パフォーマンス・コンサルタントの仕事
ここでは、1998年5月31日〜6月4日にわたって、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市において開催されました『ASTD '98(1998年度ASTD国際会議&EXPO)』で特に話題として取り上げられていた「パフォーマンス改善」に関わる動向についてご紹介したいと思います。
パフォーマンス改善に関しては、かなり具体的な技法が明らかになっていましす。そういった技法をHPT(ヒューマン・パフォーマンス・テクノロジー)という言葉で呼ぶのが一般的になりました。このHPTを駆使して仕事をする専門家としてパフォーマンス・コンサルタントが注目されています。
このパフォーマンス・コンサルタントがどのような役割を担い、どのような手段、方法を用いて仕事をするのかを整理すると、パフォーマンス改善の全貌を理解することができると言えます。
『Performance Consulting』という本を1995年に出版してパフォーマンス・コンサルタントという言葉の火付け役になったデイナ・ロビンソン(パートナーズ・イン・チェンジInc.)は、パフォーマンス・アウトプットを記述する方法と、パフォーマンス・コンサルタントにどのような成果が期待されているかを述べると共に、この職務に当たる人々を選出するための基準や必要とされるコンピテンシーの説明を行いました。そもそもパフォーマンスに注目が集まった理由は、学習したものの30%しか実際の仕事には使われていないということが投資効率上問題視されたため、焦点を学習からパフォーマンスにおく必要が出てきたからだと言っていました。
ロビンソンは、パフォーマンス・コンサルティング・プロセスを大きく3つに分けて捉えています。最初の段階が、「パートナーシップを組むこと」、次が「アセスメント」、そして「実行〜パフォーマンスを変える」の3つです。
今年の第1四半期にアンケート調査を行った結果、この3つのプロセスを踏まえて、パフォーマンスの改善や向上に当たっている人の44%が、「パフォーマンス・コンサルタント」という呼称を使っていたそうです。
彼らは、クライアントとパートナーシップをもち、パフォーマンスに関する分析を行い、パフォーマンスを変えていくための仕事をしています。所属している部署は、人事部の下部に位置しているのがほとんどでした。その機能には、ラーニングサービスとコンサルティングサービスの2つがありますが、昨年の調査結果と比較すると、ラーニングサービスの比率が増えており、ラーニングサービスとコンサルティングサービスが約半々になっています。
ロビンソンは、パフォーマンス・コンサルタントの仕事について、クライアントとのパートナーシップの構築が大切であるとし、それもできるだけ上位の人にアプローチしていくことが重要だと言っています。また、求められる役割としては、コーチとしての役割が増えてきており、それに費やす時間は全仕事の20%程度ということです。さらに、アウトプットの計測、特に顧客満足度を徹底して調べることが重要だと述べています。
パフォーマンス・コンサルタントの重要な仕事にアセスメントがあります。アセスメントでは、パフォーマンスを向上させるために必要なものと、パフォーマンスにおける理想と現実のギャップおよび、ギャップが生じる原因を調べます。そこではパワフルな質問をすることがパフォーマンス・コンサルタントの重要な役割だと強調していました。
ロビンソンに限らず、アセスメントにおいてどのような質問をするかということには強い関心がもたれており、ISPI(International Society for Performance Improvement)という団体でも具体的な質問のフレーズを紹介した書籍を出版しています。
ロビンソンは必要なアセスメントの種類として、ギャップアナリシス(何をすべきかと何をしたかのギャップを調べる)、原因・理由の分析、他にラーニングニーズの分析、プロセスのデザイン、パフォーマンスのモデリング、コンピテンシーのモデリングを挙げています。アセスメントに費やす時間は、平均して全体の27%程度とのことです。
パフォーマンス・コンサルタントの担当するパフォーマンス改善のプロジェクト数は、年間平均7プロジェクト程度で、費やす時間は全体の平均25%です。プロジェクトを成功させる上で、パフォーマンス・コンサルタントに求められる役割は、まずは、合意書などでクライアントと自分の役割と責任分担を明確にすること。そして、プロジェクトの進行過程において、それぞれがきちんと役割を果たすためのマネジメントを行う、いわばオーケストラのリーダーのような役割が求められるようになっていると言っています。
残りの時間で行う仕事は、介入、コーチング、インパクトの評価、自分自身の継続的な学習です。参考までにパフォーマンス・コンサルタントの平均年収は、49,000ドル〜73,000ドルだそうです。
またロビンソンは、パフォーマンス・コンサルタントに求められる能力をこれから開発できるものとできないもの(資質)に分けています。開発可能な能力として重要なのは、分析能力と関係構築能力を組み合わせた能力です。その他に、人間を理解する能力、成人教育を行う能力、ヒューマン・パフォーマンス・テクノロジーの重要性についての理解力が必要だと言っています。開発できない、あるいは開発するのが難しいものとしては、行動の柔軟性、主観にとらわれない客観性、自己信頼性、曖昧さに対する耐性(すぐ結論を出さず、忍耐強くいる)の4つを挙げています。この4つは、特にパフォーマンス・コンサルタントだけではなく、これからのビジネスパースンに共通して必要な資質のような印象を受けました。
ロビンソンの説明を通して、米国の企業内では「パフォーマンス・コンサルタント」という職種やサービス部門が、すでに社内に定着してきているということを痛感しました。今後日本においても、同じような動きが起きてくることが予測されます。
(1998/7/2)



