プラットフォーム
営業の役割を捉えなおす―『プラットフォームづくり』という考え方
高いパフォーマンスを生み出すためには、これまでのセールストレーニングの概念を見直し、新たな枠組みで取り組んでいく必要があります。
しかし、企業が厳しい環境にさらされている今、トレーニングやスキル開発のあり方だけでなく、営業の役割に対する認識そのものも変えることが必要なのではないでしょうか。
営業の役割の変化
数十年前、企業側が営業に求めていた役割は、「売りたいものを少しでも良い条件で売り込み、顧客との関係を長く維持すること」でした。こうした時代にセールスパースンに求められた重要なスキルは、顧客の購買条件とのズレを調整するための折衝力と良好な人間関係を維持する人間関係構築力でした。その一方で、顧客がセールスパースンに期待していたことは「値引きしてくれる・正直である・すぐ調達してくれる」ことでした。
その後、社会が豊かになり顧客のニーズが充足される時代になると、セールスパースンには、潜在しているニーズを掘り起こす技術が重要になりました。そして、顧客は「むやみに売りつけたりせずに、きちんとした専門知識・技術をもって説明ができる」ことを求めたのです。
ところが近年、顧客は口コミや雑誌、マスコミなどでさまざまな情報を収集することができるようになり、自分で欲しいものを自分で選択することを望んでいます。これは、顧客がそれまでセールスパースンに求めていた役割の一部が減少したことを意味します。
しかしその反面、インターネットなどの普及でも明らかなように、データの総量が3年で倍増するような情報の洪水の中から、顧客が自分に役に立つ情報を自分で選択し、納得できる決定をすることが非常に難しくなりました。
こうした環境の変化から今日、情報をインテグレート(統合)し、知識化したものを提供する『インテリジェント・エージェント』としてのビジネスが、従来の営業に代わって伸びています。売りたい特定の商品を提供するという企業側の論理が主導してきた今でのビジネスは減衰し、商品や情報を集積、インテグレートし、顧客に選択の幅や価値を提供できるしくみを創造した企業が市場を制圧し始めています。
こうした状況を踏まえて、現在、顧客が求めている営業の役割を再定義すると次のようなことがいえるのではないでしょうか。
「営業(セールスパースン)の役割とは、顧客側の状況を踏み込んで理解し、顧客にとって必要な情報や商品をインテグレートすることができ、また、知識や経験を生かした問題解決の提案を顧客がわかる言葉で行う、あるいは、顧客とともに考えていくこと」
プラットフォームづくりが求められる
このような新しい営業の役割に対応した活動を展開するために、企業は2つの側面を整備する必要があります。1つは、急速に変化する市場の動向と複雑で膨大な情報や商品をいち速く集積、加工し、検索できる情報システムのインフラ(基盤)整備を行うことです。
もう1つは、顧客の状況や価値観、ニーズに関する知識であるプロフェッショナル・ナレッジを「コーポレート・ナレッジ」としてデータベース化していくことです。
この2つを実現していくためには、商品・市場の知識と顧客に関する知識の2つを融合し、社内ではもちろん、顧客とも共有化できるオープンな「プラットフォーム」という場をつくっていかなければなりません。
そもそもプラットフォームとは、多くの人が楽に乗り降りしたり、楽に作業をすることができる場のことです。また、2つ以上の異なる路線を使ってやってきた者が、相互に乗り合ったり合流できる場でもあります。ビジネスにおけるプラットフォームとは、全く異質な語彙や文脈、意味をもった者が理解し合い、協働で作業し合える場やしくみのことです。
これからの営業は、このプラットフォームを提供するビジネスに変わっていかなければなりません。他社に先にプラットフォームを作られてしまうと、新しいシステムで市場がくくられ、一瞬にしてシェアを失う時代が今到来しているのです。
セールスプロセスの変革―プラットフォームの視点から捉えたセールスプロセスの構築
プラットフォームづくりを視野に置き、環境変化に適応するためには、従来の「売る」という視点から生まれたセールスプロセスを見直し、捉え直す必要があります。
そこで、プラットフォームの視点から捉えたセールスプロセスの例を次にみていきましょう。
- 1.イントロデュース
- 最初の段階は、プラットフォームを共有する、もしくは共に創造していくパートナーとして、顧客に信頼をしていただくために自社や自分を紹介する段階です。
- 2.プレビュー
- 次の段階は、顧客の必要な情報や商品・サービスに応える用意があることと、顧客が理解しやすいように提示してあることを「プレビューする」段階です。ここでは、いかに質の良いプラットフォームを用意しているかを顧客に理解してもらうことがゴールになります。このイントロデュースとプレビューの段階を経なければ、顧客は、セールスパースンとともにプラットフォームを創造したり、共有しようとはしません。
- 3.ニーズ共有
- 3番目は、顧客の状況・事実を深く偏りなく聞き出し、価値観や人生設計の考え方、ビジョンをそのまま理解することです。それを実現するには、セールスパースンが顧客の語彙や文脈を翻訳して、きちんと把握するための知識・技術・ソフトが必要となります。このとき、セールスパースンはプラットフォームをフルに活用していかなければなりません。ここでは、顧客の状況を理解するための質のよいプラットフォームをもっているかどうかが重要となります。
- 4.ソリューションの提供
- そして、顧客のニーズに対するソリューション(問題解決の提案創造)を提示します。
- 5.ダイアログ
- この段階では、より高い価値の創造を目指して、顧客とプラットフォームを共有しながら、顧客とともに問題解決の方法を創発する段階になります。この段階は顧客とダイアログ(対話)をすることにより、パートナーになることがゴールになります。
〔図2:従来のセールスプロセスとプラットフォームづくりを目指したセールスプロセスの比較〕

Copyright 1998 HUMANVALUE
今後は、例として挙げたようなプラットフォームづくりを役割として踏まえた自社独自のセールスプロセスを創造し、各プロセスにおけるゴールの意味づけを再構築することが重要になります。CSといったものがかけ声だけにならないようにするには、旧来のパラダイムで作られた営業プロセスに縛られている現場を、新しい経営方針に合うような構造に変革しなければならないのです。



