ダイバーシティ&インクルージョン

ダイバーシティ&インクルージョン海外カンファレンス<プチ報告会>を開催しました

2019年9月19日(木)、弊社ヒューマンバリューのオフィスにて、『ダイバーシティ&インクルージョン 海外カンファレンス〈プチ報告会〉』を実施しました。

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近年、日本においても関心の高まる「ダイバーシティ&インクルージョン」。多様性こそが、変革の時代において経営や事業に革新を生み出す根幹であるという認識が少しずつ広がってきていることを実感します。

こうしたダイバーシティ&インクルージョンに本気で向き合い、取り組んでいく上で、私たちがこれから考えていきたい”視点”にはどのようなものがあるでしょうか。そのヒントとなる考え方や実践のあり方を探求すべく、ヒューマンバリューでは、昨年から、米国で開催された2つのカンファレンスに参加しました。

そして今回、カンファレンスで得られた学びを、多くの皆さまと共有する機会として、「プチ報告会」を開催いたしました。当日は、企業の人事、ダイバーシティ推進担当の方のみならず、現場のマネジャー、経営者、コンサルタントなど、約60名の幅広い参加者にご参加いただき、多様な観点からダイアログが行われました。

本レポートでは、プチ報告会当日の様子やダイアログから生まれた気づきや問いをご紹介し、広くダイバーシティ&インクルージョンの意義や可能性、リアリティについて経営者や企業担当者の方々だけでなく、多くの方々にとって考えていくきっかけにできればと思います。

2つの海外カンファレンス

報告会では、次の2つのカンファレンスについて紹介しました。

ダイバーシティ&インクルージョンは、米国では新しいテーマではないと思われますが、両カンファレンスともほぼ満席であり、昨今の企業が置かれている環境の影響もあり、関心度や熱量はむしろ高まっているようです。

多彩なテーマに基づいた議論の紹介

報告会では、上記カンファレンスに参加したヒューマンバリュー主任研究員の川口から、カンファレンスでどんな議論が行われていたのかについて、テーマごとに紹介しました。

たとえば、

・ダイバーシティ&インクルージョンをエブリディ・カルチャーにするには?
・ダイバーシティ&インクルージョンからインクルージョン&ダイバーシティへのシフト
・インクルージョンを実現する習慣を生み出す
・アシミレーション(同化)とインクルージョン(包含)の違い
・ダイバーシティを価値につなげるには?
・インクルージョンとはどのような経験のことなのか?
・バイアスへのチャレンジ
・カルチャー・フィットからカルチャー・アッドへ
・企業の実践事例
・スピークアップできる環境をいかにつくるのか?
・…etc.

といった多様な議論の様子が共有されました。
中でも、下の図をもとに示されていた「アシミレーション(同化)とインクルージョン(包含)の違い」について、報告会に参加した皆さまの関心が高かったようです。

インクルージョンフレームワーク

このフレームワークでは、インクルージョンを、「ユニークさ(Uniqueness)」と「一体感・仲間意識(Belongingness)」の2軸で捉えます。

その中で、一体感・仲間意識が高く、ユニークさの発揮度合いが低い「アシミレーション(同化)」と、両者が高い「インクルージョン(包含)」は、似ているようで、意味合いが大きく異なります。

アシミレーション(同化)は、一見すると関係性は良いのですが、個性が押し殺され、周りと同調し、組織の文化に染まっているような状態です。これでは、新しい価値を生み出すことにつながりません。

報告会参加者のダイアログの中でも、「日本企業は“同化”になってしまっていることが本当に多い。自分たちもインクルージョン(包含)を目指しているようで、実は同化になってしまっていたかもしれない。同調圧力をどう乗り越え、本当の意味でのインクルージョンを実現していけるかが、これから考えていきたい問いだ」といった感想や気づきが述べられていました。

皆さまの組織ではいかがでしょうか? インクルージョンが実現できている状態とは、働いている人たちが何を感じ、何を信じ、どんな会話が聞こえ、どんな体験がなされ、どんな世界が見えている状態なのでしょうか? そうしたことを具体的に考えていくことが重要かもしれません。

参加者のみなさんがグループで、感想や気づきをダイアログしている様子

スピークアップできる環境をいかにつくるのか?

その他にも、「スピークアップ(人が率直な気持ちや意見を話すこと)できる環境をいかにつくるのか?」といったテーマも関心が高かったです。報告の中では、スピークアップをテーマにしたさまざまなセッションの様子が紹介されましたが、たとえば、以下のようなメッセージが注目を集めていました。

セクシャル・ハラスメントの被害者の75%は声を上げられていないというデータが出ている。こうした状況は徐々に改善されているものの、まだまだ私たちは人々がスピークアップできるようにしていかなければならない。そのために職場の“恐れ”や“不安”を取り除いていくことが重要だ

デイビッド・ロック氏、脳科学者、ニューロリーダーシップ・インスティチュート

マイノリティから出る不満は、決して不満ではなく、より良い状態を目指してのことであり、組織のトップがハラスメントや差別を絶対に許さないという姿勢を見せたり、挙げられた声には必ず応えるなど、『すべての声が聴かれる』という状態を生み出していくことが重要である

マイケル・ベーレンス氏、弁護士

これからD&Iのジャーニーを続ける上では、Deficit(問題)に着目することから、Assets(財産)に着目するようマインドセットを転換させることが必要である。企業の中で取り残されたマイノリティを解決すべき問題として見るのではなく、自分たちの価値あるアセットとしてリフレームしたとき、何ができるのかを考えていこう

リサ・コールマン氏、ニューヨーク大学

報告会の参加者からも、「スピークアップできる心理的安全性をどのようにつくっていけるのか?」「スピークアップしてよいと感じさせる工夫と、それを真摯に取り上げる工夫を多く生み出していきたい」といった声が聞かれ、こうした課題への集合的な意志が感じられました。

参加者のみなさんがグループで、本日の気持ちや感想をシェアしている様子

終わりに

報告会では、上記の情報提供を踏まえて、参加者同士で『気づき』と『問い』についてダイアログを行いました。

ダイバーシティ&インクルージョンは、正解があるような取り組みではないように思います。大切なことは、問いを投げかけ、対話を行い、洞察を生み出し、一歩を踏み出し続けていくことであり、そうした探求と実践の輪を広げていくことが、会社や社会の文化および文脈の変容につながるのではないでしょうか。

最後に、報告会参加者の対話から生まれた、さまざまな気づきや、今後向き合っていきたい問いをまとめものをご紹介します。こうした問いをもとに、今後も多くの人とダイバーシティ&インクルージョンの本質について考えていきたいと思います。

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