Eラーニング

ブレンデッド・ラーニング(どのように人は学ぶか)

カンファレンスセッションの紹介:Tech Learn2001年

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Masie Centerは真の学習はブレンドの結果であると信じています。人々は、情報を得て、それを自分たちの知識データベースに統合するに際し、複数のアプローチをとることが、最も効果的に学習します。このセッションでは職場でのブレンデッド・ラーニングのケースを作るのに加え、以下の内容を話し合います。

・ブレンデッド・ラーニングとは何か?
・どのように同期、非同期、あるいはEラーニングとクラスルーム学習をミックスさせるか
・誰がブレンドを決めるのか
・現場からのデータ-どのようなブレンデッド・ラーニングが実際に成功しているか

概要

ブレンデッド・ラーニングは今回のカンファレンスの大きなテーマのひとつということもあって、700人ほど入る会場の8割がたは埋まっていた。セッションはほとんどスライドを使わない、基調講演のような形式がとられていた。

内容

ブレンデッド・ラーニングとは何か?

このセッションではブレンデッド・ラーニングとは一体何か、またどのように企業に導入するべきかということに注目していきます。

実際にブレンデッド・ラーニングを導入している人はどれくらいいますか?
それは新しいコンセプトだと思いますか?
それはクラスルームとオンライン学習の融合だと思いますか?
人々は実際にはどのように学んでいるのでしょうか?

ブレンデッド・ラーニングという言葉が登場してから2年が経過するが、それは新しいものではありません。 ブレンデッド・ラーニングとは人々が学習するときに自然と行われるものなのです。
例えば、すばらしい先生の授業があったとしても、学習とは、その先生とのやりとりだけから起きるのではなくて、その先生が提供したテキストを勉強したり、休み時間に友人と話合ったり、本を読んだりするなど、一連のプロセスとして起きるものなのです。
つまりブレンデッド・ラーニングは人間が学習するとき必ず起きるものといえます。

みなさんは現在の仕事をどのように習得しましたか?
トレーニング・プログラム? CBT? マネージャーとの会話? 面白いことは、シングル・アプローチをこちらが選択したとしても、結果として受講者はマルチ・メソッドで学んでいるということです。 マルチ・メソッドはコンテクストを劇的に変化させます。 良い学習においては、必ず、学習がブレンデッドされているのです。

それでは誰がブレンデッドするのでしょうか? それは、学習者自身であり、シングル・メソッドを与えても学習者が自分でマルチ・メソッドを作り出すのです。 以前に自分も5日間のテクニカル・ライティングのコースを受講しましたが、すばらしいマニュアルが配布されたにも関わらず、教授が1ページずつ読んでは、質問はありますか、と聞くつまらないものだったので、自分たちでクラスを持った経験もあります。

どのようにブレンドするか?

ここにすばらしい非同期のオンラインコースがあったとします。
ブレンデッド・ラーニングの基本的なコンセプトは、これにクラスルーム、コーチ、リーディング、そしてインフォーマルなOJTなどいくつかを付け加えるということです。
例えば最初はクラスルームで始めて、最後はオンラインコースで終えたり、その逆でオンライン・コースで知識をマスターしたあとクラスに行くということも考えられるでしょう。

ここに、新入社員のオリエンテーション・プログラムを例に挙げてみましょう。大半の新入社員は現在のオリエンテーションに満足していないという調査結果があります。
なぜなら、プログラムが、”Long time, long content, long context”で行われるからです。 実際には初日に知りたいのは、自分のマネージャーは誰かとか、トイレはどこか、服装は何を着ればいいのかといったことなのに、平均的なプログラムはCEOの若い頃の紹介やミッション・ビジョンの説明から始まっています。
つまり、入社するときにオリエンテーションをやっていたのでは遅いのです。

しかしシングル・メソッドではそうせざるを得ません。 もしあなたが、オリエンテーション・プログラムをブレンドする立場であったらどのようにしますか?考えてみてください。 また、ブレンドが大切であることはわかりますが、次に来るチャレンジは、コストがかかるということです。

しかし、その際にも、例えば半日をインストラクター主導のコースにして、半日をオンラインにするなど、代替案を考える必要があります。 そのほかの良い組み合わせの仕方については、他のセッションでも多くのケーススタディを扱っているので参考にしてください。

どのようにブレンデッド・ラーニングを導入するか?

ブレンデッド・ラーニングは、IT関連のコースで特に効果を発揮しているようです。 メジャーなITカンパニーではもはや101トレーニング(アプリケーションの使い方を学ぶといった基本トレーニング)はもうクラスでは行わず、オンラインで行われています。 そして、102をクラスルームで行い、その際には101で得た知識を測るのではなく、ダイアローグを含んだよりインタラクティブなセッションにするのです。

この背景には、オンラインコースは、手順どおり物事を教えるのに適しており、クラスルームはさらにそれを深めるのに効果があるといえます。
次に示す例はクラス-オンライン-クラスという形式をとるものです。(私はこれをさかさま寿司と呼んでいます) 例えば、リーダーシップを教えるコースではまず、みなが一同に集まって、自己紹介やクラスの目的などをシェアします。
そして次に7~8週間のコーチングなどさまざまなものが付加されたオンラインコースを受けます。そして最後にその成果をプレゼンするというものです。
ブレンデッド・ラーニングはコーチングを伴ったオンライン学習とクラスルーム学習の融合といえます。 また、クラスからCommunitey of Practiceが始まったり、オンライン学習からCommunitey of Practiceが始まるといったことも考えられるでしょう。

どのようにブレンドを推進するか?

ブレンドは学習者によって行われるもので、彼らに多くの選択肢を与えるのがいいでしょう。しかしその際にもチャレンジングなのは多くの選択肢はコストがかかるということです。

また人によって、ブレンドの仕方が違うということもチャレンジングです。 また、ブレンデッド・ラーニングは購入することができません。(6~7%のベンダーがブレンデッド・ラーニングのサービスを始めましたが)
それではどのようにブレンドをマネージできるでしょうか?これにはまだ手がかりがないのが現状です。

ここでいったん、インストラクショナル・デザインの基本に立ち返ることが必要かもしれません。 大学でも、マルチメディア学習とインストラクショナル・デザインの間のコースとして、ブレンデッド・モデルの授業が始まれば面白いかもしれません。

レシピとしてのブレンデッド・ラーニング

ブレンデッド・ラーニングのメタファーとしてはレシピが考えられるでしょう。

問題は、塩を入れるか、入れないかということではなくて、どれくらい塩を入れるかということです。つまり、インストラクターへのアクセスが必要か必要でないかということではなくて、どれくらいのアクセスが必要かということです。

私たちにとって、これからのチャレンジはどのようにこのレシピをミックスするかということです。つまり、どれくらいオンラインで行い、どれくらいクラスルームで行うか、また、オンラインの構成はシミュレーションを入れるか、同期学習を入れるかということを議論するということです。

あなたにとってベストなブレンドはどんなものだと思いますか?話し合ってください。 そして我々は今後、すばやくオンライン学習を作り、ブレンドすることをコストをかけることなく、また複雑にしすぎることなく推進していかなければいけません。

その際にポイントとなるのは以下の3点でしょう。

・コーチングをどのように取り入れるか
・良いブレンドは何かということを裏付けるデータが必要。(誰が参加して、誰が成功したかといったような)
・ブレンドを記述する術を考えることが必要。現在は、ブレンドの定義があいまいで何が実際に行われているかわからない。ブレンドに関するレーベル、ブランドを作成することが必要

ブレンデッド・ラーニングは今後学習のレシピとして重要な現象となるでしょう。

所見

ブレンデッド・ラーニング101のセッションということで、基本的な質問を受講者に投げかけ、考えさせるというという形態が取られていた。具体的な事例やデータに関しては、他のセッションを参考にせよとのことであった。ブレンデッド・ラーニングに関する現在の議論のポイントとしては、

1) どのような割合で複数の学習形態をミックスするのが効果的か
2) その効果を測るデータをどのように収集するか
3) ブレンドするうえで、増大するであろうコストをどのように押さえるか

といったことが挙げられていた。そしてそれらの解はいまだ出ておらず、現在さまざまな事例を参考にしながら模索中であるとのことであった。今後、他のセッションにおいて具体的な事例を聞いてみたい。

私たちは人・組織・社会によりそいながらより良い社会を実現するための研究活動、人や企業文化の変革支援を行っています。

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