コミュニティ型人材成長企業を体現する「学びの場づくり」〜NTTテクノクロスの取り組みより〜

ヒューマンバリューでは、創立40周年を機に、ご縁の深いクライアントのみなさまとの多様な変革の実践を「共創ストーリーズ」として発信し、これから変革に取り組もうとする方々へのヒントをお届けしています。
第4弾となる今回は、NTTテクノクロスが取り組む、マネジメントおよびキャリア開発における「学びの場づくり」のストーリーです。NTTテクノクロスでは「コミュニティ型人材成長」をキーワードに、仲間同士が切磋琢磨しながら学び合い、成長し続ける組織づくりを進めてきました。本記事では、ヒューマンバリューと長年にわたり協働してきた「未来を切り拓くリーダーシップ・マネジメント研修」や「生成的キャリア研修」の取り組みを紐解きながら、学びの場づくりをラーニング・カルチャーの創造へとつなげるポイントを探っていきます。
お話を伺うのは、2024年度まで人材開発部門長として取り組みを牽引してきた堺寛さん(現・営業推進部門長)と、現在人事部人材開発部門において多様な研修の企画・運営を担っている仲野文弘さんです。対談のお相手は、これらのプロジェクトに伴走してきたヒューマンバリューの阿諏訪博一さん、菊地美希さんが務めます。
共創ストーリーズ#4
コミュニティ型人材成長企業を体現する「学びの場づくり」
〜NTTテクノクロスの取り組みより〜
<目次>
1. コミュニティ型人材成長企業を目指して
2. 未来を切り拓くリーダーシップ・マネジメント研修─ フィードバック・コミュニティの中で育つリーダーたち
3. 生成的キャリア─ 機会から学び、意味を紡ぎながらキャリアを育てる
4. コミュニティ型人材成長のカルチャーは、どう育まれるのか―2つの学びの場から見えてきたポイント
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1. コミュニティ型人材成長企業を目指して
NTTテクノクロス株式会社は、NTTの研究所の技術を軸に、世の中の先端技術やサービスを掛け合わせ、コンサルティングから設計、システム開発、運用・保守までをトータルでサポートするソフトウェア開発企業です。2017年にNTTソフトウェアとNTTアイティが合併するとともに、NTTアドバンステクノロジの音響・映像事業の一部譲渡を受けて誕生し、2025年4月時点では約2,000名の社員が在籍しています。
同社は、Great Place To Work® Institute Japanが実施する調査において、4年連続で「働きがいのある会社」に認定されるなど、従業員のエンゲージメント向上や人材開発にも継続的に取り組んできました。
そうした取り組みの中で、人材開発部門が掲げているのが「コミュニティ型人材成長」というビジョンです。社員一人ひとりが自ら学び続けると同時に、仲間同士が刺激し合い、高め合っていく――そんな学びの循環が生まれる組織を目指しています。
社員が主体となって運営するさまざまなコミュニティや、継続的な学びを支える豊富な研修カリキュラムに加え、社内の技術者自らが講師となって知見を共有するコミュニティ型の技術者育成の仕組みも整えられてきました。さらに、そうした主体的な学びが組織全体に広がっていくよう、ピープル・マネジメントやチーム・マネジメントのあり方についても、試行錯誤を重ねながら取り組みが進められています。
こうした「コミュニティ型人材成長」を掲げた背景について、堺さんは次のように語っています。
堺さん:
もともと当社には、コミュニティを通じて学び合う強さがあると感じていましたが、人材開発部門の仕事に携わる中で、それこそが当社の大きな特徴であり、強みなのだという確信が強くなっていきました。人事が一方的に育てるのではなく、本人の中にある『成長したい』という思いが立ち上がり、同じ組織や技術領域の仲間同士が切磋琢磨しながら高め合っていく。そうした環境を、人材開発や組織開発の側面から支えていきたいと考えていました。
たとえば、最初に人事部へ異動して1-2年目頃に企画した研修では、『これまでに出会った理想の上司はどんな人だったか』という問いを投げかけ、4〜5人のグループでそれぞれの経験を語り合ってもらいました。その上司はどんな関わりをしていたのか、自分はどんなマネジメントを受けてきたのか――。そうした個々のエピソードを持ち寄りながら、『良いマネジメントとは何か』を言葉にし、対話を通じて共有していく。そのプロセス自体がとても豊かで、知識を一方的に教わるのではなく、コミュニティの中で学び合うことの力を改めて実感した場でもありました。

写真:営業推進部 営業推進部門 部門長 堺寛さん
(2008年から2011年まで人事部マネージャー、
2021年から2025年6月まで人材開発部門長を務める)
また、現在人材開発部門で多くの研修企画に携わる仲野さんは、コミュニティ型の学びを機能させるためには、「目的を共有すること」が欠かせないと語ります。
仲野さん:
いろいろな階層の研修を企画する中で、改めて強く感じているのが、目的をきちんと伝えることの大切さです。研修をどれだけ丁寧に企画しても、『言われたから受ける』という形になってしまうと、学びは広がりません。『何のためにこの研修を行うのか』『何を持ち帰ってほしいのか』をきちんと共有した上で、関わるメンバーと一緒に研修をつくっていく。そうした意識は、チームの中でも少しずつ共通のものになってきていると感じています。

写真:人事部 人材開発部門 担当部長 仲野文弘さん

NTTテクノクロスが掲げるコミュニティ型人材成長企業のイメージ
(自律的スキルアップに加え、プロジェクト/コミュニティでの実践による動的な学びで成長)
2. 未来を切り拓くリーダーシップ・マネジメント研修
── フィードバック・コミュニティの中で育つリーダーたち
コミュニティの力を生かした人材成長に取り組んできたNTTテクノクロスが、ヒューマンバリューと協働しながら、20年にわたって継続的に力を入れてきた研修があります。それが、「未来を切り拓くリーダーシップ・マネジメント研修」です。
本研修は、マネジメント職への昇格を目指すメンバーを対象に、組織のリーダーとして求められるマネジメントのあり方を学ぶと同時に、自身の強みや弱みを深く掘り下げ、「自分らしいリーダーシップとは何か」を探求することを目的としています。時代や組織の状況に応じて、目的や形、名称を少しずつ変えながらも、その本質は一貫して受け継がれてきました。
プログラムは、合宿形式での集中セッションと、その約2か月後に行われるフォローセッションを軸に構成されています。2024年度からは、より参加しやすいよう1日の所要時間を短縮し、3日間に分けた通いの研修として実施する形へと進化しました。
研修では、自身のマネジメント行動の振り返りや、リーダーとしてのパーパス・ビジョンの具体化、NTTテクノクロスが抱える構造的な課題の探求、さらにはシナリオプランニングなど、多彩なテーマに取り組みます。参加者はグループの仲間と対話を重ねながら学び合い、各グループに1名配置される外部アセッサー(ヒューマンバリューのメンバー)から、自身の強みや課題、成長のポイントについて詳細なフィードバックを受けることが特徴です。
現在のマネジメント層は、ほぼ全員がこの研修を経験しています。では、この研修は参加者にとって、どのような体験として記憶されているのでしょうか。かつて参加者としてこの研修を受講した堺さん、仲野さんは、その印象を次のように語ります。
堺さん:
事前に『かなり濃い研修だ』とは聞いていましたが、実際に参加してみると、その言葉の意味をすぐに実感しました。合宿(当時)の2日間、夜の懇親も含めて、かなり遅くまで議論を重ねましたし、普段の仕事ではまず使わない思考の回路をフルに使っている感覚がありました。特に印象に残っているのが、周囲の人との関係性をリッチピクチャーとして描いていくワークや、シナリオプランニングです。最初は、『これは一体何なんだろう』と思いながら取り組んでいましたが、自分たちで未来をストーリーとして描いていく体験は、それまでに経験したことのないもので、とても新鮮でした。
また、職場を離れ、同じような年次や立場のメンバーと、肩書きを外して本音で向き合えたことも大きかったですね。そうした環境で議論し合えたこと自体が、個人的にはとてもワクワクする体験でした。さらに印象的だったのが、外部アセッサーからのフィードバックです。日常業務で上司からは『できている・できていない』という評価は受けますが、リーダーシップや未来の見通しといった観点で、第三者からどう見えているのかを、翌朝すぐにフィードバックしてもらう機会はほとんどありません。『参加して本当によかった』と、素直に思える研修でした。
仲野さん:
限られた時間の中で、外部アセッサーからかなり踏み込んだフィードバックを受けたことが強く印象に残っています。自分では気づいていなかった点を、第三者の視点からズバッと言語化されて、『なるほど、そう見えるのか』と腑に落ちる瞬間がありました。あの体験は、今振り返っても学びの多い時間だったと思います。

未来を切り拓くリーダーシップ・マネジメント研修の風景。ダイアログとフィードバックが中心となる
相互フィードバックが成長の鍵
堺さん、仲野さんの語りからも印象的だったのが、「フィードバック体験」の濃さでした。この研修では、外部アセッサーからのフィードバックに加え、参加者同士が互いにフィードバックを交わすプロセスを重視しています。
そもそもこの研修は、具体的なリーダーシップ行動が自然に表れやすいように設計されています。正解のない問いに向き合う探求型のワークや、組織の構造課題を扱うディスカッション、シナリオプランニングなどを通じて、参加者一人ひとりの思考の癖や、周囲との関わり方、リーダーとしてのスタンスが可視化されていきます。
そうしたプロセスの中で、あらかじめ設定された約20のリーダーシップ項目をもとに、「どの場面で、どのような行動が発揮されていたのか」「その行動が周囲にどんな影響を与えていたのか」を具体的に振り返っていきます。実際の言動や振る舞いに基づいたフィードバックであるため、参加者にとって受け止めやすいだけでなく、「どう伝えれば相手の成長につながるのか」を考える学びの機会にもなっています。 同研修の企画・運営をリードし、当日はアセッサー(グループ・サポーター)としても関わるヒューマンバリューの菊地さんは、このフィードバックの場づくりについて、次のように語ります。
菊地さん:
大きな特徴は、一人で完結する学びではなく、多様な視点に触れることで、自分一人では気づけなかった問いや見方が立ち上がってくる “相互作用”にあります。
だからこそ、2日目の冒頭に、個人へのフィードバックだけでなく、グループ内の相互作用に関するフィードバックの時間を設けています。1日目はどうしても遠慮があり、踏み込みきれない場面が出てきます。でも、お互いの関わり方がどう見えているのか、それが学び合いをどう促進したり、阻害しているのかを共有すると、2日目から場の空気が大きく変わるんです。踏み込むことに意味がある、と皆さんの認識が切り替わっていく。その結果、2日目・3日目のアウトプットや相互フィードバックの質が、ぐっと高まっていきます。
またアセッサーとしては、限られた時間の中で、その方の“全体性”をどう見るかをとても意識しています。行動の一部分だけを切り取るのではなく、『この強みが、ここではこう作用しているのかもしれない』『このつまずきは、実は別の強みの裏返しかもしれない』と、構造的に捉えようとしています。
アセッサー同士で話していると、つい『この人には、こんな良さもあるんですよ』と伝えたくなることも多いですね。担任の先生のような感覚かもしれません。その人の可能性を信じながら、今見えていることを、できるだけ誠実に、成長につながる形で返していきたいと思っています。

ヒューマンバリュー 菊地美希
研修を通して得られるフィードバックは、その場限りの気づきにとどまらず、その後のキャリア形成を考える上でも重要な示唆を与えていると、仲野さんは語ります。
仲野さん:
第三者の視点が入ることで、本人にとってはもちろんですが、組織としても『この人はこう見えているんだ』『ここが強みで、ここに課題があるんだ』ということを、改めて認識するきっかけになります。
組織の中だけで見ていると、その人の育成や配置の検討も、どうしても今いる環境や役割の延長線で考えがちになります。でも、外部の視点が入ることで、『このまま同じ環境にいるより、別の経験をした方が伸びるかもしれない』といった判断につながることもあります。
実際に、フィードバックの結果を受けて、業務内容を見直したり、新しい経験を積んでもらったりといった動きにつながったケースもあります。そういう意味でも、第三者の目が入ることは、個人の成長だけでなく、組織として人をどう活かしていくかを考える上でも、大きな意味があると感じています。
アクション・ラーニングを通して、真の変化につなげる
このリーダーシップ・マネジメント研修のもう一つの特徴が、単発の研修で終わらせず、約4か月にわたるプロセスとして設計されている点にあります。
事前の取り組みによって参加者のレディネスを高めるところから始まり、研修本編での相互作用とフィードバック、研修後に届けられるフィードバック・レポート、上司との対話、現場での実践と仲間同士での支え合い、そして数か月後のリフレクション・セッションでの振り返りと価値の収穫へ。こうした一連の流れを通して、学びを一過性の気づきで終わらせるのではなく、行動と捉え方の変化へとつなげていく設計がなされています。

このプログラムのファシリテーションを担当するヒューマンバリューの阿諏訪さんは、その狙いを次のように語ります。
阿諏訪さん:
私たちはさまざまな企業でアクション・ラーニングに関わる中で、『人が変わる瞬間』に立ち会うことがあります。NTTテクノクロスさんのこの取り組みの特徴は、アクション・ラーニングにフィードバックを組み合わせている点です。その人の強みや課題が、ある程度立体的に見えた状態でフィードバックを行い、その後の実践につなげてもらう。またお互いのフィードバックから学び合うコミュニティを形成していく。だからこそ、変化の幅が大きく、2回目にお会いした時には別人のようにリーダーとして成長されている姿に出会うことも少なくありません。
ここで大切にしているのは、アセスメントで人を“決めてしまう”ことではありません。強みや課題を明らかにすること自体が目的なのではなく、その人自身の『ものの見方や捉え方の枠組みが進化していく』ことに意味があると考えています。
そうした枠組みの変化が起きると、『人って、こんなに変わるんだ』と実感する場面に出会うことがあります。だからこそ私たちも、人を規定するのではなく、『枠組みは変わる』『人には成長の可能性がある』という前提に立って関わることを大切にしています。

ヒューマンバリュー 阿諏訪博一
学びとフィードバックの積み重ねが文化になる
このリーダーシップ・マネジメント研修は、個人の成長にとどまらず、学びとフィードバックが次の世代へと受け渡されていく仕組みとして続けられてきました。そうした積み重ねが、人が学び合いながら育っていくという感覚を、組織の中に少しずつ根づかせてきたと言えるかもしれません。仲野さんは、この取り組みを「フィードバックが循環するプロセス」として捉えています。
仲野さん:
フィードバックのサイクルが回っている、という感覚があります。ある人が研修を受け、フィードバックを受けて成長し、その人が上司になって、今度は自分の部下をまた送り出していく。そうしたサイクルを長年続けていくことで、組織の中に『こういう意識を持つ人』が育っていくんじゃないかなと思っています。
そうやって少しずつ組織が良くなっていく。その“いいサイクル”が生まれていること自体が、長く続けている意義なのかなと感じていますね。
個人の学びが、次の誰かの挑戦を支え、やがて組織全体へと広がっていく。コミュニティ型人材成長とは、こうした循環の中で育まれていくものなのかもしれません。
3. 生成的キャリア── 機会から学び、意味を紡ぎながらキャリアを育てる
そして、こうした「未来を切り拓くリーダーシップ・マネジメント研修」での実践を踏まえ、NTTテクノクロスでは2024年度から、新たな学びの場を立ち上げました。30歳前後の中堅層を対象とした 「未来を切り拓く生成的キャリア探求ワークショップ」 です。
この取り組みの背景には、同年度からスタートした新しい人事制度があります。NTTグループではジョブ型を軸とした新人事制度の導入が進められており、NTTテクノクロスもそれに倣いました。新制度では、これまで以上に専門性が重視され、個々人が専門的なスキルを軸にキャリアを築きやすくなっています。
一方で、人材開発部門では、ある問いが立ち上がってきました。専門性を深めること自体は大切ですが、それが既存の枠組みの中に閉じてしまうと、視野が狭まり、サイロ化につながる可能性もあります。だからこそ、自身の専門性を軸にしながらも、多様で柔軟な視点で未来を描き、価値創出へとつなげていく——そうした今日的なキャリア観に、若いうちから触れる機会が必要なのではないか。
そうした思いから、キャリアを「与えられるもの」ではなく、「意味づけ、つくっていくもの」として捉え直す探求の場として、このワークショップは構想されました。
企画を担当した仲野さんは、立ち上げの背景を次のように振り返ります。
仲野さん:
新しい制度の話を考えていく中で、『若いうちからキャリアに対する意識を持つことが大事だよね』という感覚が、少しずつ共有されていきました。だからこそ、できるだけ早い段階で、自分のキャリアについて考える“きっかけ”になるような研修を入れるべきなんじゃないか、というのがスタートラインだったと思います。
世の中の変化は本当に激しいですし、何も考えずに立ち止まってしまうことは、結果的に“下がっている”のと同じになってしまうこともある。変化することは怖さもありますが、そこを通らないと、自分なりの考えや選択肢には辿り着けないと思うんです。このワークショップが、そうした変化に向き合うための、小さな一歩を踏み出すきっかけになればいいな、という思いはありましたね。
では、この「未来を切り拓く生成的キャリア探求ワークショップ」とは、どのような研修なのでしょうか。一般的なキャリア研修のように、自己分析を行い、将来のビジョンを明確に描き、そこから逆算してキャリアプランを立てていく——そうした構成とは、少し異なります。
不確実性が高まる時代において、未来を正確に見通し、計画を立てること自体が難しくなっています。綿密な計画を描いても、現実とのズレが生じたり、先を読みすぎることで身動きが取りづらくなってしまうことも少なくありません。
このワークショップが大切にしているのは、未来を見据えつつ、目の前にある機会をどう活かし、そこから何を学び、どんな意味を見出していくのかという視点です。あらかじめ決めたゴールに向かって一直線に進むのではなく、日々の経験や出会いに主体的に関わりながら、自分なりの方向性を育てていく。そのプロセスを通じて、自分らしいキャリアを形づくっていく考え方です。
こうしたキャリア観を、将来像を先に固定して進む「計画的キャリア」と対比し、この研修では 「生成的キャリア」 と呼んでいます。

計画的なキャリア開発から生成的なキャリア開発へ
この研修の企画・実施を支援している菊地さんは、生成的キャリアの考え方について、次のように語ります。
菊地さん:
自分のキャリアや専門性を、表面的な知識や経験の棚卸しだけで捉えるのではなく、『自分は何を大切にしたいのか』というところに、まず立ち返ることを大事にしています。明確なビジョンを言葉にできなくても、『こんな方向に進みたい気がする』という感覚があれば十分。その感覚を手がかりに、今、目の前に広がっているさまざまな“機会”をどう活かしていくのかを考えていきます。
専門性を計画的に駆け上がる、というよりも、自分の目的意識と日々の仕事を結びつけながら、日常そのものを意味あるものとして楽しんでいく。そうしていく中で、結果的に専門性も深まり、自分のキャリアも充実し、会社への貢献にもつながっていく——そんな好循環を生み出したいと思っています。そのためには、従来の“計画ありき”のキャリア観だけでは足りません。自分自身の目的意識とつながること、そして、今やっている仕事を意味づける力を高めていくこと。この二つを特に大切にしながら、支援しています。
近年のキャリア開発では、個人の価値観や充実感、やりがいといった内面的な満足感や意義に基づく「内的キャリア」が重視されるようになってきました。それ自体は、とても大切な視点です。一方で、その内的な想いや関心が、周囲からの期待や現実の仕事、役割・ポジションといった外的キャリアと結びつかないままでいると、「やりたいことはあるけれど、今の仕事とはつながらない」「理想と現実の間で立ち止まってしまう」といった行き詰まりを感じることも少なくありません。
「未来を切り拓く生成的キャリア探求ワークショップ」では、こうした内的キャリアと外的キャリアの分断を前提にするのではなく、両者をどう結び直していくかという問いそのものを探求していきます。自分の内側にある想いや価値観を手がかりにしながら、目の前の仕事や役割にどう意味を見出し、どう関与の仕方を変えていけるのか。そうした問いと実践の往復を通じて、「自ら切り拓いていくキャリア観」を育んでいくのです。この考え方は、「人の中にはすでに可能性がある」というNTTテクノクロスが大切にしてきた人的哲学とも、深く重なっています。

内的キャリアと外的キャリアを結びつける
こうした視点について、仲野さん、堺さんは次のように語ります。
仲野さん:
実際、“業務直結”で、本当にやりたいことと今の仕事がぴったり重なるケースって、むしろ少ないと思うんですよね。だからこそ、本人なりの意味づけや、自分なりの捉え方がすごく大事になってくる。
上司やマネジャーの立場から見ても、『どう説明するか』『どう関わるか』という仕掛けは必要だと思いますし、その両方があって初めて前に進めるんじゃないかなと感じています。
堺さん:
思ったのは、ジョブ・クラフティングの考え方にも近いな、ということです。仕事は与えられるもの、ではなくて、自分で周りを少しずつ変えていけるものなんだ、と。今の仕事の中に、“やりたいこと”や“目指したいこと”をほんの一さじ加えていく。それだけでも、仕事の見え方は変わってくると思うんです。
そうやって『待つ』のではなく、『自分でつくっていける』という感覚を持てること。それこそが、この研修で言っている“生成的”ということなのかな、と個人的には思っています。上司側の関わりももちろん大事ですが、最終的にこの変化の時代を生きているのは本人です。だからこそ、一人ひとりが自分なりに、より良い仕事や人生をどう生きていくのかを考える。そのきっかけが、こうした場から生まれていくといいですよね。

自分らしいキャリアを切り拓く上での思考と行動のパターンを深堀する
2024年度、2025年度と2年にわたって実施してきた生成的キャリア探求ワークショップは、参加者からも好意的に受け止められています。参加者からは、「依頼された業務をただこなすのではなく、自分の強みを活かせる業務は何かを探りながら、上司と擦り合わせを行う。強みを発揮できる経験が自信につながり、その自信が次の強みを育てていく——そんなサイクルを回していきたいと思うようになった」といった実践の声も寄せられており、キャリアを“考える対象”としてだけでなく、“日々の仕事の中で育てていくもの”として捉え直す動きが見え始めています。
こうした変化について、企画を担当した仲野さんは、次のような手応えを語ります。
仲野さん:
最初は、やっぱり『キャリア』って聞くと、どうしても小難しく捉えられがちですよね。『何を書けばいいのかわからない』『どう考えたらいいのかわからない』という声は本当に多いと感じています。
このワークショップは、1日の研修の後、数か月の実践期間があって、もう一度振り返りを行う構成になっているんですが、後半になると、参加者が書いてくる内容が明らかに変わってくるんです。『ちゃんといろんなことを考えているな』と感じることが増えてきて、それを見ていて、これはすごくいいなと思いました。 実際、数か月という短い期間でも、ひとつ“きっかけ”を渡すだけで、考え方がこんなに変わるんだな、と実感することが多く、その違いが見えることが研修の価値だと思っています。
コミュニティを形づくっているのは、他でもない一人ひとりの人間です。生成的キャリアの探求を通じて、自分の仕事や経験を意味づけ、主体的に関わろうとする内的な力が育っていく。その積み重ねが、やがて周囲との関係性を動かし、コミュニティ全体の活力へとつながっていくのではないでしょうか。
4. コミュニティ型人材成長のカルチャーは、どう育まれるのか
―― 2つの学びの場から見えてきたポイント
ここまで見てきた「未来を切り拓くリーダーシップ・マネジメント研修」と「未来を切り拓く生成的キャリア探求ワークショップ」は、対象もテーマも異なります。けれども両者に共通していたのは、研修そのもの以上に、学びが生まれる前提の置き方と、関係性の扱い方でした。そこには、「コミュニティ型人材成長」を実践として育てていくためのヒントが含まれているように感じます。
1)学びを個人に閉じず、相互作用の中で深める
両方の取り組みでは、学びを“個人の内省”に留めず、他者との対話や実践を通して育てる設計がなされていました。異なる部門のメンバー同士が問いに向き合い、視点が交差することで、自分一人では立ち上がらない気づきが生まれていく。コミュニティ型人材成長の土台には、こうした相互作用が組み込まれているように見えます。
2)フィードバックを評価ではなく、成長の対話として扱う
リーダーシップ研修では、第三者の視点と参加者同士のフィードバックが、行動ベースで交わされます。大切にされているのは、アセスメントで人を“決める”ことではなく、「枠組みは変わる」「人には可能性がある」という前提で、誠実に返していくことでした。生成的キャリアの場でも同様に、正解を与えるのではなく、意味づけを育てる問いが置かれていました。
3)単発で終わらせず、実践と振り返りの循環をつくり続ける
どちらの取り組みも、研修で終わらず、現場での実践期間や振り返りを通して学びを“育てる”構造になっています。だからこそ、気づきが行動に移り、周囲との関わり方まで変化していく。学びが循環する設計そのものが、文化の芽を支えているように思えます。そうした開かれた場の積み重ねが、コミュニティ型人材成長を支える土台になっていくのではないでしょうか。
終わりに
人が育つとは、誰かに育てられることではなく、関係性の中で学び続けられる環境があることなのかもしれません。NTTテクノクロスの取り組みは、研修という「場」を通じて、学び合い、問い直し、挑戦し続ける関係性を育ててきました。
営業推進部門に移られた堺さんは、これからのキーワードとして「相乗効果のタネを探す」という言葉を挙げます。
堺さん:
『これって、あっちの取り組みとつながるよね』という気づきを、自分自身が見つけることもあれば、一人ひとりのメンバーにも発見してもらいたいと思っています。そうした気づきを持ち寄りながら、『じゃあ、こうしてみたらどうだろう?』と、次の一歩を一緒に考えていく。そんな関わり方を、これからも大切にしていきたいですね。
そうした日々の気づきと対話の積み重ねこそが、コミュニティ型人材成長を、これからも進化し続ける文化として支えていくのではないでしょうか。

2025年10月7日 NTTテクノクロスオフィスにて
共創ストーリーズ
#1 問いから始まるチェンジ・マネジメント
〜パーソルキャリアはいかにHiPro Biz事業と組織を変革してきたのか〜
#2 答えがない揺らぎから始まる未来共創の旅
〜GDOが歩んだ10年の変革ストーリー〜
#3 笑顔あふれる未来へと駆け抜ける
〜ランテックは“皆が腹落ちする”パーパス&バリューをどう生み出したのか〜
#4 コミュニティ型人材成長企業を体現する「学びの場づくり」
〜NTTテクノクロスの取り組みより〜
#5 CHINTAIが挑む人事制度の「自分ごと化」
〜制度づくりを文化づくりへ変えていくエンパワーメントの実践〜