CHINTAIが挑む人事制度の「自分ごと化」
〜制度づくりを文化づくりへ変えていくエンパワーメントの実践〜

ヒューマンバリューでは創立40周年を機に、ご縁の深いクライアントのみなさまとの多様な変革の実践を「共創ストーリーズ」として発信し、これから変革に取り組む方々へのヒントをお届けしています。
第5弾は、生活者向けの賃貸情報サービスを提供する「株式会社CHINTAI」が取り組んだ人事制度改定のストーリーです。同社で構築プロジェクトに携わった当時の人事管掌役員の村川祐子さん(現在は株式会社エイブル&パートナーズにて取締役会長室室長を務める)と、総務人事室人事担当の淺野由里絵さんにお話を伺いました。対談のお相手は、人事制度改定プロジェクトを初期の頃から伴走したヒューマンバリューの阿諏訪博一さんと佐野シヴァリエ有香さんです。
人事制度は、どんな制度をつくるか以上に、「どのように取り組むか」で組織に生まれる変化が大きく変わります。CHINTAIさんの取り組みは、作って終わりの制度でも、 既製品の制度の導入でもなく、組織の内側から立ち上がる“自分たちの制度”を形にしてきたプロセスでした。本記事では、その歩みから、制度を“自分ごと”としてとらえ、一人ひとりをエンパワーするカルチャーを共に育てていくためのヒントを読み解いていきます。
共創ストーリーズ#5
CHINTAIが挑む人事制度の「自分ごと化」
〜制度づくりを文化づくりへ変えていくエンパワーメントの実践〜
<目次>
関連するキーワード
1. プロジェクトの出発点:人事制度改定を変革のレバレッジに
株式会社CHINTAIは、1975年に賃貸情報サービスを開始し、1992年の法人設立以降、賃貸情報メディアのパイオニアとして住まい探しを支えてきた企業です。テレビCMでおなじみのマスコットキャラクター“チンタイガー”は、同社のブランドを象徴する存在として広く知られています。
賃貸住宅情報誌『CHINTAI』の刊行から始まり、現在は賃貸物件検索サイト「CHINTAIネット」を中心に、暮らしをより豊かにするためのメディア事業・ソリューション事業へと領域を拡大。エイブル&パートナーズグループの一員として、約150名の組織が住生活領域における新しい価値創造に挑戦し続けています。
同社で働く魅力を総務人事室の淺野さんは次のように語ります。
淺野さん:
この規模感の良さを感じています。たとえば人事でも、大きな会社だと縦割りになりがちですが、この規模だからこそ、採用から昇進・昇格、育成まで一人ひとりをトータルでサポートできる。そうしたところが魅力ですね。

総務人事室人事担当 淺野由里絵さん
■ 人事制度は“つぎはぎ”に──見えにくくなっていた全体像
そんなCHINTAIでは以前から、人事制度の改定がテーマとなっていました。これまでも時代に合わせて都度見直しを行ってきたものの、部分的な追加や調整が重なるうちに、制度全体が“つぎはぎ”的になり、体系としての一貫性が見えにくくなっていました。
その影響は、マネジメントと現場の間に生じていた認識のギャップとしても表れていました。当時、人事管掌役員を務めていた村川さんは、当時の状況を次のように語ります。
村川さん:
社員には経営のメッセージが十分に伝わらず、「会社の方向性が見えない」という声もありました。会社としてはチャレンジしてほしいのに、制度がそれを後押しするものになっていなかったと思います。
また、退職理由を可視化すると「キャリアアップと業務が結びつかない」という声もあり、本来は少人数で柔軟に動けるはずの組織が、いつの間にか縦割りのようになってうまく回っていない…。そんな行き詰まりの感覚もありました。

株式会社エイブル&パートナーズ取締役会長室室長 村川祐子さん
(人事制度構築当時はCHINTAI社の人事管掌役員を務める)
こうした状況を前に、「これまでの延長ではなく、人事制度そのものを根本から作り直す必要がある」という機運が高まっていきました。
■ 予定調和の“正解”ではなく、自分たちの制度をつくる
制度改定の検討段階では、外部から多数の提案を受ける機会もありました。しかし多くは「この制度を導入すれば良い」という分かりやすいモデルを提示するもので、CHINTAIの文化や働き方の実態と自然に結びつくものではありませんでした。
「答えが決まっている制度は導入しやすいかもしれませんが、それでは自分たちらしい制度にはならない」。
そんな想いから、同社は、予定調和ではない制度づくり──つまり、組織の内側から立ち上がる“自分たちの制度” を共に探求していくアプローチを選択し、ヒューマンバリューとの協働が始まりました。
2. 組織の現在地を知る:噛み合っていない“個人と会社の歯車”
こうして始まったCHINTAIの人事制度構築プロジェクト。最初の一歩はどこから踏み出したのでしょうか。淺野さんは、「現状の課題を捉えること」から始めたと振り返ります。
淺野さん:
最初から手元の仮説だけで制度をつくるのではなく、まずは会社の“今”をきちんと見つめるところから始めたいと思ったんです。
そこで、社員が仕事やキャリア、マネジメント、カルチャーをどのように受け止めているのかを広く把握するため、全社員を対象にサーベイを実施しました。同時に、マネジャーやメンバーへのインタビューを行い、現場の声を丁寧に拾い上げていきました。
サーベイとインタビューの結果から、丁寧に解析していく中で、浮かび上がってきたのは、個人・マネジメント・会社の方向性が微妙にずれ、歯車が噛み合っていない状態でした。
村川さんは、そのずれを次のように振り返ります。
村川さん:
中間で板挟みになっているマネジャーの頑張りは社員にも伝わっているのですが、それが会社の業績や自己実現につながりきっていない…そんな乖離が見えてきました。社員も本当に一生懸命取り組んでいるのに、やりがいや手応えを感じきれない。薄々感じていたことが、サーベイの数字やインタビューの声としてはっきり顕在化した感覚がありました。

サーベイとインタビューの結果から見えてきたCHINTAI内でのシステム
分析を支援したヒューマンバリューの阿諏訪さんは、組織全体の構造として次のように解説します。
阿諏訪さん:
CHINTAIのスタッフの皆さんと共にデータを読み解いていくと、社員の皆さんは「仲間のために」「お客様のために」と本当に懸命に働いていて、マネジャーも強い責任感を持ってチームを支えている。その意味では、組織内部には良い循環がありました。
一方で、その努力が会社の方向性や成果実感とつながっていない。日々の頑張りと、会社として実現したい未来の姿がうまく結びつかない構造が見えてきたんです。この“噛み合っていない歯車”をつなぎ直すレバレッジとして、ミッション・バリュー、人事制度、キャリアの仕組みが重要になると感じました。
逆に言えば、これらがしっかり噛み合えば、組織は大きく前に進む。データを見ながら、強い可能性を感じた瞬間でもありました。

ヒューマンバリュー 阿諏訪 博一
3. 同じスタートラインに立つ:全社員の対話会
こうして浮かび上がったのは、制度そのものの問題以上に、組織の想いと働く一人ひとりの想いをつなぐ仕組みが不足しているという、本質的な課題でした。
だからこそ、次に必要だったのは──制度をいきなりつくることではなく、全員が同じスタートラインに立ち、「自分たちはどこへ向かうのか」を確かめ合う対話でした。
CHINTAIが次のステップとして選んだのは、サーベイの結果共有と未来を語り合う全社員対話会でした。その背景を村川さんは次のように語ります。
村川さん:
人事が経営に言われたものをそのまま制度にするような形にはしたくありませんでした。
社員が受け身になるのではなく、自分のキャリアや人生を豊かにする視点で制度を捉えて欲しい。そのためにまず、自分ごととして未来を考える機会をつくりたかったんです。

全社員が一堂に集う対話会の風景
全社員対話会は、トップによるストーリーテリングから始まりました。普段触れることのない創業期のエピソードや、挑戦・葛藤が語られ、社員にとって“会社の物語”がぐっと身近になる時間となりました。
淺野さん:
若い頃の苦労や、周囲に頼ることで変わっていった転機など、これまで知らなかった話がたくさんありました。その姿を聞いて、いい意味で「会長も一人の人間なんだ(笑)」と感じられて、親近感が湧いたんです。
企画や場づくりを外部から支援したヒューマンバリューの佐野さんは当時の空気を次のように語ります。
佐野さん:
準備段階でのデザインチームの揺らぎも大切だったのかなと思います。対話会では、実現したい未来像を描く時間を持とうとしたのですが、現場からは『うちのメンバーは絵なんて描けません』という声もありました。ただ「だからこそ未来を描くんですよね」という想いで揺らぎながらも前進していったんです。

ヒューマンバリュー 佐野シヴァリエ有香
■ 生まれてきた未来の絵と、それを囲んだ経営の対話
準備段階での心配をよそに、実際の対話会では社員一人ひとりが誠実に未来を描き、多様な未来像が生まれていきました。その後の経営陣の対話の場も印象深いものでした。
淺野さん:
対話会の後に経営陣が、社員が描いた未来の絵を一枚ずつ眺め、語り合う時間をもったんです。全員分の絵を前に、『こんな未来を望んでいるんだね』と対話が広がったことがとても印象に残っています。こうやってつながりが生まれていくのかと感じた場面でした。
社員と経営が互いの想いを知り、未来を共に描いたこの対話会は、全員が同じスタートラインに立てた瞬間でした。

共有されたビジョンを眺める経営陣
4. 制度づくりの軸をそろえる:経営が共有した“哲学とカルチャー
全社員対話会で社員それぞれの想いや未来像が見えてきた一方で、制度づくりには欠かせないステップがあります。それは、会社としてどんな文化や価値観を育てていきたいのかという軸や哲学を合わせていくということです。
制度設計というと、評価基準や等級など“仕組みそのもの”に意識が向きがちですが、ヒューマンバリューでは制度を三層で捉えています。
【人事制度の三層モデル】
1層:手続き・制度・ツール(評価制度・等級など)
2層:戦略・カルチャー・ マインドセット(働き方の価値観・大切にしたい行動)
3層:人・組織と社会の哲学(組織の存在意義・根底の考え方)

人事制度の3層の例
制度はこの三層が連動しなければ機能しません。
そこで、CHINTAIでは制度の詳細に入る前に、まず経営陣で上位層(2層目・3層目)について丁寧に語り合う時間をつくりました。
淺野さん:
検討会では、歴史やこれまで大事にしてきた価値観が次々と出てきて、『これは今も大切にしたいよね』という軸が見えやすくなりました。働くうえで社員に期待する姿勢は大きくは揃っているけれど、細かなイメージには違いがある──その共有ができたことが大きかったです。
村川さんは、この経営陣での対話が“価値観の再確認”になったと語ります。
村川さん:
CHINTAIという名前に象徴されるように、もともと私たちは“賃貸”という文化やスタイルそのものをつくり、広めてきたパイオニアでした。ただ、パイオニアであることにあぐらをかくのではなく、なぜ切り拓いてこられたのか、その精神を今も未来も大事にしないといけないよねといった話が自然と生まれてきました。
そして、社員にどうあってほしいかについては、『幸せになってほしい』という願いは共通している。ただ、その“幸せ”の描き方が少しずつ違う──その違いをまず共有できたことが、とても意味のある一日でした。
ここで経営陣が揃えた“方向性”が、この後に続くミッション・バリュー(MV)チーム、パフォーマンスマネジメント(PM)チームの検討の土台となりました。
制度そのものを議論する前に、「どんな組織をつくりたいのか」「何を拠り所にするのか」を揃えておくことが、制度の生命線になる。そのことが、CHINTAIの制度づくりを支える軸となっていきました。
5. 制度づくりをエンパワーする:MV・PMチームの挑戦と自走のプロセス
経営陣で制度づくりの土台となる哲学を共有した後、いよいよ制度の具体化フェーズが始まりました。CHINTAIが選んだのは、人事主導ではなく、現場の社員自身が制度をつくるプロセスです。
制度の核となる「ミッション・バリュー」を再定義する MVチーム、そして評価・目標設定などパフォーマンスマネジメントを検討する PMチーム。どちらも各部門のマネジャーやメンバーが中心となり、人事はデザインチームとして支援に回りました。
■ 最初は“何をしたらいいのか分からない”揺らぎから始まった
制度づくりを担うチームが発足したものの、最初から順調だったわけではありません。村川さんは、当初の空気を次のように振り返ります。
村川さん:最初は正直、みんな何をしたらいいのか分からない感じでした。会議に来たからには結論を出さなきゃいけないというスタンスが強かったり、『どこまで決めていいのか?』『これは経営の承認が必要?』と戸惑っていました。ヒューマンバリューさんが“答えをくれる場ではない”ということも最初は理解しきれていなかったと思います。
“自由に考える”といっても、どこまで任されているのかが分からない──それは多くの組織で見られる自然な揺らぎであり、CHINTAIでも例外ではありませんでした。
■ 「なぜこのプロセスにいるのか」をもう一度
議論が停滞していたある日、村川さんはチームに改めて“制度づくりの意味”を語り直す時間をつくったと言います。
村川さん:
丁寧にコミュニケーションを重ねてきたつもりでも、プロセスが進む中で、MV・PMチームとデザインチームのあいだで解釈のズレが生まれつつあると感じました。そこで一度立ち止まり、双方でホワイトボードを囲みながら「私たちは今どこに向かっているのか」「三層モデルのどこを担っているのか」を改めて整理しました。その対話を通じて、全員が腹落ちした表情になり、理解がひとつに収束していくのを実感した瞬間でした。
そこから、「私たちがつくる制度なんだ」という手応えが芽生え、次々と主体的な発言が出始めたといいます。「給与設計にはこの考え方を必ず入れてほしい」「ミッション・バリューはこの言葉である必要はなくて、もっと伝わる表現に変えていいんですよね?」そんな“自分の言葉”が出てきたのは大きな転換点でした。

戸惑いがありながらも闊達な議論が行われたMV・PMチームのミーティング
チームを支える“人事+ヒューマンバリュー”のデザインチームにも葛藤がありました。佐野さんは、その内側を次のように語ります。
佐野さん:
PM・MVチームを支える立場として、皆さんの迷いや不安に寄り添う時期が続きました。答えがないプロセスだからこそ、デザインチーム自身も揺らぎながら支える必要がありました。でも後半、若手メンバーが堂々と自分たちの案を発表した瞬間、『この場を一緒につくれてよかった』と心から思いました。
■ “まずやってみる”ステップ0──小さな実験から制度が動き始める
議論を重ねる中で生まれたのが、制度完成前にまず現場で試す「ステップ0」という取り組みでした。阿諏訪さんはこう語ります。
阿諏訪さん:
制度が固まる前に、PMやMVチームのメンバーが主体になって目標設定のやり方などを現場で試してみるステップ0を行いました。人事が主導するのではなく、現場メンバーが動き出したことがとても象徴的でしたし、エンパワーメントと実験のカルチャーを感じました。
制度は紙の上で完璧に設計するものではなく、手を動かしながら磨き上げていくもの──その姿勢が、CHINTAIらしい制度づくりのスタイルとして息づき始めていました。

全社員を巻き込んだ改定プロセス
■ 「手放す」ことで生まれた、自分たちの制度
人事制度は往々にして人事がコントロールしがちな領域です。しかしCHINTAIのデザインチームは、あえて手放し、社員に託す道を選びました。この「手放す」姿勢そのものが、メンバーをエンパワーし、“自分たちの制度を自分たちでつくる”という新しい文化を静かに育てていきました。
次章では、こうして形づくられていったミッション・バリューとパフォーマンスマネジメントの仕組みが、どのような制度として結実していったのかを見ていきます。
6. 人生と仕事をつなぐ制度へ:自分ごと化を促す新たな仕組み
経営陣の哲学の整理、MV・PMチームによる自走型の検討──そうしたプロセスを経て、CHINTAIの新しい人事制度の輪郭が形を帯びていきました。
その中心にあるのは、社員一人ひとりの「人生」と会社の哲学をつなぐこと。単に評価や報酬のルールを変えるのではなく、働く人の価値観やキャリアの願いを制度が受け止め、そこから会社の方向性へと自然につながっていく状態を目指しました。
村川さんは、その根本思想を次のように語ります。
村川さん:
会社の哲学や「こうありたい」という思いは明確になってきました。ただ、それが社員一人ひとりの人生と結びついていなければ、自分ごとにはなりません。
自分の人生がどうありたいか──その「4層目」と、会社の哲学やカルチャーといった3層目をつないで考えてほしい。狭い意味のキャリアではなく、人生としてのキャリアを考える機会にしてほしいという思いがありました。

CHINTAI独自で進化させた4層モデル(自分ごと化がキー)
■「自分ごと化」を軸にした目標設定と評価へ
特に大きく変わったのが、目標設定と評価のプロセスです。
従来のように会社の数値目標を個人に分解するのではなく、自ら目標設定に参画し、生み出した「価値」を評価する制度へと転換しました。

淺野さん、村川さんは、この変化を次のように語ります。
淺野さん:
目標設定は、自分のキャリアや成長を踏まえて「だからこの目標に挑む」という流れに変えました。以前は会社の数字がそのまま個人に落ちてきていましたが、今回はメンバー自身が考えるプロセスを大切にしました。
また、目標の設定の仕方も、会社のミッション・ビジョンを踏まえて、マネジャーが自部署の方針を語り、それを元にメンバー自身が目標を考え、マネジャーと目線を合わせたり、周囲のメンバーと共有するようなプロセスを構築して、深く関われるようにしていきました。結果的に事業の連携やロールモデルの発見などにもつながればと思っています。
さらに、組織として人財を育てていくための仕組みとして、「人財共有ミーティング」も導入されました。
村川さん:
相対評価から絶対評価へと軸を移し、生み出した価値を評価するようにしました。
また「人財共有ミーティング」では、評価のジャッジではなく、社員一人ひとりの目標や強みを理解し、組織としてどう支援していくかを対話する場としました。これは大きな転換点でした。
こうして、価値創出・自分ごと化・成長支援・タレントマネジメントが一連の流れとして設計され、制度は“育て合う組織文化”へとつながり始めています。
■ 制度は「会社の未来と個人の未来をつなぐデザイン」へ
こうして生まれたCHINTAIの新しい人事制度は、評価制度の刷新にとどまらず、
・価値創出を起点に考える組織文化
・自分ごと化された目標設定
・多様なキャリア可能性の開放
・育て合うタレントマネジメント
といったエッセンスを統合し、“会社の未来”と“個人の未来”をつなぐ仕組みへと進化しました。
制度は完成した瞬間がゴールではなく、これから組織の文化として育っていくもの──CHINTAIはその第一歩を踏み出しています。
7. 自分ごと化が文化になるまで:CHINTAIのこれからの挑戦
新しい制度が動き始め、CHINTAIの組織は今まさに変革の只中にあります。すでに価値を実感している社員がいる一方で、戸惑いや葛藤の声も当然存在しています。制度が完成したからといってすぐに文化が変わるわけではなく、“考え方そのものの転換” が問われるフェーズへと進んでいると言えます。
淺野さんは、現在の反応を次のように語ります。
淺野さん:
「目標を自分で考えられるのはいいですね」と前向きに受け止めてくれる社員も多くいます。一方で、特にこれまで“与えられた数字にコミットする”ことで力を発揮してきた人たちの中には戸惑いがある人もいます。
また、マネジャーの間でも理解にばらつきがあると思います。メッセージを自分なりに受け止めて、うまく活用しようとしている人もいれば、メンバーの希望と現場の要請のバランスに悩むケースもあります。こうしたところをどう支えていくかは、今後の大きなテーマだと感じています。
制度の運用は始まったばかりで、ここからどれだけ丁寧にフォローしていけるかが鍵になります。しかし、CHINTAIにはすでに大きな強みがあります。それは、この制度が人事だけでなく、経営・全社員・MV/PMチーム――多くのメンバーを巻き込みながら時間をかけてつくり上げてきたという事実です。
制度の導入をきっかけに、部署を越えてお互いの仕事を理解し合う自発的な場が生まれはじめています。制度が“動き出す前に”文化が動きはじめているとも言えます。
会社としても、これからはキャリアをより自分ごととして考えていけるよう、学びや対話の機会を継続的に支援していこうとしています。制度はまだスタートしたばかりですが、こうした“プロセスの力”と“自発的な動き”が重なり合うことが、変化を乗り越えていく大きな推進力になるはずです。
村川さん:
情熱で引っ張る巻き込み方もありますが、今回の取り組みでは『手を離して待つ』という巻き込みのあり方も大事なのだと感じました。
淺野さん:
人事が言っていること、役員が示す方向性、現場の声──そのつながりを丁寧に築いていくことが、自分ごと化につながるということを深く学びました。

制度づくりはゴールではなく、ここから始まる長い旅の第一歩にすぎません。自分たちの手でつくり、自分たちの手で育てていく──その姿勢をCHINTAIはすでに手にしています。
変化の途中にある今こそ、新しい文化が静かに、しかし確かに根づき始めている瞬間でもあります。この歩みが、CHINTAIらしい未来の働き方を形づけていくことでしょう。
2025年10月9日 CHINTAIオフィスにて
共創ストーリーズ
#1 問いから始まるチェンジ・マネジメント
〜パーソルキャリアはいかにHiPro Biz事業と組織を変革してきたのか〜
#2 答えがない揺らぎから始まる未来共創の旅
〜GDOが歩んだ10年の変革ストーリー〜
#3 笑顔あふれる未来へと駆け抜ける
〜ランテックは“皆が腹落ちする”パーパス&バリューをどう生み出したのか〜
#4 コミュニティ型人材成長企業を体現する「学びの場づくり」
〜NTTテクノクロスの取り組みより〜
#5 CHINTAIが挑む人事制度の「自分ごと化」
〜制度づくりを文化づくりへ変えていくエンパワーメントの実践〜