


クレジット業界のA社は、景気が低迷する中で今後も持続的に発展していくため、将来に向けて新しい変化が必要になってきた。
社員にとっては、業務の細分化・専門化が進んだため、全体的な視点をもって行動することが難しくなってきていた。また、社員は目の前の仕事に追われ、次第に仲間との協働をしにくい状況もあった。
経営層からは、変わらないといけないと言われてはいた。しかし、誰かがやってくれるものという意識があり、どうしても他人事になりがちだった。社員が自ら主体的に動いて組織に変化を起こすことは少なくなってきた。
労働組合の役員をしているAさんは、労働組合として何かできないかと考えた。
「一人ひとりの良いところが組み合わされているような会社にしたい。それを実現するのは、会社の仕組みでも他の誰かでもなく、一人ひとり。そこに自ら気づいて一歩を踏み出してもらえたら」
「自分がやれば良いのだという人が、1%ずつでも増えていくことで、全体として前向きになっていく活力が生み出せるだろう」
「そうした取り組みが、机上で考えられたプランではなく、日々現場にいる人の力によって推進されていく」
「ゆくゆくは、労働組合として、組合員を励ましながら、自分たちで状況を変えていけるようになれたら」
このような想いをもったAさんはこの取り組みを始める一歩として、ヒューマンバリューのエンゲージメント・サーベイを活用してみることを考えた。ヒューマンバリューのスタッフはAさんの想いに深く共感し、社内にチームを組んで支援することとなった。
組合員は、自分の仕事に対する意味づけをもっていて、それぞれが主体的に働いている。周囲の人との関係はフラットで、お互いに自由にアイデアを出し合っている。そして一人ひとりが、自分たちは最高の職場で働いていると実感している。
会社は、お互いが信頼で結ばれた雰囲気のとても良い会社で、サービスを通して社会に大きく貢献している
実現したい状態は、ミーティングを重ねるごとにより鮮明になり、それに向けて最も実効性が高く、現実的なプロセスが何かを探求した結果、今年の取り組みの方針が決まった。
今年の取り組みは、大きく2本立てで行くことになった。
1本目は、全国の組合員2000人を対象にエンゲージメント・サーベイを実施すること。そして、全国の各支店の代表者約100人を集め、支店ごとにエンゲージメントをどのように高めるかについて、皆で対話を通して考える場である検討会のファシリテーターを養成し、実際に検討会を行うこと。
2本目は、5名程度で構成される労働組合幹部による委員会を立ち上げ、組合員全体の視点から、会社の現状や社員の想いを捉え、労働組合として会社に提言をすること。
検討会の前日に、本社に用意した会場に行き、組合の役員の皆さんとヒューマンバリューのメンバーとで場づくりをした。100人が集まるのに十分な広さがある。
参加される皆さんの主体性が開放され、オープンに話し合えるような空間になるよう、机やイスをグループごとに並べ、自分で自由に書いてもらう名札コーナー、お菓子コーナーなどを設置した。
検討会当日は軽い音楽を流し、いつものオフィスとはひと味ちがう空間。
参加者の皆さんは、到着すると思い思いに名札を描いたり、会話をしたりして、楽しそうな雰囲気と笑顔で検討会がスタート。
プログラムでは、お互いの素晴らしさを理解し合ったり、自分らしさを探求したり、自分たちの組織をもっと良くするにはどうしたらよいのか、仕事場ではどんなことが起きているのか、などについて皆で話し合い、探求を深めた。
プログラムの最後で1日の率直な感想を共有すると、「皆さんといろいろな話ができて楽しかった」「急にすごいことはできなくても、できることから少しずつ取り組んでいきたい」「職場に戻って広めていきたい」といった声があがり、今日の1日が、自分や組織、会社にとってとても大切な1日になるという手応えをそれぞれの方が感じながら、それぞれの想いが共有されて、検討会は終了した。
検討会終了後、代表の参加者たちが、それぞれの現場で検討会を展開している。
自分たちでの変革の取り組みはいまスタートした。組合の事務局の皆さんが、自分たちで現場での展開をサポートし続けている。