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エンゲージメントカンファレンス

Employee Engagement Conference 2017

カンファレンスの概要

2017年7月24日~26日の3日間、サンフランシスコで、HCI Employee Engagement Conferenceが開催されました。

Employee Engagement Conferenceは、2010年にEmployee Engagement and Retention Conferenceが行われたのが始まりで、2012年からは、Employee Engagement Conferenceという名前に変わり、毎年行われてきました。今年は「Creating an Engaged Culture through Purpose, Connection, and Neuroscience」というテーマで開催されました。

参加者総数はスポンサー含めて400人~450人程度とのことです。米国外からは、30人強で、カナダからが最も多く、それ以外は、ニュージーランド、オーストラリア、ブラジル、韓国などが参加していました。日本からは弊社以外の参加者はいませんでした。
2.5日の開催期間中で、26セッション行われましたが、半数以上は一般企業による事例発表であり、エンゲージメントが単なるコンセプトではなく、企業における具体的な取り組みになっていることが感じられました。

カンファレンスの様子

カンファレンスから見えてきたエンゲージメントの潮流

エンゲージメントの考え方の前提

冒頭のセッションでは、O.C. Tanner社のGreg Graham氏により、エンゲージメントに関する以下の基本的な見解が示されました。
"You can't drive engagement. Passion and commitment are voluntary things. You can't require them. You have to earn them by creating a culture people want to engage with"
「エンゲージメントは(力ずくで)推進することができない。PassionやCommitmentは自発的なものである。強制することはできない。人々がエンゲージしたいと思えるカルチャーをつくることで得なければならない」。
また、エンゲージメントを高める文化には何が必要かという点については、以下の6つを挙げました。

  1. 目的(Purpose):組織が存在する理由。Millennialの3分の2が、Purposeを理由に働いている組織を選ぶ。
  2. 機会(Opportunity):各自が、どこで自分が違いをもたらすことができるかを知り、機会をうまく活用できること。
  3. 成功(Success):人々は成功しているチーム(Winning Team)と一緒に仕事をしたいものである。チームがエンゲージメントを促進するキーとなる。
  4. 価値が認められること(Appreciation):一貫性のある心からの称賛によって、信頼が構築される。
  5. 幸福(Well Being):もともとは、医療コストや欠勤を抑えるための取り組みとして始まったが、組織として従業員一人ひとりが肉体的(Physically)、社会的(Socially)、心理的(Emotionally)にコミットすることの重要性が数々の研究で明らかになってきた。
  6. リーダーシップ(Leadership):上記すべての文化的な要素をつなげる存在である。

このセッションを通じて、エンゲージメントの前提として、何らかの決まった制度や環境を準備すれば高まるものではなく、文化が重要であること、またその文化の中で人々が強制されることなく、自然にエンゲージメントが高まるということの重要性が確認され、その他のセッションでも同じような認識が共有されているように感じられました。

また、エンゲージメントが高まるには、組織目的との結びつきや機会提供といった組織レベルの要素、リーダーシップやチームといった一人ひとりが接する日々の仕事レベルでの要素、一人ひとりの幸福と価値が認められることが大切であるという個人レベルでの要素があり、他のセッションでも、内容は少しずつ違うものの、エンゲージメントを高める要素はこの3つのレベルで整理することができるように思いました。

エンゲージメントの概念の広がりとEmployee Experienceへのシフト

さらに、エンゲージメントに加え、Employee Experienceを重視する傾向が出てきています。Employee Experienceについては、IBMとOracleの2社のセッションで取り上げられていました。

まず、IBMのセッションでは、「年に一度のエンゲージメントサーベイを行う日々は、終わりに近づいており、Employee CommitmentやPassionを測定し、向上させるための、より全体論的、統合的、リアルタイムなアプローチへと置き換わっている」(Josh Bersin)という言葉を引用していました。そして、エンゲージメントの重要性は認識しつつも、それだけでは十分ではなく、Employee Experienceというコンセプトに広げていかなければならないと強調していました。

IBMのセッションで紹介されたJosh Bersinの言葉

従来のエンゲージメントのコンセプトでは、仕事や組織に対する人々の心理的状態や組織環境を中心にエンゲージメントサーベイで把握するのが一般的でした。それに対し、IBMでは、これまでエンゲージメントでは扱ってこなかったが、人々にとって、働く中で体験する重要な瞬間があるとしています。

たとえば、

  • 会社に入社した日(従業員にとって大事な節目であるが、人によって時期はバラバラ)。この1年がどうだったかを振り返るとよい
  • カスタマーとの体験(カスタマーと深くつながった瞬間)
  • 最後に仕事を辞めるとき
  • 会社で行われている社会貢献活動Corporate Social Responsibilityに関わる機会

こうした体験は、各個人がより組織や仕事に対して強く結びついていくきっかけになります。Employee Experienceは、一人ひとりが入社から退社までに体験するこうした瞬間をより良いものにしていこうとする考え方です。
さらに、IBMでは23,000人の従業員、45カ国、15業界以上、20職種以上に対して「何がもっとも力強い、すばらしいEmployee Experienceを形成するのか?」ということを調査しました。その結果、以下の5つの指標が出てきたそうです。

  1. 所属(Belonging):チーム、グループ、組織の一部であると感じていること。これは、単なるチームの一部という感じではなく、組織により深く存在意義を感じ、属している感覚。
  2. 目的(Sense of Purpose):自分の仕事がなぜ重要なのかを理解していること。自分の仕事に価値があると感じられるということ。
  3. 達成(Sense of Achievement):仕事における達成感を感じていること。仕事で何か違いをもたらすことができているという感覚。
  4. 幸福(Happiness):仕事において、また仕事の周辺で沸き起こる心地よい気持ちのこと。仕事に来ることに幸福を感じるかどうかも含む。
  5. 活力(Vigor):仕事におけるエネルギー、熱意、興奮があること。

さらに、これらの指標を高める上で重要なレバーは、Meaningful Work(意味を感じる仕事)、Empowerment and voice(エンパワーメントと一人ひとりの声が大事にされていること)、Organizational Trust(組織の信頼)、Feedback & Recognition(フィードバックと承認)、Coworker Relationships(同僚との良好な関係)、Work-Life Balance(ワークライフバランス)であるとしています。

Oracleのセッションでは、Employee Experience Journey Mappingを行っており、Employee Journey(従業員がたどる道)とそのときのEmotional Journey(感情的な道)をマッピングしました。そのすべてのプロセスにおいて、企業のバリューが体現されているかを問い、そのプロセスを通じて一人ひとりのPassionが高まることを目指して取り組んでいます。

こうしたEmployee Experienceへの流れから、エンゲージメントにおいて、パフォーマンス・マネジメントの変革(PMI)と同じように( PMI の最新情報はこちら)、カンパニーセンタード(企業中心)から、従業員を「一人の人」として捉え、真に大切にしていこうとするピープルセンタード(人中心)への傾向が強まっていることがうかがえます。

組織目的(Purpose)・ミッション・バリューへの個人的な結びつきを強化する

もう1つの傾向としては、組織として大事にしているミッション、目的、バリュー等と、一人ひとりの従業員が心理的に結びつくことが、エンゲージメントを高めるという前提で取り組んでいるということが挙げられます。
そのために、組織の目的、ミッション、バリューに則った一貫性のあるプロセスや仕組みがキーとなるという点も、共通する見解であったように感じました。また、心理的な結びつきを強めるためにも、実感としてバリューを身近に感じられるような対話や取り組みを実践している事例も紹介されていました。

たとえば、決済関連サービスを提供しているSquareでは、目的を日常的に従業員が感じられるように、オフィスの物理的空間の中に顧客を思い出させるような仕掛けを作ったり、顧客の立場を体験できるプログラムに参加できるようにしたり、ポジティブな影響を受けた顧客をミーティングに呼び、ストーリーテリングをしてもらうなど行っています。

さらに組織目的にどんな意味があるのか、疑問を呈することも積極的に奨励しています。
また、サウスウェスト航空の実践事例では、採用、リーダーシップ、パフォーマンス・マネジメント、エンゲージメントサーベイのすべてが、バリューを色濃く反映したものになっていることが紹介されました。

消費者が一足靴を購入すると、途上国で必要としている子供たちに一足靴が贈られるというソーシャルビジネスを行うTOMSは、「世界をより良くする」という組織目的をもち、ビジネスは人々の人生を良くするための「手段」であるという考えを明確に示していました。従業員は、そうした目的に強い結びつきをもつことが当たり前(前提)となっており、組織は、様々な独自の儀式やプログラムを通じてその結びつきを強化し、目的の実現を促していました。

TOMSのベッツィー・ライリー氏によるセッション

一人ひとりのWell-Beingの重視

もう1つの傾向として、従業員の身体的・精神的な健康が従業員のエンゲージメントの基本になると捉え、重視することが挙げられます。

たとえば、Aetna(保険会社)では「マインドフルネス」を取り入れており、職場から離れて瞑想をするための場所と時間を設けるだけでなく、日々の仕事や文化にもその影響を広げていく取り組みを行っています。その結果、プログラムの前後でストレスの軽減・集中力向上・心理的安定だけでなく、エンゲージメントの数値が高まったというデータも紹介されていました。

また、Workday Foundation(IT企業)の「Well Being」のプログラムでは、従業員の健康と幸福を高めるために、ITの仕組みを使って一人ひとりが自身の健康状態を把握し、健康習慣を身につける支援をしています。さらに、そうした健康習慣を組織で称賛し、文化として広げていくことに力を入れています。

さらに、この2つの事例では、個人の健康だけではなく、仕事のストレスや負荷軽減にも同時に取り組むなど、組織として、仕事の仕方の健全性にも取り組んでいます。さらに、Workday FoundationのWell Beingのセッションでは、同僚や上司との人間関係の改善による社会的な健全性(Social Well-being)と、社会的な参画や関わりによる精神的な健全性(Spiritual Well-being)を高めることの重要性も話されており、単なる身体的健康を超えて、一人ひとりの全人的な健全性と幸福を目指した取り組みであることも感じられました。

エンゲージメントは、組織目的の達成だけではなく、真に「人」を大切にするという価値観に基づき、人が健康で幸福に働ける状態を目指す動きともいえるかもしれません。

さらに詳しいカンファレンス内容の報告や、エンゲージメントに関する弊社の考え方や取り組みを紹介するミニフォーラムについては、下記のリンクをご覧ください。

エンゲージメント~人が働く意味や幸福を感じられる組織のあり方~』開催のご案内

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