用語集

「パフォーマンス・モメンタム」の罠

HVDリポートVol.1 No.4より

学習や経験を犠牲にしてまでパフォーマンスのみが強調されるような仕事の定義を行うことは、仕事に携わる人々の視野を狭め、仕事に対して十分に意識を働かせることやフォーカスすることを妨げます。ティモシー=ゴールウェイ氏は、この種の無意識の状態を「パフォーマンス・モメンタム」と呼んでいます。「パフォーマンス・モメンタム」に陥ると、パフォーマンスを生み出す行動をとってはいるものの、それが自分にとって一番プライオリティーの高い事柄とどう関わっているのかを十分意識していないといった事態が起こります。テニスのゲームに熱中しすぎて、それがゲームであることを忘れてしまったり、会話を続けるうちに、ただ議論に勝つことばかりを考えて、人間関係を損なってしまうような場合もこれに当てはまります。このように、パフォーマンス・モメンタムとは、行動そのものに囚われて、行動の目的を忘れてしまうことを言います。

ゴールウェイ氏は、今日仕事に携わっている人々が直面している問題の中で、これこそが最も根本的な問題であると指摘しています。パフォーマンス・モメンタムのとりこになった人は、重要なパフォーマンスの目的を忘れるばかりでなく、人間としての自分たちの根本的な目的すら見失ってしまいがちになります。このようになると、学習や成長、そして仕事に伴う経験の質を無視してしまいます。

パフォーマンスへのフォーカスを強調するようなチームの中で働いている人の場合、パフォーマンス・モメンタムによって生じる視野の狭さから逃れることはなかなか困難です。そのような状況では、直接ゴールへと向かっていないように見える行動のどれもが「危ない行動」とみなされます。ところが、チームや個人が、パフォーマンス・モメンタムのために仕事の三角形の学習と経験の側面を犠牲にしてしまうと、長期的なパフォーマンスは低下してしまうのです。さらに、最も重要なことは、そこで働いている人々自身が苦しむということです。そして、チームを構成している人々が苦しむということは、チームそのものが苦しむということになります。
(この内容は、1997年9月にワシントンで行われた「システム思考会議」におけるティモシー=ゴールウェイ氏と筆者との対談と、"The Systems Thinker"(米国ペガサス社刊)の1997年8月号に掲載された"The Inner Game of Work: Building Capability in the Workplace"(仕事のインナーゲーム:職場における能力構築)という記事の一部の要約が中心になっています。)

(1998/5/10)


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