働く意味調査

「2011年 会社員1000人の働く意味調査」Webレポート

ヒューマンバリューでは、個人が働きがいをもって仕事に取り組んだり、企業がそれをサポートするヒントを見つけるため、1000人の働く人々を対象とした「働く意味」「働きがい」についての調査を行いました。
本レポートでは、その概要やそこで見えてきた働きがい向上の方向性等について紹介します。

関連するキーワード

前の記事

「2011年 会社員1000人の働く意味調査」の概要

調査の背景と目的

現在、働きがいや個人のモチベーションという点について、「メンバーがやらされ感に陥っている」「今の職場ではもてる力を十分に発揮していないと感じている」「今の仕事に想いをもって、前向きに取り組めていない」などという声が聞かれます。
働きがいは環境に左右される要素もあるかもしれませんが、同じ環境にいても働きがいを感じている人と感じていない人が出てきます。そこで、この調査では、働く意味についてどういった想い方や考え方、仕事に対する意識などで働きがいの変化が生まれてくるのかを調査しました。
20代から50代の会社員1000人の実態調査を通じ、個人の働く意味を高めることや個人が働きがいをもって仕事に取り組むための個人としての手がかり、企業としてそれをサポートするヒントを見つけることを目的としています。

調査内容

今回の調査では、「仕事に対する意識の状態(どんな状態なのか)」「仕事に対する価値観(何のために仕事をしているのか、また仕事をしている上で指針となっている想い)」「仕事における自分自身の行動や考え方(実践しているもしくはとりがちな考え方や行動、または価値を置いている行動)の3つについて、設問を設定し調査を行いました。
ダニエル・ピンクの提唱する「モチベーション3.0」の考え方にもあるように、個人の内面から湧き起こるやる気によってもたらされる働きがいについて調査しています。そのため、環境的要素、報酬や出世などの欲求についての設問は含めていません。

「2011年 会社員1000人の働く意味調査」で明らかになったこと

働きがいの現状———働きがいを感じている人は全体の4割以上

図表1にあるように、40%以上の人が働きがいがあると回答しています(トップ2の回答)。

働きがいに影響する要因 ——-「今現在の仕事に使命感や働く意味を感じている」ことが働きがいにつながる

それでは、働きがいに最も影響の強い要因は何でしょうか。今回調査した186問の中で、働きがいにもっとも影響の強かったのは、「今現在の仕事に使命感や働く意味を感じている」であることがわかりました。調査では、その他にも「今の仕事に満足している(満足)」「主体的に仕事に取り組んでいる(主体性)」「仕事を通して成長している(成長実感)」「仕事の目的と人生の目的の一致(人生との一致)」「自分の仕事に誇りをもっている(誇り)」等を聞いていますが、働きがいとの相関がもっとも高いのは「今現在の仕事に使命感や働く意味を感じている」(相関係数0.74、有意確率1%水準)となっています。

働きがいはどのように高まるのか ——-働きがいが高い人は、働きながら使命感や働く意味が強まっていく

「使命感や仕事の意味」が働きがいに影響が強いことがわかりましたが、先に挙げた働きがいを感じている4割の人は、最初から、使命感や仕事の意味を感じていたのでしょうか。それとも、後から感じるようになったのでしょうか。それを明らかにしたのが図表2です。

最初から働きがいを感じていたのは25%弱(24.5%)であり、40%(39.6%)近い人は、仕事をしながら使命感や働く意味が高まったと回答しています。また、「仕事をしながら使命感や仕事の意味中身や質が変化した」と回答している人も40%強(40.7%)います。両者の重複回答を除いて、合計すると70%強(70.4%)の人が仕事をしながら使命感や働く意味が強まったり、中身が変化しているということが言えます。
つまり、働きがいを高めるためには、いかに仕事を通じて「使命感や働く意味」育んでいけるのかが重要であることがわかります。

年齢層別の働きがい—–20代は高い人と低い人のギャップが大きい

年齢層別の働きがいをみると図表3の通りとなります。
20代の働きがいを感じている人が最も多い(46.9%)一方で、働きがいを感じていない人も最も多くなっています(29.1%)。働きがいについての格差が大きいのが20代であるといえます。また、働きがいを感じている人が最も少ないのが40代です(39.6%)。40代は働きがいを感じていない人の数も20代に次いで低くなっており(27.2%)、よく言われるミドルの疲弊を表している数字といえるのかもしれません。

職位別の働きがい—–職位が高いほど働きがいを感じている

職位と働きがいの関係を表したのが図表4です。

最も働きがいを感じている人が多いのは、経営職であり、職位が高まるほど働きがいを感じる人が多くなっていることがわかります。それでは、なぜ、職位が高まるほど働きがいが高まるのでしょうか。

職位別の「働く意味」—–職位が高くなるほど、使命感や働く意味を感じるようになる

図表5は、「使命感や働く意味」について、職位別の違いを表したものです。ここから読み取れる仮説は、職位の高い人は、仕事に対して使命感や仕事の意味を感じることが多く、それが働きがいにつながるのではないかということです。

年齢層別の「働く意味」—–年代に関係なく、働きがいを感じている人は使命感や働く意味を感じている

さきほど年齢層別の働きがいについて見てきましたが、働きがいを感じている人の中で、使命感や仕事の意味を感じている人の割合に違いがあるかどうかを表したのが、図表6になります。このグラフを見ると、すべての年齢層において80%近くの人が仕事の意味を感じています。また、仕事の意味を感じていない人は数%に留まっています。ここから考えられる仮説としては、年代によって働きがいに差があるかもしれませんが、どの年代であっても働く意味を感じているかどうかが働きがいに強い影響を与えていることが考えられます。言い方を変えると、働く意味さえ明確にすれば、どの年代でも働きがいを高めることができるということも言えるかもしれません。

参考:働きがいを感じている人が感じている「働く意味」

ここまでの調査で「使命感や働く意味」が働きがいに強い影響を与えていることがわかりました。
それでは、参考までに、働きがいを感じている人が、どのような使命感や働く意味を感じているのかを見てみましょう。本調査では、使命感や働く意味について、62の設問を設定しています。働きがいを感じている人が多く感じている働く意味を挙げると図表7のようになります。

働きがいを高めるために大切なこと—–仕事を通じて働く意味を育んでいく

また、本調査の回答内容から、仕事に対する価値感や仕事の意味の種類にどういったものがあるのかを明らかにしています。
ただし、ここで大切になるのは、自分にとっても唯一の働く意味を見つけることではなく、仕事を通じて働く意味をいかに高めていけるのかということになります。つまり、自分のタイプを決め込むことが大切なのではなく、それをきっかけとして、自分にとっての仕事の意味を見つめ直したり、仕事を通じて育み続けることが重要になります。そういった取り組みを促すための材料や機会を個人として意識的にもったり、組織としてサポートすることが働きがいを高めることにつながります。

調査概要

私たちは人・組織・社会によりそいながらより良い社会を実現するための研究活動、人や企業文化の変革支援を行っています。

関連するレポート

コラム:ピープル・センタードの人事・経営に向き合う5つの「問い」

2022.10.28インサイトレポート

株式会社ヒューマンバリュー 取締役主任研究員 川口 大輔 「人」を中心に置いた経営へのシフトが加速しています。パーパス経営、人的資本経営、人的情報開示、ESG経営、エンゲージメント、ウェルビーイング、D&I、リスキリングなど様々なキーワードが飛び交う中、こうした動きを一過性のブームやトレンドではなく、本質的な取り組みや価値の創出につなげていくために、私たちは何を大切にしていく必要がある

【Co-creation Career】共創によるキャリア開発

2021.11.26インサイトレポート

【Co-creation Career】共創によるキャリア開発 〜 変化の時代の中で、キャリア開発のあり方を問い直す 〜 人生100年時代と言われる今日、キャリア開発は変化の局面を迎えています。働く一人ひとりの価値観や仕事観は多様化し、組織の人材マネジメントも変化が求めれています。社会的な変化の機運は高まる一方で、職場でのキャリア開発の現実に目を向ければ、閉塞感を感じる場面も少なくありません。本

<HCIバーチャル・カンファレンス2021:Create a Culture of Feedback and Performance参加報告> 〜「フィードバック」を軸としたパフォーマンス向上の取り組み〜

2021.10.01インサイトレポート

2021年 6月 30日に、HCIバーチャル・カンファレンス「Create a Culture of Feedback and Performance(フィードバックとパフォーマンスのカルチャーを築く)」が開催されました。

コラム:『会話からはじまるキャリア開発』あとがき

2021.08.27インサイトレポート

ヒューマンバリューでは、2020年8月に『会話からはじまるキャリア開発』を発刊しました。本コラムは、訳者として制作に関わった私(佐野)が、発刊後の様々な方との対話や探求、そして読書会の実施を通して気づいたこと、感じたことなどを言語化し、本書の「あとがき」として、共有してみたいと思います。

これからの組織が目指す、人と組織の関係性 〜エンゲージメント・モデルの再検証より〜

2021.07.20インサイトレポート

人と組織の関係性が大きく変わろうとしている今日、あらためて「エンゲージメント」の概念が注目されています。ヒューマンバリューでは、これまで十数年にわたって蓄積してきたエンゲージメントに関する知見をベースにリサーチを行い、エンゲージメントのあり方を再検証しました。 本レポートでは、リサーチを通して構築したモデルを紹介しながら、いまとこれからの「人と組織の関係性」について考えます。

「今私たちが実現したい成長やキャリアのあり方とは?」 −未来共創オープンラボから見えてきたもの−

2021.02.06インサイトレポート

2020年12月に開催した、企業の垣根を超えて人と組織の未来について探求する「未来共創オープンラボ・ウィーク2020」で行ったセッションのひとつ、「今私たちが実現したい成長やキャリアのあり方とは?」で探求してきた内容を、より多くの方と共有し、今後さらに探求を深めるきっかけとしていきたいという思いから、インサイト・レポートを作成しました。

コラム:万華鏡としてのキャリア観 〜ビバリー・ケイ氏著書日本語版発刊に寄せて〜

2020.09.04インサイトレポート

2020/08/29にヒューマンバリュー出版部より、ビバリー・ケイ(Beverly Kaye)氏らによる著書の日本語版として、『会話からはじまるキャリア開発 ― 成長を支援するか、辞めていくのを傍観するか』(原題:Help them grow, or watch them go、訳:佐野シヴァリエ有香)が発刊されました。 私自身にとっても思い入れのある本であり、多くの人にお読みいただくことで、キ

人・組織の成長を軸に考える、キャリア開発 〜ビバリー・ケイ博士のインタビューから〜

2020.08.18インサイトレポート

ヒューマンバリューでは、2020年8月29日に、『会話からはじまるキャリア開発〜成長を支援するか、辞めていくのを傍観するか(原題: Help Them Grow or Watch Them Go: Career Conversations Organizations Need and Employees Want)』を出版します。出版に先立って、同書の共著者の一人、ビバリー・ケイ博士(Dr. Be

しんくみ連載コラム 第2回:働く意味を育てて、働きがいのある職場を築く

2016.06.06インサイトレポート

多様な働き方の実現に向けて、本人・周囲・組織ができること

2015.10.28インサイトレポート

本レポートでは、結婚や出産などのキャリアのトランジションに直面している当事者や、それを受け入れる組織が、多様な働き方を実現するために大切にしたいポイントについて、ヒューマンバリューの取り組み等から明らかになってきたことをまとめています。

もっと見る