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パフォーマンス・マネジメント革新

2010年頃から、米国の先進企業を中心にパフォーマンス・マネジメント(パフォーマンスを高めるための活動、プロセス全般のこと)の革新に取り組む企業が現れ始め、現在、急速な広がりをみせています。外資系企業を中心に、日本でもパフォーマンス・マネジメントの革新に取り組む企業が増えてきており、今後も広がっていくものと考えられています。

従来のパフォーマンス・マネジメントの課題

2015年5月に開催された、世界最大の人材開発の国際会議であるATD International Conference & Expositionでは、2010年には5社程度だったのが、2015年には40社~50社の企業が年に1度の評価段階付けやあらかじめ定められた評価段階の分布率などを廃止し、継続的なカンバセーションを中心とするパフォーマンス・マネジメントの革新に取り組んでいると発表されました。

こうしたパフォーマンス・マネジメントの革新が起きている背景として、従来のパフォーマンス・マネジメントがうまく機能しなくなってきたということが挙げられます。具体的には、以下のような理由があります。

1.メンバーやマネジャーのエンゲージメントを低下させる(レイティングによってモチ
  ベーションが上がる人はほとんどいない)
2.マネジャーとメンバーの関係を悪化させる(レイティングがメンバーの恐れと不安を
  増大させる、評価者のバイアスなどによって公平性を担保できないなど、評価者と
  メンバーの関係性の妨げとなっている)
3.掛けるコストと得られる成果・効果が釣り合わない(評価プロセスに膨大な時間が
  掛かる、メンバー同士の競争を助長するなど、本来の目的であるパフォーマンスの
  向上につながっていない)
4.ビジネスの実態にそぐわない(変化が激しい環境において、年1~2回の目標設定
  ・面談では不十分)

こうした背景から、多くの企業がパフォーマンス・マネジメントの革新に取り組み始めているのです。

起きている変化を3層で捉える

では、具体的にはどんな変化が起きているのか、見ていきたいと思います。その際、表層的な制度や仕組みの変化だけに目を向けても、自社が望む未来を実現することは困難です。現在起きているパフォーマンス・マネジメントの変革の背景にある本質は何かを探ることによって、今起きている変革が自社の未来にとってどういった意味があるのか、自社の人事評価、パフォーマンス・マネジメントをどのように変革すればよいのかについて明らかになってきます。そして、こうした背景への理解を深めることが、単なる制度の変更にとどまらずに、パフォーマンス・マネジメントの革新を自社のカルチャーやマネジメントの変革等に生かしていくことにつながるのです。
ヒューマンバリューでは、起きている変化を3つの層(1:手続き・制度・ツール、2:戦略・カルチャー・マインドセット、3:人・組織と社会の哲学)に分けて捉えました。

一層目は、目に見える表面的な変化で、代表的なものとしては、ノーレイティング(レイティング廃止)、ノーカーブ(定められた分布に当てはめる相対評価)、報酬決定におけるマネジャーの裁量拡大、頻繁なカンバセーション、対話を促進するツール・アプリの活用などがあります。これらは従来のパフォーマンス・マネジメントの課題に対応するという形で生み出された営みであるとも考えられます。

二層目は、戦略・カルチャー・マインドセットの変化です。組織やビジネスに関わるトレンドの変化に順応する形で、組織が目指している実現したい戦略やカルチャー・マインドセットも変化しています。具体的には、すでにパフォーマンス・マネジメントの革新に取り組んでいる企業の多くが、「コラボレーション」「アジャイル」「グロース・マインドセット」「カスタマー・フォーカス」といったことを重視するようになってきています。

三層目には、人・組織と社会の哲学があります。現在のパフォーマンス・マネジメント革新をあらためて俯瞰してみると、企業と従業員の関係において、企業側を主体、従業員側を客体とみなすあり方から、従業員が主体で企業がその主体を支える立場を取るという世界観への転換と捉えることができるのではないでしょうか。ヒューマンバリューでは、このような世界観の転換を「『カンパニーセンタード』から『ピープルセンタード』へ」という言葉で表現しています。このような根底に流れる人や組織を見る世界観の変化が、「パフォーマンスの捉え方」「制度・仕組み」「人材マネジメント」「マネジャーの役割」「組織のあり方」にも影響を与え、それらの意味の転換にもつながっているように考えられます。

3層の整合性を図る

このような変化を踏まえて、これから先、自組織に働きかけを行っていく上で、どういったポイントを押さえていけばよいのでしょうか?

具体的には、ここまで述べてきたように、仕組みの変更が重要なのではなく、パフォーマンス・マネジメントの革新を通してどういった状態を実現したいのか、どういうフィロソフィーを大切にしたいのかを明らかにすることが大切になります。また、現状がどういった状況なのかによっても、働きかける対象や打ち手などが変わってくるため、これが正しいといった唯一無二の正解はありません。

​そんな状況だからこそ、個別の事象に対してどうするのかを考えるのではなく、3つの層の整合性を図りながら、できるところから取り組みを進めていくことが重要になってくるのではないでしょうか。

この3つの層の整合性が取れていないまま、たとえば制度やツールだけを変えたとしても、それらを運用する人や組織のカルチャー、マインドセット、哲学が一貫していなければ、制度や仕組みが独り歩きしてしまい、理想の状態への革新は進まないように思います。また、人や組織のマインドセットや哲学を変えようとしても、制度やツールが従来の仕組みのままでは、たとえ一時的にはマインドセットや哲学が変わりかけたとしても、また元に戻ることが起こるかもしれません。この3層の整合性を図るという観点をもちながら、取り組みを進めていくことがポイントとなります。

現在進行形のトレンド

パフォーマンス・マネジメント革新の取り組みは、正解や答えがあるわけではなく、また、すでに取り組みを始めている企業と同じものを取り入れればうまくいくというものでもありません。パフォーマンス・マネジメント革新の取り組みは、それぞれの企業が、生成的なプロセスをたどっていきながら、自組織に合うパフォーマンス・マネジメントを育てていく営みであるといえるでしょう。また、多くの企業にとって、これは現在進行形で、終わることのない取り組みです。それぞれの組織の、「いま」と向き合い続け、継続的により良くしていくプロセスであるといえます。