用語集

仕事の三角形

HVDリポートVol.1 No.3より

多くの人は、「仕事」とは何かを“すること”――たとえば、「製品やサービスを提供する」「何らかの目標を達成する」など、すなわち、「パフォーマンス」のことだと考えています。しかし、「仕事=パフォーマンス」と定義づけるのは、特に現代のビジネス環境において、あまりにも限定的であり、仕事の一側面を捉えているに過ぎません。

仕事の要素としては、パフォーマンス以外に次の2つのものが考えられます。1つは「体験」です。仕事をしているとき、私たちは惨めさから満足に至るまで、さまざまな感情を体験します。すなわち、仕事をするときにどのように感じているかということです。

そして、もう1つは「学習」です。子供たちが学校での学習や遊びを通じて学ぶように、大人は仕事をすることによって学習することができます。

ここで、仕事を考える上でのキーとなる「パフォーマンス」「体験」「学習」について整理してみましょう。

仕事中の体験が、まったく退屈であったり、ストレスばかりを感じるものであれば、学習もパフォーマンスも低迷します。また、情報化が進んだ現代の社会では、学習を怠れば、パフォーマンスは時間と共に低下します。このように、パフォーマンスと体験と学習は相互依存の関係にあるのです。この3つの関係は、次のような「仕事の三角形」として描くことができます。ここで重要なのは、三角形のバランスをとるということです。

仕事の三角形

競争の激しいビジネスの世界においては、体験や学習よりもパフォーマンスが重視されていることを理解するのは簡単です。しかし、体験や学習を犠牲にしてパフォーマンスを追求すれば、結果的にパフォーマンス自体が低下してしまいます。しかも、このようなときマネジャーたちは、パフォーマンスによりいっそうの圧力をかける場合が多いので、学習や体験を高めるための時間や資源が、ますます削られてしまうのです。

それでは、パフォーマンス重視の傾向とは、実際にどのような形で現れるでしょうか?平均的なセールスマネージャーを例に取ってみましょう。彼の話は、普通、パフォーマンスの話題が中心になります。「何本電話をかけたか?」「そのうち手応えがあったのは何件か?」「来週の予定はどうか?」などが話の大半を占めます。

一方、本気で自分のチームの成長に取り組み、そして自分自身の学習にもコミットしているマネジャーはどうでしょう? 彼は次のような質問もするかもしれません。「それまで君が知らなかったことで、新しくお客さまから学んだことが何かあったかい?――お客さまがどういったことを避け、どのようなニーズをもっているか、われわれの商品をどう思っているのか、あるいは、われわれの競争相手に比べてどうだとか、何でもいいんだ。」「新しいプロモーションに、お客さまはどのような反応を示しているかい?」「あなた自身のセールススキルに関して、何かわかったことがありますか?」「われわれの競争相手は、今どんなことをやっていますか?」「あなたは、来週はどんなことを知りたいと思っていますか?」「あなたが学んだことで、チームメンバーの助けになるようなことが何かありましたか?」

どちらのマネジャーをもったメンバーが、個々の学習能力を高めることができるか、そして、仕事に対してコミットメントし、より高いフォーマンスを生み出すことができるかは明らかなのではないでしょうか。
(この内容は、1997年9月にワシントンで行われた「システム思考会議」におけるティモシー=ゴールウェイ氏と筆者との対談と、"The Systems Thinker"(米国ペガサス社刊)の1997年8月号に掲載された"The Inner Game of Work: Building Capability in the Workplace"(仕事のインナーゲーム:職場における能力構築)という記事の一部の要約が中心になっています。)

(1998/4/1)


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