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HVDリポートVol1 No.6  1998年7月2日発行

ASTD'98国際会議報告 ─パフォーマンス改善とニーズアセスメントの動向

今回のHVDリポートは、1998年5月31日~6月4日にわたって、米国カリフォルニア州サンフランシスコ市において開催されました『ASTD '98(1998年度ASTD国際会議&EXPO)』の概要報告と、今大会全体で特に話題として取り上げられていた「パフォーマンス改善」と「ニーズアセスメント」の動向についてご紹介したいと思います。


世界最大の人材開発イベント

本リポートの第1号でも紹介しましたが、ASTD(American Society for Training & Development=米国人材開発機構)は、1944年に設立された非営利団体で、米国ヴァージニア州アレクサンドリアに本部を置いています。約160の支部と65,000人の会員(20,000を越える企業や組織の代表を含む)をもつ、訓練・人材開発・パフォーマンスに関する世界最大の会員制組織です。

ASTD国際会議は今年で54回目を迎え、人的資源開発に関する世界最大の会議&EXPOとして知られています。会議は、5日間にわたって催される250余のセッションと40余のフォーラム、数々のイベントから成っており、人的資源開発に関する世界の最新の動向をつかむことができます。今年は、世界82カ国のHRD管理者や専門家、コンサルタントが集まり、過去最高の15,000名が出席しました。また、会議期間中に開催されているEXPOには、訓練開発に携わる575社が出展しました。

今年の参加者のうち海外からの参加者は2,700名で、日本からは約180名が参加しました。昨年までの日本からの参加者は、多くても30~40名ほどではなかったかと思われますので、今年は日本での関心の高まりが感じられます。
日本から参加した主な団体は、弊社主催のグループが合計42名、ビジネスコンサルタント(B-con)の自社のコンサルタント60名を含む合計68名です。その他、富士ゼロックス総合教育研究所4~5名、日立インフォメーションアカデミー4名、産能大学4名、NTTデータ通信2名の方々と現地でお会いしました。

弊社主催のグループにご参加いただいた方は、次の通りです。

会社名 所属部署 役職 氏名
株式会社いずみアカデミー - 代表取締役 丸川昌信
ウィルソン・ラーニング ワールドワイド
株式会社
R&D事業部 取締役事業部長 久慈洋子
株式会社NECユニバーシティ 経営研修所 - 池田篤史
NTTデータ通信株式会社 人材開発部 第二研修担当部長 玉木茂
NTTデータ通信株式会社 人材開発部 第二研修担当
インストラクター
浦川芳則
財団法人
国際ビジネスコミュニケーション協会
- アドバイザー 田村三郎
株式会社三和総合研究所 国際経営開発部 研究員 大嶋淳俊
ジョンソン・エンド・ジョンソンメディカル
株式会社
人材開発部 部長 伊原美恵子
株式会社神鋼ヒューマン・クリエイト - 代表取締役社長 福崎誠
株式会社神鋼ヒューマン・クリエイト - チーフコンサルタント 辻泰孝
株式会社神鋼ヒューマン・クリエイト 研修コンサルティング部 課長 佐伯晴弘
スカンディア生命保険株式会社 営業本部 副本部長 鈴木教夫
ソニー生命保険株式会社 推進部研修課 チーフトレーナー 伊場野和夫
ソニー生命保険株式会社 推進部研修課 統括課長 柳沢誠
株式会社ダイヤモンド社 人材開発情報編集部

-

高野倉俊勝
株式会社日鉄ヒューマンデベロプメント - 代表取締役社長 父川克弘
株式会社日鉄ヒューマンデベロプメント 新日鐵研修グループ マネージャー 真籠 敬之
日本シエーリング株式会社 企画チーム - 桝井範子
日本情報通信株式会社 経営管理部総務課 人事係長 野田登
日本電信電話株式会社 人事労働部人材開発室 担当部長 鈴木正俊
日本マクドナルド株式会社 能力開発促進部 統括マネージャー 菊山博之
株式会社日立製作所 汎用コンピュータ事業部
教育センター部
研究員 三好徹夫
株式会社日立製作所 汎用コンピュータ事業部総務部 主任 大月重人
富士通株式会社 人材開発部 主席部長 押尾勝平
株式会社富士通経営研修所 教育部 教育課長 鈴木浩一
松下インターテクノ株式会社 情報通信事業部シークエント営業部 リーダー 宮松寛有
株式会社三菱総合研究所 経営開発部 研究員 田島房好
有限会社YAO教育コンサルタント - 代表取締役 八尾芳樹
株式会社リクルート HRD研究所 エグゼクティブマネジャー 益田勉
株式会社リクルート 人材総合サービス事業部門
人材企画部
エグゼクティブプランナー 鹿野尚登
株式会社リクルート HRD研究所 トレーナー 田中貴美代
株式会社リクルート HRD研究所 トレーナー 斉藤修生
- - - 斉藤貴美代
- - - 斉藤圭美
- - - 足立英治
株式会社ヒューマンバリュー - 代表取締役 高間邦男
株式会社ヒューマンバリュー - 主任研究員 兼清俊光
株式会社ヒューマンバリュー - 主任研究員 牧野元三
株式会社ヒューマンバリュー - 主任研究員 高木穣
株式会社ヒューマンバリュー - 主任研究員 阿諏訪博一
株式会社ヒューマンバリュー - アシスタントリサーチャー 阿諏訪啓子
株式会社ヒューマンバリュー - プロジェクトマネジャー 細金香代子

(社名五十音順 表中敬称略)

今回の報告は、以上の方々との情報交換や現地でのミーティングを参考にして作成されました。参加されたみなさんには、ご一緒に学習機会をもたせていただきましたことを、この場を借りて深く御礼申し上げます。


ASTD '98の全体的な傾向

中心となったテーマ

今年は昨年までの傾向と異なり、パフォーマンスやテクノロジーなどのテーマに注力されており、従来、数多く取り上げられていたエンパワーメントやリーダーシップ、ラーニングオーガニゼーションといったテーマが減少していました。
ASTD '98は、次の7つのテーマを中心に展開されました。

【ASTD'98の7つの中心テーマ】

  1. マネジメントとリーダーシップの開発
  2. パフォーマンス改善
  3. トレーニングとパフォーマンスの測定と評価
  4. 学習テクノロジー
  5. トレーニングの基本
  6. 変化管理
  7. 職場問題

その中でも特に2と3のテーマにウエイトが置かれているようでした。これは、昨年に行われたセッションのプレゼンター募集の際に、上記の7つのうち2と3で60%のテーマを取り上げるという方針をASTD事務局が採った結果だと思われます。

全体的印象

米国内の参加者はともかく、海外からの参加者は、今回は昨年に比べて内容が下がったという印象をもったようです。
私どもの印象としても、大会全体のプロセスの中で訴えかけられるメッセージ(たとえば、「パフォーマンスやテクノロジーの追求ばかりをして、本当に人間が幸せになるのか」といった人間としての本質的なあり方の問いかけなど)や新しいテーマが少ないように感じました。

反面、即実務に役立つ基本的な考え方や実例の紹介が多く、会議全体が現実のパフォーマンスに転移しやすい(直結する)内容を重視したように思われました。
これは、米国企業におけるHRD部門の関心の移行を反映しているものと思われます。その中でも特に、「今後3年間の10大傾向の予測」(HVDリポート第1号 P.5)の上位7つの影響が強く出ているようです(下記参照)。

  1. 「トレーニング」の提供から、「パフォーマンス」改善への移行
  2. コンピューター・スキル訓練の需要の増大
  3. 「トレーニング」の提供から、「学習」の促進への移行
  4. 組織内外の境界線を越えて仕事をする必要性の増大(バーチャル組織)
  5. トレーニングの成果を測定する必要性の増大業績を測定する必要性の増大実際にトレーニングを行うことから、学習ニーズと学習方法・技術をマッチさせることへの移行

ASTD '98のキーワード

以上のようなASTD'98の全体的傾向を踏まえ、今大会の特徴的なキーワードとして考えられるのは、次のようなものです。

  1. トレーニングの効果測定
  2. ニーズ・アセスメント(ニーズ・サーベイ)
  3. パフォーマンス・インプルーブ
  4. HPT(ヒューマン・パフォーマンス・テクノロジー)
  5. ロング・ディスタンス・トレーニング(ウエッブ・ベースド・トレーニング)
今回は、このうち1~4のテーマにおける主なセッションの内容を踏まえ、これからの人材開発でのポイントとなる点や参考になる観点を紹介していきたいと思います。


トレーニングの効果測定

今回のセッションの中では、「トレーニングのROI(投資収益率)をどのように計測するか」「トレーニングの効果をどのように測定するか」といったテーマが数多く見られました。
これには、米国のHRD担当者が置かれている2つの状況がその原因にあると思われます。1つはトレーニングによってパフォーマンスが向上していることを証明しないと、CEOがトレーニング予算を認めてくれなくなっているということです。もう1つは、トレーニングのアウトソーシングによって担当部門が縮小され、トレーニング担当者がどんどん解雇されるという状況に遭遇していることです。今後は、日本でも同様の傾向が高くなっていくと思われます。
トレーニングの効果測定の方法には、大きく分けて次の6つの測定方法があります。

  1. アフターアンケート
  2. 事前事後テスト
  3. ヒアリング
  4. コントロールグループとの比較
  5. 360度アンケートによる比較
  6. ROI分析
1.アフターアンケート
アフターアンケート(受講アンケート)は、従来から行われている一般的な測定方法ですが、この評点でトレーニングを評価するだけでは済まなくなっているというのが一般的な論調です。
2.事前事後テスト
事前事後テストは、まずトレーニングの前に受講者の知識、技術のレベルをテストによって確認します。そして、受講後に再度テストを行い、どのくらい向上したかを確認する方法です。
3.ヒアリング
ヒアリングは、受講者に対してトレーニングを受けてどのような気づきや態度の変容があったかを直接聞いていく方法です。
4.コントロールグループとの比較
コントロールグループとの比較は、トレーニング終了後に受講者群と非受講者群(コントロールグループ)との業績などの差を計測し、比較するものです。
5.360度アンケート
360度アンケートは、事前に受講者の周りの人から本人の行動や知識、技術、態度についてのアンケートを収集しておき、トレーニング後、一定期間を経て再度アンケートを採り、その変化を測定するものです。
6.ROI分析
ROI分析は、トレーニングに要した費用に対して、それがどのくらいの業績を生み出したかを測定します。それには比較するためのコントロールグループが必要です。

しかし、ROI分析で問題となるのは、費用(投資)にどこまでを含めるのかということです。
一般的には、トレーニング費用として講義料+テキスト代+交通費、その他、会場費、宿泊食事代程度を含めます。そして、人件費及びトレーニング参加中に稼げたはずの利益は含めないようです。
しかし厳密に言えば、人件費やトレーニングに参加したため仕事ができなかった期間の利益上の損失も含めて分析しなければならないでしょう。また、営業以外の分野では、業績を数字として測りづらいため、この方式はうまくいきません。そのため、今後の方向はトレーニングの内容面をどう評価するかという方向に移っていくと思われます。

トレーニング・プログラムを評価する4つのレベル

ASTDのセッションの中でドナルド・カークパトリック(ウィスコンシン大学名誉教授)は、トレーニング・プログラムの4段階評価モデルを紹介し、効果的なトレーニング・プログラムの必要条件とプログラムを評価する理由、またそれぞれの段階に応じた見本、形式、手順を説明しました。
なぜプログラムの評価をするかという理由としては、次の5点を挙げています。

  1. プログラムを継続するのか、やめるのかを判定するため
  2. 目的に合っているかを判定するため
  3. どのように改善できるかを知るため
  4. プログラムの予算を正当化するため
  5. このプログラムが必要であることを証明するため

カークパトリックはプログラムの評価を次の4つのレベルで考えています。

レベル1 反応(reaction)
プログラムについて参加者はどのように感じたのかをみます。
レベル2 学習(learning)
参加者は何を学習したのか、知識が増えたのか、スキルが改善されたのか、態度が変わったのかをみます。そのために、事前テストと事後テストを行い、プログラムの中で参加者がどの程度学習したかを測ります。
レベル3 行動・態度(behavior)
トレーニング後、職場に戻ってからの行動がどのように変わったかをみます。360度アンケートによって、周囲の人から参加者の行動がどのように変わったのかを測定したり、本人にインタビューすることによって把握します。
レベル4 結果(results)
最終的にどのような成果(量、質、安全、セールス、コスト、利益、ROI)が出たかをみます。トレーニングが終わって職場に戻った当初はよくても、時間が経つと元に戻ってしまうこともあるので、ある程度期間をおいてから測定するようにします。

カークパトリックは、この中でもレベル3とレベル4の測定は特に難しく、こうすればうまく測定できるという結論が出ているわけではないと述べています。そして、おのおのの職場でその適用の仕方を考えていくことを今後の課題として挙げています。
以上のカークパトリックの考え方は、別段真新しい感じはしませんが、いざ実施するとなるとトレーニング部門にかなりの負荷がかかるでしょう。つまり、先述の4つのレベルからトレーニングプログラムを評価することは当たり前のことかもしれませんが、それを実施するのは非常に難しく、具体的な方法を決めて継続的に取り組まないと実際の効果は出ないと考えられます。


ニーズ・アセスメント

ニーズ・アセスメントとは、パフォーマンスを高めるためにどこに手を打ったらよいかを調査し、的確なパフォーマンス改善への介入やトレーニングを設計するために行うものといえます。

従来のニーズ調査と異なるのは、「トレーニングを実施するために学習ニーズを調べる」という前提に立たずに、「組織のパフォーマンスを高めるためにどこに問題があるのか」を幅広く調査し、それを解決する手段をトレーニングに限定していないことです。

ASTDで紹介されたニーズ・アセスメントの方法論を見ると、かなり緻密に構造化されているとはいえ、従来の分析的アプローチの枠組みから抜け切れておらず、新しさは感じられませんでした。しかし現実には、何か問題があるとトレーニングを実施すればなんとかなると考えて、短絡的に取り組んでしまうケースが多いことは否めません。そこで本来の目的を問い直す意味で、ニーズ・アセスメントをもう一度見直してみたいと思います。

パフォーマンスの測定と評価

ジェイ・フィリップス(パフォーマンス・コンティニュアム・グループInc.)とカーラ・シャイアマン(パフォーマンス・コンティニュアム・グループInc.)は、経営層や上層部に納得してもらえるトレーニング等のニーズ調査方法として、パフォーマンス(成果・性能)に関する問題分析のプロセスとモデルを紹介しました。

フィリップスとシャイアマンは、パフォーマンス(成果・性能)に関する問題の原因は、スキル、ナレッジ、インセンティブ、環境、モチベーションのどこに原因があるかを調査し、明らかにしないと、トレーニングを実施しても問題解決ができるとは限らないと言っています。
特に環境に原因があるとしたら、環境を改善しない限り、いくらトレーニングをやっても効果は出ません。
フィリップスとシャイアマンが提唱するニーズ・アセスメントは、PSA(現状)とFSA(将来)とのギャップを、インパクト、パフォーマンス、ラーニングごとに明らかにすることと捉えています。

このニーズ・アセスメントでは、ニーズについて「他の人やグループが与えるニーズ(Ascribed Needs)」と「自らが感じ取るニーズ(Felt Needs)」に分けて調査し、そこから「本当のニーズ(Real Needs)」を見つけ出していきます。
ニーズ分析は、インパクト、パフォーマンス、ラーニングの3つのレベルの関係と整合性を見て、現状がどうなっているかと、どうあるべきかのギャップを分析します。

フィリップスは、事前の予備マトリクスを用いてニーズ・アセスメントの方法を明らかにしていくことを勧めています。これによって、問題がどのようなものか、そして求められる改善レベルがどれくらいかが具体的に把握でき、目標設定も可能になると考えています。
さらにパフォーマンス(成果・性能)のレベルを、認識(recognize)→再現(replicate)→変革(Innovate)の3レベルに分けて捉えるようにしています。

学習領域に関しては、知識(Cognitive)、技能(Psychomotor)、態度(Affective)の3つに分けています。

パフォーマンス・マップ

マーク・ジョンソン(ジ・アンダースタンディング・ビジネス)とロバート・アディスン(ウェルズ・ファルゴ・バンク)は、個人と組織のパフォーマンス上の問題を診断し、HPT(ヒューマン・パフォーマンス・テクノロジー)を使うときの障害を克服する方法と介入策を明らかにするためのパフォーマンス分析のツールを紹介しました。

仕事におけるパフォーマンスを改善していくには、トレーニングをするだけではなく、コンピテンスとカルチャー、自信(confidence)の三角形で捉えることが必要であると提唱しています。

カルチャーには、ミッション、ビジョン、価値、信念、マネジメントプラクティスを挙げています。さらに、水面下のカルチャーとして、ラインとスタッフの関係、権限と地位、ポリシーとプロシージャー、コミュニケーション、モチベーションシステム、物語と伝説、CI、職場環境を挙げています。

またコンピテンスとして、技能、知識、能力を挙げ、自信には、業績、行動、態度、貢献を挙げています。
さらに、ジョンソンとアディスンは、どのようにパフォーマンスを改善すればよいかを判断するツールとして「パフォーマンスマップ」を紹介しています。

パフォーマンスマップ

「パフォーマンス・マップ」は縦軸に「コンピテンス」、横軸に「コンフィデンス(自信)」を取り、第3軸に「カルチャー」を取っています。
このモデルでは、それぞれの軸について現状のレベルを評価して、マップ上にプロットされた領域を強化することでパフォーマンスを改善することができると考えています。

しかし、各領域はそれぞれ相互に影響し合っているため、プロットされた領域だけを強化するのではなく、マップの中心の矢印に従って、各領域に着手していくものです。
ただし、組織には組織特有の文化があります。したがって、その組織に特有の文化に合わせた手を打たないと、実際の方策と現実の組織がかみ合わなくなってしまいます。そこで文化査察のような手法で、その組織に特有の文化を明らかにしていく必要性があるとして、これを3軸目に表しています。

このモデルはいささか短絡的な発想に感じられますが、何か欠けたところがあったら、すぐにそこを強化するためのトレーニングを行うという対症療法的な解決策に走らずにすむヒントにはなりそうです。


パフォーマンス・インプルーブメント

パフォーマンス改善に関しては、現在、かなり具体的な技法が明らかになっています。そういった技法をHPT(ヒューマン・パフォーマンス・テクノロジー)という言葉で呼ぶのが一般的になりました。このHPTを駆使して仕事をする専門家としてパフォーマンス・コンサルタントが注目されています。

このパフォーマンス・コンサルタントがどのような役割を担い、どのような手段、方法を用いて仕事をするのかを整理すると、パフォーマンス改善の全貌を理解することができると言えます。


パフォーマンス・コンサルタントの仕事

『Performance Consulting』という本を1995年に出版してパフォーマンス・コンサルタントという言葉の火付け役になったデイナ・ロビンソン(パートナーズ・イン・チェンジInc.)は、パフォーマンス・アウトプットを記述する方法と、パフォーマンス・コンサルタントにどのような成果が期待されているかを述べると共に、この職務に当たる人々を選出するための基準や必要とされるコンピテンシーの説明を行いました。

そもそもパフォーマンスに注目が集まった理由は、学習したものの30%しか実際の仕事には使われていないということが投資効率上問題視されたため、焦点を学習からパフォーマンスにおく必要が出てきたからだと言っていました。

ロビンソンは、パフォーマンス・コンサルティング・プロセスを大きく3つに分けて捉えています。最初の段階が、「パートナーシップを組むこと」、次が「アセスメント」、そして「実行~パフォーマンスを変える」の3つです。

今年の第1四半期にアンケート調査を行った結果、この3つのプロセスを踏まえて、パフォーマンスの改善や向上に当たっている人の44%が、「パフォーマンス・コンサルタント」という呼称を使っていたそうです。

彼らは、クライアントとパートナーシップをもち、パフォーマンスに関する分析を行い、パフォーマンスを変えていくための仕事をしています。所属している部署は、人事部の下部に位置しているのがほとんどでした。その機能には、ラーニングサービスとコンサルティングサービスの2つがありますが、昨年の調査結果と比較すると、ラーニングサービスの比率が増えており、ラーニングサービスとコンサルティングサービスが約半々になっています。

ロビンソンは、パフォーマンス・コンサルタントの仕事について、クライアントとのパートナーシップの構築が大切であるとし、それもできるだけ上位の人にアプローチしていくことが重要だと言っています。また、求められる役割としては、コーチとしての役割が増えてきており、それに費やす時間は全仕事の20%程度ということです。さらに、アウトプットの計測、特に顧客満足度を徹底して調べることが重要だと述べています。

パフォーマンス・コンサルタントの重要な仕事にアセスメントがあります。アセスメントでは、パフォーマンスを向上させるために必要なものと、パフォーマンスにおける理想と現実のギャップおよび、ギャップが生じる原因を調べます。そこではパワフルな質問をすることがパフォーマンス・コンサルタントの重要な役割だと強調していました。

ロビンソンに限らず、アセスメントにおいてどのような質問をするかということには強い関心がもたれており、ISPI(International Society for Performance Improvement)という団体でも具体的な質問のフレーズを紹介した書籍を出版しています。
ロビンソンは必要なアセスメントの種類として、ギャップアナリシス(何をすべきかと何をしたかのギャップを調べる)、原因・理由の分析、他にラーニングニーズの分析、プロセスのデザイン、パフォーマンスのモデリング、コンピテンシーのモデリングを挙げています。アセスメントに費やす時間は、平均して全体の27%程度とのことです。

パフォーマンス・コンサルタントの担当するパフォーマンス改善のプロジェクト数は、年間平均7プロジェクト程度で、費やす時間は全体の平均25%です。プロジェクトを成功させる上で、パフォーマンス・コンサルタントに求められる役割は、まずは、合意書などでクライアントと自分の役割と責任分担を明確にすること。そして、プロジェクトの進行過程において、それぞれがきちんと役割を果たすためのマネジメントを行う、いわばオーケストラのリーダーのような役割が求められるようになっていると言っています。

残りの時間で行う仕事は、介入、コーチング、インパクトの評価、自分自身の継続的な学習です。
参考までにパフォーマンス・コンサルタントの平均年収は、49,000ドル~73,000ドルだそうです。

またロビンソンは、パフォーマンス・コンサルタントに求められる能力をこれから開発できるものとできないもの(資質)に分けています。開発可能な能力として重要なのは、分析能力と関係構築能力を組み合わせた能力です。その他に、人間を理解する能力、成人教育を行う能力、ヒューマン・パフォーマンス・テクノロジーの重要性についての理解力が必要だと言っています。

開発できない、あるいは開発するのが難しいものとしては、行動の柔軟性、主観にとらわれない客観性、自己信頼性、曖昧さに対する耐性(すぐ結論を出さず、忍耐強くいる)の4つを挙げています。この4つは、特にパフォーマンス・コンサルタントだけではなく、これからのビジネスパースンに共通して必要な資質のような印象を受けました。

ロビンソンの説明を通して、米国の企業内では「パフォーマンス・コンサルタント」という職種やサービス部門が、すでに社内に定着してきているということを痛感しました。今後日本においても、同じような動きが起きてくることが予測されます。

トレーニングをパフォーマンスに結びつける方法

ロバート・ブリンカーホッフ(ウェスタン・ミシガン大学)は、フォーチュン200社に入るある企業の事例を通じて、個人と企業のパフォーマンス改善のゴールに対して、システム的に到達するためのトレーニング・パラダイムを考案し、トレーニングの成果を事業のニーズやゴールに結びつけるやり方を提唱しています。

ブリンカーホッフは、「トレーニングを行っても、それがパフォーマンスに反映されるのはわずかである(5~10%程度)」という現実を踏まえ、トレーニングの効果性を高めるには、トレーニー(受講者)の状態を把握する必要があるとしています。そしてブリンカーホッフは、トレーニーの状態を次の3つに分類しています。

<タイプ1>
トレーニングの場所と時間は知っているが、どういったトレーニングを行うのかは知らない。上司に言われたから、会社から言われたから参加するだけである。
<タイプ2>
トレーニングのタイトル(例えば「コミュニケーション」)は知っている。また、それが大切であることも理解している(と本人は言っている)が、どうして重要なのか、どのくらい重要なのか、それが自分の仕事にいかに役に立つのかは、まったく理解していない。
<タイプ3>
自分の受けるトレーニングが自分の仕事とどのような関係にあるのか、今回のトレーニングが自分の仕事の成果を上げるためにどのくらい大切で、このトレーニングを受ければどのように役に立ち、成果に結びつくのかを理解している。

現実の受講者の状況はタイプ2がほとんどで、最もパフォーマンスに結びつくタイプ3はわずかしかいません(実際にこのセッションの会場で参加者に現状を聞いても、タイプ2がほとんどでした)。ブリンカーホッフは、受講者の頭の中ではプログラムの中身と現実の仕事、パフォーマンスがリンクしていないことを指摘し、すべての受講者をタイプ3にするにはトレーニングのパラダイム(メンタルモデル)を変革する必要があると強調しています。

トレーニングの伝統的なパラダイムは、多くの参加者を集め、参加者が皆同じように考え、同じことを学ぶように設計されていました。それに対して、新しいトレーニングのパラダイムは、異なるトレーニングニーズに応えることができるように設計します。参加者の目標はそれぞれのニーズによって異なるので、求めるプログラムの内容は個人によって異なるはずです。新しいプログラムは、各受講者のニーズを明らかにした上で、共通の学習領域でトレーニングを実施します。

そして、ブリンカーホッフはトレーニングが仕事のパフォーマンスにいかに役立つかをインパクトマップを作成することで明らかにしていくことを提唱しています。インパクトマップでは、各人が学習の目的を設定し、それが仕事の目的、プロセス上の目的、自分の仕事のゴール、職場のゴール、会社としてのゴールとどのように関連づけられているかを組み立てていきます。これによって、プログラムとパフォーマンスがリンクするようになります。また、これによってトレーニングの効果を測ることもできます。

インパクトマップを作成するためには、自分のキーとなるスキルや知識が自分の仕事にいかに役立つか、そしてそれによって向上するパフォーマンスは何か、ビジネスの成果として何が生み出されるのかを、各個人が明らかにしていく作業が必要になります。こういった作業を通して受講者のタイプを、タイプ3にもっていくことができ、トレーニングがパフォーマンスに直結していくと考えています。


ASTDにみる米国トレーニングファームの動向

米国内のトレーニング業界は今、大きな変化を迎えています。昨年は、アウトソーシングによって解雇された企業のトレーニング担当者が独立し、小さなトレーニング会社が雨後の竹の子のようにたくさん設立されました。今年は、大手のトレーニング会社が吸収・合併などによる再編を行っています。

これは、パフォーマンスの改善を行うためにはトレーニングという手段だけでは対応できなくなったために、異なるナレッジをもっている会社を吸収し、多様な選択肢を提供できないと生き残れないという流れを反映しています。
吸収・合併の1つの例としては、タイムズミラートレーニングとセンガーミラー、カセット、ラーニングインターナショナルなどが集まって、『アチーブグローバル』という会社(推定売上げ約200億円、従業員約900名)を設立し、一躍全米で業界第1位の会社になったことが挙げられます。

また、タイムマネジメントの「フランクリン・システム」で知られているフランクリンという大手会社と、コビーリーダーシップセンターが合併して、『フランクリン・コビー』という会社(推定売上げ約160億)になりました。

その他、ジャック・センガーを中心として7つの会社が集まり『PROVANT』という会社を設立し、注目されています。マルチメディアに強い会社や会計に強い会社など、それぞれの分野で力のある会社が集まっているそうで将来が期待されます。

このような吸収・合併の結果、現在の業界第2位はDDI、第3位はFORUMとなっています。こうした合併再編の動きがこれからの人材開発にどのような影響を与え、どのようなトレーニングプログラムが提案されるようになるか期待されます。


コラム:ティモシー=ゴールウェイの「インナー=ゲーム」(5)

このコラムでは、これからの組織における人材育成の鍵となる生成的(人を教えるのではなく、その人の力を引き出していく)コーチングの手法として、過去4回にわたってティモシー=ゴールウェイ氏の「インナー=ゲーム」の理論を紹介してきました。

今回は最終回として、筆者が今年の6月にロサンゼルス近郊にあるゴールウェイ氏のご自宅をお訪ねして、コーチングの話を伺った際に得た情報・知識を交えながら、このシリーズのまとめを試みたいと思います。
また今回は、スポーツを題材にした例え話が多く登場しますが、前回までの内容も参考にしていただきながら、スポーツに限定しないさまざまなコーチング場面に「インナー=ゲーム」の理論を活用していただければ幸いです。

コーチングのパラドックス

ゴールウェイ氏は、プロのテニスコーチとして活躍していた頃、「コーチである私が教えるからこそ生徒が学ぶのだ」と信じていたそうです。しかし、生徒が学習し上達することよりも、教えること自体に興味と関心を寄せている自分に気づき、疑問をもち始めたのです。

このような経緯から、ゴールウェイ氏は生徒の学習に焦点を当て、さまざまなコーチング方法を試み、短期間で生徒の学習効率が高まる「インナー=ゲーム」というコーチング体系を生み出したのです。
こうした試みを行ううちに、同氏は「コーチが教えなければ教えないほど生徒は学習する」という一見矛盾するようなことを発見しました。つまり、コーチは手取り足取り教えなくとも、生徒の学習障害を取り除いたり、現状認識の度合いを高めるような手助けをしてあげさえすれば、生徒は自ら学習し、成長するということなのです。

学習の三角形

ゴールウェイ氏は、長年にわたるコーチングの経験とそこから得た発見から、学習には認識・信頼・選択の3つの要素が不可欠であるとして、次のような「学習の三角形」を提唱しています。

学習の三角形

認識とは内面的、外面的な現状の認識であり、信頼とは、自己の潜在能力に対する信頼を言います。また選択とは、ゴールに到達することを周囲から押しつけられるのではなく、自分から主体的に選択することです。ゴールウェイ氏は、選択した目標(ビジョン)を明確にし、現状をあるがままに認識すれば、私たちの潜在能力は現状を目標に近づける方向へと自然に働くものだと言っています。つまり、「学習の三角形」における「信頼」とは、自分の潜在意識や潜在能力を成長への推進力を内包した非常にすばらしいものとして信頼することなのです。

このような学習における3つの要素の考え方が正しいものであることを説明する事例は無数にありますが、ここではゴールウェイ氏が好んで引き合いに出す話の1つを紹介しましょう。

ある時、テニスをやっている人が、「私はバックハンドのラケットの位置が高いので、これまで12人のプロのコーチから指導を受けましたが直りません。何とか助けて下さい。」とゴールウェイ氏のところにやって来ました。
そこで彼は、「わかりました。それでは、ラケットがどのくらい高いか、そこの鏡を見ながらラケットを振って確認してご覧なさい。」とだけ言いました。すると、その人は「うわー! 本当に頭よりも高いじゃないか!」と驚いたというのです。

その人は、ラケットが高いのだということをゴールウェイ氏にも説明したほどですから、自分はラケットを高く構えてしまうということを情報としては知っていたのでしょう。しかし、実際にどれほど高いのかということは認識していなかったのです。
そこで、ゴールウェイ氏はその人にこうアドバイスしました。「ラケットの位置を降ろそうとは努力せずに、そのままバックハンドのスイングを続けて、1回毎にその時のラケットの位置を言って下さい。」その人は、ゴールウェイ氏に言われたようにスイングをしてはラケットの位置を確認しました。すると、「頭より上」「頭」「肩」「肩」「胸」「腹」「腰」「腰」「腰より下」「腰」「腰より下」「腰より下」という具合に、ラケットの位置がどんどん下がっていったので、「ラケットの位置を下げようと努力してはいませんか?」と尋ねると、「いいえ先生、ラケットがひとりでに下がっていくのです!」という答えが返ってきました。

このような「うまくいっていないところを直そうと努力するのではなく、ただそこを認識して注意を向けるだけ」という指導法はスポーツに限りません。これは、ゴールウェイ氏の提唱するコーチング全般に用いられている非常に高い効果性を発揮する方法です。

ゴールウェイ氏は、AT&T社の全米の交換手20,000人に電話応対の教育を行ったときのことをこう振り返ります。「さまざまな場合における自分と相手の声の響きの質に注意を向けさせることだけで、交換手各自が次々と重要なことを学んで、利用者に喜ばれる対応の仕方を身につけていった」と。 AT&T社で行ったゴールウェイ氏のコーチングは次のようなものでした。
例えば、相手がイライラした声の場合、まずそのイライラの度合いを10段階でいうとどのくらいかを聞き取る。次に、その人への自分の応対の仕方について声の優しさ、丁寧さの度合いも10段階で評価してみる。そしてまた、それに対する相手の声のトーンの変化の度合いに耳を傾ける。

このように、ゴールウェイ氏は自分と相手の声の感じに注意を向けさせたそうです。すると、交換手たちは特にこちらから「このような場合にはこう対応しなさい」というような指導は一切しなかったにも関わらず、電話でのやり取りのマナーや応対のノウハウを、個性あふれるやり方で身につけていったということです。

「セルフ・ワン」と「セルフ・ツー」

ゴールウェイ氏は、すべての人の中に「命令し、ジャッジする自分(セルフ・ワン)」と「行動する自分(セルフ・ツー)」という2つの自分がいて、絶えず「セルフ・ワン」が「セルフ・ツー」に語りかけ、「セルフ・ツー」の行動に影響を与えているという現象に注目しました。実際に神経系統を動かす潜在意識や潜在能力、あるいは本当の自分といったものも、この「セルフ・ツー」に含まれます。

「セルフ・ワン」と「セルフ・ツー」の関係は、「セルフ・ワン」は「セルフ・ツー」を信頼しておらず、いろいろ雑音を立てて「セルフ・ツー」のパフォーマンスを妨げているというのが通常の状態です。
例えば、テニスの試合中にバックハンドを苦手としている人に、苦手なコースのボールが飛んできたとします。すると「セルフ・ワン」は、「ああ、イヤなところにボールが来た。またミスをするぞ。」と考えて身体の動きがぎこちなくなり、その結果、予想したとおりうまく返球ができなくなってしまいます。このことによって「バックハンドは苦手だ。」という潜在意識が強化されてしまうのです。

もしこのとき、「セルフ・ワン」が静かにしていれば「セルフ・ツー」は驚くほどの潜在能力を発揮することができます。例えば、火事のようなとっさの場合に、人々が我知らず大変な力を発揮するのは、「セルフ・ワン」が働く暇がなかったために起こり得ることです。また、「ひとりでに身体が動いて、やることがすべてうまくいった」とか「自然に言葉が浮かんで、スムーズにものが書けた」というような状態は、「セルフ・ツー」を信頼した結果の顕著な例です。

しかし、「セルフ・ワン」を静かにさせようとして、「セルフ・ワン」の働きを意識的に静めようとするのは非常に難しいことです。というのも、普通われわれは、「セルフ・ワン」の働きを「セルフ・ワン」によって静めようとするからです。そこでゴールウェイ氏が提唱するのは、「セルフ・ワン」の注意を自意識や観念の世界ではなく、現実に変化する何らかの対象に向けさせることによって、「セルフ・ツー」の働きの邪魔をさせないようにする手法です。

今回、筆者がゴールウェイ氏を訪問した際に、ご自宅の庭で4時間ほどゴルフのコーチをしていただきました(筆者はこのときがゴルフ初体験です)。

まずゴールウェイ氏は、筆者に一度スイングをさせてみて、身体の感覚で気になるところがあるかどうかを尋ねられました。筆者が「左腕の付け根が硬いと感じます。」と答えると、「それでは、もう一度スイングをして、その後でスイングのどの部分で左腕の付け根が一番硬く感じたかを言って下さい。」というコーチングをされました。
すると、2~3回スイングをするうちに、左肩付近の硬さの変化に意識を向けているだけで、リラックスさせようという努力なしに自然に硬さが取れてきたのです。このようにして、筆者の「セルフ・ワン」は自分の体の中の感覚に集中し、最後には「セルフ・ツー」がひとりでにうまくスイングをするようになったのです。

また、うまく打とうとする「セルフ・ワン」の働きを忘れさせるために、「セルフ・ワン」を混乱させ、その働きをストップさせるというやり方も新鮮でおもしろいと思いました。最初のうち筆者は、ゴルフボールをうまく打とうして、全体のバランスを失ってしまいました。この時、ゴールウェイ氏はこうコーチしてくださいました。「今のスイングはどうでしたか?」「うまく打とうとして不自由でした」「完全な自由な状態を100%として、今のスイングの自由さは何%位でしたか?」「40%ぐらいです。」「それでは今度は、10%の自由さでスイングしてみて下さい。」

普通「セルフ・ワン」は、うまくやろうとする方向でしか働くことがないために、こうしたやり取りを行うと思考がストップしてしまって、何も考えられなくなります。筆者は、どうしたら10%の自由で振れるかなどと考えるのも面倒になり、「ええい、ままよ」とばかりにスイングすると思いがけないほどうまくスイングをすることができました。それは、「セルフ・ツー」だけでスイングした状態に他なりません。

通常の学習とインナー=ゲームにおける学習の比較

またゴールウェイ氏は、通常の学習とインナー=ゲームにおける学習の違いとして、下表のような比較をしています。

通常の学習 インナー・ゲームにおける学習
過去の行動を非難したりジャッジする(評定を下す) ジャッジせずに現在の行動を観察する
変化するように自分自身に言い聞かせる;言葉による命令を何度も繰り返す。 自分の望む結果を思い描く
懸命に努力する;正しくできるように自分を仕向ける その状態が自然に起きるのに任せる! 「セルフ・ツー」を信頼する。
結果に関して批判的な評定を下し、「セルフ・ワン」の悪循環が生まれる。 結果をジャッジせず、静かに観察することにより、継続的観察と学習が生じる。

参照:"The Inner Game of Tennis" (Revised Edition:Random House 1997)

最後に

5回にわたってティモシー=ゴールウェイ氏の「インナー=ゲーム」について書いて参りましたが、ゴールウェイ氏の言葉を紹介して、このシリーズの締めくくりとさせていただきます。

「インナー=ゲームの要諦はつまるところ、いかなる状況においても、理性では捉えきれない、生まれつき備わっている霊妙な働き(「セルフ・ツー」)を信頼して、人生を楽しむことにあります。体験を楽しむところにはおのずと学習が伴います。試合に勝つとか、同僚や上司に認められるというような、人生の本質とは無関係な外側のゲームを材料にして、インナー=ゲームを深めていきましょう。そして、皆さんがインナー=ゲームの勝者になられますよう、心よりお祈りしています。」

HVDリポート
1998年7月2日発行
発行人 高間 邦男
発行所 株式会社ヒューマンバリュー

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