用語集

アクションラーニング

個人と集団の学習とイノベーションをコネクトする 第4世代アクションラーニング

アクションラーニングが求められる背景

研修やトレーニングといった学習機会の提供方法に大きな変容が起きつつあります。

これまでは、組織や現場のニーズに対応しながら単発型の研修やトレーニングといった学習機会の提供が多く見受けられました。最近は、日本においても、数ヶ月から1年に及ぶような長期的・連続的な学習機会の提供が増え始めています。

そうした変化が起きつつある背景としては、市場や社会、そしてビジネスの不確実性が高まり、予測不可能な課題に対して、的確に戦略策定ができ、自社に必要な変革を迅速に実行し、実践を通じて学習する組織能力の開発が求められていることがあると考えられます。

従来の集合研修による知識習得、ケーススタディなどは、戦略策定に必要なノウハウを得ることはできますが、戦略を実際に実行するには役に立たないことも多く、これらをクリアする方法として、アクションラーニングが注目されています。

アクションラーニングとは?

最近取り組まれているアクションラーニングは、以下のようなものとして説明することができます。

実際の組織課題に対して、参加者が自ら解決策を考え、実行し、検証し、問題解決を行うことで、個人や組織として学習を行い、組織能力の向上へつなげるプロセスです。

もう少し具体的に説明しますと、現場(=オンサイト)を離れて設定された場(=オフサイト)で、現場での現実的な課題について検討し、解決のための仮説を構築し、それを現場に戻って実践し、また現場を離れた場で検証を行い、新たな解決策を生み出すというサイクルをとおして参加者と組織の学習性を高めながら、組織的成果を生み出すプロセスです。

アクションラーニングを用いる際のねらい

アクションラーニングを用いる際のねらいや目的といったものも多様ですが、これを敢えて大別すれば、以下のように整理できるかもしれません。

1.組織の課題に対して、さまざまな視点から検討し、自らアクションへと展開し、変革をおこし、個人および組織として学習させたい

2.実際に直面している組織的な課題の解決と、その手法・スキル習得を同時に実現することにより、自律的な変革型組織を作り出したい

3.組織の変革と個人の育成を同時に実現したい

4.方向性とプロセスを共有し、互いに知り合うことでメンバー間のネットワークを強めたい

5.組織横断的なテーマを取り扱うことで、視野を広げたい

アクションラーニングの歴史的経緯

アクションラーニングは、欧米では50年以上の歴史があります。また、実践的な方法論というだけでなく、学際的にさまざま分野(教育学、経営学、心理学、社会学)に理論の基礎を置いています。

また、多国籍企業のTOP45のうち、すでに60〜65%の企業で、アクションラーニングが実施されていると言われています。

アクションラーニングの生みの親

イギリスの物理学者レバンス博士がアクションラーニングの生みの親と言われ、1900年代のプラグマティズム哲学者であるジョン・デューイの「あらゆる純粋な教育は、経験を通じて得られる」の主張を具現化したものとも言われています。

デューイは、学問の基礎を教える事に特化した「学問中心主義」を批判し、社会や生活との関連を重視した教育がされるべきと唱え、生活の中における実践の必要性を説きました。その「反省的思考論」のなかで問題解決のプロセスを、

1)問題を感じ取る

2)問題の所在をつきとめる

3)注意深く調べる

4)問題解決のための計画を立てる

5)実践によって確かめる

という5段階で示しました。

アクションラーニングは、この問題解決プロセスに沿った学習機会を構築しようとするものとして捉えることもできます。

クリス・アージリス

1970年代の教育学者であり、組織行動学者であるクリス・アージリスは、「学習と成長意思をもった人間に、成長の機会を与えながら自らも学習し進化する組織」という「組織学習」の概念を提示しました。

そこから、「リフレクション重視型のアクションラーニング(アクション・リフレクション・ラーニング)」 を推奨しました。

ピーター・センゲ / マイケル.J.マーコード

その後、成果につながる「ビジネス成果型」のアクションラーニングとして、 1990 年代からピーター・センゲの「学習する組織」の実践的方法論として活用され、ジョージワシントン大学大学院マイケル.J.マーコード教授がセミナーなどを実施しています。

アクションラーニングの類型

上述のような長い歴史のあるアクションラーニングは、以下のような類型で示すことができます。

第1世代

ケーススタディから学ぶ方式

ケースを用いて疑似体験というアクションを通して学習を起こそうとするものです。

第2世代

リアルな課題:「全社的テーマ」「組織横断的テーマ」 等

ケースではなく、「全社的テーマ」「組織横断的テーマ」といったリアルな課題を取り上げ、これを連続するプロセスの中で学習するものが、第2世代と言われています。

また目的によって、アウトプット重視型とプロセス重視型の運用があります。

アウトプット重視型

経営者に対する、「わが社はこういう戦略や計画をとるべきだ」というようなアウトプットを重視する。

プロセス重視型

自社について考える過程で学ぶことを重視。「将来に向けたビジョンづくり」「新規事業の提案」「他社調査」「製品改善、ビジネスモデルの構築」「マネジメントシステムの改革」「組織文化の変革」「部門横断プロジェクトの実行、事業戦略の再構築」「組織構造の変革」「不振事業の建て直しプランニング」等

第3世代

マルチプル・アクションラーニング

第2世代までは、参加者全員が共通のテーマについてアクションラーニングを行うのに比べ、 第3世代は参加者それぞれの「現場の課題」を持ち寄ってアクションラーニングを行うものです。

大学や大学院が主催し、複数の企業から各々複数名が参加し、各社の課題を探求するといったタイプもあります。

第4世代

一般的には、アクションラーニングは、上述の第3世代までで説明されていますが、私たちは、第3世代を超えるアクションラーニングとして、第4世代のアクションラーニングを実践しています。 この第4世代のアクションラーニングとは

学習者が所属する組織において関係する人々と協働して、変革の仮説を立案し、推進し、検証を行い、実際の変革と集団的学習を起こしていくと同時に、学習者のメタ変革能力とメタ認知能力を高める一連のプロセス

第3世代までのアクションラーニングが、直接の参加者を学習対象者として位置づけるのに対して、第4世代のアクションラーニングは直接の参加者だけでなく、その人が所属する組織集団全体を学習対象者として位置づけます。

したがって、仮に部門長がアクションラーニングに参画すると、その部門のメンバーや関係者全体が学習対象者となります。そして、部門長がファシリテーターとなって、実際の業務遂行場面の中で、関係する人々の学習と部門全体の変革を、仲間たちと協働しながら推進していきます。

したがって、アクションラーニングの参加者が15名だったとしても、実際に学習機会を活用しながら変革を推進する人々は、場合によって1000名を超える場合もあります。

加えて、アクションラーニングにおいて、オフサイトに集う直接の参加者たちは、直接参加している者同士の相互作用を通して、メタ変革能力とメタ認知能力を高めていきます。

メタ能力とは、個別の事象に対応した能力ではなく、より深い能力であり、メタ変革能力とは、どこに行っても、どんな状況においても、変革を協働で推進できる能力と捉えることができます。

同様にメタ認知能力は、今の状況を正しく認知する能力を超えた、自分や集団としての状況や課題に対する認知を的確に修正したり、認知枠を柔軟に変えたりしていく能力と捉えることができます。

ヒューマンバリューでは、複数の企業や組織において、数ヶ月から数年にわたる第4世代のアクションラーニングを実践しており、社会的なイノベーションにつながる事例もいくつか現れつつあります。


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