導入した人事諸施策がうまくいかない原因
「人事制度と能力開発制度をせっかく新しくしたのに、うまく回っていない」という声がよく聞こえてきます。個々の制度をみると、比較的完成度が高いのに、実態としてうまくいっていないということが起きています。
こうしたことをもたらしている原因として、導入のプロセスにおける問題が考えられます。
これまで日本の企業における人的資源管理にまつわる多くの制度は、個々の制度の完成度を個別に高める方向で、暫時バラバラに導入されてきたという経緯があります。部門間の連携も取れず、他の制度との整合性がないだけでなく、経営者のはっきりとした方針も示されず従業員の認識もないまま、新しさを求めて導入してしまう制度が多いようです。そのため、せっかくの制度が根づかず、将来の布石がつぶされていくのです。
相互作用のあり方に目を向ける
書籍等において成功事例として挙げられている制度は、その個別の良し悪し以上に、他の制度との関係性や整合性といった相互の影響関係のあり方に成功の理由がある場合が多いのです。しかし残念ながら、そうしたことをどのように克服して定着させていったのかについてのコツのようなものは、記事ではうかがいづらいようです。
これまでは全体を部分に切り分けて、各部分が最適化すれば、全体も最適化していましたが、現在はそうした状況にはありません。
これから、人的資源管理を望ましいものとし成果に直結させるには、個々の制度の相互依存関係を捉え、相互作用のあり方に目を向けていくことがきわめて重要となります。
人事哲学の確立が急務
成功している企業に共通する特徴は何かと探してみると、個々の制度が整合しやすくなるような太い串が通っていることが指摘できます。
その重要な串とは、企業としての理念やビジョン、または人事に関する哲学が、建前でなく、本音として確立していることです。それらがあると、個別の制度を検討する際に、共通した価値判断基準に照らして押し進められるため、結果的に一貫した整合性が取れることになります。
また、成功している企業に共通するもう1つの特徴は、そうした理念・ビジョン・哲学の中に、「相互作用」や「共有化」といったものの大切さが含まれていることが多いことです。つまり、役割を分担して相互作用をなくしてしまうのではなく、相互依存的に進めることが重要な価値として示されているのです。
(1998/3/1)