用語集

現場を巻き込み、創発を起こす3つの条件

ビジョンの浸透を図る、学習システムを開発し導入する、新しい制度を取り入れるといった際に、現場にコミットメントしてもらうには、メンバーそれぞれが自律的積極的行動を取れる場が提供されていなければなりません。こうした行動を取るためには、組織の中に次のような3つの条件が環境として整えられている必要があります。

  1. 情報が常にオープンにされており、新しいものを誰でもみることができる。
  2. いつでも、誰でも自由に意見を言うことができ、影響を与える余地がある(行動を起こしても無視されない)
  3. 現場からの意見や行動に対して、迅速に、ポジティブなフィードバックが必ず行われる

現場のメンバーとの創発を生み出すには、互いがよく理解し合うことが大切です。そこで、こちらの手の内を現場に見せるという意味でも、HRD担当側の情報をきちんと開示すべきでしょう。きっちりと固まっていなくてもディスカッションをするくらいの気持ちで次々と開示していくことが必要です。決定事項だけを開示していては、メンバーからの意見は出てきません。
また、自由に意見が言えたり、アクションを起こす機会が用意されることで、コミットメントが高まり、自律的行動を取る人が増えるのはもちろんのこと、そうした行動を取らない人も「自分の選択でそうしたのだ」という自律性が強化されることになります。
そして、現場のメンバーからの意見やアクションには、必ず迅速にフィードバックをすることが重要です。しかもそれは、否定的・消極的なものではなく、建設的で前向きなものでなければなりません。ポジティブなフィードバックを返していくことで、現場のメンバーの自律的行動を促進し、目の前の課題を自分たちの問題と考え、主体性とコミットメントを高めることができるのです。


短期間で巻き込む体制

次に、この3つの条件の元に、短期間にしかも効果的に現場を巻き込み、創発を引き起こすITの運用体制について紹介したいと思います。それは、以下のような複数のチームの拡張型です。この体制を取ってイントラネットやグループウェアといったシステムを活用することで、十分な検討とスピーディーな意思決定を両立させることもできます。


図1:短期間で現場を巻き込む体制(例)

1.事務局
事務局は、専任のメンバーで構成します。プロジェクトの運営が役割となります。具体的には、メールの発信や受信管理、ホームページ運営、ミーティング場所の確保など、事務的な連絡や手続きを行います。 プロジェクトの大きさや課題にもよりますが1、2名が必要です。

2.コア・チーム

コアチーム(プロジェクトチーム)は、事務局を兼ねる専任のメンバーと現場代表者(兼任者)で構成します。兼任者でもプロジェクトの仕事が職務の1つと位置づけられます。具体的には、プロジェクトの課題に関する内容の素案作成、メールなどで寄せられた意見や質問への返事、ホームページに公開する情報内容制作など、プロジェクトで創出される内容の制作が役割です。
プロジェクトの中核的メンバーであり、3〜5名程度で構成されます。

3.カウンシル

プロジェクトの課題に関係する部署の代表がメンバーとして加わります。カウンシルのメンバーは、現場(ライン)の意見を広く伝えるための代表者となります。開発プロジェクトとしての意思決定事項は、すべてカウンシルで審議し、決定しますが、メンバーが実際に集まるだけではなく、メールなどを活用してバーチャルな審議・検討も行います。
プロジェクトの規模にもよりますが、人数的には15〜40名で構成されます。プロジェクトの課題に影響を受けるすべての部署の代表者が入っている必要があります。
この意思決定方式を採用することで、現場のメンバー全員が「現場(自分たち)が決めた」という認識をもてるようになります。

4.ボランティア・チーム

ボランティア・チームは、現場の生の声やノウハウ、ナレッジが必要なときに、テーマに応じて、それにふさわしい現場の代表者が集まるチームです。
例えば、営業のコンピテンシーを明らかにするには、現場のハイパフォーマー(定常的に高い成果を出している人)と共に検討することが必要です。また、現状を調べるにも、現場に対してヒアリングやインタビューを行ったり、オブザーブをすることなどが必要になります。こういった現場の協力を仰ぐときに、力を発揮するのがボランティア・チームです。ボランティア・チームのメンバーは、コア・チームで適任者を推薦し、最終的にカウンシルで決定します。つまり、現場の代表者たちがボランティア・チームのメンバーを選任するというプロセスを取るようにします。そして、選定されたメンバーには、カウンシルを通じて協力を要請します。
こうして現場主体でボランティア・チームを形成し、皆で一緒に創っていくという機運を高め、現場中心であるという姿勢を一貫して取り続けます。また、現場から検討すべきテーマが投げかけられたときは、投げかけてくれた人を巻き込み、その他にも一緒に検討してくれる人を募集し、ボランティア・チームを結成します。このような取り組みが浸透すると、次第に現場サイドから検討したいという申し出が出てく るようになります。そうした申し出があったときは、コア・チームは最大限のサポートを行い、できるかぎりボランティア・チームの取り組みを促進するようにします。
こうした活動によって、現場の自律性を高め、コミットメントを生み出し、真に現場中心の創発を生み出す体制が実現するのです。

5.現場

ボランティア・チームやカウンシルを設置すれば、それで十分というわけではありません。参加しているのは一部の代表者で、「現場は蚊帳の外」といった状況を生み出さないようにすることが必要です。具体的には、現場がホームページ等を通じて常に情報を入手することができる、またメールを通じていつでも意見が言える、さらに意見や質問に対するフィードバックを得ることができるといった状態を作り出します。そうして、現場全体もプロジェクトの中に位置づけるようにします。


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