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マインドフルネス

瞑想やハピネス、コンパッションをはじめとして、マインドフルネスに関わる事柄が企業の中で実践されつつある。マインドフルネスの外観について、ここでは紹介する。

マインドフルネスとは

マインドフルネスについては、仏教や心理療法、スピリチュアルリーダーなどさまざまな分野において定義されているが、人材開発・組織開発の文脈では、マサチューセッツ大学のジョン・カバット・ジン博士の提唱する「the awareness that arises through paying attention on purpose in the present moment non-judgmentally(今の瞬間に意図的にかつ判断・批判なく注意を向けることで浮かぶ意識の状態)」というのが引用されることが多い。意味合いとしては、「過去や未来ではなく、今というこの瞬間に意識を置き、しっかりと集中する」という意味で語られている。
マインドフルネスを実践することで、心理的疾患の緩和や、社会的ストレス要因の軽減、注意力、記憶力の向上などの効果が得られるといわれている。

マインドフルネスの広がりと、その背景にある要因

ビジネスの文脈において、マインドフルネスに注目が集まった1つのきっかけとして、Google社の20%ルールを通して2007年に生まれた、「サーチ・インサイド・ユアセルフ(SIY)」がある。SIYは、マインドフルネスに基づく、いわゆる「EQ(情動的知能)」のカリキュラムであり、全世界20カ国以上で翻訳されている。このブームをきっかけとして、インテルやIBM、スターバックスなど多くの企業でマインドフルネスが取り入れられるようになりました。その他、2013年に開催された世界経済フォーラムにおいて、マインドフルネスのセッションが導入されたり、また、2014年2月に発売されたタイム誌では、「マインドフル革命(The Mindful Revolution)」として特集されたり、イギリスではマインドフルな国家になるという宣言が2015年に出されているなど、政治や経済、国家でも関心が高まっている。日本においては、2016年ごろから、マインドフルネスへの関心は高まりつつあり、国内の企業でもマインドフルネスを導入する企業が増えている。

これらのマインドフルネスの広がりの背景に何があるのだろうか。さまざまな要因は考えられるが、2018年に開催されたATDでは、次の3つの要因が語られていた。

1つ目は、デジタル・トランスフォーメーションが進む中で、SNSやインターネットに常時つながっている状況が増え、情報量が多くなり、そのために脳が常に作動し続け、注意散漫になりやすい環境に置かれていることがある。
2つ目には、脳科学の進化によって神経可塑性が明らかになり、マインドフルネスによって、生産性やクリエイティビティがより高まることが明らかになった。
3つ目には、働く一人ひとりが、仕事そのものにハピネスを感じ、ウェルビーイングを大切にして働くことが重要になってきたことが挙げられる。

マインドフルネスの可能性

VUCAやディスラプティブと形容される時代においては、ビジネスのスピードは速まり、交流される情報量がますます増えるにつれ、認知的な負荷もまた高まっています。そんな時代だからこそ、マインドフルネスの実践を通して、「今この瞬間に、自分自身が何を感じているのか」という気づきを高め、「この場に集中し、より良い選択をする」ことが重要になりなると思います。人材開発・組織開発においても、マインドフルネスの観点を取り入れることで、思考の枠組みの柔軟性や感情的知性などを育んでいくことができるのではないでしょうか。

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