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HVDリポートVol3 No.1  2002年1月1日発行

Eラーニング活用における人材開発の展望

経済状況がますます混迷を深める中で、各企業は更なる構造改革を迫られています。従来日本企業においては、人材教育はコストの一因として捉えられることも多く、景気が悪化すると最初にコスト削減の対象となり得るものでした。しかし、今日では新たなるナレッジやノウハウを生み出していくことこそが競争力の源泉であるという認識が高まっています。そして、ナレッジを生み出すインフラともいえる学習をやめてしまうことは、企業にとって命取りになることは経営層の常識になってきています。そうした学習を考える際、従来のような集合教育だけでは、組織全体の学習性を高め、質の高いナレッジを生み出すには十分とはいえません。組織のあらゆる部分でいつでもどこでも自律的に学習が行われ、ナレッジが生み出され、スピーディーに共有化されていく学習環境を創造することが、企業にとっての大きな課題となっているのではないでしょうか。

そういった学習環境を創造する1つの有効な手段として、ITの活用が挙げられます。それが昨今話題になっているEラーニングです。このEラーニングは、当初はコストのかかる集合教育の代替手段として脚光を浴び、さらにいつでもどこでもできる研修手段として議論されてきました。しかし、Eラーニングのコンセプトはさらに進んで、従来はばらばらに行われていた様々な研修や人事情報、コンピテンシーモデル、ナレッジマネジメント、コミュニティやプロジェクト活動、コーチングやメンタリングなどをEラーニングのプラットフォーム上で統合する方向に進みつつあります。こうしたEラーニングの方向性を正しく認識し、的確に判断する視点をもつことが、人材開発に携わり将来の政策を立案する立場にある方々にとって、重要なことかと思います。

そこで今回のHVDリポートでは、昨年、弊社のメンバーが参加した国内外のEラーニング関係のコンファレンスで発表された最新情報をもとに、Eラーニングとは何か、基本的な用語の理解、考察するための視点、今後の方向性などを平易に紹介したいと思います。


Eラーニングとは

Eラーニングという言葉は、1999年11月、米国フロリダ州にて開催されたTechLearn1999において初めて使用されました。それまではCAI、CBT、WBT、オンラインラーニング、遠隔教育など様々な名称で呼ばれていたものが「Eラーニング」という言葉に統合されたのです。それから半年後にはEラーニングという言葉が世界中に広まり、Eラーニングの導入は加速度的に進展しています。TechLearnと並び、全米で最大規模のEラーニングに関する国際コンファレンスである、OnlineLearning2001(カリフォルニア州ロサンゼルス、2001年9月29日~10月4日)のオープニング・セッションでは、米国では既に60%の企業が何らかの形でEラーニングを導入しているとの発表がありました。日本においても2001年7月と12月にe-Learning Forum 2001 summerとwinterがそれぞれ開催され、またインターネットには次々にEラーニングのサイトが立ち上がって来ており、まさに2001年はEラーニング幕開けの年といった感がありました。


Eラーニングの歴史

Eラーニングで目指す方向を捉えるために、まず、コンピュータを活用した学習がどのように進化し、現在のEラーニングに至ったのかを振り返っていきたいと思います。

70年代から80年代にかけて、パソコンの登場と共に教育に活用されたのがCAI(Computer-Assisted Instruction)です。パソコンへの物珍しさが学習者の興味を引き付けたものの、当時のCAIでは、受講者がマニュアルに従って最初から順番に学習を進めるといった単純な学習形式となっていたため、教材の内容と比較して受講者のレベルが高い場合には無駄が生じると共に、決められた順番でしかできないため、受講者にとっては退屈なものとなり、効果的な学習を十分に提供できているとはいえませんでした。

CD-ROMなどのパソコンの技術的な進歩を踏まえて、1980年代後半から登場したのがCBT(Computer-Based Training)です。CBTでは、教材をデータベースのように構成し、学習者自身が難易度や手順を設定しながら、自分に必要な部分や関心のある所を深く学習できるようになりました。またシミュレーションやビジネスゲームといった高度な学習システムも、このころから実現されるようになりました。CBTはそのマルチメディア性の高さから、現在でも学校教育や企業内教育の現場で、幅広く教育システムに取り入れられています。しかしながら、1980年当時にまだネットワークが普及していなかったため、教材の配布方法としては、CD-ROMやPCへインストールするといった方法が取られていました。そのため、ビジネスの変化のスピードが増すにつれて、提供する教材がすぐに陳腐化し、使いものにならなくなってしまうことが大きな課題となってきました。

90年代中盤から後半にかけて、ソフトウエアの進化とインターネットの普及が学習の提供方法を大きく変えました。インターネットやイントラネット等のネットワークを通して教育コンテンツを学習者に届けることにより、受講者が一同に遠隔講義を受講する同期型(ライブ型Eラーニング)やCBTでは実現し得なかった受講者が学びたいときに必要なコンテンツをダウンロードして行う学習が可能となりました。そこで注目を集めたのがWBT(Web-Based Training)でした。WBTとは、「文字や画像、音声など様々なメディアにハイパーリンクが貼られたドキュメントを手元のコンピュータの画面(ブラウザ)に表示し、それを通して自分で行う学習や訓練」をいいます。


Eラーニングの定義

近年では、CAI、CBT、EPSS*1(Electronic Performance Support System)、WBTに加えて、Knowledge Management System、衛星を使った教育、DVDなどを使用した教育コンテンツの配布、そして相互の会話を行うチャットや掲示板といったコミュニティを生成するグループウエアなど、効果的に学習をサポートする新しい選択肢が続々と構築されてきました。

Eラーニングとは、WBTを指すだけでなく、ITを活用した学習形態を統括する総称として捉えることができるでしょう。ASTDによると、「Eラーニングとは、明確な学習目的のために、エレクトロニクス技術によって提供され、可能とされ、伝達されるあらゆるものである。」(出展:Debi Scholar “The First Approach to E-learning”, Performance in Practice. ASTD, Spring 2001)と定義されています。

Eラーニングをどのように定義するかは人によって意見が異なりますが、上述の定義のように「IT技術全般を用いて学習目的を達成し、パフォーマンスを高める手段のこと」をEラーニングとするという見方が、米国では一般的なようです。


Eラーニングの効果

では、Eラーニングを活用することで具体的に何が可能となってきたのかを整理してみることにします。Eラーニングの効果・長所として一般に挙げられているのは以下のような点です。

時間と場所と人数の制約なしに学習を行うことができる。
各受講者のレベルに合わせて、必要なコンテンツのみを学習できる。
集合教育と比較して、トレーナー人件費や宿泊交通費などの費用が削減でき、安価に学習を提供できる。
紙教材では実現できなかった、マルチメディアを駆使したインタラクティブな教材の制作が可能となる。
知識の変化に合わせて、教材内容の更新をスピーディーに行うことができる 。
研修終了後にも受講者間やインストラクターとの間でインタラクティブなコミュニケーションが可能となる。
受講者情報や学習の進捗状況がリアルタイムに把握でき、学習管理が容易になる。
世界標準のプロトコルを用いることにより、教材の互換性、汎用性、および操作性が向上する。
これらの長所をうまく活かすことができれば、組織内にナレッジの活用や共有化、生成がなされる学習環境を構築することができるでしょう。Eラーニングを導入するにあたっては、これらの効果を十分に高めるようなプラットフォームをいかに築き、活用していくかのコンセプトを十分検討することが、成功の鍵となってきます。そこで、効果性の高いEラーニングを実現するためには、Eラーニングのプラットフォームをどのようなコンセプトのもとに構成していくのが望ましいのか、説明していきたいと思います。


効果性の高いEラーニングを実現するためのプラットフォーム

集合教育において教室や研修所といった教育を提供する場が存在したように、Eラーニングにおいてもコンテンツが受講者に提供されるプラットフォームが必要となってきます。こうした変化は、学習プログラムを伝達する手段が、教室や紙媒体といった物理的な手段から、デジタル技術を活用した手段に変わるということだけを単に意味するのではありません。

プラットフォームを活用することでコンテンツの提供だけでなく、ナレッジを効率的に活用し、パフォーマンスの向上に結びつくような効果性の高い学習環境を実現する場ができたといえます。ここでは、Eラーニングのプラットフォームの新しいコンセプトである「ラーニング・マネジメント・システム」や「ラーニング・コンテント・マネジメント・システム」、ならびにその核となる「ラーニング・オブジェクト」「SCORM」といった基本概念と、それらが生まれてきた背景を1つひとつ確認していきたいと思います。


Learning Object(ラーニング・オブジェクト)

従来までの集合教育や通信教育で使用される教材は、学習内容が一連のコースとしてパッケージ化されていました。これは、受講者が、同じものを同じように学習する時代においては、教材配布コストや効率といったことを考慮すると適したものだったといえるでしょう。しかし一方で、受講者のニーズやレベルが様々な状況にある中で、受講者が同じ教材を使用することは、学習効率上は理想的とはいえないものでした。そういった阻害要因をクリアできるように、Eラーニングでは「ラーニング・オブジェクト」という考え方のもとで、教材制作が行われます。

「ラーニング・オブジェクト」を簡単に定義すると、「コンテンツやテストを含んだ、学習を構成する情報群の基本単位」となります。本に例えれば、章、節、項といった本を構成する一部分のことを指します。Eラーニングにおいては、教材をコースごとにパッケージとして一括し作成するのではなく、ラーニング・オブジェクトを定義することで、各章ごとに独立した教材を作成することができます。また各ラーニング・オブジェクトには、その属性(タイトル、更新日時、内容、難易度等)を示したメタデータ*2をタグづけし、分類します。つまりラーニング・オブジェクトを図書館の本に例えると、メタデータは本の属性を表すインデックスであるといえます。これにより、受講者が真に必要なもののみをデータベースの中から検索し、受講することが可能となり、コース時間の短縮、ひいては学習性の向上に大きく貢献することになります。


ラーニング・オブジェクトの活用とそのデザイン

コンテンツの中には、日々中味の情報が更新されるべきものもあれば、何度でも再利用できるものもあります。ラーニング・オブジェクト単位で制作されたコンテンツは、それぞれが独立した構成になっているため、教材の一部分を他の教材で再利用することが容易となります。このように、あるコース中のラーニング・オブジェクトを別のコースで再利用することをRLO (Reusable Learning Object)と呼びます。またコンテンツの一部分をカスタマイズしたり、他のプラットフォーム上のラーニング・オブジェクトを別のプラットフォームで使用するといったことも可能になります。

しかしながらRLOにおいては、1つひとつのオブジェクトを独立したものとして扱うので、各オブジェクトの学習目的とそれを達成するためのデザインが明確になっていないと、受講者にとって意味のあるものにはなりません。米国においては、このラーニング・オブジェクトをいかにデザインするかに関して、RLOを導入している各社が様々な取り組みをしているようです。米国で最も先進的にEラーニングに取り組んでいる企業の1つであるシスコ社では、学習目的をまずConcept、Fact、Procedure、Principle、Processの5つの項目に分類します。そして、それぞれの項目を学習するのに最も適した手順を踏めるようなデザインをラーニング・オブジェクトの中に組み込むことで、効果的な学習が行われることを促進しています。RLOを活用するためには、やみくもにラーニング・オブジェクトを制作するのではなく、学習目的を明確にし、それに合ったオブジェクトのデザインをしていくことが必須となってきます。

現在の日本においては、米国と比較してEラーニングのコンテンツの量が少ないため、RLOの概念は一般的にはまだ受け入れられないかもしれません。しかしながら、今後コンテンツの量が増大化していくにあたり、コンテンツの管理、制作効率の観点からも、RLOの概念を取り入れていくことが、Eラーニングの効果を最大化するために必要となってくるでしょう。


Learning Management System(ラーニング・マネジメント・システム)

Eラーニングの実現に向けて、ラーニング・オブジェクトの次に必要なのは、そのコンテンツを適切に受講者の元へ届けるプラットフォームです。Eラーニングにおいてそのプラットフォームの役割を担うのが、ラーニング・マネジメント・システムです。(以下LMSとする)

LMSとは、その名が示す通り「学習を管理するシステム」を指します。その機能としては、データベース上のラーニング・オブジェクトを、メタデータにより管理し、受講者が選択したラーニング・オブジェクトを確実に受講者の元へ届けたり、受講者の学習の進捗状況などの情報を管理する役割などが挙げられます。以下にLMSによってどのようなことが具体的に可能となるのかを、受講プロセスに沿って列挙してみました。

コース一覧をカタログとして提供し、受講者が自分に必要なコースを選択できる。
コースの受講登録ができる。
登録されたコースを受講者が必要とするときに配信することができる。
受講者の学習状況の進捗管理を行うことができる。
コース受講後の試験結果などをトラッキングし、受講者のレベルの推移を把握することができる。
テストの解答率やコースの修了率などを分析し、コンテンツの適性を評価できる。
このような機能を有するLMSは、Eラーニングによる学習効果を高めるツールとして必須となるでしょう。

現在日米両国において、多くのプラットフォームベンダーが存在し、独自のサービスを展開しています。しかし、現在米国でEラーニングを導入していない企業の44%が、その理由として高い初期コストを掲げているように、LMSを自社サーバー上に構築すると、規模によっては相当な経費がかかります。そのようなニーズから最近では、LMSを自社サーバーではなくインターネット上のASP(アプリケーション・サービス・プロバイダー)で提供しているベンダーも数多く現れ、高い評判を得ています。

一方でグローバルにビジネスを展開する大企業などでは、部署やプロジェクトごとではなく、エンタープライズ・レベルでLMSを導入し、すべての受講者を一括して管理できるような高度なサービスへのニーズも高まっています。このように今後は各企業のニーズに合わせて、さまざまな形態でのLMSの導入が図られるようになるでしょう。


Learning Conten Management System (ラーニング・コンテント・マネジメント・システム)



これまで、Eラーニングのプラットフォームは、上述したLMSが一般的でした。しかし、Online Learning2001 Conference & EXPOでは、ラーニング・コンテント・マネジメント・システム(以下LCMSとする)という新しいプラットフォームに関する概念が大々的に紹介され、今後のビッグ・ビジネスになるだろうとの発表がなされました。それではこのLCMSとはどのようなプラットフォームなのでしょうか。

米国のシンクタンクBrandon-hall.comによると、「LCMSとは、学習コンテンツの作成、蓄積、再利用、管理、および配布を目的とした、複数の開発者のための開発環境である」と定義づけています。つまり、これまでのLMSが主に、受講者の進捗状況や成績の把握といった受講者管理の機能を第一の目的としていたのに対し、LCMSでは、複数の人間がコンテンツの開発に関わるプラットフォームを提供し、コンテンツ貯蔵庫の中で適切にコンテンツを管理することを第一の目的としています。LMSが本の借出者や貸出状況をチェックする図書館の司書の役割を果たしているのに対し、LCMSは書籍の収集や書棚の整理をする役割を参加者が果たしているといえます。以下に具体的にLCMSで可能となることを列挙してみます。

オーサリングの機能がプラットフォームに組み込まれており、プラットフォーム上で多くの人が現場でラーニング・オブジェクト単位でのコンテンツを制作できる。
オーサリングソフトで、容易にメタデータのタグづけができる。
ラーニング・オブジェクトの高度な検索機能をもっている。
ラーニング・オブジェクトが中央データベースに保管され、複数の人間がアクセスし、コンテンツの開発を行うことができる。
中央データベース上のラーニング・オブジェクトの貯蔵庫から適切なラーニング・オブジェクトを選択し、1つのコースとして統合することができる。
HTML、CD-ROM、EPSS、紙教材といった複数のアウトプットのフォーマットをとることができる。
これらの機能を併せ持つLCMSの導入が進むと、自社内のナレッジを現場でコンテンツ化することができると共に、速やかに学習プログラムに変換したり、コラボレーションによって内容のレベルを上げていくことができます。環境変化や技術の進展が速い業界のナレッジワーカーが、自律的に学習を進めていく上では必須ツールになるかもしれません。2002年には、日本にもLCMSベンダーが登場し、今後は多くの企業が導入すると思われますが、それを活用するような文化を形成していかないと効果は出てきません。システムの導入と共に、お互いに共有し貢献し合うような意識への改革と、それを推進するリーダー養成などのマネジメント上の取り組みが必要になってくると思われます。

SCORM(Sharable Content Object Reference Model)

これまで述べてきたように、メタデータによって属性が記述されたラーニング・オブジェクトをLMSまたはLCMSといったプラットフォーム上で管理することにより、高度に効率化された学習システムを築くことが可能となります。しかしながら、もしメタデータの記述方法や、受講者へコンテンツを届ける方法が各プラットフォームによって異なるとしたら、異なるプラットフォーム間でコンテンツを共有することができなくなります。そこで必要となるのが、メタデータの記述等に関する世界共通のルール(プロトコル)を作り、標準化することです。こうしたEラーニングコンテンツの標準規格として、2000年1月にリリースされたのがSCORM Ver.1.0です。

SCORMとはSharable Content Object Reference Modelの略であり、Eラーニングのコンテンツを異なるプラットフォーム間でシェアするための取り決めを指します。具体的には、“Content Aggregation Model”、および“Run-time Environment”の2つの取り決めにより構成されています。前者がラーニング・オブジェクトによる教材の構成方法に関するルールを示しているのに対し、後者はコンテンツを提供するサーバーと、それを受け取るクライアントとのコミュニケーションの方法に関するルールを定義しています。

Eラーニングに関する標準化の動きは、SCORMに先立って、AICC、IEEE、IMSといった他の標準化団体がそれぞれ独自に進めてきましたが、アメリカ国防省により発足したADL(Advanced Distributed Learning)の掛け声により、コンソーシアム(協会)を組んで、各規格の強みを抽出して統括するべく、SCORMが登場することになりました。

ADLがSCORMの普及により標準化を目指す目的は、ひとえに高い品質のコンテンツをいつでもどこでも提供できるようになることにあります。SCORMに準拠したコンテンツ、およびそれを管理するLMSが普及することにより、コンテンツの互換性や再利用性が高まることでコンテンツの価値も増し、それによってEラーニング市場も活発化するだろうと予測されています。

現在SCORMは開発途中段階にあり、2001年12月現在の最新のものとしては、SCORM Ver.1.2がADLのホームページ上で無料配布されています。ADLによると、今後さらなる構成の簡略化、シミュレーションや同期型学習システム等の標準化、あるいは事前テストの結果などから自動的に個々のレベルに合わせたコースを設定するナビゲーション規格の導入といったことが課題となるとされています。

標準化の開発が進む一方で米国では、標準化の議論が先行し、肝心のコンテンツのクオリティが高まっていないことに対する懸念の声も上がり始めています。Online Learning2001の基調講演にて、Allen Interactions社CEOのマイケル・アレンは「ごみはいくら整理しても扱いやすいごみにしかならない」とクオリティの高いコンテンツをつくることに力を注ぐことの重要性を訴えていました。Eラーニングを一過性のものとしないためにも、標準化の議論を進めると同時に、コンテンツのクオリティをいかに高めるかを真剣に議論していく必要があるといえます。


統合プラットフォームの構築に向けて

これまでEラーニングを効果的に進めるにあたって必要となるプラットフォームについて述べてきました。しかしながら、今後Eラーニングと組織の戦略との整合性を取るためには、Eラーニングのプラットフォームと他の情報システムとを統合していく必要性があります。 OnlineLearning2001のコンファレンス議長を務めたグロリア・ゲイリーは、基調講演の中で、「現状では、企業ポータル、Eラーニング、ナレッジ・マネジメント・システム、EPSS等のEリソースがばらばらに存在している」と述べ、それらを統括したシステムの必要性を訴えていました。ゲイリーの言葉に象徴されるように、学習や人事に関する情報システムは、各自が個別に機能していて、その整合性が取られていないのが現実です。実際に、現時点ではナレッジ・マネジメント・システム上のコンテンツをEラーニングのプラットフォーム上で見ることはできていないのです。そこで今後はこれらを統合したプラットフォームを構築していく必要があります。

具体的な例を挙げると、2001年7月に、世界的なERPベンダーのSAP社が、同社製品のmySAPとLMSとを連携させた新しいソリューションを2002年より試験的に展開することを発表しています。これによりEラーニングにおける学習進捗管理などを人事システムと組み合わせることで、効果的な人的資源管理が可能になるといわれています。またOnline Learning 2001で紹介されていたLCMSの中には、同じプラットフォーム上でEラーニングのコンテンツに限らず、ナレッジ・マネジメント・システムやEPSS上のオブジェクトも一元管理できるよう統合したシステムも登場し始めています。こうした統合は将来的には、EラーニングとEPSSやナレッジ・マネジメントだけではなく、人事システムのコンピテンシーモデルや目標の管理制度(MBO)等を包含するようになるでしょう。 現在では、各企業で機能別にばらばらに検討されているこれらのシステムが将来的には一本化されるとしたら、Eラーニングへの取り組みもタコツボ化しないように、機能別の組織の壁を超えて協働して将来ビジョンを検討する必要があるでしょう。

ここまで効果性の高いEラーニングをどう実現していくのが望ましいのかについて述べてきました。しかし2002年の現段階では、多くの日本の企業でのEラーニングの捉え方は依然として通信教育の延長といった観念が抜けきれていなかったり、単なる集合教育の置き換えとして捉えられていたりと、継続的に組織のナレッジを高め、パフォーマンスを向上させる手段として位置付けられるところまでは行っていない感があります。今後Eラーニングを実際に組織において効果的に推進するには、なぜEラーニングを行うのかという目的と、Eラーニングによって従業員にどんな学習体験や学習環境を提供しようとしているのか、そしてそれを実現するためにはどのような仕組みを構築していかなければならないかのコンセプトを徹底していく必要があるといえるでしょう。


米国のEラーニング・コンファレンスに関するサイトの紹介

なお、OnlineLearning2001とTechLearn2001に関する詳しいレポートは、弊社ホームページ上にて公開しています。
OnlineLearning2001参加報告
TechLearn2001参加報告

コンファレンスの主なホスト

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