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アメリカ・スピークス21世紀タウンミーティング視察レポート

2010年3月18日に、米国ワシントンD.C.にあるアメリカ・スピークスの本部を弊社の川口と高橋が訪問し、創設者のキャロライン・ルーケンスミヤー氏とアシスタントのエリック・ディター氏に取材をさせていただくことができました。本ページでは、取材の内容に基づいて、アメリカ・スピークスと21世紀タウンミーティングの概要を紹介したいと思います。

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ヒューマンバリューでは、2008年頃から自治体における「市民参加」による計画策定や、まちづくりの取り組みの支援を行ってきました。市民参加を実現していくにあたって、一部の影響関係者だけではなく、多様な参加者がいかに参加するか、また大勢の人々の意見をいかに市民全体の意見として集約していくかは、重要な課題として挙げられます。そうした課題を克服して、多様な市民が話し合いに参加する場を形成し、話し合われた内容を市政につなげる手法のひとつとして、「21世紀タウンミーティング(21st Century Town Meeting)」があります。同手法はアメリカ・スピークス(America Speaks)と呼ばれるNPOによって展開され、これまでにも数千人規模のタウンミーティングが、米国を中心に数多く開催されています。
本手法に、大きな可能性を感じた私たちヒューマンバリューは、この「21世紀タウンミーティング」の手法や背景にある考え方を研究することにいたしました。幸いにして、弊社とお付き合いのあった、ワールド・カフェ創始者のアニータ・ブラウン(Juanita Brown)氏と、21世紀タウンミーティングの創始者のキャロライン・ルーケンスミヤー(Carolyn Lukensmeyer)氏が古くからの友人関係だったこともあり、米国ワシントンD.C.にあるアメリカ・スピークスを訪問するとともに、実際のタウンミーティングに参加させていただくという機会に恵まれました。本レポートでは、視察を通して得た学びや発見、そしてタウンミーティングの詳しい様子を報告いたします。

1.アメリカ・スピークスと21世紀タウンミーティングについて

(1)アメリカ・スピークスとは

アメリカ・スピークスは、米国ワシントンD.C.に本部を置くNPOです。主要な政策テーマについて、市民討議の場を設けることにより、政治の意思決定に市民の考えが影響を及ぼすことを目指して、1995年にキャロライン・ルーケンスミヤー氏によって創立されました。

キャロライン・ルーケンスミヤー氏(中央)

キャロライン・ルーケンスミヤー氏は、もともとはOrganizational Development(組織開発)のスペシャリストでしたが、1980年代は、オハイオの政府で働き、その後、1990年代初頭は、ビル・クリントン、アル・ゴアのもとで、オープン・ガバメントのイニシアチブを担いました。
90年代は、民主党と議会との間で大きな摩擦が起きていたときでした。このとき同氏は、アメリカの政治のシステムが、根本的に崩壊していると感じていました。政治が連邦議会任せになっていたり、メディアで流されるストーリーを見ても、そこに市民の真意が反映されているとは思えなかったそうです。
また同氏は、市民参加のあり方にも疑問を抱いていました。アメリカにも選挙以外に市民が政治に参加する場として、タウンホールミーティングが存在していました。しかし、それらは、スピーカーのみにフォーカスがあたるものが多く、単なる情報提供や質疑応答になっていて、政治の意思決定にインパクトを与えているとは思えませんでした。参加した市民や政治家には学びが起こらず、個人の主張がしばしば話の腰を折ったり、参加者を傍観者にさせたり、参加者同士が怒鳴り合ったりしていました。また、本質的な情報に基づく意見交換もなく、参加者間のコンセンサスを得ることができなかったために、意志決定者は何が主要な着眼点になるかもわからないような状況でした。
そうした背景から、「公共(市民)の意志」と「政治家の意志」のリンクを再創造する場を形成することを目指して、アメリカ・スピークスを立ち上げました。そして、タウンミーティングのあり方を根本的に改革した「21世紀タウンミーティング」を開発し、同NPOが展開する主要な手法として活用していきました。

(2)21世紀タウンミーティングとは

21世紀タウンミーティングは、市民が公共の意思決定に参加するための機会を創りだす大規模なタウンミーティングであり、Common Good(共通善)に基づいた市民の本当の声を為政者に届けることをねらいとしています。そこには、数百~数千の市民が参加し、みなの関心が同時に引き出され、市民の声とプライオリティが素早くまとめられ、その結果がメディアによって広く普及されます。話し合う内容は、政策から土地の活用、予算など幅広い政治的課題が取り上げられます。

(3)21世紀タウンミーティングの展開

アメリカ・スピークスや21世紀タウンミーティングの名を特に有名にしたのは、2002年7月20日にニューヨークで行われた「Listening to the City」でした。この取り組みは、テロの被害を受けたワールド・トレード・センター跡地の周辺をいかに再開発していくかについて、市民が話し合うことを目的に開催されたタウンミーティングです。このタウンミーティングには、4,300人を超える市民が一堂に集い、21世紀タウンミーティングの手法を活用して、全ての人が話し合いに「参加」しました。そして話し合われた内容は、集合的な意志として取りまとめられ、当時のニューヨーク州知事に提言され、再開発計画に大きな影響を与えました。その後もハリケーンの被害を受けたニューオーリンズの復興計画について話し合うために4,000人の市民が参加した「Unified New Orleans Plan Community Congresses」、カリフォルニア州におけるヘルスケアのあり方について3,500人の市民が参加して話し合いを行った「California Speaks」など、これまでに米国の全州にて、50以上の大規模フォーラムが開催され、13万人が討議に参加しています。その活用は、公共の場に限らず、NPO、グローバル・リーダーシップ・フォーラム、企業の年次総会、労働組合とステークホルダーとの話し合いなど様々な用途で用いられています。

(4)21世紀タウンミーティングの特徴

1世紀タウンミーティングは、数百~数千人の参加者全員が、テーマについて話し合いを行い、理解を深めながら、そこで話し合った内容が集合的な意志として取りまとめられ、意志決定者に提言を行うというプロセスを確立していきます。
そうしたプロセスを確立するために、21世紀タウンミーティングには、様々な特徴があります。以下に21世紀タウンミーティングを構成する代表的な特徴を示します。

①小グループでのダイアログ

21世紀タウンミーティングでは、全員に発言の機会が与えられ、安全な環境で話し合うことができるように、小グループでのダイアログが中心となります。一般的には、各テーブルに10~12人の多様性のあるメンバーが座り、グループを構成します。そこに必ずトレーニングをうけたファシリテーター(ボランティア)がつきます。ファシリテーターの適切な進行のもと、議題に関する深い議論が行われます。
アメリカ・スピークスによると、10~12人は、グループの参加者がお互いから学び合い、安全なスペースを確保するための適切なサイズだということです。一人ひとりが意見を伝え合い、最終的には、個々人の視点が統合された集合的な意志が現れます。

②ネットワークでつながれたコンピューター

各テーブルには、一台ノートパソコンが置かれていて、各テーブルで話し合われた内容が打ち込まれます。各パソコンは中央のサーバーにつながれていて、各テーブルの意見が全体の意見へと集約されるようにします。

③Theming(テーマ抽出)

21世紀タウンミーティングには、「テーマチーム」と呼ばれるチームが必ず存在します。このチームは、各テーブルのパソコンから送られてくるコメントを読み込み、キーとなるテーマやメッセージを抽出する役割を担っています。短時間で集約されたテーマやメッセージは、すぐに参加者全体にフィードバックされることで、全体の理解を促進していきます。

④投票用キーパッド

参加者には一人一台投票用のキーパッドが手渡されます。参加者はキーパッドを使って、自分たちが話し合っている内容についての投票をその場で行い、集合的な意志を醸成していきます。この投票結果は、意志決定者やメディアにとって大きな価値を持つものとなります。またキーパッドは、話し合いの透明性を高め、自分たちの声を形として見ることを支援します。

⑤大型スクリーン

会場の中央、もしくは前方には、参加者全員が見ることのできる大型のスクリーンが用意されます。スクリーンには、リアルタイムで集まってくるデータやテーマ、情報が映し出されます。何千人もの人々が、瞬時にフィードバックを得ることができます。そして、全体の意見がいかに進化していくかを一日通してみることができます。

こうした様々な手法やテクノロジーを活用しながら、個人の意見がグループの意見としてまとめられ、それが会場全体の意見として集約され、その結果が瞬時に個人にフィードバックされることで、個人の考えに影響を及ぼし、さらなる議論を深めるというダイナミックな理解・探求のプロセスを実現しているのです。

(5)背景にある原理(Design Principle)

21世紀タウンミーティングの背景には、いくつかの重要な原理(Design Principle)があり、各ミーティングはこの原理に基づいて設計されています。

一つ目は、「Linked to Decision Maker(意志決定者とのつながり)」です。21世紀タウンミーティングの主要な目的は、市民の集合的な意志を政治の意志決定者に届けることによって民主主義を実現することにあります。ですから、タウンミーティングが開催される場には、必ず政策に関する意思決定者(州知事や市長など)が参加し、市民の声に直接耳を傾けられるように事前の巻き込みを行っていきます。

二つ目は、「Demographic Diversity(デモグラフィックの多様性)」を担保することです。一部の人やマジョリティのみの意見を聴いているだけでは、民主主義を実現することはできません。そこで、21世紀タウンミーティングでは、ミーティングの中に地域の縮図を作ることを目指しており、多様な人々が参加できるように丁寧に「Outreach(市民のところに直接出向いて、タウンミーティングに参加してもらえるように働きかけること)」を行っていくことが重要となります。

三つ目は、「Informed Participation(情報を与えられての参加)」です。市民が適切な議論を行えるように、幅広い様々な立場からの情報にアクセスできるようにします(参加者ガイドの配布等)

四つ目は、「Facilitated Deliberation(ファシリテートされた討議)」です。前述したように、参加した一人ひとりが安全な環境で発言することができ、テーブルで話し合われた内容をグループの意見としてまとめられるように各テーブルにファシリテーターが必ずつくようにします。

五つ目は、「Discover Shared Priorities(共有されたプライオリティを発見する)」です。集合的な意志を発見していくことが重要です。それをサポートするテクノロジーとして、前述した各テーブルのPCや投票用のキーパッドがあります。

六つ目は、「Clear Recommendation for Action(行動に向けての明快な提言)」です。市民の集合的な意志として行動につながる提案を行っていくことが重要となります。そのため、ミーティングが終わるとすぐに話し合った内容、及び結論が事後レポートとしてまとめられ、意志決定者、参加者、メディアに配布されることになります。

七つ目が、「Sustain Engagement(参加を継続させる)」です。タウンミーティングをイベントとして終わらせるのではなく、市民が継続して参加していく状態を創っていくことが大切となります。近年ではオンラインでのフォーラムをタウンミーティングの事前、もしくは事後に行うことが増えているようです。

また、キャロライン・ルーケンスミヤー氏の話の中に頻繁に出てくるキーワードがあります。それは「Common Good(共通善)」です。共通善は、公共哲学や政治学の中で用いられる言葉であり、共通の善なるものという意味があります。同氏は次のように述べています。「21世紀タウンミーティングは、共通善に基づいて運営される必要があります。たとえば、ミーティングに参加したときに、そこに誰が集まっているのかがわからなければ、人は自分や自分の身近な家族を守ろうとして話をします。しかし、そこにどんな人がいるかがわかり、自分たちがどんな国を築いていきたいかを問いかけられると、共通善について話すようになるのです」
同氏の言葉から、21世紀タウンミーティングは、人の中に存在している共通の善なるものを引き出して、よりよい地域やコミュニティを築いていくことをより深い目的として持っていることが伺えます。

このセクションでは、アメリカ・スピークス、及び21世紀タウンミーティングの概要について紹介してきました。次のセクションにおいては、私たちが実際に参加させていただいた「エンビジョン・プリンス・ジョージ」と呼ばれるタウンミーティングについて報告し、より詳細なイメージを紹介したいと思います。

2.エンビジョン・プリンス・ジョージ参加報告

2010年3月20日、米国メリーランド州プリンス・ジョージ・カウンティで実施された「エンビジョン・プリンス・ジョージ(Envision Prince George's)」における21世紀タウンミーティングに実際に参加させていただく機会をいただきました。本ページでは、その様子を紹介させていただきます。

(1)背景

エンビジョン・プリンス・ジョージは、プリンス・ジョージ・カウンティの包括的なビジョンやアクション・アジェンダを多様なステークホルダーを巻き込んだ市民参加で創るための取り組みとして2008年にスタートしました。今回私たちが参加させていただいた21世紀タウンミーティングはこの取り組みのひとつです。
プリンス・ジョージ・カウンティはワシントンD.C.の郊外都市で、人口は85万~90万程度です。豊かな自然があり、公園も充実しています。ワシントンの郊外のエリアは、2030年までに毎年65,000人が増え続けると予想されているようですが、他の郊外地域と比べて、プリンス・ジョージ・カウンティは成長スピードが遅れているようです。しかし、他の郊外地域は、高い成長率によって、土地や住宅価格の上昇、交通渋滞などに悩まされ始めていました。そうした背景から、今後は、プリンス・ジョージ・カウンティが、この地域の成長を担い、より多くの住民や仕事を受け入れていくことが期待されているということでした。
そうした状況の中で、 カウンティがより良い未来を実現できるよう準備し、成長に翻弄されるのではなく、全ての人々の生活を保ち、高めながら、成長をマネジメントできるようにするために、そして、豊かな緑、公園、リクリエーションプログラムや施設、都会化した郊外などのポテンシャルを最大限に活かせるように、エンビジョン・プリンス・ジョージが行われることになりました。

(2)主催者

この取り組みの主催者は、M-NCPPC(The Maryland-National Capital Park and Planning Commission)と呼ばれる、同カウンティの計画局、公園・リクリエーション局の直轄の機関です。そして、アメリカ・スピークスがパートナーとしてM-NCPPCの支援を行っています。
また、この取り組みのマネジメントとして、アドバイザリー・チームが結成されています。チームには、政府や教育、ビジネス、コミュニティのリーダーが含まれています。このチームがエンビジョン・プリンス・ジョージで生み出されたアクション・プランの遂行に責任を負うとのことです。

(3)生み出す成果

この取り組みの成果としては、生み出された共有ビジョンによって、カウンティの政策や意思決定を形づくったり、情報提供したり、導くことを支援するゴールと戦略を創ることが挙げられています。より具体的には、まずビジョンのフレームワークとしてLive(生活する)、Work(働く)、Learn(学ぶ)、Serve(仕える、奉仕する)、Enjoy(楽しむ)、Sustain(持続する)という6つが挙げられ、それぞれごとに共有ビジョンが創られます。そして、それぞれのフレームワークごとに、どんな資産がカウンティにあるか、どんなオポチュニティがあるか、どんなチャレンジがあるかといったことが検討され、それぞれの優先順位がつけられるようです。
そこから具体的なアクション・アジェンダが生み出され、アクション・チームがその推進を行っていきます。

(4)全体の構成

まず前提として、この取り組みは、いきなり始まったものではなく、過去の取り組みに基づいて行われているということが強調されていました。過去にも数々の市民参加のフォーラムやプランが行われており、それの上に築かれるものであるということが丁寧に解説されていました。
そして、2008年のキックオフの皮切りに、市民インタビューなど様々な取り組みが行われました。中心となったのは、2009年11~12月に行われたコミュニティ・フォーラムです。全6回が開催され、総勢700人が参加し、上述した6つのフレームワークにそって、様々な意見が述べられました。フォーラムでは、たとえば「カウンティのどこに最も魅力を感じるか?」「2030年の最もエキサイティングなビジョンのアイデアは?」といったことが話し合われました。結果として、カウンティが持つ資産について625のアイデアが集まり、ビジョンについてのアイデアが2,400以上集まりました。その他オポチュニティやチャレンジへの優先順位付けも行われたようです。
この結果をもとに、今回21世紀タウンミーティングで1,000人を超える参加者が議論を行うという構造になっているようです。

(5)アウトリーチ(参加者の巻き込み)

参加者の巻き込みのあり方については、取材を通して特に感銘を受けたところです。
まず、タウンミーティングの前段のコミュニティ・フォーラムに参加者を巻き込むにあたっては、「参加者リクルートメント戦略」というものがしっかりと練られています。この戦略には、3つの柱があります。
一つ目は「Envision Prince George's Ambassadors(大使)」が任命されるそうです。これは、名前の通り、エンビジョン・プリンス・ジョージを広げる大使を指しています。公募によって大使に任命された人には、大使用のプログラムを受講し、活動に多少ですが給料も支払われるそうです。実際には、100名の応募があり、ダイバーシティなどが考慮された上で、そのうちの21名が任命されました(選ばれなかった残りの人たちも自律的に活動を行ってもらうとのことです)。大使は、様々なグループや組織で話をしたり、Eメールを送ったり、個人的なネットワークを使ったり、公共の場所にチラシを置いたり、ありとあらゆる手段を使って、参加者を集めるそうです。
二つ目の戦略はキーとなるグループや組織に働きかけるというものです。これは、アドバイザリー・チームが担います。特にこの組織に出てほしいというところにアクセスするようです。
三つ目が、リーチが難しい組織へのアプローチです。これがとても大事だということですが、こうした取り組みにほとんど参加しないグループ(たとえば、若者、移民、低所得者など)には特別な努力を払って、出てもらえるよう働きかけるそうです。
その他、人々が参加することを阻む代表的な障害として、輸送、食事、言語、チャイルド・ケアなどがあるそうですが、それらの対策として、輸送用のバスを出したり、昼食を提供したり、通訳を入れたり、チャイルド・ケアのサービスを入れるなど、あらゆる側面から参加を支援しています。
資料には、参加者の人種、住んでいる場所、年齢、所得など、様々な側面から参加者が全体を反映しているのかといった分析がなされていました。

(6)当日の様子

21世紀タウンミーティングの構成については前のセクションで述べましたので、ここでは、実際に行われたタウンミーティング当日の様子について、写真をベースに紹介します。

会場となったSports and Learning Complexです。スポーツの複合施設を活用しています。

開始前の会場の風景です。合計で1,700名近い人々が参加しました。

オープニングでは、主催者から、今回の取り組みの意義が力強く述べられました。

挨拶の後、各テーブルで自己紹介が行われます。最初にテーブル・ファシリテーターから自己紹介がありました。

地図を見ながら、自分たちの住んでいる地域について話し、みなで話し合う関係性を築きます。

具体的なテーマについての話し合いが行われる前に、全体のファシリテーターから、デモグラフィックに関する投票の要請があります。住んでいる地域、人種、性別、年齢、収入等について、全体のファシリテーターから質問があり、自分があてはまるものに、その場で手持ちのキーパッドを使って投票します。そうすると、瞬時に前の大スクリーンで結果を見ることができ、ここにどんな人たちが来ているかを理解し、自分たちがカウンティを代表する存在であることを認識します。

一人一台配布される電子キーパッド

その後、各テーブルで掲げられたテーマについての話し合いが行われます。

話し合った内容は各テーブルのPCに打ち込み、中央に送られます。

話し合われた内容はテーマチームによってまとめられ、全体に提示されます。

ランチも提供されます。

途中でクイズや体操のエクササイズも行われます。

9時30分~15時30分の6時間の間に、1,700名全員が参加し、話し合った内容がカウンティのビジョンを検討するための提言として、まとめられ、終了しました(終了と同時に速報が参加者全員に配られました)。

(7)終わりに

ここまで実際に行われた21世紀タウンミーティングの取り組みを紹介してきました。実際に参加させていただくことを通して、たくさんのことを学ばせていただきましたが、特に二つの点が印象に残りました。
一つは、綿密にデザインされた「構造」です。1,000人を超える参加者が、主体的に参加し、オープンに話し合う環境を創るには、ファシリテーターの力量に出来るだけ依存せずに、構造で話し合いの場をサポートすることが大切になってきます。21世紀タウンミーティングでは、とてもオープンな話し合いの裏側に、テーマ選定、グループ編成、話し合いのプロセス、話し合いの場づくり、主催者やファシリテーターからのメッセージ、参加者のレディネスの醸成などがとても決め細やかにデザインされているのが印象的でした。ファシリテーターが持っているマニュアルも見せていただきました。分単位で行うことが規定されているような分厚いマニュアルのもとに進行が組まれているにも関わらず、実際に参加している人はそのようなあわただしさをほとんど感じずに参加されていたように思います。

二つ目は、関わる人々の熱意や信念です。「(5)アウトリーチ(参加者の巻き込み)」でも述べたように、この取り組みでは、人々に参加してもらうことに多大なエネルギーとコストがかけられています。実際に取り組んだ人々の話を聴く中で、その背景に、「人々の参加が自分たちのより善い未来を創る」という強い信念が一人ひとりの中にあるように思います。日本においても市民参加を実現していく上で、特定の人のみが参加するのではなく、自分たちのまちづくりに関心がない人も含めて、多様な人々の参加をいかに促すかは大きな課題となっていますが、こうした姿勢からは学ぶことが本当に大きいように思いました。

最後にアメリカ・スピークスのスタッフとして働き、今回の取材に全面的に協力していただいたエリック・ディター氏に、自分たちのビジョンは何かを尋ねてみました。ディター氏は、「私たちはパブリック・エンゲージメント(市民参加)が、ガバメント(統治)が行われるやり方になる世界を創りたいと考えています」と答えられ、私たちもその言葉と実践のあり方に深く感銘を受けました。日本においても様々な形で市民参加が進んでいますが、今回学ばせていただいたことを活かして、ぜひより多くの人々の対話から未来を生み出すことを実現していきたいと思います。

参考文献
Carolyn J. Lukensmeyer, Steve Brigham, "Taking Democracy to Scale: Creating a Town Hall Meeting for the Twenty-First Century", NATIONAL CIVIC REVIEW, vol. 91, no. 4, Winter 2002

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