ASTD国際会議

ヒューマンバリューは、1992年からASTD国際会議へ視察ツアーを実施しています。本ホームページには、1998年からの参加報告レポートを掲載しています。

いかにフォーマルおよびインフォーマル・ラーニングを通して新しいナレッジを想像するか

ベッティ・コリス(ムーネン&コリス・ラーンニング・テクノロジー・コンサルタンツ社)/エアランド・ジャーゲンセン(ナレッジ刷新及びに設計責任者 シェル・インターナショナル試掘生産社)

主要トラック:ラーニングの設計とデリバリー

ASTDによるセッション紹介文

シェル・インターナショナル試掘生産社においてはナレッジ創造と共有はラーニングやグローバルな職場における益々複雑で急速になる変化に対する答の心臓部として見られています。その設計手段は何百という再設計された「混合コース」の中で開発され実施されてきました。そこでの鍵となる手段は社員自身の職場のなかでガイド化された任務に取り組むあいだに参加者が学び、そしてウェブ環境を通して他の参加者と彼らの成果やラーニングを共有する職場活動です。インフォーマル・ラーニングにとって鍵となる手段はテクノロジーにサポートされたグローバルなコミュニティ・オブ・プラクティス内での「尋ねる―学ぶ―共有する」アプローチです。これらのどちらもが効果的に機能するためには職場サポートとコーチングが重要であり、且つそれらは混合コースの中へ統合され、同様に職場におけるインフォーマル・ラーニングのためにそれらは重視されサポートされています。このセッションはこれらのアプローチを使用するラーニング活動を設計する例や、ガイドライン、そして機会を提供してくれるでしょう。

概要(参加者の人数など)

シェル石油におけるナレッジ生成の事例をテーマとしたセッション。参加者数は、50〜70名と、やや少なめであった。前半はみな集中して聴いていたが、後半の演習セッションになると席をたつ人が目立ち始めた。

内容

フォーマルな学習とインフォーマルな学習の統合

40カ国にビジネスを展開し、25000人の社員を擁するShell EP社にとって、ナレッジの生成と共有は、戦略的なビジネスのニーズに応えるためにも必要不可欠なものであった。ナレッジの生成と共有は、フォーマルな学習、インフォーマル学習の両方で行なわれるものであり、それらの「インフォーマルな学習」と「フォーマルな学習」をいかに統合し、学習と仕事を融合させるかが大きなテーマであった。Shellは、「Ask(尋ねる)−Learn(学ぶ)−Share(共有する)」というコンセプトのもとで、統合を図っていった。

インフォーマルな学習の促進

リアルワークの中での活動を通して、学習が根付くように、様々なナレッジ共有のツールやプロセスが活用されていた。代表的なものには、以下のような手段が挙げられる。

コーチング&メンタリング

スーパーバイザーやマネジャーの支援のもと、学習者に対して、コーチングやメンタリングが施されている。学習者が学んできたことを現場で実践する際に、最初はスーパーバイザーが支援を行いながら、ナレッジを移行し、パフォーマンスを上げさせ、少しずつ引いていくといった学習が丁寧に実践されていた。

グローバル・ネットワーク

グローバルな規模でのCommunities of PracticesがWeb技術の支援のもとで展開されており、誰かがCoPに対して質問を投げかけると、通常24時間以内に返信が来るということであった。1日に46件もの回答が寄せられる質問もあり、四半期で、2969件の質問、ビューは83887件あるということであった。

Wiki及び、ベストプラクティスの共有

Shell Wikiでは、世界中の社員が、様々な観点から情報やナレッジをアップし、シェル独自のナレッジのEncyclopediaを作り上げ、全ての学習マテリアルが、このShell Wikiを通じて得られるようになっていた。また、他職場でも実践されるべき優良事例については、みなが知っているべきベスト・プラクティスとして共有されている。

フォーマルな学習の中にインフォーマルな学習の要素を含める

シェルのトレーニング・プログラムにおいては、下記要素を取り入れた「ブレンデッド学習」の形態が取られている。

  • コースの間に仕事に基づいたアクティビティが行われる
  • 職場の同僚やエキスパートに尋ねる
  • コースの中でナレッジ・マネジメントのツールやテクニックが活用される
  • 職場のスーパーバイザーやコーチを参加させる
  • 参加者が得た知識や経験を、参加者同士、また職場のチームと共有する

具体的な事例としては、コースの事前に、職場の同僚やエキスパートに対して、インタビューを行い、学習するテーマについての体験を尋ね、聴きだすといった取り組みが行われていた。インタビューは、各参加者が、異なる職場において行い、聴いた内容は事前に全員に共有され、共通点や異なる点を発見するなどを通して、学習と参加者間の相互作用が深められていた。また、コース内で、参加者が分析・検討したコンテンツについては、ナレッジ・マネジメントのツールを用いて、全社員が参照することができるようになっていた(学習のテーマをビジネスに直結させることを通して、他の参加していない社員も興味・関心を持つようにしていた)。またコース内で、職場での実践プランが立てられ、職場に帰ってからは、スーパーバイザーやコーチの支援のもと、そのプランが実行されるようになっていた。

その中で、マネジャーの役割は、メンバーが自分で開発するのを助けるという共通の理解が必要であるとのことであった。

Ask-Learn-Share実践のために必要な文化の変革

Ask-Learn-Share実践のためには、もちろんテクノロジーも必要だが、それに加えて、文化を変えていくことが求められる。例えば、人々が他人に対して質問をしてもいいという環境を作ったり、Ask-Learn-Shareの行動が認められる風土を作っていったりすることが必要となる。そうしたことを実現するためには、以下の項目が重要であるとのことであった。

  1. 重要な企業の課題、皆が合意できるものをはっきりさせる
  2. その課題に対してナレッジを共有が効果的ないくつかの鍵を明らかにする
  3. ナレッジをシェアし、学ぶことが、仕事において違いを生み出すことができるという確信を皆の中に作る
  4. 職場でナレッジシェアが促進するように、いくつかの公式な学習イベントをリデザインする
  5. みんながアクセスして使ってみることで、インフォーマルな学習につながる質問と共有の存在を認知し、価値を感じる事例を作る
  6. 心の中にこれは良いということが生まれるように、学習につながるナレッジシェアの質と効果を継続的にモニターする

所感

CoPやWiki、あるいは事前インタビューによる体験の共有など、学習の形態が、単に知識を習得するだけではなく、相互作用から学ぶ社会構成主義的な学習に完全に推移していることが実感できた。また、それらを推奨するためには、テクノロジーをそろえるだけではうまくいかずに、文化を変えていかなければいけないという視点は面白かった。言い換えると、学習のあり方を変えることが、文化を変えるということにも通じるかもしれないという感想を持った。

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