信頼感
レベル3付加価値―利益を得る手段(ブランドものの時計をつけることで経済的地位を示す)
レベル4:トランスフォメーション−無意識化に働きかけるレベルであり、たとえば、コカコーラと聞いただけで味がおいしくなってしまう。高級ワインだといわれてワインを飲むと実際には美味しくないワインも美味しく感じてしまうなど。

12原型と企業ブランド

InnocentVWBeetle社
AverageGuy Nokia
WarriorNike
CaregiverNivea
LoverChanel Nr.5
ExplorerStarbucks
CreatorAudi
OutlawHarley Davidson
RulerMicrosoft
MagicianIntel
SageMckinsey
FoolHaribo

自分の組織のストーリーを作る

演習プロセス

  • 自分の入社してからの、組織での体験を紙に巻物のように書き出す。(系譜作り)
  • それを基に自分がストーリーのどの原型に当てはまるかを考える。
  • 組織の原型は何かを考える
  • 自分の組織のブランドコードを考える。なぜ組織が良いストーリーなのかを考える。どの欲求を組織のストーリーに入れるのかを考える。

所見

他のセッションとかなり毛色が違っており、なかなか興味深いものであった。過去の延長線上から「最新の理論を追いかける」という雰囲気はなかったが、独自の切り口から一歩先の時代に必要になってくる「企業のブランド(アイデンティティー)を作る」の必要性を示唆していたように考えられる。
日本でも一時期「ブランド力」をつけるためのCI活動等に多大な投資をする企業が多かった。しかし、このセッションにあった「意味や意義」を本当に突き詰めて考えたCI活動には必ずしもなっていなかったかもしれないとあらためて考えさせられた。一時期の流行が去ると共に、本当の意味で力と意味のある「ブランド」を作り、ロゴやキャッチフレーズを通じて組織文化にしていく、という「ブランド」の本質が見失われていたのかもしれない。
組織文化を創っていく際に、組織のメンバー1人ひとりが意味や意義を突き詰めて考え、それをストーリーにして組織のメッセージを作りあげていくことの重要性を伝えていたという意味では、今後も重要な考え方になるのではないだろうか。

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