用語集

動的情報

動的情報

HVDリポートVol1. No.8(1998/9/1)より

一方の動的情報とは、関係性の中から生まれてくる情報です。それは、1つの情報と別の情報を組み合わせたり、相乗効果を発することで新たな価値を生み出す情報のことです。動的情報は固定的、静的なものではなく、常に変化し新しい価値を生み出していく情報、つまり、創発の結果生み出される情報であると言えます。そこでは情報を「提供する」「提供される」という概念はなくなり、限られた資源を求めて争うといった発想からも離れていくものです。
変化の激しい時代に、静的な情報はすぐに陳腐化してしまいます。仮に有効と思われる情報をもっていても、それを自分の中に囲っていては、生み出される価値は限られています。それよりも自分のもっている情報をオープンにし、多くの関係性を生み出すことで、現在進行形で価値のある情報が生み出されていきます。インターネットの発展は、まさに動的情報が生み出されるプロセスであるとも言えるでしょう。現 在の社会で大切なのは、動的情報をいかに創り出すかにあるのです。
企業においても、優れた自社製品という1つの情報をもっていても、刻々変化する市場環境、ユーザーニーズといった情報と組み合わせることで新たな動的情報を創出しなくては、本当の価値を生み出すことはできないでしょう。また、社内でトップがよいアイデアを思いついただけでは、価値を生み出すことはありません。現場との相互作用の中で動的な情報として活用されることではじめて価値が生み出されるのです。
他の企業がやっている経営手法を形だけ取り入れてもうまくいかないことが多いのは、現場との創発を起こして動的情報を生み出していないことがその原因と言えます。例えば成果主義、年俸制やストックオプション制、早期選抜制度などの新しい人事制度を導入するとします。こうした制度は、教科書やマニュアルにあるような出来上がったもの、つまり静的情報と言えます。これを上から決められたルールとして会社全体に守ってもらおうとしてもう まくいかないことは目に見えています。静的な情報のままで導入するのではなく、開発や導入、運用段階において現場との創発を起こし、そこから動的な情報が生み出されることではじめてうまくいくのです。

動的情報を生み出すには

こうした動的情報が生まれる条件として必要になるのが「バルネラビリティ」と「自発性」です。バルネラビリティとは「赤子のように無防備にさらけ出すこと」を意味します。従来情報については、開示すると攻撃されたり、自分が損をするのでできるだけ公開せずに隠しておくという考え方が当たり前となっていました。しかし、現在では静的情報の耐用期間が短くなる一方で、常に情報、知識を更新し、生み出し続けることが重要になっています。そのためには、バルネラビリティにより周 囲との緊密な関係性を構築することが不可欠と言えます。
もう1つは自発性です。先程の例のように新しい人事制度を導入しようとしても、「今後はこのやり方に従って進めてください」と提示するだけでは、現場のコミットメントが得られず、結局は形骸化していくか、上からの命令に従う「他律」の世界から抜け出すことはできません。そこで、現場から「この新しいやり方は我々が検討し、創り上げていったのだ。だから本気になって取り組んで、本当に役に立つものに進化させていくのだ」と いう声が上がるようにしていかなければなりません。つまり、動的情報は全員が自発的に取り組むことによって生み出されるものです。創発を引き起こしていくには、ただ単に皆が自分がもっている情報をオープンにすればよいというのではなく、全員が自発的に、自分の意思をもって関わっていくことが必要になるのです。

(1998/9/15)


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