用語集

仮説の保留

HVDリポートVol.1 No.8より

オープンな心で相手の話を聞くことを妨げているものは何でしょう? 私たちは、自分のもっている仮説と異なる意見に対しては心を閉ざしがちなために、相手の言うことに耳を貸さないという傾向があります。そればかりか、自分自身の思考過程の中においてすら、最初にもっていた仮説(自分でよく考えて構築した仮説よりも、他者の仮説を無意識的に受け入れたり、他者から教え込まれたりした仮説が多い)と異な る考えが浮かんできたときに、それを退ける場合があります。

自分が仮説をもっているとき、それを守ろうとして感情が高ぶることがありますが、もしその仮説が本当に正しいのであれば、必死になってそれを主張しなくてもその正しさに変わりはありません。また仮にそれが正しいものでなければ、正しくないものを守ろうとして感情的になることは無意味です。自分の支持する仮説にしがみつくことなく、それを目の前に吊しておくという態度を、ダイアログでは、「仮説を保留する」と 表現しています。仮説を保留することによって、異なった見解をもった人々の間の対立的なエネルギーが、共に真実を探求していくエネルギーへと昇華されるという現象が起こります。ディスカッションが、参加者が増えるほど、総和以下の結果しか生み出せないのに対して、ダイアログは、話し合いの参加者全体の思考能力を、個々人の能力の総和以上に高めようとする話し合いであるとも言えます。

そして、ダイアログのポイントの1つは、自分の仮説も含めたすべての仮説を保留した状態で、自分自身の内面と相手の内面に深く耳を傾けることにあります。私たちがそのような態度でいるとき、物事に対する深い洞察が生まれやすい「場」が形成されるのです。私たちは、自分の考えを口にしたとき、相手が自分の言葉をよく聞いてくれれば、たとえその意見に反対されても、自分が人間として受け入れられていることを感じます。そ れが職場であれば、そのような職場で働くことに喜びを覚えます。その結果、職場に対するコミットメントや、私たちの創造性も高まるのです。

(1998/9/15)


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