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未来オフィス共創プロジェクト

2018年7月末、ヒューマンバリューの半蔵門のオフィスは、フロアを移転しました。移転するに伴い、これまで私たちが大切にしてきたことが新しいオフィスでも大切にされ、働く人々の想いが反映された場を実現したいという願いから、オフィス設計のプロである株式会社ツクルバの方々と共に、社内外の多くの人の意見を取り入れながら新しいオフィスをつくる「未来オフィス共創プロジェクト」をスタートしました。
新しいオフィスに移転し、1ヵ月ほど経過し、皆で描いた「こんなコミュニケーションが生まれたらいいな、日々こんなふうに過ごせたらいいな」というイメージが実現されているのを感じています。私たちがどのようなプロセスを歩み、どのような想いを込めてオフィスをつくっていったのか、場づくりやオフィスづくりの参考になればと思い、プロセスの概要を紹介させていただきます。

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未来オフィス共創プロジェクトの検討プロセス

多くのオフィスデザインは設計図から検討がスタートするそうです。しかし、今回私たちは、日頃クライアントと共に行っている未来を共創するプロセスを参考に、オフィスのデザインをスタートしました。

オフィスは、目に見えるものであり、それぞれ「こんな場所で、こんなふうに働きたい」というイメージをなんとなく持っているものの、それを言語化しようと思うとなかなか難しいものです。そこで皆が持っているイメージをビジュアルに落とし、言語化するプロセスが必要だと考えました。また、ビジュアル化し、言語化したものを皆で共有した上で、設計図のプロトタイプを作成し、実物を確認しながら設計の詳細を詰めていくプロセスを歩んでいきました。

主なプロセス

1. オフィスや働き方の最高の状態を創造する
2. ゾーニングプランをつくり、実際の空間に「ふるまい」を落とし込む
3. プロトタイプで検討する
4. 実物を確認しながら詳細を決定する

本プロセスでは、できるだけ多くのメンバーが集まれるタイミングでミーティングを開催し、これからオフィスの設計をお願いするツクルバの方々にも、ビジョンの作成やダイアログに参加していただきました。また、部分的に参加するメンバーも話しやすいように、常に進捗を共有したり、ミーティングに参加できない人には、意見を表明できる機会を別途設けたりして、多くの意見を集約しながら本プロジェクトを進めていきました。

1.オフィスや働き方の最高の状態を創造する

オフィスの設計プロセスの一歩目は、皆の働き方のビジョンを共有するところから始めました。まずは、言葉にならないけれど、「どんな場所で、どんなふうに働きたいのか」について実現したい状態のイメージを、雑誌の切り抜きやイメージ画像、絵など、思い思いの方法でコラージュを作成し、それを共有することにしました。

共有されたビジョン(一部抜粋)

・わたあめのように、シンプルで美しく、遊び心があるような場
・大きい船とかだと手入れしないけど、木の船で小さいと自分で手入れする。自分が操縦しているというエネルギーが高まる場
・今の入り口は、緊張感がある。もうちょっとリラックスできるようなナチュラルが基調のデザインで、音楽も流れていたら良い
・人と人が社内社外関係なく出会える、カウンターキッチンみたいなのがあって、基本的には自分が飲みたいものを自分で飲むけど、「よかったら入れましょうか」とか自然な関わりが生まれる
・ツリーハウスに完成なし。メンテナンスを忘れずというイメージで、空間を作り続けるというのをやり続けられるといいなと

また、コラージュを共有した後、出てきたイメージをさらに具体的に言語化するために、働く仲間がチームとしてどのようなコラボレーションを生み出したいのか、お客様にはどのように感じてもらい、私たちのオフィスでどのように過ごしてもらいたいのかといったことを、一人ひとりがポストイットに書き、共有しました。

さらに、チームに別れて、空間ごとにどのような空間にしたいのかについて検討を深め、共有を行いました。

検討された内容(一部抜粋)

【入り口(オープンスペース)】
・入り口から奥に入ると、執務スペースはガラスボックスになっていて、仕事していてもお客さんが来た気配がわかる
・受付が必要だけど、物理的に空間を切っているわけではない状態になったら良いかなと
・カウンターバーがあるけど、本が知のシンボルになっている

【執務スペース】
・自分たちで静と動を選択できる執務スペース。静は集中できる、動は仲間同士で創発が生まれるというのを選択して、自分で望む働き方ができる状態
・フリーアドレスにしたら個人ロッカーが必要
・今個人的に読んでいる本が並んでいたり、個人の写真など個性が表現できる場があったらいいかもしれない

【会議室・ライブラリー・資材倉庫】
・何かアウトプットしないといけないというような、強いる感じはないほうがいい。大きなスペースでワークショップをするスペースは大事。ワークショップをする部屋には窓があるといいよね
・最初からデコレーションされていると出来上がってきたものになりやすいから、入ったときはシンプルで、白が貴重が良い
・大きなスペースになることで、片付けとか手間の作業が前より大変というのは避けたい

こうしたプロセスを経て、それぞれ個人で描いたビジョンが共有され、お互いのビジョンに触発されながら、まだ、きちんとした形にはなっていないけれど「みんなのビジョンを合わせると、こんな感じのオフィスかな」というような、共有のビジョンが生み出されたように感じました。

2. ゾーニングプランをつくり、実際の空間に「ふるまい」を落とし込む

ヒューマンバリュー主導で共有ビジョンを行った後、次の検討ではツクルバさん主導のもと、ゾーニングプランを作成しました。真っ白な図面の上に、「こんな場所にこんなスペースがあったらいいな」「こんな場所で、こんなふるまいが行われていたらいいな」「このスペースはこのくらいの大きさが必要だな」といったイメージや、部屋の位置関係について、一人ひとりのイメージを形にしていきます。

用意したのは、自分たちのアイデアを書き込む「新しいフロアの白図」。そして、部屋の大きさのイメージ確認用にこれまで過ごしていたオフィスの「現状図」と、ツクルバさんが準備をしてくださった、全66種の「ふるまいスケッチ集」です。

検討後のアウトプット(一部抜粋)

・中に入って真ん中はオープンなライブラリーがあって、本棚もいっぱいあって、座って仕事したり、待っている間に本を読んだりできるといいなと。バックヤードはドアを入ってすぐ行き来できるのがいいと思ったんですけど、ロッカーとかコートを置くところは、今、別のストックルームになっているので一緒になっていたらいいな
・受付の前にはライブラリーがあって、みんなが意識して入る。あと、執務スペースが今のより大きくなるかは議論の余地になると思う
・個人的には日が当たる個人作業スペースがあったらいいなというのが一つですね。あと、それぞれの会議室に収納スペースがあったらいいなと思いました
・ここはもしかしたらキッズルームとかになったらいいかと思いました。で、ここはクリエイティブルームにできるとか。後ろはスライド式のドアを作って会議室にして、もっと大きくしたかったらすぐにできる
・エントランスを入ってシーンとしてるとなんかつまんないし、入りたくないって感じなので、本が置いてあったり、真ん中には飲み物があったり、メンバーが仕事してたり。会議室は、普通に座ってみんなが話すような場所と、もうちょっと動きがあるような会議室と2つあったらいい

事前に実現したい状態を皆で共有していたこともあり、お互いのイメージは大きくズレていないことがわかりました。私たちの実現したい状態が、皆の中で少しずつリアリティを持って、場のイメージに落とし込まれているのを感じました。そのリアリティの中には、今こんなことに困っていて、こういうことが解決できるといいなといった想いや、こんなふうに解決できるかもしれないといったアイデアも含まれており、今回のオフィスづくりのヒントがたくさん詰まった対話をすることができました。

3.プロトタイプで検討する

このようにして生み出したアウトプットはすべて、ツクルバさんが持ち帰ってくださり、それらを参考として、新しいオフィスの設計図の素案をいくつか作成していただきました。私たちの抽象度の高いイメージをツクルバさんが図案にしたものを元に、今度はより現実的な検討を深めました。ツクルバさんからは、まず、設計者として私たちの想いをどのように図面に表現されたか、案ごとにコンセプトを共有していただいた後、皆でワールド・カフェ形式の対話を行いました。

ワールド・カフェの対話の中では、それぞれが、オフィスにおいて重要だと思っている視点が異なり、なぜその案がいいかといった理由をもっていることがわかりました。たとえば、ある人は会議室を大きくしたり小さくしたり自由にできることが重要だと考えてあるプランを選んでいますが、別の人は受付から入ったときに外の光が入っているので、明るい印象になるのではないかと考え、別の案を選んでいます。そうした背景を共有することで、1つの案の中で両方を実現できないだろうかとアイデアをつなぎながら、少しずつ方向性が現れてきたように感じられたことが印象的でした。

4. 実物を確認しながら詳細を決定する

これまでの検討を通じて、様々な人の意見、想い、イメージを集めたことで、それを元にワクワクするような設計図の大枠を決めることができました。しかし、課題になったのは、実現したいことと、費用面との折り合いでした。ツクルバさんからも、すべてを実現しようとすると、見積もっていた倍の費用になるとご意見をいただき、本当にそれが実現できるのか不安が残っていました。

たとえば、一番費用がかさむところとしてツクルバさんに指摘いただいたところは、メンバーの検討の中で最も重要だと考えていたポイントである、会議室の間仕切りでした。皆で生み出した実現したい状態は、3つの会議室がつながるだけではなく、フリースペースと面している壁面も可動し、多くの方にお越しいただいた場合に、皆さんがスライドを見えやすい場をつくることでした。その点について、ツクルバさんも頭を悩ませ、予算内で収まる代替品のアイデアなどを出していただきました。しかし、その代替アイデアが本当に現実的なのかを考える必要がありました。そこで、ショールームを訪ね、遮音性、利便性、色など実物を見て確認する機会を作ることにしました。結果的には、その代替アイデアを採用する難しさを確認することができ、その他の方法を検討をするという意思決定を行うことができました。

また、オフィスに置く椅子、机、収納家具などについても、入社して間もない人、普段オフィスに長時間いる人、会議室を利用する機会が多い人など、多様な立場の人が集って複数のショールームを訪問し、座り心地、可動性、高さなど、実物を確認した上で皆で決めていくことができました。

その他にも、入り口の受付台の上で点灯する社名のロゴについては、実物大のものを印刷して、掲げながら大きさを確認したり、間仕切りのガラスに貼るフィルムについても、実際に貼付するタイミングで現場に出向き、高さを確認しながら貼る位置を決定をしました。

そうした、実物を確認しながら検討を進めるプロセスの中で、細かい修正、変更を1つひとつ積み重ねながら、皆で新しいオフィスを作り上げていきました。

オフィスのこだわりポイント

たくさんの話し合いを重ねてきたことで、たくさんのストーリーやこだわりが詰まったオフィスを作ることができました。ここにすべてを書ききることはできませんが、そのうちの一部を下記に紹介させていただきます。

中央のドリンクコーナー

社内外かかわらずそこに集う人々のコミュニケーションが促進される場を目指して、中央にカウンター付きのドリンクコーナーを設置しました。特にワークショップの休憩時間やランチタイムには人が集まり、自由なコミュニケーションが生まれている様子が感じられます。

執務室とフリースペースを区切る壁につくった窓

スペースが広くなる分、執務室にいると、誰がどこで何をしているのかがわかりにくくなったり、お客様の気配を感じることができず、外への意識が切れてしまうことが懸念されていました。そこで、壁に窓を作るという意思決定が行われましたが、どこにどのような大きさで作るのか、最後まで検討が重ねられました。作られた窓は、大きさも最適で、執務室からも見晴らしがよく、外で活躍するメンバーの姿を感じ取ることができています。

執務室内のチャットボード

現実的にオフィスを考えていくと、その過程ではだんだん遊び心がなくなっていってしまうものです。そうしたちょっとした遊びのエネルギーをどこかに残したいという思いから、カラフルなチャットボードを執務室の中に設置しました。自由に描けるチャットボードを使いながら、コミュニケーションの活性化に役立てたいと考えています。

光の入るダイニングテーブル

オフィスの中で、一番光が入る場所には、人々が集う大きなダイニングテーブルを作りました。大人数でお弁当を食べたり、大きな模造紙を広げて検討したり、一人で集中して仕事をしたいときに使ったり。様々な用途で利用可能なダイニングテーブルが、オフィスの1つのシンボルになっています。

会議室につくった収納スペース

これまで用途に合わせて様々な形で場をつくることも多く、1つのワークショップを開催するために、椅子や机、資材の出し入れで多くの労力が割かれていました。そこで、少しでもそうした負担が軽くなるよう、各会議室に収納スペースのための目隠しの壁を設置し、椅子や机、必要な資材はその壁の後ろに片付けるようにしました。壁が半オープンになっていることで、出し入れも容易であり、圧迫感もなく、資材の出し入れも容易にできるようになりました。

最後に

全体のプロセスを通して、皆で多くの話し合いを踏まえて場の設計を行ったことによって、居心地の良いオフィスをつくるということだけではなく、私たちがこれまでどんなことを大切にして仕事をしてきたのか、自分たちはこれからどのような価値を生み出したいのかといったことを、あらためて言語化し、皆で共有する機会になりました。また、対話のプロセスの中にツクルバの皆さんにも入って、率直に意見を共有いただいたことが、私たちにとって、とても良い刺激になりました。

「ヒューマンバリューさんのイメージは“巻き込まれる”感じ。どちらがホストかわからなくなる。面白くて心地いい」。その様に表現していただき、自分たちでは当たり前だと思っていたことが、外部の方からみたら面白かったり、強みだったりすることに気付かせていただき、自分たちが大切にしていることについての理解も深めることができました。

新しいオフィスにいらっしゃった方にも、「居心地がいい」「ここで仕事したい」というようなお声をいただき嬉しく思っています。これからまた、たくさんの方にお越しいただき、どのようなストーリーがこの「場」から生まれてくるのか、とても楽しみです。オフィスは2018年7月末にオープンしましたが、皆さんがまた行きたくなるオフィスであるよう、これからも「場」をつくり続けていきたいと思います。

最後に、このプロジェクトにおける、多くの無理難題や細かい要望に対しても、「それを形にするのがデザイナーの仕事です」と心強く私たちに寄り添い、共に頭を悩ませ、アイデアやビジョンを形にしてくださった株式会社ツクルバの皆さまに心より感謝申し上げます。

株式会社ツクルバ ご担当者様からのメッセージ

立岩 宏章  株式会社  ツクルバ 

HUMAN VALUE社とのプロジェクトを通じ、設計者とお客様との新しい関係を創り出す事が出来たと感じています。
提供されるサービスに最適化した新しいオフィスにより、お客様とのエンゲージメントがこれまで以上に高められればコーポレートデザインに携わる者として冥利に尽きます。
今後とも"共犯者"として御社と並走出来ればと思います。
ありがとうございました!

井垣 達彦  株式会社  ツクルバ

本プロジェクトはクライアントと設計者で文字通り「共創」が実現できたと感じております。
ワークショップを行うことで、設計開始段階で同じ目線に立つことができ、HUMAN VALUE社にとっての最適なオフィスを一緒に考えていくことができました。
本プロジェクトで私達も多くを学ばせて頂き、今後の設計者としての在り方を再考していくキッカケとなりましたので、改めて一緒にお仕事をできたことを感謝すると共に、今後ともご指導の程よろしくお願いします!

私たちは人・組織・社会によりそいながらより良い社会を実現するための研究活動、人や企業文化の変革支援を行っています。