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ダイアログ
ダイアログとは?
「ダイアログ」という言葉をヒューマンバリューでは、参加者が自分の立場や見解に固執することなく、そのときどきのテーマを共に探求するプロセス」と定義しています。「意味が流れる」ということを示す「ディア・ロゴス」というギリシャ語に語源をもつ「ダイアログ」は、人々の間を自由に意味が流れるようなコミュニケーション方法のことを指しています。
現在、組織における話し合いの方法として注目を集めている「ダイアログ」は、アインシュタインの後継者と言われた米国の物理学者であったデヴィッド・ボーム博士が中心になって開発されたものです。ボーム博士は、量子理論に基づいた人間の思考プロセスの研究を行う中で、現代のソクラテスと呼ばれたクリシュナムルティ氏との対話を繰り返し、さらに、英国の社会心理学者のパトリック・デメア氏のワークとの出会いを経て、「ダイアログ」の手法を開発していきました。
その後、ダイアログは様々なグループによって研究・実践されました。特に1990年代に入ると、MIT(マサチューセッツ工科大学)のSoL(組織学習委員会)の研究グループによって、ダイアログは「ラーニング・オーガニゼーション」の中心的なプロセスとして位置づけられ、欧米の企業・組織を中心に広がり、大きな成果を上げるようになりました。
ダイアログが求められる背景
現在の私たちを取り巻く複雑な環境の中で起きている様々な問題を解決するにあたっては、ある一部の人が話し合いを行い、最適解を見つけ出し、解決策を選択するという方法が、成果を生み出しづらくなっています。その理由としては、変化が速く、複雑性も高いため、誰も正解を知らないことによります。また、選択された解決策が必ずしも効果を上げないために、決定者の正当性が担保されないことがあります。さらに、組織のメンバーやステークホルダーの自由や主体性に対する意識の高まりから、決定の場に参画してもらっていないと、積極的な取り組みを引き出すことができなくなってきました。
そこで、関わる全ての人々が、オープンに語り合うことで、立場を超えてお互いの背景や想いを理解し合い、共に考え、コンテクスト(文脈)を共有していくことの重要性が高まってきました。そのような話し合いのプロセスが「ダイアログ」なのです。
探求を深めるダイアログの話し合いとは
ヒューマンバリューでは、ダイアログを「参加者が自分の立場や見解に固執することなく、そのときどきのテーマを共に探求するプロセス」と定義しています。
ダイアログを理解するためには、次に挙げる「ディスカッション」との対比を考えてみるとわかりやすいでしょう。
ディスカッションの語源は「パーカッション(打楽器)」と共通の語源をもち、意見を主張してたたき合い、何か1つの最適解への同意を得ることを重視しているといえます。一方ダイアログは、自らの仮説を保留して出来事や意味をオープンに語り合い、さらに深い探求の結果、新しい行動や知識、意味が生み出されることを大切にした話し合いのあり方です。

ダイアログの特徴
探求の話し合いであるダイアログは、その深まり方に特徴があります。南アフリカやグアテマラ政府で共有ビジョンやシナリオ・プランニングの取り組みを支援したアダム・カヘン氏は、話し合いには4つのフェーズがあると提示しています。

最初のフェーズは「儀礼的会話(トーキング・ナイス)」です。このフェーズでは、誰しもが当たり障りのない発言を繰り返し、本音が語られることはありません。そこでは自分の考えの枠組みに固執し、相手の意見が自分の考えに合わない場合には、耳を閉ざして聞こうとはしていません。そこでは、相手から気づきを得たり、新たな発見を生み出すということは難しい状態です。
儀礼的会話から、少しずつ本音を吐露してもよいという安心感が場に生まれると、次のフェーズである「論争(トーキング・タフ)」へと移ります。ここでは参加者同士が、自分が思っていることを率直に出し合い、意見をぶつけ合うディスカッションが行われます。このときは、最適な1つの解を見つけるためにお互いが意見を対立させながら話し合いを行います。ややもすると、自分が正しく相手が間違っているといった主張がされがちです。そのため、立場の異なる少数意見をもった人やオーソリティーの低い人の意見は聞き入られにくく、その結果、妥協や服従を強いられることがあります。圧力が強いと、会話は儀礼的会話に戻ってしまいます。
多くの企業や組織で行われている会議やミーティングでの話し合いは、この2つのフェーズを行ったり来たりしているのではないでしょうか。こうした状態では、参加者全体の思考能力や創造性を引き出すことは難しいのです。
そこで、第2フェーズでお互いの意見の違いを受け止めることができると、第3フェーズに進みます。相手の考え方の違いや背景を理解し、より大きく問題の全体状況を捉えることができると、その全体システムの一部分を自分が責任をもっていることに気づくようになります。自分自身をシステムの一部として捉え、自分の内面を見つめながら、相手と話ができるようになると3番目のフェーズである「内省的ダイアログ(リフレクティブ・ダイアログ)」に入ることができます。その後、異なった見解をもった人々の間の対立的なエネルギーが、自分たちがこれまでもっていた見解を捨て去って、共に本当に重要なことを探求しようというエネルギーへと昇華していきます。
そうすると、これまでにはなかった新たな意味や方向性が生まれる4番目の「生成的ダイアログ(ジェネレイティブ・ダイアログ)」になっていきます。
ダイアログのゴール
ダイアログを実践して感じる難しさは、自分たちがダイアログをできているかどうかという確信が得られないことです。以下のような変化が見られたら、ダイアログができていると捉えてもよいかもしれません。
- 話し合いに自然な流れが生まれ、深まっていった
- お互いの考えや想いが響き合っていた感じがする
- お互いをより深く理解することができた感じがする
- より良い協働関係を築くことができた
- 深い気づきを得て、自分の認識・見方が変わった
- 個人のレベルを超えた新しい知識の創造や発見があった
- 参加者の中に新しい目的意識やビジョンが共有された
- 参加者の中に共通の価値観が生まれ、それに対するコミットメントが高まった
- すべての参加者がそこにいることに安心感があり、認められている感じをもっていた
組織の中で安全で確実な成果を生み出すダイアログの手法
大変効果の高いダイアログですが、忙しい組織の中でこれを実践することは、難しいものです。ダイアログを進める原則を守って行えば、数日間の話し合いによって効果は出てきますが、途中で起きる様々な障害を乗り越える技量をもったファシリテーターが必要になります。たとえば、オープンな対話の場を社内で設けても、結局話している人はいつも同じで、コミュニケーションのパターンは変わっていなかったり、「本音で何でも話していいですよ」と言ってみても、不安で誰も口火を切らないとか、逆に日ごろたまっている不平不満を吐き出す場になってしまったり、時間を取って話していても表面的な話に終始して、深まらないといったことにならないようにしたいものです。
そのような事態を起こさずに、できるだけ高い確度で内省的・生成的ダイアログに入れるように、ダイアログのやり方は、ボーム博士が開発した当初から大きく進化してきました。そういった「場」と「プロセス」が設計されている代表的な手法には、アプリシエイティブ・インクワイアリー(AI)、オープン・スペース・テクノロジー(OST)、ワールド・カフェ、フューチャー・サーチ、マス・ストーリーテリングといったものがあります。
これらを効果的に活用することで、短い時間で一体感を生み出したり、問題解決を行ったりすることが可能になりました。
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