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ヒューマンバリューは、1992年からASTD国際会議へ視察ツアーを実施しています。本ホームページには、1998年からの参加報告レポートを掲載しています。
クオリティ・サービスにおけるROIを測定する:ある金融産業の評価体験
ハイメ・ロサス(マス・コンスルトール社)/ロドリゴ・ララ・フェルナンデス(パートナー マス・コンスルトール社)
主要トラック:測定、評価、及びROI
ASTDによるセッション紹介文
クオリティーサービス学習プログラムは、サービス企業の区別方法として、特に銀行業務において急速に成長してきています。このセッションに、スピーカーは、枝従業員指向のプログラムのためのROI測定の開発を分析するでしょう。 プログラムは、伝えられた良質のサービスレベルを増加させることを目指した連続的な改良システムをインプリメントしました。 対照群はプログラムの影響を分離するために使用されました; 顧客ロスおよび顧客満足手段は貨幣の図へインパクト結果を計算するために使用されました。
概要(参加者の人数など)
会場は、200人定員に対して半数程度の観衆。7割程度がアメリカ人で、アジア系の参加者もちらほらと見受けられた。これは、他のROI関連のセッションに比べると小さい割合であるといえる。
内容
セッション概要
※チリについて:南米で過去20年間に最も経済成長を遂げている。
今回の効果測定を実施したのは、「MASコンサルティング」というHRを主体としたコンサルティング会社で、チリの首都サンディアゴのほか、ペルー、ベネゼエラでもビジネスを展開している。
南アメリカROI協会にて、2003年よりパートナー企業として活動中。
これまでに、南米において15の案件をROI関連で手がけている。
今回は、チリで最大の銀行(7380人の従業員、315の支店、マーケットシェア24%)での事例についての紹介。2年前に、同行が企業合併を行った直後に展開した、顧客満足度向上トレーニングがその対象となっている。
本トレーニングのビジネス上の位置づけと管理指標
同行では、顧客の満足度がそのまま口座の継続開設や銀行利用頻度に直結するというマーケティングデータを持っており、その満足度を国内に展開する各支店全体で高水準に引き上げることが、全行のビジネス上の重要な課題となっていた。
この「顧客満足度」は、具体的には下記に定義される「Net Satisfaction Level」(以下、NSLと略)という指標によって管理されてきた。
Net Satisfaction Level=(カスタマー満足度で6〜7点をつけた人の割合%)―(カスタマー満足度で1〜4点をつけた人の割合%)
※採点は1〜7の7点満点で、マーケット調査会社を通して、同行の各カスタマーに主に電話による調査で測定されている。
プログラムの流れ
- 支店データの解析(この時点で、効果測定の基準となるNSLを、支店別に確認する)
- 8時間の各支店におけるトレーニング(各支店の従業員に対して、NSLがこの銀行のビジネスモデル上どのように重要なのか、NSLを向上させるためにはトレーニングの評価指標であるアクションプランの実施率(←これが、本トレーニングにとってのROIモデルにおけるLv3評価に該当))を向上させることが必要であること、などを共有)
- 支店のチームごとでのアクションプランの策定
- アクションプランの実行とフォロー(3〜7週間:いわゆるアクションラーニングにおける振り返りの位置づけ。ここで、トレーニングの評価指標でもあるLv3の指標、つまり3で設定したアクションプランの実施率、をトレースし続ける)
- プログラムの効果測定(以下で紹介するとおり、コントロールグループ(←トレーニングを受けていない別の支店グループ)とのNSLの向上度合いの比較、およびそのROI(金銭価値換算)を行っている)
効果測定の手法とその結果
評価のモデル:JackPhillipsのROIモデルが使われている。その中でも基本的には、Level4での評価、すなわちNSLの向上度合いの評価が中心となっている。なお、今回のトレーニングに対して評価を行った主な理由は、以下の通りと紹介されていた。
- 明確なビジネスニーズ。同行は、国内シェア2位の銀行(こちらはシェア21%)と激しい市場競争をしており、NSLの向上をベースとした支店サービスの向上が、戦略的に非常に大きな意味を持っており、それを実現するためのトレーニング展開に経営陣が大きな関心を寄せていた
- トレーニング部門としても、ビジネスへの貢献を明確に確認したいという意図があった
- 今回対象となっていない残りの支店(約200)に対しても、このプログラムの展開予定があり、それをより効果的なものにしたいという意図があった
効果測定結果について(各Levelは、Phillip's ROIモデルに準拠)
Level1【受講者の満足度】:94%がExcellent OR VeryGoodと評価(実体験として、このスコアが良いと、次のプログラムも受け入れられやすい)
Level2【受講者の知識・スキル向上】:測定していない。プログラムの目的が、カスタマー満足とアクションプランだったため。このレベルの測定を行わないことで、コストも抑えた。
Level3【受講者の行動の変化】:ここが、プロセスのゴール。この部分が、フォローアップのミーティングで常に焦点となっていた。この結果、最終的に55%のチームアクションプランが実行に移された(20のうち11、3ヶ月で)。支店の中では何もアクションをしなかったものもあるが、それは、昨日のブリンカーホフのセッションでもあったように、そのグループには外的な課題があった。具体的には、主に本店からの資金的な援助の不足などが挙げられた。これらのインプットは、このあとの他の支店に向けたプログラム展開の大きな参考になっている。
Level4【ビジネス上の成果】:このプログラムの成果を測定するために、ここではコントロールグループとの比較という手法が用いられた。具体的には、今回の30の支店と、別の支店(コントロールグループ:35の支店)が比較検証された。これらのコントロールグループの選出は、「カスタマーサービスレベル」「立地」「支店の規模」の3点で、対象となっている30の支店と条件が揃うような配慮によって選出されている。
その結果は、NSLの上昇率に関して
・コントロールグループ:8%UP→5%UP(終了直後→6ヵ月後)
・対象のグループ:20%UP→15.5%UP(終了直後→6ヵ月後)
となり、このプログラムの成果としては、終了直後の時点で12%、さらにその後6ヶ月で110.5%の効果があったとされている。ちなみに、コントロールグループの方もNSLが向上しているのは、このトレーニング以外での顧客満足度向上のための自助努力の成果と考えられる。
Level5【金銭換算について】
・NSLの向上はセールスの向上と、リテンションの向上に貢献する
・Dissatisfactionの利用者の65%は、1年以内に利用を辞めるというデータあり。このデータは、銀行本体からのデータであり、信頼性が高い
これらのデータを元に、
- 平均的なカスタマーの金銭価値計算(口座、クレジットカード…)
- カスタマー1人あたりの利益を算出
- これらにより、満足度が1Pt上がることで、1支店での金銭換算価値は、16226USDと計算
- さらに、Dissatisfactionの利用者の1年以内の利用停止率が65%なので、この金銭換算にNSLが貢献する要因を0.65と仮定
一方で、今回のトレーニングコストは、全30支店合計で131933USD
→ROIは、(16226×30×0.65)÷(131933)= 140%
Lever以外での評価:インタンジブルベネフィット(数値化できない利益)
- 参加したメンバーのアクションプラン実行力の向上
- チームメンバーの能力向上
所感
アクションプランの策定・実行のプロセスにトレーニングの評価を指標として組み込んだことで、効果測定がプログラムの成果自体に貢献している点が印象的だった。
一般的に、トレーニングの効果測定は、トレーニング実施者が、プランの策定(どの指標がどのようにビジネスに貢献するかの仮説構築)・指標のフォロー・結果の分析といった点をすべて管理し、受講生にはオープンにならないことが多いが、このケースでは、これらすべての点が受講者にオープンになっており、トレーニング実施者と共同で、その指標を上げることでビジネスに貢献しようとしていたことが、とてもユニークだと思われる。こうした形で、「トレーニングを含めた学習内容全体が、ビジネスに貢献するためのモデル理解や、その後の指標のフォロー」を推進するためのツールとして効果測定を行うのは、経営層に対してROIを持ち出し「このトレーニングはこれだけ有用だ」とアピールするために効果測定を用いるよりも、よほど生産的であると感じられた。
ちなみに、講演後にスピーカーに話を聴いたところ、
「この効果測定結果を経営陣にプレゼンテーションした時点では、すでに経営陣はこの営みに成功を知っており、別にROI換算などには興味を示さなかった。それよりも、各支店のNSL分析から始まる一連の流れを継続的に、そして論理的に経営陣が理解しサポートしてきたこと自体で、トレーニングに対する納得性や、さらなるスポンサーシップが得られた」と話していた。
この話からも分かるように、この効果測定のポイントはROIの換算などにはなく、ただしASTDのセッションとして表面上の注目を集めるためには、ROIという「表札」が必要だということで、無理やりセッション名にもROIとつけていたのではないかと思う。


