創発とは何か
ここでは、組織の中で創発を引き起こすことの重要性について触れながら、それを短期間で実践する体制づくりとその運営方法を紹介していきたいと思います。
ここ数年で、書店の棚には「複雑系」というタイトルの付いた書籍が増えてきています。複雑系は、あらゆる局面でカオス状況にある現代社会において、解決の糸口を見つける際の新しい考え方として注目されています。この「複雑系」のキーワードとなる言葉が「創発(emergence)」です。「創発」という言葉は、物理学、生物学、情報科学、社会学、経営学など幅広い分野で用いられています。「創発」の概念は、それぞれの分野で異なる解釈や活用の方法があるでしょうが、共通する意味合いを拾ってみるとおおむね次のようになります。「全体を構成する個別要素の相互作用によって予期しなかった全体的な特性が現れること。そしてその特性が各要素に再び影響を与える。こうした全体と個との相互作用が繰り返されること。」この中で「予期しなかった」とは、あらかじめ個別要素を組み合わせることで生まれる全体の特性以外に、相互作用によって新たな特性が生まれることを指します。
ビジネスにおける創発の例として放送大学の教授森谷正規氏は、著作『複雑系で読む日本の産業大転換』(毎日新聞社)の中で、総合電器メーカーの創発による日本の電子機器産業の躍進を挙げています。そこでは十数社の総合電器メーカーが、売上高とシェアで互いにしのぎを削り相互作用を起こす中で、個々のメーカーの能力の総和を超えるような日本の量産電子機器産業全体の発展をもたらしました。そして、全体の発展が再び各メーカーの発展を助長するといった形で各企業、産業界全体が創発を起こしながら発展しました。
(1998/9/15)