学習する組織勉強会

学習する組織勉強会第1期レポート(4):チーム学習

関連するキーワード

第4回ダイジェスト

※2009年12月~2010年5月に全6回で行われた第1期勉強会の取り組みをダイジェストで紹介しています。

第4回のテーマは「チーム学習」でした。「チーム学習」とは、チームのメンバーが本当に望んでいる成果を生み出すために、一致協力してチームの能力を伸ばしていく過程(『最強組織の法則』)のことです。チーム学習のキーとなる考え方に「ダイアログ」があります。この勉強会でもこれまで、各会でダイアログを実践してきましたが、今回はあらためて、ダイアログを実践しながら、自組織でのチーム学習の振り返り、今後の取り組み等について検討を深めていきました。

冒頭では参加者から、書籍を読んだ感想、疑問等として「本音が出ないと学習が起きない。本音を出す場が大切」 「ダイアログとディスカッションのバランスをどう取るか」 「ダイアログを実施するには、仲間と見なすことがポイント。それをどう実践するか?」 「ダイアログを仲間だけではなく、マネジメントレベルなど会社全体で巻き込んでやろうとすると、準備が必要」「現在は、チームのとらえ方が数年前と変わってきている。それによって、チーム学習の意味も変わってきているか?」等が共有されました。第4回では、こうしたことを念頭において、皆で理論の確認、振り返り、ダイアログを行い、探求を深めていきました。

その後、チーム学習に関連する「課題解決へのアプローチの変化」「創発」等についての検討を経て、各参加者が自組織におけるチーム学習の振り返りを行いました。具体的には、リッチピクチャーというツールを用いて、チームにおける各メンバーの強み、関係性、学習への貢献について図示することで、チーム学習に関連する現状を振り返っていきました。

振り返りを終えたメンバーからは、多くの感想、気づきが生まれました。例えば、「図示することで、現状が把握できる」 「お客さまへの貢献はわかりやすいが、社内への貢献が?」 「いろいろな人から学習への貢献はしてもらっているが、自分が貢献できているところは少ないのではと感じた」 「他の人のリッチピクチャーの中に、相手の個性に対知る貢献が描かれていた。自分は周囲の人に対して、一律的な貢献しかできていないように感じた」など、現状の把握につながったという振り返りも多く見られました。

また、 「学習って何かをあらためて考えた。目に見えるものを学習と考えがちな傾向がある」「コミュニケーションは、頻度ではなくて、お互いの信頼や理解度がベースにあるのではないかと思った」 「自分と関わっている人と別の人をつなげられると、より学習が広がると感じた」「学習は知識がストックされて起きるのではなく、機会を提供したりされたりすることで起こることが多い。フローとして生み出されているとあらためて感じた」 「チーム学習がうまくいっているところとうまくいっていないところが見えてきた。その違いは、機会や仕組みがないこと、またドライバーとなる人がいないといったことがあるのではと思った」など「チーム学習とは何か」やそれを引き起こす要因に関連する気づきも多く出されました。

その後、「チーム学習を組織で活用するには」「ダイアログ文化をつくるには」というテーマで、ダイアログを行いました。そこでは、「場の重要性」の話からスタートし、「場づくりを行うという段階は文化になっていない」「場づくりを行いながら、仮説を保留したり、一人ひとりの話を聞いたり、深く考えることを体験して、それが内在化される」「特にファシリテータが場をつくらなくても話あるように状態を実現したい」といった意見も出ました。また、文化づくりという側面では、どうしても経営的な観点では効率性やパフォーマンスが要求されるため、経営者の影響も大きく、時間軸をどこで見るかが分かれ目になるという意見も出ました。

最後には、チーム学習におけるチームが一企業の中の組織や固まりという意味だけではなく、企業を超えたつながりや社会的なつながりなどに広がっている。チーム学習の枠組みもそのように広げていかないと変化に対応することができないのではないか。もっとスピード感を高めていくことが必要なのではないか、という意見が出されました。

学習する組織勉強会第1期レポート(4):チーム学習

私たちは人・組織・社会によりそいながらより良い社会を実現するための研究活動、人や企業文化の変革支援を行っています。

関連するレポート

【Rethink -組織開発を再考する対話会 実施レポート】第4回:OSTの体験から、自律分散・自己組織化型の変革を考える

2024.08.28インサイトレポート

【Rethink:組織開発を再考する対話会】の第4回目を、2024年7月9日(火)にオンラインで実施しました。今回のテーマは、「OSTの体験から、自律分散・自己組織化型の変革を考える」でした。本レポートでは、対話会当日の様子や参加者の皆さま同士の対話から生まれた気づきをご紹介できればと思います。

【Rethink -組織開発を再考する対話会 実施レポート】第3回:人間性を回復し、ソーシャル・キャピタルを育むワールド・カフェの可能性

2024.02.08インサイトレポート

【Rethink:組織開発を再考する対話会】の第3回目を、2024年1月18日(木)にオンラインで実施しました。今回のテーマは、「人間性を回復し、ソーシャル・キャピタルを育むワールド・カフェの可能性」でした。本レポートでは、対話会当日の様子や参加者の皆さま同士の対話から生まれた気づきをご紹介できればと思います。

コラム:ピープル・センタードの人事・経営に向き合う5つの「問い」

2022.10.28インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 取締役主任研究員 川口 大輔 「人」を中心に置いた経営へのシフトが加速しています。パーパス経営、人的資本経営、人的情報開示、ESG経営、エンゲージメント、ウェルビーイング、D&I、リスキリングなど様々なキーワードが飛び交う中、こうした動きを一過性のブームやトレンドではなく、本質的な取り組みや価値の創出につなげていくために、私たちは何を大切にしていく必要がある

自律分散型組織で求められる個人のマインドセット変容

2022.10.19インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 会長高間邦男 今日、企業がイノベーションを行っていくには、メンバーの自律性と創造性の発揮が必要だと言われています。それを実現するために、先進的な取り組みを行う企業の中には、組織の構造を従来の管理統制型のピラミッド組織から自律分散型組織に変えていこうという試みをしているところがあります。それを実現する方法としては、組織の文化や思想を変革していくことが求められます

組織にアジャイルを獲得する〜今、求められるエージェンシー〜

2022.01.20インサイトレポート

プロセス・ガーデナー 高橋尚子 激変する外部環境の中で、SDGsへの対応、イノベーション、生産性の向上などの山積するテーマを推進していくには、組織のメンバーの自律的取り組みが欠かせません。そういった背景から、メンバーの主体性を高めるにはどうしたら良いのかといった声がよく聞かれます。この課題に対し、最近、社会学や哲学、教育の分野で取り上げられている「エージェンシー」という概念が、取り組みを検討

アジャイル組織開発とは何か

2021.10.25インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 会長 高間邦男 ソフトウエア開発の手法として実績をあげてきたアジャイルの考え方は、一般の企業組織にも適応可能で高い成果を期待できるところから、最近では企業内の様々なプロジェクトにアジャイルを取り入れる試みが見られるようになってきました。また、いくつかの企業では企業全体をアジャイル組織に変革させるという取り組みが始まっています。本稿ではこういったアジャイルな振る舞いを

<HCIバーチャル・カンファレンス2021:Create a Culture of Feedback and Performance参加報告> 〜「フィードバック」を軸としたパフォーマンス向上の取り組み〜

2021.10.01インサイトレポート

2021年 6月 30日に、HCIバーチャル・カンファレンス「Create a Culture of Feedback and Performance(フィードバックとパフォーマンスのカルチャーを築く)」が開催されました。

コラム:『会話からはじまるキャリア開発』あとがき

2021.08.27インサイトレポート

ヒューマンバリューでは、2020年8月に『会話からはじまるキャリア開発』を発刊しました。本コラムは、訳者として制作に関わった私(佐野)が、発刊後の様々な方との対話や探求、そして読書会の実施を通して気づいたこと、感じたことなどを言語化し、本書の「あとがき」として、共有してみたいと思います。

ラーニング・ジャーニーが広げる学びの可能性〜『今まさに現れようとしている未来』から学ぶ10のインサイト〜

2021.07.29インサイトレポート

過去に正しいと思われていたビジネスモデルや価値観が揺らぎ、変容している現在、「今世界で起きていることへの感度を高め、保持し続けてきたものの見方・枠組みを手放し、変化の兆しが自分たちにどんな意味をもつのかを問い続け、未来への洞察を得る」ことの重要性が認識されるようになっています。 そうした要請に対して、企業で働く人々が越境して学ぶ「ラーニング・ジャーニー」が高い効果を生み出すことが、企業の現場で認

不確実な時代において、なぜ自律分散型組織が効果的なのか?

2021.07.19インサイトレポート

自律分散型組織については、1990年初頭に登場した「学習する組織」の中で、その必要性や有用性が語られて以降、変革の機運が高まり、様々なプラクティスが生まれてきました。一方、多くの企業は未だに中央集権的なマネジメント構造に基づいた組織運営から脱却することの難しさに直面しているものと思います。しかしながら、COVID-19の世界的なパンデミックをはじめ、社会的な文脈が大きく変わっていく流れの中で、これ

もっと見る