- ホーム
- 学習する組織研究・レポート
- ASTD国際会議
- ASTD2008事前レポート
ヒューマンバリューは、1992年からASTD国際会議へ視察ツアーを実施しています。本ホームページには、1998年からの参加報告レポートを掲載しています。
ASTD2008事前レポート
ASTD2008International Conference & EXPOが、2008年6月1日~4日にカリフォルニア州サンディエゴにて開催されます。このコンファレンスは、職場における学習・訓練・開発・パフォーマンスに関する世界最大の会員制組織であるASTDが毎年開催しているものです。
このコンファレンスでは、世界中から集った先駆的企業や教育機関・行政体のリーダーたちが、現在直面している諸問題にどのように取り組んでいるかを企業の枠を越えて学び合います。世界における人材開発の最新動向に触れながら、これからの組織・人材開発のあり方について多くの人と情報交換をしたり、課題を探求していく最高の場であるといえます。
本レポートでは、ASTD2008公式ホームページに掲載されている内容をもとに、今年のコンファレンスではどのようなことがテーマになるのか、また、どのような人が講演を行うのかといった見所をコンファレンスに先立って紹介していきたいと思います。
(分析:株式会社ヒューマンバリュー研究員 川口大輔)
*1.ASTD2008におけるカテゴリー別のトレンドとセッションの見所
*2.ASTD2008の基調講演スピーカーの紹介
1.ASTD2008におけるカテゴリー別のトレンドとセッションの見所
ASTD2008は例年と同様に以下の9カテゴリーを中心に展開されます。ここでは、ホームページに掲載されているセッション紹介から見受けられる各カテゴリーのトレンドや、今年特に注目してみたいセッションを紹介したいと思います。
- Career Planning and Talent Management
(キャリア・プランニングとタレント・マネジメント) - Designing and Delivering Learning(ラーニングをデザインし、デリバリーする)
- E-Learning(Eラーニング)
- Facilitating Organizational Change(組織変革をファシリテートする)
- Leadership and Management Development
(リーダーシップとマネジメント開発) - Learning as a Business Strategy(ビジネス戦略としてのラーニング)
- Measurement, Evaluation, and ROI(測定、評価、ROI)
- Performance Improvement(パフォーマンス改善)
- Personal and Professional Effectiveness(個人的および職業的効果性)
Career Planning and Talent Management(キャリア・プランニングとタレント・マネジメント)
レジェンド・シリーズ
キャリア・プランニングとタレント・マネジメントは、世界的な人材不足などを背景に、ここ数年のASTDを見ても、最も注目度の高いテーマの一つとなっています。
ASTDでは、特定の分野においてパイオニアとして名高い人々を「レジェンド・シリーズ」として招聘していますが、昨年は、『ホワット・カラー・イズ・ユア・パラシュート?(What Color Is Your Parachute?)』(邦題:『あなたのパラシュートは何色?』)の著者、Richard N. Bolles氏がこの分野で講演を行い、キャリアに関する普遍的な考え方を紹介していました。
今年のレジェンド・シリーズでは、南カリフォルニア大学で教授を務め、HRMやOrganizational Effectivenessの分野で名高いEdward Lawler III氏が、「M100:Built for Talent」というタイトルで講演を行います。
組織に違いをもたらすタレント・マネジメントについて、報酬システム、採用プロセス、経営陣のリーダーシップなど様々な観点からのアプローチを紹介する同氏の講演に期待したいところです。
また、レジェンド・シリーズではありませんが、毎年タレント・マネジメントやエンゲージメントの分野で質の高い講演を行うことで有名なBeverly Kaye氏が、今年も「M201:The Development Dialogue:The Critical Link to Engagement and Retention」というセッションを行います。そこでは、社員のライフサイクルのあらゆるステージにおいて、いかに一人ひとりを成長させることができるかについて真剣にダイアログしていくことの重要性を説いていくようです。タレント・マネジメントについて、一歩踏み込んで考えてみたいという方にお勧めのセッションといえます。
伝統的なアプローチからの脱却
一方で、採用・開発・リテンションといった従来からあるタレント・マネジメントのフレームワークから脱却し、新たな方向性を探す必要性を示唆するセッションも出てきているようです。
「M107:Talent Sustainability:Orchestrators, Accelerators, and Influencers」では、リーダーシップ開発の世界的権威であるCenter for Creative Leadership(CCL)が、従来的なアプローチの限界を示した上で、彼らの最近の調査から導き出した「Talent Sustainability」というコンセプトを紹介します。
セッション概要によると、「Talent Sustainability」とは、学習と開発の文化、及び人的資産を永続的に活用することができるプロセスを構築することができる組織的な能力のことを指しているようです。そして、これまでしばしば別々にデザインされてきたHRと組織マネジメント・プロセスを統合することの重要性を訴えています。また、Talent Sustainabilityを実現するために必要なリーダーシップの役割として、Orchestrators(オーケストラを編成する人)、Accelerators(加速させる人)、そして Influencers(影響を与える人)の3つを提示しており、これらが何を示すのかに注目したいと思います。
また、「SU108:The Career Is Dead. Long Live Career Development」では、キャリアのメタファーである梯子(Career Ladder)は今では役に立たない、つまり確立されたキャリア・パスというものがビジネスの目的に合わなくなってきていることが強調されているようです。スピーカーのChris Brunone氏は、「キャリアとは異なる一人ひとりにとって、本当に"work"する仕事を探す旅路である」と述べており、タイトルにもあるLong Live Career Developmentがどのような考え方なのかに注目してみたいところです。
入社直後の社員へのアプローチ
今年の特徴として、入社直後の社員へのアプローチの仕方が、タレント・マネジメントに大きな影響を及ぼすということにフォーカスを当てたセッションが多いことが挙げられます。
たとえば、リーダーシップ開発で著名なDevelopment Dimensions International(DDI)社CEOのWilliam Byham氏は、「TU103:10 Secrets Revealed to Minimize Time to Performance While Maximizing Retention」の中で、入社後2年以内に退職する人の半数以上は入社後2カ月以内に退職していたり、残りの半分の大半の人も入社後2カ月以内に別の仕事を探し始めたりしているという事実を踏まえた上で、新人にとって最初の60日がいかに重要であるかを訴えています。その際、マネジャーやトレーニング部門が果たす役割の大きさについても言及しており、それらを10の秘密という形で紹介されるそうです。
より具体的には、「M310:Engaging New Employees Day One at the World's Largest Retailer」において、世界的な小売業であるウォルマート社の事例が紹介されています。同社では、社員が長期的なキャリアを築き、エンゲージメントを高めるために、最初の1日をいかに過ごすかがキーファクターになると捉えているそうです。セッションの中では、同社がSolutions House社と協働で開発したインタラクティブなオリエンテーション・プログラム(歴史や文化、仕事の環境、会社のミッションにフォーカスしたもの)が紹介される予定ですので、具体的なヒントを得られる場になるかもしれません。
その他にも、「SU206:Identifying Solutions for Effective Individual and Team On Boarding」において、個人やチームをOn Board(乗車)させるために、具体的にどのようなソリューションが有効なのかが紹介されるなど、入社直後のアプローチをテーマとしたセッションが多く見受けられることの意味を考えてみたいところです。
メンタリング
メンタリング自体はかなり以前からあるコンセプトですが、ここ最近タレント・マネジメントやインフォーマル・ラーニングが注目を集めていることなどから、あらためてそのあり方の見直しがなされているように見受けられます。
今年もメンタリングをテーマにしたセッションがいくつかあります。たとえば、「TU116:The Power of Peer Mentoring:Tools for Learning in the Connected Organization」では、New Zealand Mentoring CenterのAly McNicoll氏とWendy Baker氏が、コミュニティ・オブ・プラクティスを通してメンタリングを行うPeer mentoring groupsというコンセプトや、実現するためのツールを紹介しています。
また、「W310:Minute Mentoring:Using Day-to-Day Relationships to Build Skills」では、日々の職場の中で行う「Minute Mentoring」というコンセプトが紹介されています。このようにメンタリングの新たな枠組みも垣間見られており、注目してみたいところです。
Designing and Delivering Learning(ラーニングをデザインし、デリバリーする)
学習者を主体としたラーニングのデザイン
ここ数年、インストラクショナル・デザインのあり方を見直すことをテーマにしたセッションが増えてきています。その背景として、ラーニングの設計を行う主体者が、インストラクショナル・デザイナーやSubject Matter Expert(SME)から、学習者へと完全に移行してきたことが挙げられます。
つまり、これまでは学習ゴールがインストラクショナル・デザイナーや企画する人によって設定されてきましたが、現在では、学習者自身が学習ゴールを主体的に生み出していくことがより重視されるため、従来までのADDIEのモデルが適応しづらくなってきていると考えられます。
今年のセッションでも、「TU209:Learning in a Frenzied World:Strategies for Grabbing Learners' Attention」では、学習者が学習を支配するようになったときの将来の学習のあり方がテーマとして挙げられています。また、「SU210:Guiding the Journey From SME to Learning Facilitator」では、学習コンテンツの提供者であるSMEが、その役割を広げて、学習者の学習を促進するLearning Facilitatorとなることの必要性が述べられています。その他に、「TU311:Overcoming Staffing Challenges in a Global Learning Environment」では、働く人々の多様化やグローバル化に合わせた学習環境づくりについて、IBMが先進的な事例を紹介しており、興味深いです。
同様の背景から、昨年くらいからインフォーマル・ラーニングに関するセッションも増えてきています。この傾向は今年も続いており、今やインフォーマル・ラーニングなしでは、学習の設計については語ることができなくなってきているように見受けられます。ただし、インフォーマル・ラーニングについては、まだ明確な定義や正解があるわけではありません。今年も多くのセッションが、インフォーマル・ラーニングをテーマに取り上げていますので、その進化に期待が高まるところです。
五感を活用した学習
2000年~2003年くらいは、Eラーニングを中心とした学習が最も注目を集めていました。その反動ではないのでしょうが、ここ数年のトレンドとして、インプロ(即興)やストーリーテリングなどに代表されるような五感を活用した学習に高い注目が集まっています。
今年も多くのセッションで五感を活用した学習が取り上げられています。たとえば、「SU109:Sim-Elations:Make It Real and Wow Your Learner」では、JP Morgan ChaseのHR、及びトレーニング部門のマネジャーが、同社において、セールススキルや採用におけるインタビュースキル、または顧客との関係性の向上をねらったシアター形式のインプロを取り入れている事例が紹介されます。また、「M309:Using Improve Techniques to Teach Managers Recognition Skills」では、マネジャーが部下の話に耳を傾け、尊敬をもって接し、信頼を築き、職場を楽しいものにするレコグニション・スキルの向上のためにインプロを活用することを推奨しています。
その他にも目新しいところで言えば、「SU312:The Power of Voice:Using Vocalics to Influence and Persuade」では、声のパワーに着目しています。ピッチやトーン、ボリューム、方向性やペースを操り、自分のメッセージに言葉を超えた意味を吹き込み、聞いている人を包み込むテクニックが紹介されます。
このような身体性に着目したセッションは今後も増えていくことが予想されます。ほとんどのセッションが、実際に体験してみるワークを中心としたものであると考えられますので、ぜひ楽しんで参加してみてはいかがでしょうか。
E-Learning(Eラーニング)
Eラーニング2.0
昨年は、Web2.0にならって、Eラーニング2.0という言葉が登場し、Pod castingやSNS、Wikiなどを使った新しい学習のあり方が提唱されました。今年もその傾向は続くようです。
昨年と同じく、Tony Karrer氏が、「M313:E-Learning2.0 for Personal and Group Learning」というセッションを行う他、Eラーニングやナレッジ・マネジメントの権威であり、毎年Eラーニングの潮流に関するセッションを行っているMarc Rosenberg氏も、「SU201:Beyond E-Learning:New Approaches to Managing and Delivering Organizational Knowledge」の中で、Web2.0の時代における新たなアプローチの必要性を訴えていきます。目新しいところでは、「M112:Learning in the Virtual World of Second Life」で、Second Lifeのようなバーチャル・コミュニティにおける学習のあり方をテーマにしています。Eラーニングの今後に興味のある方には、これらのセッションがお勧めです。
バーチャルな学習環境の効果向上
Eラーニング2.0のトレンドも影響してか、個別のテーマでは、バーチャルな学習環境の効果を高めることをテーマにしたセッションが今年は多く見受けられます。
たとえば、「TU111:The Virtual Facilitator:Creating Interactive Online Learning Experience」では、近年ますます増えているバーチャル・クラスルームでのファシリテーションのあり方をテーマにしています。また、「TU112:AT&T's Approach to Maximizing Impact in the Virtual Classroom」では、同期・非同期の学習効果を最大化し、オンライン環境の学習を効果的に促進する戦略について、AT&Tが紹介します。
学習体系の整理
Eラーニング2.0が、単なるコンセプトではなく、具体的な手段となってくると、学習のスタイルも今後ますます多様化していくことが考えられます。
そうした背景から、学習手段や体系を整理していこうという動きも垣間見られます。
「SU101:E-Learning and the Science of Instruction」では、Ruth Clark氏が、自身の長年に渡る研究に基づき、同期・非同期学習のバランスや、ビジュアルやテキスト、オーディオの組み合わせ方について言及します。また、「SU211:The Cognos Curriculum:Finding the Right Balance for a Blended-Learning System」では、ブレンデッド・ラーニングの最適なバランスをテーマとして扱っています。
Facilitating Organizational Change
エンゲージメント
例年、このカテゴリーでは組織変革をいかに進めていくかについての原理や方法論、事例を扱っていますが、近年は「エンゲージメント」の創造が大きなトピックとして挙げられています。
今年は、たとえば「SU104:Connecting Learning and Employee Engagement at Caterpillar:A New Frontier in Organizational Learning」では、社員の学習とエンゲージメントとの相関について、キャタピラー社の3年に渡る研究成果が報告されるとのことです。学習とエンゲージメントの関係性は、これまでも言及されてきましたが、具体的にどのような学習機会があることがエンゲージメントを高めることにつながるのか、その原理・原則に注目してみたいところです。
Leadership and Management Development
注目したいショーケース・スピーカー
ASTDでは、例年行っている「Legend Series」に加えて、今年から「Showcase Speaker」というセッションを用意しています。これは、以前にASTDでセッションを行い、聴衆に大きなインパクトを残し、好評を得た人たちが、再度ASTD2008で講演するというものです。
何名ものショーケース・スピーカーの講演が予定されていますが、リーダーシップ&マネジメント開発の分野で、今年ぜひ注目したい一人として、エンパワーメントやスチュワートシップのテーマで名高いPeter Block氏が挙げられます。同氏は、2003年、サンディエゴで開催されたASTDで講演を行っています。
そのときの講演では、「Social Architecture」というコンセプトを提示しており、1)スピードと効率性を重視するエンジニア、2)コストや売上を重視するエコノミスト、3)驚きと発見、情動と創造性、親密性とリレーションシップを重視するアーティストの3つのSocial Architectureのうちアーティストの部分を高めていくことの重要性を訴えていました。
今年は、「M101:Community:The Structure of Belonging」という興味深いタイトルのセッションを行います。概要を見ると、孤立、恐怖、受身の文化から脱却するために、組織における会話のあり方を問題解決型から可能性に、欠けていることから授かったものに、そして責めることからオーナーシップをもつことへと、リーダーがシフトさせることの必要性について語られるようです。また、その際、コミュニティがいかに重要な存在であるかについても議論されるようであり、期待したいところです。
もう一人注目したいスピーカーとして、世界的なエグゼクティブ・コーチの一人であるMarshall Goldsmith氏が挙げられます。同氏は、フォーブス誌によって、世界で最も偉大な5人のエグゼクティブ・コーチの一人に選出されており、コーチングを活用している人・興味がある人にお勧めのセッションです。セッション・タイトルは「SU100:What Got You Here Won't Get You There:Helping Successful Leaders Get Even Better」となっています。これは、同氏が昨年に出版された書籍と同名のタイトルであり、成功しているリーダーの変革について考えるセッションになりそうです。
その他注目したいセッション
その他注目したいセッションとしては、まずDDI社が行う「TU115:Taking Your Leadership Pipeline Global:What Really Works!」が挙げられます。DDI社では、毎年リーダーシップに関する調査結果に基づいたセッションが行われます。今年も同社が1000社以上の会社で行った調査をもとに、「本当に機能する」リーダーシップ開発について、事例を交えながら紹介されるようです。
また、リーダーシップ開発のあり方として興味深いセッションに「SU115:Learning Well by Doing Good:Community Involvement-Based Action Learning」があります。このセッションでは、アクション・ラーニングにおける学習機会を、企業の中から地域コミュニティへと広げ、コミュニティでの活動を通してリーダーシップ開発の効果を高めることに取り組んだ事例が紹介される予定です。企業と地域との社会的なつながりが強化され始めている現在において、興味深い取り組みといえると思います。
Learning as a Business Strategy
インクルージョン
近年ASTDで取り上げられる回数が増えてきたキーワードに「インクルージョン」という言葉があります。インクルージョンは、日本語では「包括、包含」という意味です。この言葉は、ダイバーシティに類する言葉として、リーダーシップ開発の分野などでも使われたりしますが、まだ定義や方向性が明確になっていない言葉の一つといえます。
今年もインクルージョンをテーマにしたセッションがいくつかあります。たとえば、「SU118:Delivering Effective Strategic Diversity Management Education」では、ダイバーシティやインクルージョンの職場環境が、組織のミッションを実現する上でいかに効果的か、またそれらをマネジメントする上でのリーダーシップの役割は何かについて講演が行われます。
また、インクルージョンを単なるダイバーシティではなく、もう少し幅広い概念として捉え、自分たちが包括する組織の枠を広げていくという意味合いで使っていく方向性もあるようです。カテゴリーは違いますが、「M315:Raising the Bar on Culture Change:Taking a Giant Leap Thorough Inclusion」では、産業革命から100年が経過した新しい時代の組織開発のあり方として、同じ組織に所属する人たちが貢献感や価値を得られるだけでは十分ではなく、マス・コラボレーションやグローバルなコ・クリエーション、コミュニティを巻き込んだ問題解決など、その対象の幅を広げていく必要があるということが提示されるようです。
また同様の取り組みとして、MasterCard社のセッション「M217:Learning in the Extended Enterprise:The MasterCard Way」にも注目してみたいものです。
このセッションでは、組織の成功は、カスタマーやベンダー、サプライヤーなど組織外のステークホルダーたちのインパクトによってもたらされるという考え方のもとで、同社が学習機会を社員に限らず、カスタマーやパートナーにまで開放していった事例が紹介されます。
インクルージョンという言葉は直接使われていませんが、自分たちの組織外の人たちも巻き込みながら成長を促進していくという姿勢は、上記セッションと共通するものがあるといえます。
こうしたセッションに参加することを通して、インクルージョンという言葉について探究を深めることも大きな意味があるのではないでしょうか。
Measurement, Evaluation, and ROI
サクセス・ケース・メソッド
効果測定は例年大きな注目を集めていますが、実際に測定を実施することの難しさなどがこれまでも議論されてきました。そうした背景から、近年は、より現実的で効果のある測定の方法論への関心度が高いといえます。
たとえば、Robert Brinkerhoff氏が提唱している「サクセス・ケース・メソッド」などが挙げられます。この手法は、受講者に簡単な質問をして、実際に効果をあげた人を見つけ、なぜ効果を出すことができたかを明らかにし、組織のパフォーマンス改善を推進するために、マネジャーがレバレッジとして活用できる反復可能な要因とプラクティスを特定することで、ビジネスケースを作るという方法として、昨年紹介されていました。
今年も同氏は、「W301:Training Impact Evaluation That Senior Managers Believe and Use」というセッションを行います。また、事例としては、「W119:Using Evaluation to Drive Impact of Talent Development at VELUX」では、VELUX社がサクセス・ケース・メソッドで効果測定を行った事例が紹介されますので、具体的な効果測定の事例を知りたいという人にはお勧めのセッションといえます。
その他にも、効果測定の分野のパイオニアであるDonald Kirkpatrick氏(「TU102:Evaluating Training Programs:The Four Levels」)、またJack Phillips氏(「M303:Show the Impact of Learning and Development:Techniques to Isolate the Effects of Programs」)の2人もショーケース・スピーカーとして登場しますので、期待したいところです。
Performance Improvement
パフォーマンス・コンサルティング2.0
パフォーマンス・コンサルティングは、研修の提供者から脱却し、事業・経営ニーズを満たすための手段として、特に人的な側面から介入を行う手法として、1990年代から研究・実践が行われてきましたが、そのあり方も少しずつ変化してきています。
今年は、パフォーマンス・コンサルティングのパイオニアであるDana Robinson氏が、「SU202:Performance Consulting 2.0:What's the Same and What's Different?」の中で、パフォーマンス・コンサルティングの15年間を振り返り、15年前と今では何が変わったかを明らかにし、未来のパフォーマンス・コンサルタントに求められる役割について考えます。
パフォーマンス・コンサルティング2.0という言葉が用いられているのが興味深いです。
また、「TU121:HPI in Love With Informal Learning:Four Funerals and a Wedding?」や「W323:How Social Networking Impacts Training and Performance:A Case Study」では、近年注目度の高いインフォーマル・ラーニングやソーシャル・ネットワークをHPIにおけるインターベンション(介入策)として捉え、融合を図ろうとしている意図が見受けられます。
また、「W319:Color Me Red:Training Program as Brand Assets」では、トレーニングを単なるアクティビティとして捉えるのではなく、組織のメッセージと人々とのリンクを図り、組織をブランディングする機会として活用することの重要性を訴えています。このようなパフォーマンス・コンサルティングのあり方の変化についても着目してみたいと思います。
事例の紹介
日本では、まだパフォーマンス・コンサルティングはなじみの薄い言葉かもしれませんが、近年関心度も高まってきています。そこで、この分野で先行する企業や人々の取り組みに目を向け、長年に渡る取り組みから蓄積されたナレッジに注目するのも面白いかもしれません。
たとえば、「M220:Performance Improvement the Coast Guard Way」では、パフォーマンス・インプルーブメントを20年間に渡って実践してきたCoast Guardが、その成果や成功要因について報告を行います。また、「W322:West Meets East:Human Performance Improvement in Asia」では、株式会社インストラクショナル・デザインの中原孝子氏らが、HPIのアジアでの適応可能性や、導入する際のポイントについて紹介します。
これから自組織でパフォーマンス・コンサルティングやHPIの導入を図ろうと考えている人たちには特にお勧めのセッションと言えます。
Personal and Professional Effectiveness
このカテゴリーでは、例年職業人としての個人を啓発するセッションが数多く行われています。テーマもワーク・ライフ・バランスからコーチングまで多岐に渡り、様々なツールやティップスを紹介するセッションが多く存在していますので、自身のニーズに合ったセッションに参加してみて、個人の学習機会としてみることをお勧めします。
2.ASTD2008の基調講演スピーカーの紹介(ASTD2008公式ホームページより抜粋)
マルコム・グラッドウェル(Malcom Gladwell):「Blink」「Tipping Point」の著者
マルコム・グラッドウェルは、心理学、社会学、そして神経学における画期的なリサーチから価値を生み出し、それをビジネスに応用する類まれな才能を有しています。
2005年に、タイム・マガジン誌は、マルコムを100人の最も影響力のある人々の一人として選びました。彼は、ニューヨーク・タイムズのNo.1ベストセラーになった『Tipping Point』と『Blink』の著者でもあります。
『Tipping Point』でマルコムは、私たちの日常のボキャブラリーに「ティッピング・ポイント」というコンセプトを埋め込み、組織内の変化はなぜ、そしてどのように起こるのか、またどうしたらポジティブな行動やアイデアを伝播することができるのかを理解する新しいツールを与えました。
また『Blink』では、第一印象、つまり私たちが、無意識に、そして直感的に行っている判断について分析しています。彼は、私たちのその判断をいかに成功に結びつけることができるかの重要な側面を研究しているのです。現在彼は、現在はニューヨーク・マガジンのスタッフ・ライターを務めています。
彼の編集者は、彼の記事を新しいジャンルのストーリーだと称しています。それは、日常にフォーカスが置かれ、個人的、社会的、そして歴史的な資料からなるリサーチと組み合わされたアイデアに富んだ物語です。彼は、以前は、ワシントン・ポストのレポーターを務めていました。
パトリック・レンシオーニ(Patrick Lencioni):マネジメント・コンサルタント
パトリック・レンシオーニは、重役のチーム開発や組織的健康を専門にしたマネジメントのコンサルティング・ファームであるThe Table Groupの創始者であり、社長を務めています。また彼は、「一分間マネジャー」でおなじみのケン・ブランチャードに、「特徴的な次世代のビジネス・シンカー」と称されてきました。
組織やチームに対するレンシオーニの情熱は、彼の書籍や講演、コンサルティングにも注がれてきました。彼は、5冊のビジネス書(ニューヨーク・タイムズ、ウォール・ストリート・ジャーナル、ビジネス・ウィーク、またはUSAトゥディなどで注目され続けている「The Five Dysfunctions of a Team」)の著者でもあります。
「Death by Meeting」を含む彼の成功には、「秀でたエグゼクティブの4つの強迫観念」、「CEO、サイロ(自己中心的な方法)、政治、縄張り争いなどの5つの誘惑」について、そしてごく最近では、2007年8月に出版された「惨めな仕事の3つのサイン」などが挙げられます。
また、レンシオーニの仕事は、フォックス・ニュース、ESPN、またはCNBCといったメディアでも取り上げられてきました。加えて、彼の記事はウォール・ストリート・ジャーナル、ファスト・カンパニー、INCマガジン、USAトゥディ、アントレプレナー、またはハーバード・ビジネス・レビューなどで出版されています。
執筆以外の彼の活動としては、重役を対象としたコンサルティングを提供したり、ワールドクラスの組織に対して講演を行っています。彼がこれまでに話してきた聴衆は、すでに10万人にも及ぶでしょう。彼のサービスを受けている有名なクライアントには、サウスウエスト航空、ニューヨーク・ライフ、マイクロソフト、82ndエアボーン・ディビジョン、チャールズ・シュワブ、ジェネテック、ステープルズ、ヒルトン、HSMグループ、ミリタリー・アカデミー、ウエスト・ポイント、そしてフェデックスなどが含まれます。
コンサルティング・ファームを設立する以前は、Sybase、オラクル、そしてベイン&カンパニーで働いてきました。また2000年から2003年の間、Make-A-Wish Foundation of AmericaのNational Board of Directorsを務めました。
ケイ・コプロビッツ(Kay Koplovitz):USAネットワークの創始者
ケイ・コプロビッツは、USAネットワーク社の創始者であり、テレビの歴史上で女性として初めて放送社の社長に就任しました。ケーブル・テレビや新しいメディアのベンチャーパイオニアである彼女は、ビジョンをもって、観客の誰もが欲しいブロードキャスト・ネットワークに挑み、ケーブル・テレビの出現を導いたのです。
彼女は女性起業家のためのベンチャー・キャピタルに投資したり、デジタル時代の開拓にチャレンジする新しいプログラム製作会社を立ち上げたりするリーダーであり続けています。彼女は、『Bold Women』『Big Ideas』といった書籍を著し、女性の起業家が株によって富を生み出すための情報提供を行ったり、触発したりしています。
また、同氏の講演では、メディアやデジタル革命からベンチャー、未公開株式、企業統治まで幅広いテーマを扱っています。
現在はLiz Claiborne社のチェアマンを務めています。
最近の業績として、コプロビッツは、女性主導で高い成長を成し遂げている企業に投資するためのベンチャー・キャピタルを育てる、行政組織のSpringboard Enterpriseを共同で立ち上げました。最初の6年間で、Springboard社は、新資本として37億ドルを350の企業に投資してきました。彼女はまた、女性のみの重役リーダーたちが率いるBoldcap Venturesと呼ばれるベンチャー・キャピタル・ファンドを共同で創設しました。
Boldcap社は、基本的に、メディア、テクノロジー、そしてヘルスケアの分野における、初期から中期の成長ステージにある会社に投資します。常に先をいくプロの女性として、コプロビッツは、自律したクオリティの高い重役候補のニーズを満たすための調査会社であるThe Director's Councilを共同創立しました。コプロビッツは、その業績により、大統領の任命でNational Women's Business Councilのチェアの一員を務めました(1998-2001)。
コプロビッツがプリンシパルであるコプロビッツ&カンパニー社は、エンターテイメントビジネスを行う会社、スポーツ組織や広告社、卸業者に対して、アドバイスを提供するサービスを行ったり、企業に成長戦略についてのアドバイスを与えたりしています。また、同社は、メディア、テクノロジー、そしてヘルスケアの分野における、初期から中期の成長ステージにある会社に投資します。
コプロビッツは、テレビの世界で初めて広告主のサポートがついた、ケーブル・ネットワーク会社であるUSAネットワークの設立者です。彼女はすべてのスポーツサービス(Madison Square Garden Sports)を提供するUSAネットワークの最初のチェアマン兼CEOとして、1977年に就任以来、1998年の退任まで活躍しました。
在職期間中、彼女の指導により、USAネットワークはケーブル・ネットワークの中で、13年連続ゴールデンタイムの視聴率No.1になりました。また、コプロビッツの指揮のもと、USAネットワークは、SCI FIチャネルを1992年に立ち上げました。それは、Nielsonによる調査によると、視聴率で業界トップクラスのチャネルであり、世界中で1億4千万世帯に配信されました。
1994年の4月に、同氏はUSAネットワーク・インターナショナルを立ち上げ、今では世界中の国々で運営されています。同社は、1998年に45億ドルで売却され、上場会社となりました。
コプロビッツは、現在はLiz Claiborne社のチェアマンを務め、その前は、Instinet、Oracle、Nabisco、General Re、Sun New Mediaの取締役を務めました。彼女は、現在Paley Center for Media、The Central Park Conservancy、The International Tennis Hall of Fameの理事を務めています。また、ミシガン州立大学でコミュニケーションの修士号と、ウィスコンシン大学で科学の学士号を取得し、エマーソン・カレッジ、セント・ジョン大学、そしてミシガン州立大学で名誉博士号を得ています。