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ヒューマンバリューは、1992年からASTD国際会議へ視察ツアーを実施しています。本ホームページには、1998年からの参加報告レポートを掲載しています。
ASTD2010事前レポート
ASTD2010 International Conference & EXPOが、2010年5月16日~19日に米国イリノイ州シカゴにて開催されます。このコンファレンスは、職場における学習・訓練・開発・パフォーマンスに関する世界最大の会員制組織であるASTDが毎年開催しているものです。
このコンファレンスでは、世界中から集った先駆的企業や教育機関・行政体のリーダーたちが、現在直面している諸問題にどのように取り組んでいるかを企業の枠を越えて学び合います。世界における人材開発の最新動向に触れながら、これからの組織・人材開発のあり方について多くの人との情報交換や課題の探求をしていく最高の場であるといえます。 本レポートでは、ASTD2010公式ホームページに掲載されている内容をもとに、今年のコンファレンスではどのようなことがテーマになるのか、どのような人が講演を行うのかといった見所をコンファレンスに先立ってご紹介していきたいと思います。
1. ASTD2010の統一テーマ
ASTDではその年のコンファレンスのテーマを掲げています。昨年行われたASTD2009のテーマは「Learning Engagement(ラーニング・エンゲージメント)」でした。このテーマは、コンファレンスは「理論」と「実践」が出会い優れた理論からいかにベスト・プラクティスが生まれるかを学ぶ場であり、「公的機関」と「私企業」が出会い相互作用する場であり、「アイデア」と「リアリティ」が出会い学んだアイデアを仕事に戻って活かす場であるなど、多くのものが出会って関係性を深めるということを指しているとのことでした。
ASTS2010のテーマは、「Find Your Value(あなたの価値を見つける)」です。ASTD側にこのテーマに込められた考えを聞いてみると、グローバル・マーケットの中で進化を続けてきているASTDは、ワークプレイス・ラーニング&パフォーマンスに関する最新のトレンドやベスト・プラクティス、専門家によるセッション、最先端のサプライヤーによるエキスポなどに満ちたコンファレンスを、参加者が期待できる場であるという意味合いがあるとのことでした。前回と同様に、様々な学びの場から、自分自身にとっての価値を見つけて欲しいというメッセージとも受け取れるかもしれません。
2.ASTD2010の主要テーマとセッションの見所
昨年までの数年間、ASTDが提示するセッション・トラックのカテゴリーは下表の左欄で固定されていましたが、今期は、右欄のようにカテゴリーが切りなおされています。
| ASTD2009までのカテゴリー | ASTD2010のカテゴリー |
|---|---|
Career Planning and Talent Management |
Developing People |
Designing and Delivering Learning |
Implementing Solutions |
E-Learning |
Learning Design & Facilitation |
Facilitating Organizational Change |
Learning Technologies |
Leadership and Management Development |
Personal Development |
Learning as a Business Strategy |
|
| Measurement, Evaluation, and ROI |
|
Performance Improvement |
|
Personal and Professional Effectiveness |
トラックが変更になった背景についてもASTD側に尋ねてみました。ASTDでは、学習に関する専門家・実践家20名から構成されるコンファレンス・プログラム・アドバイザリー・コミッティーにおいて、参加者からのフィードバックをもとに毎年コンファレンスの振り返りを行っているそうです。そして、今年はコミッティーがフィードバックに基づいて、より参加者が各トラックの中にどういうコンテンツが含まれているのかを理解しやすいように変更したとのことでした。
各トラックに含まれるトピックは以下のように紹介されています。
Developing People(人々の開発)に含まれるトピック
タレント・マネジメント、リーダーシップとマネジメント開発、チームワーク、マルチ世代、文化のトレンドImplementing Solutions(ソリューションの実行)に含まれるトピック
組織変革、パフォーマンス改善、測定と評価、グローバル・トレンドLearning Design & Facilitation(ラーニングデザインとファシリテーション)に含まれるトピック
このトラックは2009年より継続しているトラックです。Learning Technologies(ラーニング・テクノロジー)に含まれるトピック
このトラックも2009年より継続しているトラックです。トピックとしては、Eラーニング、Web2.0、ソーシャル・メディアの活用が含まれます。Personal Development(自己啓発)
このトラックも2009年より継続しているトラックです。トピックとしては、キャリア・プランニング、コミュニケーション・スキル、ビジネスの洞察、コーチングが含まれます。
ラーニングのパラダイム・シフト
ここからは、セッションの見所をテーマ別に紹介していきたいと思います。
昨年開催されたASTD2009においては、ASTD側からInformal Learning(インフォーマル・ラーニング)の重要性を訴えるメッセージが多く発信されていました。この背景には、インターネットの生み出したネットワーク環境と経済環境の変化のスピードが、人材開発の枠組みをはるかに越えたことから、人材開発の専門家たちが、既存のモデルを変えていかなければならないという意図が込められていたように感じられました。また、企業におけるNetGen世代の台頭も、その傾向に拍車をかけていると考えられます。
しかしながら、ASTD2009では、「Web2.0を取り込むことがInformal Learningである」といったやや狭い枠組みでの論調が展開されるなど、社会の変化に人材開発の専門家たちが、まだ対応し切れていない様子も見受けられました。
ASTD2010では、社会の変化に、学習のあり方や学習に携わる人々の役割がどう変化していくかについて、より本質的な議論が行われることが期待されます。セッション概要全体を読み込むと、全体的な文脈として、ラーニングのパラダイム・シフトを起こしていくことを指向しているようにも見受けられました。以下にその兆候をいくつか紹介していきたいと思います。
基調講演やレジェンド・シリーズに見るラーニングの方向性
まず今年のオープニング基調講演者は、米国でベストセラーになった「The Whole New Mind(邦題:ハイ・コンセプト「新しいこと」を考え出す人の時代)」の著者として、日本でも著名なDaniel H. Pink氏が務めます。この著書の中で、同氏は、デザイン、物語、調和、共感、遊び、生きがいといった6つのセンスが、これからの時代に求められると述べています。これらのセンスは、従来の客観主義的な学習の枠組みにはおさまりきらないものであり、新たな学習の枠組みの必要性を想起させます。
また、2人目の基調講演は、「Open Leadership: How Social Technology Can Transform the Way You Lead and Groundswell(邦題:グランズウェル ソーシャルテクノロジーによる企業戦略)」の著者である、Charlene Li氏が務めます。著書の中で、同氏は、ソーシャルテクノロジーによる社会現象を「グランズウェル(大きなうねり)」として捉え、その波を航海するための指針を様々な経験や分析に基づいて示しています。ソーシャルテクノロジーに関する経験豊富なビジネスリーダーから、人材開発の専門家たちが学ぼうとする姿勢が見受けられます。
コンカレント・セッションでは、「SU203:What Every Manager Must Know About Learning 2.0」の中で、レジェンド・スピーカーであるMarc Rosenberg氏が、新たな学習のパラダイムをラーニング2.0というコンセプトで紹介し、全てのレベルの社員が関わりながら、統合的で継続的な学習を生み出すことを提言しようとしています。Eラーニングやナレッジ・マネジメントの権威である同氏ですが、昨年のセッションでは、あまり聴衆が集まっていませんでした。この1年を通して同氏がどのような探求を行い、コンセプトを打ち出してきたかに注目してみたいところです。
ラーニング・デザインの変革
ラーニングのパラダイム・シフトに向けて、ラーニングのデザインを変革していこうとしている企業の事例が多く取り上げられています。 たとえば、「TU209:View From the CLO:Transforming People and Technology Through Lifelong Learning」では、Boeing社の事例が紹介されます。事前の紹介文を見ると、同社では、継続的な学習を通じてのみ、企業が現在、そして未来の働く人々がイノベーションを起こし、問題を解決し、新しい考え方や行動様式を身につけることができるとしています。そして、社員が学習・脱学習・再学習を繰り返すことのできる環境において、革新的、統合的、行動的、継続的な学習にフォーカスすることが世代や文化を越えた学習に社員をエンゲージできると提唱しています。
また、「SU217:Web2.0 and Video:Learners as Teachers at Google」では、Google社のLearning & Developmentチームによる、Web2.0を活用したLearner to Learner(学習者から学習者へ)プログラムの取り組みが紹介されます。学習者が同時に教師にもなる参加型の学習のあり方に注目してみたいところです。
その他でも、興味深いところでは、「SU112:Use of Learning Capsules to Improve Business Performance」では、イスラエルのある割引銀行において、ビデオ学習やソーシャル・ラーニング、リアルタイムサポートなど様々な学習モデルによる学習機会を詰め込んだラーニング・カプセルというアプローチの実践例を紹介しています。
こうした取り組みを裏付けるように、「SU303:Yes, You Can Guarantee Business Impact from Training!」では、Success Case Methodの提唱者であり、ROIの権威であるRobert Brinkerhoff氏が、より全組織的で、フォーカスし、シニアリーダーやマネジャー、人材開発の専門家、社員などのステークホルダーを巻き込んだホールシステム的な学習プロセスの構築について、豊富な企業事例を交えながら述べられることになりそうです。
各企業の実践例の紹介文を見ると、学習をデザインする観点として、時間軸やステークホルダーの軸を広げて、より統合的・継続的な学習を実現していこうとする傾向が見受けられます。こうした傾向は、現実社会に対応すべく変革が行われた結果として生み出されたものが多いと考えられ、コンセプトの議論以上に注目していきたいと思います。
ラーニング・トランスファー
上述したラーニングのデザインにおいては、ラーニングを研修などのイベントとして捉えるのではなく、リアルワークへと学習の範囲を広げていこうとする意識が見受けられました。そうした傾向を反映してか、セッションの紹介文には、「ラーニング・トランスファー(学習の移行)」というキーワードが目立ちました。たとえば、「M204:Learning Transfer Guaranteed:Creating the New Finish Line of Learning」や「SU218:Transfer That Training! Sure-Fire Steps to Ensure Great ROI for Your Courses」「TU216:Solving the Knowledge-Transfer Problem:12 Practical Strategies」のようにセッションのタイトルにトランスファーという言葉がつけられているものもあれば、セッションの紹介文の中でラーニング・トランスファーについて述べているものも数多くありました。ラーニング・トランスファーという言葉自体は決して新しいものではありませんが、リアルワークを通してラーニングとパフォーマンスをいかにリンクさせていくかといった戦略に、より焦点が当てられているものとも考えられます。
そうした背景もあってか、セッションの中には、研修などのラーニングのイベント後にいかに学習を促進させていくかといったことにフォーカスを当てたセッションも見受けられました。たとえば、「M315:Accelerating Leadership Development:Innovations in Action Learning」では、アクションラーニングについてのパネルディスカッションが行われます。その中では、アクションラーニングの重要性やリーダーシップ開発を促進する上で重要な側面は何か、またどんな革新的なテクニックが昨今のアクションラーニングに付け加えられたか、AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)のような方法論がどのようにアクションラーニングを改善したかといったことについて、議論がなされる予定です。
コラボレーションやネットワークからの学習
また、知識やスキルの習得のみならず、人々との関係性を深めていくことを指向したセッションも数多く見受けられます。たとえば、「SU204:Mastering Professional Networking:Turning Relationship Into Lifelong Assets」では、世界銀行のシニア・ラーニング・オフィサーであるNeusa Hirota氏が、現在はインテリジェンス以上に社会的な関係性を築いていくことが人々の人生やキャリアにおいて大切であるという考え方を提唱し、そうしたネットワークをいかに築いていけるかについて紹介するようです。知的資本に加えて、関係資本を重視していこうという指向が見受けられます。
また、コラボレーションという言葉もセッション概要の中でよく見受けられました。たとえば、「SU106:Finding the Thread to Tailor Your Collaborative Learning Community」では、Metropolitan Pier and Exposition Authority'sにおける、コラボレイティブ・ラーニング・モデルという学習モデルが提唱され、社員やパートナー、サプライヤー、テナントなどのステークホルダーたちからなるラーニング・コミュニティによる学習の事例が報告されるようです。また、「W106:From Knowledge Hoarding to Collaboration:New Employees Lead the Way」では、Defense Intelligence Agencyが、いかにコラボレーションのカルチャーを醸成しようとしているかについての紹介が行われます。
こうした一連のセッションからも学習の枠組みが、客観主義的なものから、社会構成主義的なものへとシフトしようとしていることが伺えるように思います。
遊びの要素
基調講演者のDaniel H. Pink氏は、これから必要になる6つのセンスのうちのひとつに「遊び」を挙げていますが、「遊び」を職場や学習の世界に取り入れていこうとする傾向も見受けられました。たとえば、「M311:Workplace as PlaySpace:Dynamic Engagement for Innovating, Learning and Changing」では、プレッシャーの高い職場を、いかに「プレイスペース」へと変革し、イノベーションや学習、変化を実現していくかについて、報告が行われます。その他にも、「TU111:Using Today's Technology for the Game of Learning」や「W211:Creating a High-Performing Workplace With Games, Social Media, and Virtual Worlds」のように職場や学習にゲーム的な要素を取り入れて高いパフォーマンスを発揮させていくことを指向するセッションも見受けられ、興味深いです。
学習の専門家の役割
こうしたラーニングのパラダイム・シフトが起こる中、人材開発に携わる学習の専門家たちの役割をいかに変えていくことができるかについて考えるセッションもあります。たとえば、「TU105:Developing Learning Professionals for the New World of Learning and Development」では、サンディエゴ州立大学のAllison Rossett教授が、環境の変化が、学習の専門家たちにどのような機会とチャレンジを与えているかについて、具体的な事例を取り上げながら紹介していきます。また、「TU320:The 2020 Workplace:How the Socila Web Will Change How We Learn」ではSun Microsystems社のCEOとFuture Workplace社のSenior Partnerから、100以上の企業への調査に基づいて導き出された2020年の職場や学習のあり方が報告されるようです。
その他にも、インフォーマル・ラーニングやソーシャル・メディアに関するパネル・ディスカッションも行われ、様々な議論が交わされそうです。
以上、ここまでラーニングのパラダイム・シフトに関連しそうなセッションとその傾向をお伝えしてきました。こうしたセッションに参加することを通して、今後の学習のあり方がどういう方向に進むのかを思考する機会にしてみてもいいかもしれません。
リーダーシップ開発
今年も例年同様に、リーダーシップ開発についても多くのセッションが開催されます。以下にその傾向を示してみたいと思います。
グローバル・リーダーシップ開発
昨今のASTDでは、グローバルでのリーダーシップ開発の展開事例が数多く報告されるようになって来ましたが、今年もその傾向は続いているようです。例えば、「M111:Synchronizing Leadership Development at UPS with the Demands of Global Growth」では、UPS社の事例が紹介されます。同社では、グローバルにビジネスが展開される中で、それまでのリーダーシップ開発プログラムでは40%の人々にしか必要なプログラムを提供できていないという状況から、プログラムの再デザインを行いました。そのプロセスにおける同社のチャレンジや、タレント・マネジメント戦略や企業文化変革といったテーマといかに統合をかけたのかといったことに注目してみたいところです。
また、「TU213:Aligning Leadership Development with Global Strategy」では、Bristol-Myers Squibb社が、伝統的な医薬品メーカーから次世代のBioPharma(生物薬剤)企業へと変革する中で、いかにGMレベルのリーダーシップ開発をサポートしていったかという事例が報告されます。同じく「M316:Global Leadership Development:Best Practices and Top 10 Strategies」では、AMA(American Management Association)から、最新のグローバル・リーダーシップ開発の研究が報告されるとともに、Boston Scientific Corporationでのグローバル・リーダーシップ開発で採用された10の戦略について紹介がなされます。
その他にも、「M117:Designing Mentoring Programs That Positively Affect Productivity and Engagement」ではDell社におけるグローバルでのメンタリングプログラムが紹介されたり、「M317:Inside Intel:Creating and Implementing a Global Development Program」ではIntel社の事例が報告されるなど、グローバル企業のリーダーシップ開発のあり方に注目してみたいと思います。
リーダーの生き方
リーダーとして何を学ぶかといったときに、何をするか、あるいはさせるかというDoではなく、リーダーとしてどうあるかというBeを学ぶ方向に数年前からシフトしてきました。今年もその傾向は見受けられるようです。特に、リーダー自身が大切にしているバリューをどう「生きるか」ということを取り扱ったセッションがいくつかあります。たとえば、「SU219:Ethical Leadership:A Global Challenge?」では、先行きが見えず、不安定な社会状況の中で、リーダーに必要なのは倫理的な行動であり、リーダー自身が大切にしているバリューを特定し、周囲と共有し、そのバリューを日々生きていることが信頼を生み出すといった内容が話されます。
また、「SU114:Driving Culture Change:Integrating Mission and Values Into People Process」では、Time Warner Cable社の事例が報告されます。同社では、2009年にTime Warnerから離れ、新たにミッションとバリューを創り直しました。同社の全ての働く人々がバリューを生きることを目指したCulture Committeeの取り組みが共有されます。その他にも、「TU201:Bringing Love to Leadership:Servant Leadership in Action at Southwest Airlines」では、レジェンド・スピーカーのKen Blanchard氏が、サウスウエスト航空を例に取り上げ、サーバント・リーダーシップについて語ります。「リーダーシップは『愛について』ではなく、『愛』そのものである」と述べる同氏のストーリーテリングに注目してみたいと思います。
また、リーダーシップ開発の修飾語に「Total」や「Holistic」のような「全体的」というニュアンスを含む言葉が多く含まれている傾向がセッション概要の中からは見受けられました。たとえば、「SU308:Total Leadership Fitness:Cross Training for Results」や「M106:Transforming FDIC's Leadership Development:A Holistic Leadership Approach」などのセッションが挙げられます。またタイトルには直接含まれていなくても、紹介文の中にHolisticという言葉が入っているセッションもいくつか見受けられました。リーダーシップ開発において、部分的なスキル開発を行うというよりも、より全人格的な開発を行っていこうとする傾向があるようにも考えられ、実際のセッションで探求してみたいところです。
モチベーション
リーダーシップ開発の枠組みだけではないかもしれませんが、今回のコンファレンスでは、モチベーションについてもフォーカスがあたりそうです。上述したオープニングの基調講演者であるDaniel Pink氏は、最新の著書「Drive: The Surprising Truth About What Motivates Us」の中で、何が私たちをモチベートするのかについて、40年間に渡る行動科学研究のデータに基づいた見解を述べ、パフォーマンスやモチベーションに関する人々の見方を変えようとしています。同氏がモチベーションについてどのような切り口で語るのか、基調講演に注目してみたいところです。
また、「SU100:MOJO:Finding Meaning and Happiness at Work and at Home」では、レジェンド・スピーカーのMarshall Goldsmith氏が、提唱する「MOJO」というコンセプトや研究結果を昨年に続いて紹介します。セッション概要によると、MOJOとは、自分が今行っていることへのポジティブなスピリットであり、自身の内側から外側へと発せられるものであるとのことです。
その他にも、「SU105:Bloom! What Superstars Do Differently and How You Can Do the Same」では、スーパースターと呼ばれるようなハイ・パフォーマーがどこに特徴があるのかについて、特に内的モチベーションの観点から、サーベイに基づいた仮説が紹介されるようです。
このようなインサイド・アウト的なアプローチへの関心の高まりにある背景についても探求してみたいところです。
NPOでのリーダーシップ開発
企業のみならず、NPOにおけるリーダーシップ開発を取り扱ったセッションも増えてきています。興味深いところでは、「TU113:Leadership Academy:Making a Lasting Impact in the Nonprofit Community」では、リーダーシップ開発の世界的権威であるCCL(Center for Creative Leadership)とAmerican Express社が展開するThe Nonprofit Leadership Academyの取り組みが紹介されます。この組織は、NPOの領域におけるリーダー不足を背景に、2008年に立ち上げられた組織であり、CCLがNPOリーダー向けにカリキュラム化されたプログラムを提供し、American Express社が、キャリア開発、ビジネス戦略、カスタマーサービス、ブランドマネジメント、マーケティングなどの専門知識を活かしているとのことです。CCLは昨年の発表の中でも途上国におけるリーダーシップ開発の取り組みを紹介しており、今後のリーダーシップ開発の方向性についても着目してみたいところです。
その他にも、「W216:The IACET Advantage:Rotary Revamps its Training Regimen」では、Rotary Internationalにおけるトレーニング改変の事例が紹介されたり、「SU211:Taking It to the Streets:Training for the Greater Good」では、企業のトレーナーやファシリテーター、インストラクショナル・デザイナーが、コミュニティの中で市民の力を高めるために自分たちの力を活かして貢献していくべきだという提唱が行われるようです。
企業の枠組みを超えたこうした動きが人材開発や組織開発の世界でも起きてくることが予想され、興味深いです。
タレント・マネジメント
ここ数年タレント・マネジメントへのフォーカスが高いASTDですが、今年のセッション概要を見ると、タレント・マネジメントという言葉自体をセッションのタイトルに掲げているセッションは昨年と比較して少なくなっている印象を受けました。仮説になりますが、タレント・マネジメント自体がかなり包括的で広い意味を持った概念なので、タレント・マネジメントの中の個別のテーマを検討しているセッションが増えたのかもしれません。 その中でもタレント・マネジメントの実践例を紹介しているセッションがいくつかあります。たとえば、「M218:High Maturity Talent Management Practices:Cross Border Insights」ではAccenture社におけるタレント・マネジメントの事例が紹介されます。また、「TU117:Talent Management According to Shakespeare」では、Oracle社のPrincipal Product Strategy ManagerであるJonathan Vinoskey氏が、シェークスピアからタレント・マネジメントが学べることというテーマでセッションを行います。
キャリア開発とエンゲージメント
キャリア開発やエンゲージメントを扱うセッションも複数行われます。「M201:Developing Careers for Evolving Workplaces:Engaging the Kept-On Workforce」では、レジェンド・スピーカーであるBeverly Kaye氏が、エンゲージメントとキャリア開発について話します。また、「W104:Employee Engagement:The Real Diversity and Inclusion Connection」では、Diversity & Inclusionの目的はエンゲージメントにあるという前提に立ち、それらを分けて考えることを再考するべきであると提唱しようとしています。その他にも、「M310:Building a Practice:Pondering the Past, Predicting the Future」では、上述したBeverly Kaye氏に加え、Ann Herrmann-Nehdi氏、Marjorie Blanchard氏、B. Kim Barnes氏、Elaine Biech氏らが、キャリア開発に関するパネル・ディスカッションを行います。キャリア開発の過去を振り返り、未来を予測するというこのセッションに、キャリア開発について関心の高い人は参加してみると良いかもしれません。
人材・組織開発のグローバル化
年々グローバル化が進むASTDですが、今年もその傾向は続きそうです。セッション概要を見ると、かなり多くのセッションが、米国以外の人々によって行われ、また国も、ブラジル、アルゼンチン、サウジアラビア、インド、トルコ、南アフリカ、韓国、日本と多様化してきているようです。日本からは、中原考子氏と丸正生氏は、「W212:Managing Technical Innovation:Practice From Japanese Manufacturing Companies」にて、日本のメーカーにおける技術イノベーションについて紹介したりしています。
多国籍化・グローバル化するプロジェクトにいかに人材・組織開発部門が対応していくかといったセッションも見受けられました。たとえば、「M116:Better Results With No Extra Cash:Motivational Ideas for Global Projects」では、野原裕美氏が、グローバル規模で展開するプロジェクトにおいて、いかに文化や環境が異なるなかで地域差やメンバーのモチベーション、プロジェクトのパフォーマンスを管理するかについて話されます。また「M211:How to Build a Global E-Learning Program With a Global Design Team」や「M212:Designed for the Multinational Learners:Cross Cultural E-Learning」では、グローバルでEラーニングをいかに有効に活用していくかが述べられます。人材・組織開発の動きが国境を越えてつながり始めた今、私たち日本で人材・組織開発に携わるものが今後どうあるべきかについても議論していきたいところです。