ATD(The Association for Talent Development)

ATD21事前レポート〜300を超えるセッションのタイトルと概要から探る人材開発のテーマとマップ〜

新型コロナウイルスの影響は、人材開発のあり方にも大きな影響を及ぼしています。そうした中、現在グローバルで人材開発に取り組む人々はどんな課題意識をもち、どんなテーマに取り組んでいるのでしょうか?

本レポートでは、2021年8月29日〜9月1日に開催されるATD21国際カンファレンスで発表される300を超えるセッションのタイトル、及び概要から浮かび上がってくるテーマを整理してお伝えし、ポスト・パンデミックにおける学習と成長に関して、私たちが何に関心をもち、向き合っていくことが大切なのかを考える機会とします。(取締役主任研究員 川口 大輔)

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ポスト・パンデミックにおける学習と成長のあり方

ATD(Association for Talent Development)は、タレント開発に関する世界最大の会員制組織(NPO)です。

ATDが主催する国際カンファレンス(ATD-ICE)には、例年世界各国から、10,000人を超える企業のHR、コンサルタント、研究者、教育機関・行政体のリーダーたちなどが集い、現在直面している課題やこれからの人材開発のあり方について議論が行われてきました。ヒューマンバリューも、約30年に渡ってデリゲーションを派遣し続け、多様な企業の方々と世界的な人材開発の潮流について探求を重ねてきました。

そのATDも、昨年(2020年)は新型コロナウイルスの影響を受け、国際カンファレンスを初めて中止するという事態になりました。そうした中でも、「Learning should never stop.(学習を決して止めてはいけない)」の掛け声の下、柔軟に変化に適応しながら、バーチャル・カンファレンスを開催するなど、世界中の人々の継続的な学びに貢献しようと奮闘するATDの姿がそこにはありました。

そして、1年が経過した今、世界は未だ新型コロナウイルスの影響から抜け出しきれない、ウィズ・コロナと呼ばれるような状態ですが、ATDは一歩を踏み出し、2021年8月29日〜9月1日の期間、ユタ州ソルトレイクシティにて、2年ぶりに国際カンファレンス(ATD21)が開催されることになりました。

ATD21は、国や地域によって異なる新型コロナウイルスの状況を加味して、現地でのカンファレンスである「ATD21@HQ」、家にいながらカンファレンスにバーチャルで参加できる「ATD21@Home」、そして各地域のイベントとセットで開催される「ATD21@Regional」という3つのハイブリッド形式で開催されることになりました。

個人的な心境としては、ぜひ現地で多くの人と学びを共にしたいところではありますが、日本の現状を考えると、ATD21@HQへの参加は、なかなか難しいといえます。そうした中、ATD21@Homeのようなスキームがあることは、日本や各国の人材開発担当者にとっても朗報といえるでしょう。

そして、ATD21のサイトには、今年発表されるセッションのタイトルやスピーカー、概要がすべて公開されています。

https://atdconference.td.org/sessions


このレポートを書いている2021年7月中旬の時点で、HQのセッションが289、Homeのセッションが28、そしてHQとHome双方で行われるセッションが42と、合計300を超えるセッションが紹介されている様は、圧巻といえます。

そして、セッションのタイトルや概要を見ていくと、2年前のカンファレンスと比較しても、テーマやキーワードが大きく進化していることが見て取れ、知的好奇心が刺激されます。新型コロナウイルスによる制約条件は、一方で私たちの生き方や働き方を10年早く進化させたなどとも言われますが、ラーニング&ディベロップメントの世界においても、様々な進化があることが推察されます。

特に今年のATD21のセッションを眺めて、印象に残った変化としては、「ラーニング」や「リーダーシップ」のあり方にイノベーションが起きつつあるのではないか、ということです。

たとえば、「ラーニング」の領域においては、バーチャル・ラーニング、イマーシブ・ラーニング(没入型学習)、アダプティブ・ラーニング(適応学習)、ラーニング・エクスペリエンス(学習経験)、ラーニング・アジリティ、ラーニング・エコシステムなど様々な概念が登場・深化しており、私たちが捉える学習環境の概念を一変するような傾向が伺えます。

また、リーダーシップにおいては、ポスト・パンデミックのような、本当の意味で正解がわからない状況において、リードするとはどういうことなのかを本質的に見直そうとするダイナミズムが全体的に働いているようにも感じます。

そうした変化の動向をぜひ日本の人材・組織開発に携わる人々と共有できればとの思いから、今回ATD21の事前レポートを作成しました。このレポートでは、セッションのタイトル、及び概要から浮かび上がってくるテーマを、以下に示す12の観点から整理してお伝えしています。

こうした切り口から、グローバルで人材開発に取り組む人たちが考えていること、見ている世界、取り組んでいる課題やテーマを共に考える機会にできれば幸いです(全体から傾向をつかんでいただく素材にしていただいたり、ボリュームも多いので、ご自身が関心の高いテーマに目次のリンクから飛んでいただくなど、ご自身に合った形で活用ください)。

(1)ポスト・パンデミックにおける人的価値創造
(2)DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)への強い関心
(3)充実、多様化するリーダーシップ開発のセッション
(4)ストーリーテリングの可能性(デジタル・ストーリーテリング)
(5)ラーニング・アジリティへのフォーカス
(6)具体化するリスキル、アップスキルの取り組み
(7)学習環境のデザイン(バーチャル、デジタル、イマーシブ、アダプティブ、エコシステム)
(8)ラーニング・カルチャーを築く
(9)ハビットを生み出し、変化につなげる
(10)マネジメントの革新
(11)タレント戦略とマネジメント
(12)進化するL&Dの役割

(1)ポスト・パンデミックにおける人的価値創造

昨年(2020年)に行われたATDのバーチャル・カンファレンスは、Covid-19の発生直後ということもあり、起きた事象をどう受け止め、オンライン化などの取り組みに自分たちがいかに対応していくかが全体的な傾向として感じられましたが、ATD21の300以上のセッション概要に目を通すと、今年はそこから一歩踏み込んで、ウィズ・コロナやポスト・パンデミックの時代に価値を生み出していくためにL&D (Learning & Development) がどう貢献していくかといった、より能動的な観点が見受けられるように思います。

たとえば、「When Everything Changes: Leading in the New Normal(すべてが変わる時:ニューノーマルをリードする)」のセッションでは、The Kaleel Jamison Consulting Groupのフレデリック・ミラー氏らが、Covid-19の影響で大きく変わった社会環境やチームの状況の中で、リーダー自身がニューノーマルに適応するために必要なマインドセットや行動にはどのようなものがあるかを探求していきます。

その他にも、「Emergence Leadership in a Post-Pandemic World(ポスト・パンデミックの世界に出現するリーダーシップ)」においても、BirchGrove社のジル・ビーチ氏が、「Relational Leadership(関係性のリーダーシップ)」の探求から、ポスト・パンデミックにおけるリーダーシップのあり方の変化を再定義することが試みられます。リーダーシップ開発には大きな影響が生まれているようで、この点については、後述できればと思います。

また、「Tough Times Never Last-Prepared Trainers Do! 7 Strategies for Adding Value and Making a Difference!(厳しい時はずっとは続かない−準備のできたトレーナーは行動する!価値を加え、違いを生み出す7つの戦略!)では、レジェンド・スピーカーのボブ・パイク氏が、ポスト・パンデミックに必要とされるトレーナーの要件を明らかにし、どんな知識やスキルを開発すべきかを示唆していきます。

そして、「Why 2020 and the Covid-19 Pandemic Have Forever Changed L&D(なぜ2020年とCovid-19によるパンデミックは、L&Dを永遠に変えたのか)」では、The eLearning Guildのデイビッド・ケリー氏が、2020年の私たちの経験が、L&Dの世界をどのように変えてしまったのかを7つの観点から紹介し、それらをいかに機会として捉えて、未来につなげていくかが探求されます。

ここに紹介したのは、ほんの一部のセッションですが、特定のカテゴリーに限らず、あらゆる領域において、ポスト・パンデミックやニューノーマルといったキーワードが入り込み、そこから様々な議論が行われることが期待されます。

(2)DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)への強い関心

パンデミック以前にもATDでDE&Iが取り上げられることはありましたが、比較的数は少なく、テーマも限定的であったように思います。今年のセッション概要を見ると、DE&Iのセッション数が大幅に増えていて、大きなテーマになっていることが印象的でした。Black Lives Matterが社会現象になるなど、社会の危機が、私たちの恐れや不安を高め、より分断を生みやすくなっている状況が背景にあるのかもしれません。

たとえば、「Making DEI the Business of All of Us: Driving Transformation Through a DEI Learning Strategy(DE&Iを私たち全員に関係のあることにする:DE&Iの学習戦略を通じて変革を推し進める)」では、Intermountain Healthcareのジル・カーター氏が、ヘルスケアの職場において、いかにDE&Iを学習戦略に組み込み、患者や職員を含めたインクルーシブなコミュニティを築いてきたかが発表されるようです。

また、「Whole System Change for Diverse, Equitable, and Inclusive Workplaces(DE&Iのワークプレイスに、すべてのシステムを変革する)」においては、The Centre for Global Inclusionのジュリー・オマラ氏らが、ホールシステム・チェンジのアプローチを用いながら、DE&Iの職場づくりをいかにリードするかについて紹介がなされます。

その他に、「Do Better Together:Develop Inclusive Leaders(一緒により良く行う:インクルーシブなリーダーを開発する)」では、DDI社のジャズミン・ボートマン氏が、インクルーシブな環境をつくるリーダーのあり方やその開発のあり方が議論されます。インクルーシブ・リーダーシップは、リーダーシップの1つのキーワードと言えそうです。

これらのセッションからは、DE&Iを一部の人たちのものではなく、全員に関係のあるものにするという視点が見受けられることが興味深く思えます。

また、DE&Iを漠然と捉えるのではなく、様々なテーマやキーワードにブレークダウンしたセッションが多い傾向も見受けられました。

たとえば、「Foster Innovation Through a Culture of Allyship(アライシップのカルチャーを通してイノベーションを醸成する)」では、Workplace Change社のセリルダ・サマーズ氏が、日本でも昨今キーワードになっているアライシップ(社会的マイノリティを理解し、支援する取り組みやコミュニティ)を取り上げ、アライシップを職場に築いていくことで、インクルージョンやイノベーションをいかに促進していくかを考えます。

また、「How to Reduce Bias in Your Talent Evaluations(タレント評価においていかにバイアスを減らすか)」では、DDI社のアダム・テイラー氏らが、採用やタレント・レビューのプロセスにおけるバイアスの影響やそれをどのように減らしていくかといった視点を紹介します。

他にも、「Why You Should Care About Unconscious Bias(なぜアンコンシャス・バイアスを考慮すべきか)」や「Unmasking and Managing Bias in the Workplace(職場においてバイアスの仮面を外し、マネージする)」など、アンコンシャス・バイアスを扱ったセッションが増えている印象です。

その他では、「Inclusion Mindset: Designing Accessible Learning Programs and Materials(インクルージョンのマインドセット:アクセスできる学習プログラムと教材をデザインする)」では、Workplace Learning & Performance Groupのモウリーン・オレイ氏が、障害をもった人を含め、誰もが学習コンテンツにアクセスできる職場を築いていくといったアクセシビリティに関するセッションを行います。このテーマも今年多く見受けられます。

そして、昨今DE&Iの領域において良く聞かれる新しいキーワードにBelongingがありますが、こちらをタイトルに入れ込んだセッションも見受けられます。「Lessen Loneliness and Boost Belonging Across Generations at Work(孤独を減らし、世代を超えたつながりを職場でつくる)」では、ライアン・ジェンキンス氏が、孤独を超えて、世代を超えたつながりをどうつくっていくかという観点から、Belongingを考えていきます。

また、「Creating a Culture of Belonging(ビロンギングのカルチャーをつくる)」では、BATES COMMUNICATIONSのスザンヌ・ベイツ氏が、ビロンギングを育むリーダーシップやカルチャーのあり方を議論するようです。

ここまでDE&Iに関するセッション例を紹介してきましたが、タイトルや概要を見るだけでも、L&Dに関わるものとして、DE&Iに真剣に向き合っていこうとする姿勢が感じられるように思います。

(3)充実、多様化するリーダーシップ開発のセッション

セッション全体を見ると、例年にも増して、「リーダーシップ開発」に関するセッションが充実している印象があります。リーダーシップ開発のトラックに分類されているセッションは、7月の中旬の時点で68あり、他のトラックの倍以上の数のセッションが行われるようです。上述したように、ポスト・パンデミックの変化の時代をいかにリードしていくかに大きな焦点が当たっていることが推察されます。

テーマも多様化し、様々なリーダーシップ開発のあり方が議論されるようです。下記にいくつかの観点ごとにセッションのタイトルと概要を紹介し、探求の切り口を考えてみたいと思います。

危機を乗り越え、変化へ適応するリーダーシップ

パンデミックを経験し、そこから回復して、新たな未来を創り出していく上で、危機を乗り越え、変化への適応をいかにリードしていくかが大きなテーマとなっているように見受けられます。

たとえば、リーダーシップ開発の大家であるケン・ブランチャード氏、スコット・ブランチャード氏は、「Recovery Leadership(回復のリーダーシップ)」というタイトルのもと、Covid-19の影響から回復していくためのリーダーシップの学習、生き方、愛、自由について探求を行い、困難な時代をいかにナビゲートしていくかを考えるセッションを開催します。ケン・ブランチャード氏は、昨年のバーチャル・カンファレンスにおいても、個人のミッションやビジョン、バリューを具体化するシンプルな実践方法に関するセッションを開催し、多くの人の共感を呼んでおり、今年も注目してみたいところです。

また、「Government Leadership After Crisis: Resetting Your Mindset and Expanding Your Tool Set(危機後の政府のリーダーシップ:あなたのマインドセットをリセットし、ツールのセットを広げる)」では、リーダーシップ開発の豊富な研究と実績で著名なCCL(Center for Creative Leadership)のクリス・ベッカート氏が、政府や軍のリーダーシップを題材に取り上げ、そこから危機後に私たちがいかにマインドを変革していく必要があるのか、そしてニューノーマルに適応していくためにどんな新しいツールが有効なのかを紹介していきます。

そして、「Can Your Leaders Move the Organization From Crisis to Clarity?(リーダーは、危機から明瞭さへ組織を動かすことができるか?)」のセッションでは、Wilson Learning Worldwide社のトム・ロス氏らが、変化や危機の時代において、何が起こりうるかの複数のシナリオを描き、感情的にも未来に備えることで、組織に明瞭さをもたらすためのリーダーシップのあり方を検討します。

また、「Leading With the Right Qs(正しいQをもとにリードする)」では、Rock Central社のエッシャー・ジャクソン氏が、変化の時代にこれまで重視されてきたEQに加えて、AQ(Adversity Quotient)の重要性を投げかけます。AQは、日本語にすると逆境指数と呼ばれ、ハーバード・ビジネススクールのポール・G・ストルツ博士によって提唱された概念です。ポスト・パンデミックの時代に、逆境をいかに乗り越えていくリーダーシップのあり方に注目が当たりそうです。

さらに、「Get in Sync: The Alignment Method to Accelerated Strategy Execution(同期する:加速化する戦略の遂行とアラインメントする方法)」では、The Management Coach のメアリー・レガキス・エンゲル氏が、Covid-19が加速化させた世界において、いかに企業の戦略に働く人々がアライメントし、みなで戦略を遂行していくための方法論について、具体的なツールやミーティングの内容などを紹介されるようです。

その他にも、「Leverage Change: 8 Ways to Support Your Leaders in Achieving Faster,Easier, Better Results With Any Change, Any Time, Any Place(変化をレバレッジする:リーダーがどんな変化、時間、場所にいても早く、簡単に、より良い結果を成し遂げるサポートをするための8つの方法)」「Scared Scriptless: Be More Adaptable When the Shift Hits the Fan(文書化できない恐れ:シフトが扇の要を撃つ時、より適応的になる)」「Deal With It: Successfully Negotiate the Change You Didn’t Want(対処する:望まなかった変化とうまく交渉する)」など、変化への適応をメインのテーマとしたセッションも数多く行われる印象でした。

バーチャルな環境におけるリーダーシップ

Covid-19の影響により、リモートワークを中心としたバーチャルな環境での仕事が当たり前になりました。そうしたバーチャル環境におけるリーダーシップへの注目度も高いことが伺えます。

たとえば、「3 Confessions of a Virtual Leader(バーチャル・リーダーの3つの告白)」では、FranklinCovey社のレーナ・リン氏が、「チーム内で信頼を築くことがこれまで以上に難しくなっている」「変化が常態化する中でどうチームをリードしていいかわからない」「負荷をマネージできず、燃え尽きてしまいそう」という、バーチャル・リーダーが直面する3つの難題を共有し、そこにどう対応していくかを考えていきます。

また、「Creating Psychological Safety in Remote Teams(リモートチームにおいて心理的安全性を創造する)」では、Stewart Leadershipのピーター・スチュワート氏が、近年のマネジメントのトレンドである心理的安全性を、いかにリモートチームの中で築いていくのかを考えます。こちらも多くのバーチャル・リーダーが悩み、関心をもっているテーマであるように思います。

また、少し視点を変えたところで、「Confessions of an Online Leadership Educator: Engaging Top Executives Virtually(オンライン・リーダーシップ教育者の告白)トップ・エグゼクティブをバーチャルにエンゲージする)」では、エグゼクティブ・リーダーシップ開発のファシリテーターである、バレリー・アーノルド氏が、オンライン環境下でエグゼクティブにバーチャル・プログラムを展開していく上で、いかに参加者をエンゲージしていくのかについて語られます。

トラスト、シビリティ、モラルに基づいたリーダーシップ

変化の時代におけるリーダーシップのキーワードとして、トラスト(信頼)やシビリティ(礼儀正しさ)、モラルといった言葉が多く挙げられているように思います。特にシビリティについては、今年のカンファレンスで取り扱われる量が増えた印象です。日本でもベストセラーになった書籍「Think Civility(シンク・シビリティ)」の影響もあるかもしれませんし、上述したような信頼を築くことがとても難しくなっている環境の中で、こうした人間性の側面に着目したリーダーシップのあり方が模索されているのかもしれません。

具体的なセッションでは、たとえば、「From Disgust to Trust: Getting Results in an Uncivil World(嫌悪から信頼へ:無礼な世界で結果を得る)」では、Diana Damron Productionsのダイアナ・ダムロン氏が、シビリティとトラストを職場に育む行動について紹介します。

そして、「A Civil Workplace: Behavioralize Organizational Values to Shape Organizational Culture(礼儀正しい職場:組織のカルチャーを形作る組織のバリューを行動化する)」では、The Leadership Development Groupのディック・ダニエルズ氏が、職場の礼儀正しさと組織のバリューとのつながりについて、いくつかの問いをもとに探求していきます。

また、EthicsGameのキャサリン・ベアード氏による「Engaging Moral Imagination:Reimagining Disrupted Organizations(モラルを想像することにエンゲージする:崩壊した組織を再想像する)」も興味深そうです。ベアード氏によると、現在のディスラプティブ(破壊的)な時代においては、様々な価値観が競合することがあり、その違いを超えるためには、モラルを想像することが必要であるとのことです。

また、ジェームス・ロビロッタ氏による「Love in Leadership: The Secret to Managing and Retaining Talent(リーダーシップにおける愛:タレントをマネージし、保持する秘密)」のように、リーダーシップにおける愛を考えるセッションもあります。

女性のリーダーシップ

ここ数年、ATDのリーダーシップ開発のセッションでは女性に焦点を当てたものが散見されてきましたが、今年もその傾向は続いているようです。

たとえば、「Amplify:How Women Leaders Ignite Their Impact(増幅する:女性のリーダーがいかにそのインパクトを発火させるのか)」では、DDIのCEOのテイシ−・バイアム氏により、ジェンダー・エクイティが加速化する環境の中で、女性のリーダーがいかにインパクトを増幅させていくかがテーマとして扱われます。ここ数年継続して行われていて、例年人気の高いセッションです。

また、「Elevating Women and Diverse Talent Now(女性と多様なタレントを今こそ引き上げる)」では、Guts & Grace Leadershipのリーアン・マロリー氏が、Covid-19による影響が、働く女性にどのようなンパクトを与えてきたのかを振り返った上で、そうした厳しい環境にどう向き合うかを探求していきます。キャリアの初期段階でのサバイバル戦略、女性のエグゼクティブによるバーンアウトを防ぐための思考のリフレームなど、マロリー氏の豊富な経験と知恵から様々な観点から探求が行われるようです。

多面的なリーダーシップ開発の実践

その他にも、様々な観点から、リーダーシップ開発の実践が紹介されます。

いくつか興味深いものを紹介すると、たとえば、「Deeper Journeys: Helping Leaders Navigate Meaning at Work in Times of Change(深い旅路:変化の時代において、リーダーが仕事において意味を見出すナビゲートをすることを支援する)」では、Deeper Engagementのニック・ダッガン氏が、変化の時代における意味(Meaningfulness)の重要性に言及しながら、リーダーが意味を通してメンバーのエンゲージメントをいかにサポートしていくかについて話されます。

また、「How to Design Development Experiences for Every Moment of Leadership(リーダーシップのすべての瞬間を開発の経験にするようなデザインをいかに行うか)」では、DDIのアレックス・スミス氏が、リーダーの経験に着目し、デジタルと人間的な経験を組み合わせながら、いかに一瞬一瞬の経験を学習機会にしていくのかといった視点が紹介されます。

続いて、「Developing Whole People:Whole People Are Leaders(すべての人を開発する:すべての人がリーダーである)」では、TMonroeSpeaksのティシャ・モンロー氏が、一部の特定のタレントだけではなく、すべての人材を周囲に影響を与えられる存在として認識し、リーダーとして育てていくことの重要性を語ります。

また、「The Leader’s Mind: The Next Frontier in Leadership Development(リーダーのマインド:リーダーシップ開発の次のフロンティア)」では、昨今注目の高い、マインドセットからのリーダーシップ開発を取り上げ、心理学やニューロサイエンスに基づきながら、いかにリーダーのマインドを高めていくかについてフォーカスを当てます。

また、「Overcoming Ego to Unleash Innovation(エゴを克服し、イノベーションを解放する)」では、Potential Projectのジャクリーン・カーター氏が、エゴとイノベーションの関係性に言及する興味深いセッションを行います。セッションでは、いかにエゴがリーダーを特定の思考のパターンに押し留めてしまうのか、そこからいかに解放し、イノベーションを生み出すためのインサイトを得られるのかを考えていきます。

以上、ここまで、充実化・多様化するリーダーシップ開発のセッションを紹介してきました。タイトルを見ているだけでも、自身の考えが整理されたり、触発される感覚を受けるところがあり、特に注目していきたいカテゴリーといえます。

(4)ストーリーテリングの可能性(デジタル・ストーリーテリング)

ATDでは、近年ストーリーテリングをテーマとしたセッションが多く見受けられましたが、昨年(2020年)のバーチャル・カンファレンスにおいては、基調講演でデジタル・ストーリーテリングが取り上げられるなど、その意味合いが進化しているように感じられます。

今年も注目度は高く、学習のデザインやリーダーシップ開発など、様々な領域でストーリーテリングの可能性が模索されているように見受けられます。

たとえば、「How Facebook Got 95 Percent Engagement With Its Digital Storytelling Program(フェイスブックが、デジタル・ストーリー・テリングを活用していかに95%のエンゲージメントを獲得したか)」では、Facebookのオーグスティン・コウト氏らから、テクノロジーを活用したストーリーテリングのあり方やデジタル学習戦略が提示されるとのことです。ストーリー・テリング、テクノロジー、コラボレーションを組み合わせながら、学習者のエンゲージメントを高めるデジタルなプログラムの設計手法に注目が集まりそうです。

また、「How Storytelling, Visuals, and Virtual Body Language Transform Online Meetings(ストーリーテリング、ビジュアル、バーチャル・ボディ・ランゲージがいかにオンライン・ミーティングを変革するか)」では、The Presentation Companyのジャニー・カーノフ氏が、バーチャルな環境において、いかにストーリーテリングの価値を高めていくのかをテーマに扱います。昨年のバーチャル・カンファレンスでもキーワードとして挙がっていたバーチャル・ボディ・ランゲージにも注目してみたいところです。

そして、「Leadership, Leaning, and Activism: Creating and Telling Our Stories(リーダーシップ、ラーニング、そしてアクティビズム:私たちのストーリーを創造し、伝える)」では、Paul Signorelli & Associatesのポール・シグノレリ氏が、組織にポジティブな変化を生み出していく上でのストーリーテリングの技術について、リーダーシップ開発の観点から探求します。リーダーの役割を、活動家、ラーニング・ファシリテーター、そしてストーリーテラーという観点から捉え直している点が興味深いです。

(5)ラーニング・アジリティへのフォーカス

アジリティというキーワードもよく見受けられます。言葉の使われ方としては、L&Dの機能をアジャイルにしていこうという側面と、学習者のアジリティを高めていこうという側面があるように思います。

特に今年は後者の学習者のアジリティをキーワードにした興味深いセッションが散見されるように思います。

たとえば、「The Leadership X-Factor: Learning Agility(リーダーシップのXファクター:ラーニング・アジリティ)」では、リーダーシップ開発のレジェンド・スピーカーであるジョー・フォークマン氏が、変化する環境の中で、リーダーのコンピテンシーとしてアジリティが特に重要視されているというリサーチの結果を紹介しながら、リーダーがアジリティを高めていくための具体的な行動や方法が紹介されるようです。

また、「Develop Mental Agility to Survive and Thrive in Turbulent Times(乱気流の時代に生き残り、成長するためのメンタル・アジリティを開発する)」では、Potential Projectのマリッサ・アフトン氏が、不確実で複雑な現実を生き抜く上でのメンタル・アジリティに着目します。セッションでは、一点に集中することとビッグ・ピクチャーを考えることの双方の力を高めることで、脳が混乱するのを防ぎ、ビジョンに向かうための方法について紹介がなされるとのことです。

そして、「Learners Are Made, Not Born: The New Science of Learning, Access, and Actions(学習者は生まれつきではなく、つくられる:学習、アクセス、そして行動の新しい科学)」では、LinkedIn Learningのローリー・バールス氏が、学習者の育成の仕方に関する最新の科学的リサーチを紹介しながら、学習者の学習スピードをいかに高めていけるかという点にフォーカスします。こちらは、近年のリスキル、アップスキルの必要性を背景にしたセッションといえるかもしれません。例年質の高い学びを提供するLinkedIn Learningのセッションにも注目してみたいところです。

(6)具体化するリスキル、アップスキルの取り組み

ATDにおける近年のキーワードにリスキルやアップスキルがあります。変化が激しく、ITやAIなどの興隆によりスキルがすぐに陳腐化する世界において、L&Dの重要なテーマとして掲げられています。

今年のカンファレンスでは、これまで以上にリスキルやアップスキルの取り組みが具体化してきている印象があります。

たとえば、「Reimagining Traditional Talent Pipelines: Reskilling Employees for Technology Needs(伝統的なタレント・パイプラインを再想像する:テクノロジーのニーズに合わせて従業員をリスキルする)」では、Tech Elevatorのアンソニー・ハッジス氏が、リスキルを軸に採用から育成までのタレント・パイプラインをいかに再構築していくかについて、具体的な戦略が話されるようです。

また、「Winning The War on Attracting, Retaining, and Upskilling Talent(タレントを獲得し、保持し、アップスキルする戦争に勝つ)」では、Kaplanのメーガン・ダッセンベリー氏が、ポスト・パンデミックの世界におけるアップスキルの戦略を話します。上記セッションと同様に、アップスキル単独で考えるのではなく、採用からリテンション、育成までを通して考えていこうとする傾向が高まっているのかもしれません。

また、今後どのようなスキルが必要となってくるかを取り上げたセッションも散見されます。

たとえば、「What You Need to Know About the State of Skills in 2021(2021年のスキルの状態で知っておく必要のあること)」では、Degreedのキャセイ・アダムス氏が、2020年のパンデミックがワークフォースの世界を一変し、身につけたスキルを更新する必要があることに言及し、どんなスキル開発にフォーカスすべきかに焦点を当てます。

また、「The Great Talent Reset: 3 Enduring People Principles to Come Out on Top in 2021 and Beyond(偉大なタレントのリセット:2021年とその先に、上位に来る3つの永続的な人材の原則)」では、2020年、2021年に大きなタレントのリセットが起き、製造業からテクノロジー企業まであらゆる業界で多くの人材が仕事を失ったり、退職したり、転籍したりしている状況の中、いかに新たに雇用した人々をワールド・クラスのハイパフォーマーに育てていくのかといった点に言及していきます。

(7)学習環境のデザイン(バーチャル、デジタル、イマーシブ、アダプティブ、エコシステム)

ラーニングのデザインはATDにおける大きなテーマでしたが、Covid-19による学習環境の変化がその動き加速化させているように思います。

ATD21においても、学習環境のデザインを扱ったセッションが数多く見受けられます。ここでは、バーチャル、デジタル、イマーシブ、アダプティブ、エコシステムなどをキーワードにセッションのタイトルや概要を眺めてみたいと思います。

バーチャルな学習環境

当然かもしれませんが、バーチャルな学習環境をテーマにしたセッションが大幅に増えて来た印象があります。

たとえば、「Designing Virtual Learning to Deliver Impact and ROI(インパクトとROIを生み出すバーチャル・ラーニングをデザインする)」では、効果測定の領域でのレジェンド・スピーカーであるジャック・フィリップス氏が、バーチャル・ラーニングにフォーカスした効果測定やROIをテーマにセッションを行います。

また、「Squirrel! Strategies for Getting Attention in a Virtual Environment(リス!バーチャル環境において注目を獲得する戦略)」においては、Uhmmsのパトリシア・スコット氏が、バーチャルな学習環境で、いかに学習者のエンゲージメントを高めるかについて、様々なツールやアプローチを紹介するようです。その他にも、「Spotlight on Your Learners! Using Accelerated Learning to Design Engaging Virtual Learning Experiences(学習者にスポットライトを当てる!エンゲージできるバーチャル学習経験を加速学習を使ってデザインする)」など、バーチャルな環境でのエンゲージメントをどう高めるかを扱ったセッションが散見されます。

そして、「Distance Is Destroying Dialogue: How to Hold Crucial Conversations in a Virtual World(距離が対話を破壊する:バーチャルな世界で重要な会話を持つ)」では、VitalSmartsのスコット・ロブリー氏が、Covid-19後のバーチャルな環境においては、人々が同僚やマネジャーに心配事を話すことを避ける割合が2倍高まったといった最近のリサーチなどを紹介しながら、バーチャル環境においてもいかに働く人々が個人的、文化的、組織的なチャレンジに言及し、対話できるカルチャーを築いていけるのかについて探求がなされます。特に注目してみたいセッションの1つです。

また、「10 Best Practices to Become an Exceptional Virtual Facilitator(並外れたバーチャル・ファシリテーターになるための10の優れた実践)」では、DDIのジャニス・バーンズ氏らが、バーチャルな環境でのファシリテーターの実践について取り上げます。

その他にも、バーチャル・チームのエンゲージメントを扱った「11 Engagement Strategies to Ignite Your Virtual Team(あなたのバーチャル・チームを点火させる11のエンゲージメント戦略)」や、バーチャル環境でのオンボーディングを扱った「Ignite Employee Engagement Through Virtual Onboarding(バーチャル・オンボーディングを通して、従業員のエンゲージメントを点火させる)」、そしてバーチャルでのセールスを扱った「To Sell Virtually, You Need a New Mindset and Skill Set(バーチャルに売るために必要な新しいマインドセットとスキルセット)」など、バーチャルな仕事への環境への適応を扱ったセッションも多く見受けられました。

デジタルを活用した新たな学習経験のデザイン

また、デジタルを活用して学習経験のデザインそのものを革新していこうというセッションもこれまでに引き続き、多く見受けられました。

たとえば、「LX(D) Lightning Design Jam(デザイン・ジャムを照らす学習の変革)」では、AWSのアルミラ・ロルダン氏が、学習経験を、ラーニング・ジャーニー・マップを用いてマクロで捉え直し、データ・ドリブンな学習戦略やツールを用いて学習のインパクトをいかに高めていくかについて紹介します。AWSのセッションということでも注目してみたいです。

また、同じくAmazonのゾルト・オラー氏は、「Deliberate Play: Practical Application of Game Design for Learning(デリバレイト・プレイ:学習へのゲームのデザインの実践的な適応)」というセッションを行います。ゲーミフィケーションは非常にパワフルなアプローチですが、なぜゲームの要素が機能するのかの理解がないとうまくいきません。このセッションでは、「デリバレイト・プレイ」という概念を扱います。デリバレイト・プレイとは、明確な目的を持たず本質的に楽しむ活動(遊び感覚の活動)を指しており、構造化された訓練である「デリバレイト・プラクティス」と対比される概念であり、スポーツやゲームの世界でよく用いられるようです。セッションでは、ゲームを活用した学習のあり方をデリバレイト・プレイの考えに基づいたワークシートを用いて分析するようで、興味深いといえます。

そして、「Collaboration With a Chatbot for Digital Transformation(デジタル・トランスフォーメーションに向けて、チャットボットとコラボレーションする)」では、ソウル大学のチャン・リー教授らが、チャットボットを活用して、タレントの変革を成し遂げた事例を話します。

その他にも、「Maximizing Microlearning(マイクロラーニングを最大化する)」や「Making Micro Work: 4 Approaches to Microlearning and Tips to Add Value for Your Learners(マイクロを機能させる:マイクロ・ラーニングへの4つのアプローチと、学習者にバリューを与えるティップス)」など、マイクロ・ラーニングを扱ったセッションも多く見受けられますし、「Getting Ready for xAPI: An Introduction(xAPIの準備をする:導入)」のようなxAPIを扱ったセッションも垣間見られました。

イマーシブ・ラーニング(Immersive Learning)

今年のカンファレンスで特に増えたキーワードとして、「イマーシブ・ラーニング(没入型学習)」が挙げられると思います。

イマーシブ・ラーニングとは、VR(仮想現実)を活用して、学習者が、現実世界のシナリオをシミュレートし、安全で没入できる環境で学習するための方法を指しています。VRの存在感と学習理論、データサイエンス、そして効果とユーザーのエンゲージメントを高めるための空間デザインを組み合わせたものとなります。脳がVRの体験を実際の体験と同じように扱うことを示したニューロサイエンスの研究に基づいたアプローチです。(参考記事:Immersive Learning: What is it and why does it work?  https://www.strivr.com/blog/defining-immersive-learning/)

これまでもVRを扱ったセッションは実験的なものとして取り扱われてきたように思いますが、いよいよ本格化してきていることが伺えます。Covid-19がそれを加速化させた影響もあると思われます。

たとえば、「Immersive Learning in the Age of Physical Distancing(物理的な距離の時代のイマーシブ・ラーニング)」では、例年学習のテクノロジーのエッジを紹介してくれるアンダース・グロンステット氏が、クロス・プラットフォーム・モバイル・ゲームやVR、シミュレーションがいかに学習の世界を変えていくのかについて紹介します。

また、「How to Create Immersive, Day-in-the-Life Simulations for Real-World E-Learning(現実世界のEラーニングにおいて、イマーシブで日常生活なシミュレーションをいかにつくるか)」や「How to Prepare for Immersive Learning: RFPs and Project Management(イマーシブ・ラーニングの準備をいかに行うか:RFPとプロジェクト・マネジメント)」のように、かなり具体的なところまで踏み込んだセッションも見受けられます。

興味深いところでは、神経経済学者でATDのスピーカーとしても近年著名なポール・ザック氏が、「The Neuroscience of Immersive Learning(イマーシブ・ラーニングの神経科学)」というタイトルのもとで、「イマーシブ」を神経科学の観点から解き明かし、いかに成人学習に適用していくかについて紹介します。

アダプティブ・ラーニング

アダプティブ・ラーニングは、個々の能力や適正に合わせて、最適な学習内容や方法、経験を提供していくものであり、AIなどテクノロジーの進化を受け、昨今注目されています。2年前のATDくらいから、セッションの中でも取り上げられるようになってきました。ATD21においても、アダプティブ・ラーニングに関するセッションが散見されます。

たとえば、「The What, Why, and How of AI-Powered Adaptive Learning and Training(AIに後押しされたアダプティブ・ラーニングとトレーニングの内容、理由、方法)」では、Realizeitのマノージ・カルカーニ氏が、L&Dのバズワードになっているアダプティブ・ラーニングを解き明かし、アダプティブ・ラーニングのフレームワークを活用して、いかに学習のあり方を変革し、インパクトを生み出していくかを検討していきます。

また、「LXP vs. LMS: Navigating the Future of Personalized Learning(LXP対LMS:パーソナライズ化された学習の未来をナビゲートする)」では、Educe Groupのブランドン・ウィリアムズ氏が、学習が高度にパーソナライズ化された今日の環境において、ラーニング・マネジメント・システム(LMS)とラーニング・エクスペリエンス・プラットフォーム(LXP)の違いを明らかにし、学習者の経験を豊かにするアプローチを考えます。

ラーニング・エコシステムの構築

また、学習環境を1つの生態系として捉え、学習システムを広く捉え直したり、循環を生み出していこうとするセッションも増えてきているように思います。エコシステムという言葉もキーワードとして挙げられるかもしれません。

たとえば、「Create a Career Development Ecosystem for Your Hybrid Workforce(ハイブリッド・ワークフォースのためのキャリア開発のエコシステムを構築する)」では、Integral Talent Systems のリン・ウェア氏らが、オンサイト(職場)と家でワークフォースがハイブリッド化する中において、いかにキャリア開発のエコシステムを築いていくかをテーマにセッションを行います。

その他にも、「Minimize Friction in Your Learning Ecosystem(ラーニング・エコシステム上の摩擦を最小化する)」では、Infinitude Creative Groupのジェレミー・ロバーツ氏が、ラーニング・エコシステム上の摩擦をアセスメントし、それを取り除いていくためにどのようなソリューションが必要になるかを考えていきます。

また、「Every Learner a Content Creator: A Digital Learning Strategy(すべての学習者がコンテンツ・クリエイターである:デジタルのラーニング戦略)」では、Tan Tock Seng Hospital, Singaporeのデイビッド・ヘンドリック氏が、すべての働く人々がマイクロ・ラーニングのコンテンツ・クリエイターとなっていくための戦略について語ります。ヘンドリック氏は、昨年のバーチャル・カンファレンスにおいても、Covid-19の影響に適応していくための、病院の学習戦略をいち早く打ち出していった取り組みを紹介しており、注目してみたいところです。

また、「Rethink People Development: Democratize Coaching for All Career Levels Worldwide With CoachHub(人材開発を再考する:コーチ・ハブを使って、世界中のあらゆるキャリア・レベルのコーチングを民主化する)」では、CoachHubのデビー・グローブス氏が、パーソナライズ化したコーチングをあらゆるレベルに提供していくデジタル・コーチングのプラットフォームのデモを行います。さらに、「Scaling Leadership Development: How Biohaven Increased Leadership Behaviors by 78%(リーダーシップ開発をスケールする:ビオハーベン社はいかにリーダーシップ行動を78%高めたのか)」では、マイクロ・コーチングやパーソナライズド・ナッジ(個人の行動を後押ししてくれるもの)を活用して、リーダーシップ開発を進めた事例が紹介されます。コーチングの民主化やマイクロ・コーチングという考え方のように、学習機会をあらゆる場面に埋め込み、広げていこうとするアプローチが特徴的だと考えられます。

(8)ラーニング・カルチャーを築く

近年はL&Dの役割を広げ、企業のカルチャーの変革やラーニング・カルチャーをいかに築いていくかが重要なテーマとして挙がっていますが、ATD21においてもその傾向は一段と強くなっているように感じられます。

たとえば、「Talent Development’s Role in Organizational Culture Transformation(組織のカルチャーを変革する上でのタレント開発の役割)」では、UPSのレジーナ・ハートリー氏ら4名がパネル・ディスカッションを行い、いかにタレント開発の部門が、組織内でカルチャーについて語りながら、カルチャー変革をリードし、触媒となっていくべきかについて議論を行います。

また、「The Curious Advantage(好奇心のアドバンテージ)」では、HRのトレンドについて著名なジョシュ・ベルシン氏ら4名がパネル・ディスカッションを行い、好奇心の7つのC(Context:文脈、Community:コミュニティ、Curation:編集、Creativity:創造性、Construction:構築、Criticality:臨界、Confidence:自信)をキーワードに、いかにデジタルの時代において、好奇心に富んだカルチャーを築いていくかについて議論が行われます。

そして、「Guiding the Evolution of Your Organization’s Culture(あなたの組織のカルチャーの進化をガイドする)」では、変革の理論と実践で名高い、エド・コヘン氏と、3Dプリンターを扱うSprintRay社のアミール・マンソーリ氏が、スタートアップ企業における組織のカルチャー変革の事例を語ります。

その他にも、「Creating a Culture of Accountability, Not Blame(非難ではない、アカウンタビリティのカルチャーをつくる)」や「How to Create a Culture of Accountability(アカウンタビリティのカルチャーをいかにつくるか)」のように、アカウ:ンタビリティ・カルチャーをキーワードに挙げているセッションも散見されます。アカウンタビリティは、日本語にすると説明責任と訳されることが多いですが、組織のあらゆるレベルの人々が、チームや組織でターゲットにしているキー・リザルトに自分ごととしてコミットしていく文化のことを指しています。日本においてもこの点へのフォーカスは高まっているように思い、注目してみたいです。

さらに、The Ken Blanchard Companiesのメイドレイン・ブランチャードらによる「Evolving a Culture, One Conversation at a Time(カルチャーを進化させる、一度に1つの会話)」や、ピーター・センゲのラーニング・オーガニゼーションを今の時代に再考しようとする「Building the Learning Organization: Modern Interpretations of an Established Concept(学習する組織を築く:確立されたコンセプトを現代に解釈する)」のように、数々のカルチャーに関わるセッションが行われ、その注目度の大きさがわかります。

(9)ハビットを生み出し、変化につなげる

変化を生み出していく上では、いかに新たなハビット(習慣)を築いていけるかが重要であり、ATDでもハビットを扱ったセッションが増えている印象があります。

たとえば、「How to Build Better Habits(より良いハビットをいかに築くか)」のセッションでは、「習慣の力」で著名なチャールズ・デュヒッグ氏らが、ハビットに関する最新の科学に基づいた情報から、意思の力ではなく、スキルとしてハビットをいかに育んでいくかについて紹介します。デュヒッグ氏は、行動科学に基づいた学習やリーダーシップ開発で昨今ATDで多くのスピーカーがセッションを行っているVitalSmarts社に入ったようで、同社からのセッションがどのようになるのか楽しみです。

また、「Disrupting Design: How Behavioral Science Drives Lasting Change(デザインを壊す:行動科学が継続する変化をいかに推進するか)」では、Mind Gymのジャネット・アーン氏らが、行動科学に基づいた持続的な変革について扱います。セッションではCLICS(Capacity:能力、Layering:重ねる、Intrinsic enablers:内発的なイネーブラー、Coherence:一貫性、Social Connections:社会的つながり)といったモデルをいかに適応していくかが語られます。

そして、「Nudging: Sustainable Transfer Into Action(ナッジング:持続的に行動に移行させる)」では、Leading AGのガイド・ベッツ氏が、持続的な変化を生み出すために、昨今注目されているナッジに焦点を当てるようで、注目してみたいところです。

(10)マネジメントの革新

ポスト・パンデミックの世界は、マネジメントのあり方にも大きな影響を与えています。マネジメントのあり方の革新やマネジャー育成を対象としたセッションも例年以上に充実しているように見受けられます。

「Brain-Based Manager Training: Insights From an ATD BEST-Award Winner(脳をベースにしたマネジャーのトレーニング:ATDのベスト・アワード受賞者からのインサイト)」では、脳科学を中心に例年人気の高いセッションを行うブリット・アンドレッタ氏が、マネジャーが知るべき脳科学の知識にはどのようなものがあるのかを解説するとともに、効果的なマネジメント・トレーニングを脳科学の知見をもとにいかにデザインしていくかについて紹介します。

また、「”I Wish My Manager Would Attend!”: Incorporating Manager Co-Learning Opportunities(私のマネジャーも参加してくれたらいいのに!:マネジャーの協働学習の機会を組み込む)」では、ジョージア工科大学のラトレース・ファーガソン氏らが、マネジャーの協働学習をトレーニングに組み込んでいくことの価値について紹介していきます。

また、「Redeeming Feedback for Good: Shift Your Culture, Grow Your People(善のためにフィードバックを取り返す:あなたのカルチャーをシフトし、人を育てる)」では、パフォーマンス・マネジメント革新の実践家・コンサルタントとして著名であり、「時代遅れの人事評価制度を刷新する~そのパフォーマンス・マネジメントは価値を生み出していますか?」 (ヒューマンバリュー出版)の著者であるタムラ・チャンドラー氏、及びその同僚のローラ・グレーリッシュ氏が、フィードバックに焦点を再度当てます。特にフィードバック・カルチャーをいかに築いていくかが大きなテーマとなるようです。

そして、「How Managers Create Psychological Safety While Engaging in Difficult Conversations(マネジャーが、難しい会話にエンゲージしながら、いかに心理的安全性をつくるのか)」では、Zaydon Enterprises Manageのトレイシー・ワシントン氏が、マネジャーが、社会的正義やD&Iなどの難しい課題をチームメンバーと踏み込んで話し合えるような心理的安全性をいかに築いていけるのかをテーマにセッションを行います。

さらに、「Resilience for Growth: Keeping Managers Engaged in Times of Uncertainty(成長のレジリエンス:不確実な時代の中でマネジャーをエンゲージし続ける)」では、Hermannのアン・ハーマン氏が、マネジャーのレジリアンスについて取り上げる予定です。

また、その他興味深いセッションに、「The Challenges and Realities of Hybrid Teams(ハイブリッド・チームのチャレンジとリアリティ)」があります。ここでは、The Kevin Eikenberry Groupのウェイン・ターネル氏らが、Covid-19の影響で広がったリアルとバーチャルなハイブリッドチームをマネジメントするためのスキルが紹介されます。

(11)タレント戦略とマネジメント

「Talent Strategy & Management(タレント戦略)とマネジメント」のトラックも、40のセッションが並び、リーダーシップ開発のトラックの次にセッション数が多く、充実した内容のものが揃っている印象があります。

サクセション・プランニングとタレント・レビュー

興味深そうなものをいくつか紹介すると、まず「Best and Next Practices to De-Ritualize and Accelerate the Succession Management Process(サクセション・マネジメントのプロセスを脱儀式化し、加速させる最高の、そして次のプラクティス)」では、豊富なリサーチが特徴のi4cpのトム・ストーン氏が、サクセション・マネジメントに関する3000以上のデータ(サーベイ回答やインタビュー)に基づいたリサーチ結果を紹介しながら、サクセション・プランニングのあり方を再考します。脱儀式化というキーワードが興味深く感じられます。

また、「Solutions for Top5 Talent Review and Succession Challenges(タレントレビューとサクセションのチャレンジのトップ5に関するソリューション)」では、Talent Benchstrength Solutionsのドリス・スピース氏が、タレント・レビューのあり方を見直し、そのコツやポイントを探求します。

また、毎年関心の高いジェネレーション系のセッションでは、「X/Y/Z: How to Avoid Generational Pitfalls in L&D(X/Y/Z:L&Dにおける世代の罠に陥らないために)では、Accentureのグレッグ・プレジア氏らが、ラーニングに関する世代の違いについて掘り下げていきます。

エンゲージメント

また、昨今再度脚光を浴びているエンゲージメントに関するセッションでは、「A Research-Driven Engagement Strategy That (Actually) Engages and Retains Talent(タレントを実際にエンゲージし、保持するためのリサーチに基づいたエンゲージメント戦略)」において、ITA Groupのクリスティーナ・ズレック氏が、エンゲージメントに対する社会心理学の影響について言及し、それを利用したエンゲージメント戦略をいかに構築していくかを紹介します。

そして、エンゲージメントやキャリアの領域の大家であり、レジェンド・スピーカーのビバリー・ケイ氏も、「Staying Engaged While Working Apart: Love or Lose Your Talent(離れて働きながらエンゲージし続ける:あなたのタレントを愛するか、失うか)」というセッションを行います。タイトルから察する限り、Covid-19の影響を受けたリモート環境下において、彼女のコンセプトである「Love them or Lose them」を再考するセッションになりそうで、どんなインサイトが得られるか期待したいところです。

メンタリング

さらに興味深そうなセッションとして、「How Mentoring Needs to Evolve for a Diverse, Distributed, and Digital Workforce(多様で、分散した、デジタル・ワークフォースのためにいかにメンタリングは進化する必要があるのか)」があります。このセッションでは、Chronusのシーナ・モータザビ氏が、メンタリング・サークル、フラッシュ・メンタリング、リバース・メンタリングなど様々なメンタリングのコンセプトや形態を紹介しながら、現代のワークフォースのためになるメンタリングのあり方を考えていきます。

オンボーディング

また、近年L&Dの貢献領域として、関心の高まっているオンボーディングに関するセッションについても、今年も多く見受けられます。

たとえば、「I Landed a Job During a Pandemic: Here’s How(私はパンデミックの期間に新たな仕事に就いた:このように)」では、Main Line Healthのエイミー・ダイニング氏が、パンデミックの期間に新たな仕事に就いた際のオンボーディングで気をつけるべきポイントをステップに分けて紹介していくようです。

続いて、「Onboarding Reimagined: Experience Design to Create Authentic New-Hire Moment(オンボーディングを再想像する:本物のニューハイヤーの瞬間をつくるためのエクスペリエンス・デザイン)」では、TiER1 Performanceのグラント・シモンズ氏が、デザイン思考の方法論を活用して、ニュー・ハイヤーのオンボーディングの体験を再構築していくことをテーマとしたセッションを行います。

また、「Reboarding: 9 Steps to Creating an Impactful Employee Experience for Return Employees(リボーディング:戻ってきた従業員に対してインパクトのあるエンプロイ−・エクスペリエンスを構築するための9つのステップ)」では、AllenCommのジェイソン・スタージス氏らが、昨今ケースが増えてきている、一度退職した社員のリボーディングをテーマにしたセッションをもちます。新しく入る社員のオンボーディングとは、また違った観点でのエクスペリエンス・デザインが必要になりそうで、興味深いです。

さらに、「Creating Breakthrough-Measurable Results With Gamified Onboarding(ゲーム化したオンボーディングによって、画期的で測定可能な結果を生み出す)」では、T-Mobileのジョーディ・オースターウィジック氏らが、ゲーミフィケーションやストーリーテリングなどを組み合わせたオンボーディングの取り組み事例を紹介します。

生成的なキャリア開発

「Talent Strategy & Management(タレント戦略)とマネジメント」とは別のトラックになりますが、関連して、「キャリア開発」にも興味深そうなセッションがいくつも見受けられました。扱われているセッションも、これまでの固定的なキャリア観から生成的なキャリア開発へと再定義していくことを意図したものが多い印象です。

たとえば、「How Career Development Is Like Eating an Elephant(キャリア開発は、いかにして象を食べるようになるのか)」では、「会話からはじまるキャリア開発〜成長を支援するか、辞めていくのを傍観するか〜」(ヒューマンバリュー出版)の著者の一人であるジュリー・ウィンクル・ジュリオーニ氏が登壇します。ジュリオ−ニ氏は、キャリア開発は、「部屋の中にいる象(あることは誰も知っているのに口に出せないもの)」のようなものだと説きます。そして、キャリア開発をそれぞれのパーツに分解して、もう一度構成し直し、より意味があり、漸進的で、迅速なものにしていくことを提唱します。

また、レジェンド・スピーカーの一人であるイレイン・ビーチ氏が、「From Disrupted to Defined: Get Your Career Back on Track(崩壊から定義へ:あなたのキャリア開発を軌道に戻す)」というセッションを行い、ATDのTalent Development Capability Modelに基づいて、キャリア開発のゴールをもう一度明確にしていくことを語られるようです。

そして、「4 Steps to Career Coach Generation Z Talent(Z世代のタレントに対してキャリア・コーチを行う4つのステップ)」では、SIDFのアブダリア・アルジャフ氏がセッションを行い、マネジャーやL&Dの実践家が、キャリア・コーチとして、Z世代にコーチングを展開していくポイントを紹介します。

また、少し新しいテーマとして、「Boost Your Career Through Volunteering: Success Stories From ATD Leaders(ボランティアを通して、あなたのキャリアを再起動する:ATDのリーダーたちからの成功ストーリー)」では、The Impact Instituteのクリスティー・ワード氏ら、ATDのリーダーたちによるパネル・ディスカッションの中で、ボラアンティアを起点や機会としたキャリア開発の事例を紹介していきます。

(12)進化するL&Dの役割

ここまでATDで取り扱われている様々なテーマを紹介してきましたが、L&Dの役割自体を進化させていこうというメッセージも、各セッションから伝わってきました。

たとえば、「Harnessing Change: Using Agile Methods in Learning and Development(変化をつなぐ:ラーニング&ディベロップメントにアジャイルの手法を使う)」では、TorranceLearningのメーガン・トランス氏が、L&Dのプロジェクトにアジャイルの方法論を活用することで、L&Dの機能を変革していくことを提唱します。

また、「Learning Cluster Design: The New L&D Model Driving Digital Age Leadership(ラーニング・クラスター・デザイン:デジタルの時代のリーダーシップを推進するための新しいL&Dのモデル)」では、Learning Cluster Design Groupのクリスタル・カダキア氏が、これまで行ってきた、ある特定の課題に対して個別のラーニング・アセットをデザインしていくモデルとは異なる、新たなL&Dのモデルとして、OK-LCDというモデルを提唱します。どのようなモデルが提示されるのか、楽しみです。

また、「L&D’s Playbook for the Digital Age(デジタルの時代に向けたL&Dのプレイブック)」や「Upgrade Your Toolbox for Leading Transformational Change(変革をリードするためのツールボックスをアップグレードする)」のように、我々のツールを更新していこうとするセッションも散見されました。

そして、「Can L&D Practitioners Become Agents for Global Change?(L&Dの実践家は、世界的な変化のエージェントになれるのか?)」では、EdAppのダレン・ウィンターフォード氏が、実際にL&Dがグローバルでの変革にリーダーシップを発揮していった事例が語られるようです。

終わりに

ここまで、12の観点から、ATD21のセッションタイトルと概要から見受けられる人材開発のテーマを取り上げてきました。300を超えるセッションの概要を眺めながら、現地、及びHomeでのセッションで、実際にどんな検討が行われるかの期待や好奇心が高まるとともに、人材開発の領域で深堀りしていきたいテーマの全体像やマップのようなものが見えてきたようにも思います。

タイトルと概要だけでは一概にいえないところもありますが、Covid-19の影響やそこでの新たな経験を経ながら、L&Dにおけるランドスケープも大きく変わってきているように感じます。L&Dに関わる私たち一人ひとりが、こうした変化への感受性を高めながら、貢献領域をいかに広げていけるかを探求する一助になれば幸いです。

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