市民参加の取り組み

事例4:小田原市の事例 2.取り組みの詳細

  1. 取り組みの背景
  2. 取り組みの詳細
  3. 振り返り

シナリオプランニングのねらい

小田原市のシナリオプランニングの取り組みでは、平成23年から平成34年の間に、小田原市が歩む可能性があるプロセスを、総合計画を構成する37の施策ごとに、複数のストーリーとして描くことにしました。そして、シナリオプランニングを導入することで、大きく次の3点を実現することを目指しました。

  1. 小田原市の将来に対する市民の意識を高める
    小田原市が取る政策の方向性がどのような社会を実現するのかについて、人々が理解・共感しやすいシナリオとして描き、提示することで、市民が自分たちの将来について考えたり、選択したりすることを支援する
  2. 小田原市の将来に対する行政職員の視野を広げる
    小田原市の未来を生み出す物語としてのシナリオを作成するプロセスに担当所管の壁を越えて職員が参画し、話し合いを行うことで、視野を広げ、総合的に小田原市の行政を捉えていく意識が高まる
  3. 小田原市の将来に対する貢献を自覚する
    小田原市のより良い未来の創造や、持続可能な市民自治のまちの実践に向け、市民や職員がどのような貢献をしていくのが望ましいのかをシナリオの作成を通して自覚することができる

重視した運用のポイント

シナリオプランニングの取り組みを通して目指したい姿を実現するために、運用にあたっては、以下のポイントを重視することにしました。

  1. できるだけ多くの人が参加できるようにする
    多くの職員と垣根を越えて対話する機会を設ける
    シナリオの作成過程をオープンにする
    シナリオの内容をシンプルにする(専門性が高くない人でも関わることができる)
  2. 視座が高まるようにする
    既存の考えをそのまま書き写すのではなく、対話や相互作用を通しての、発見や学習、視点の変化、意識の高まりなどを大切にする

シナリオ準備セッションの実施

上記ポイントを実現するために、シナリオプランニングを行うにあたって、できるだけ多くの職員がシナリオづくりに参加できる機会を設けることにしました。その一つが「シナリオ準備セッション」です。このシナリオ準備セッションとは、各施策の担当者がシナリオを描く前に、施策(テーマ)についてできるだけ多くの人々が参加して対話を行い、深堀りすることで、視野を広げる機会です。

自分以外の複数の人にシナリオ作成に参加してもらうことで、様々な人のアイデアを計画作りに活かすことが可能となります。具体的には、施策(テーマ)について、「過去にどんな変化があったか」「現在施策(テーマ)に影響を与えている要因やトレンド(趨勢・潮流)は何か」「どんな未来を実現したいか」「実現したい未来に向けてどんな道筋が考えられるか(未来ストーリー)」といった観点から4~5時間をかけて、みなで話し合いを行い、シナリオを作成する素材を得ていきます。

シナリオ準備セッションの開催にあたっては、セッションを進めるためのファシリテーション・マニュアルを開発すると共に、担当者が各職場でセッションを実施する方法を体験的に学習する機会(ワークショップ)を提供しました。その後、37の施策(テーマ)ごとに、各職場で準備セッションが開催され、総勢で約350名の職員が参加しました。

シナリオ準備セッションの様子
シナリオ準備セッションの様子
各職場で多くの対話が行われた

シナリオの作成プロセスをオープンに

シナリオ準備セッションで得られた素材をもとに、各職場では担当メンバーが施策についてのシナリオを作成しました。こちらもその作成プロセスをできるだけ庁内にオープンにして、多くの人々が協働しながら作成できるようにしました。たとえば、「シナリオ・スペース」という空間を庁内に設けて、作成中のシナリオを職員がいつでも閲覧し、フィードバックできるようにしました。

また、「シナリオ・ノート」と呼ばれる取り組みも行われました。これは、作成中のシナリオをノートに貼り付け、回覧板方式で、次から次へとノートを回し、職員がシナリオに意見を書き込むためのノートです。すべてのシナリオについてのノートが庁内を回りました。そして、自分たちが歩んでいく未来が描かれたシナリオを見て、多くの人がコメントを書き込みました。たとえば、「シナリオを読みながら、その内容に引き込まれていきました……」「楽観的シナリオと悲観的シナリオがありましたが、自分たちの今行っている歩みを止めてしまったら、悲観的なシナリオが実現してしまうのではないかという恐れを感じました」「小田原市職員としてできること、できないことを一人ひとりが真剣に考えなければいけないと思います」「ゼロからの試みでこのようなシナリオを作成できたことは本当に素晴らしいです。シナリオを読ませていただきながら、いろいろな考えやアイデアが浮かびました」など、様々なコメントがありました。共感の言葉や、気づいたこと・発見したこと、そしてより良いシナリオへのフィードバックが、シナリオの質の向上に貢献していきました。

多くの人の手によってシナリオのたたき台が完成した後に、小田原市長や副市長をはじめとした理事者へ発表が行われました。3日間をかけてすべてのシナリオに目を通し、市長や副市長、担当する職員を交えて闊達な話し合いが行われました。

庁内オープン・スペース・ミーティング~開かれた対話・新しい小田原へ~

そして、描かれたシナリオをもとに、今後の小田原市をどうしていきたいのかについて役割や組織の垣根を越えてオープンに話し合うことによって、より良い小田原市の未来を創る場として、庁内で「オープン・スペース・ミーティング」を開催しました。
(※ヒューマンバリューでは、ハリソン・オーエン氏が開発したオープン・スペース・テクノロジーという組織開発の手法に基づいて企業や行政の中で行われるミーティングを「オープン・スペース・ミーティング」と呼んでいます。オープン・スペース・テクノロジーについて、より詳しくは「こちら」)

このミーティングでは、自分たちが話し合いたいテーマを自由に掲げながら、自律的に話し合いが行われていきます。今回は市長を含めた139名の庁内の職員が一堂に集い、「子育て支援」「みんなにやさしい町、小田原市とは?」「小田原の文化遺産市民文化をまちづくりに生かすには?」「これからの小田原市職員について」など、参加者が情熱をもてる26のテーマが掲げられ、話し合いが行われました。最後には、特にみなの関心の高かった、「駅前」「市民との協働」という2つのテーマについて、参加した全員で話し合いを行い、共通の方向性を生み出していきました。

庁内オープン・スペース・ミーティングの風景
庁内オープン・スペース・ミーティングの風景

シナリオの完成

こうした様々な職員参加の取り組みを経て、小田原市の新総合計画における37のシナリオが完成しました。完成したシナリオは、小田原市のホームページで公開されています。
小田原市:総合計画のシナリオづくり

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