雑誌掲載記事

人材開発の潮流を踏まえ、人材開発部門の役割を革新する〜未来に価値を生み出すラーニング・カルチャーの醸成に向けて〜

「企業と人材」(産労総合研究所)2021年12月号(No. 1106)掲載

株式会社ヒューマンバリュー 取締役主任研究員 川口 大輔

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新型コロナウイルスの世界的流行は、多くの人々の生き方や働き方に元に戻れないほどに深いインパクトを及ぼしました。それは人材開発の領域においても同様のことでしょう。この1年は、企業の人材開発部門で働く人々にとっては、研修のオンライン化等を中心に、目の前の危機にどう対応するのかを模索し続けた年であったと思います。

足元への応急の対応が一段落した今、視点を広げて世界を見てみると、私たちが大きなパラダイム・シフトの只中にいることが実感できます。たとえば、2021年8月末には、世界最大の人材開発のカンファレンスであるATD(Association for Talent Development)の国際会議が、リアルとオンラインのハイブリッド形式で開催されましたが、そこでは、オンライン化への対応といった短期的な議論を超えて、パンデミックが加速させたより大きな変化の潮流の中で、人材開発部門で働く人々がその役割や使命、アプローチを根本から見直し、革新していこうというダイナミズムが感じられました(※1)。

では、私たちの役割をどのように再構築していったら良いのでしょうか。本稿では、人材開発の領域で起きている変化を俯瞰して解説するとともに、そうした変化をどう受け止め、何を革新し、人材開発部門で働く一人ひとりが何を高めていくべきかを考察していきたいと思います。

VUCA時代において変化する人材像

今後の人材開発の役割を考える上で、企業が将来に渡って持続的に価値を生み出していくために必要とする人材像がどのように変化してきているのかをまず眺めてみることにします。

ここで、キーワードとなるのは、VUCAです。VUCAは、Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧性)の頭文字をとっており、変化が激しく、将来の予測が困難で、正解がわからない現在の環境を表す言葉として、今ではビジネスの世界でも当たり前のように使われています。

このVUCAの度合いが近年さらに加速化しているのが肌身に感じられます。AIに代表されるテクノロジーが急激に発達し、デジタル・トランスフォーメーション(DX)、グローバル化、価値観の多様化が進み、既存のビジネスモデルが一夜にして壊れていくのを垣間見る社会の中で、企業はこれまでのような成功のパターンを打ち出せなくなってきています。

さらに企業がめざす成長のあり方も一様ではなくなってきています。2020年のダボス会議(世界経済フォーラム)では、「ステークホルダー資本主義」が主題となりましたが、これまでの株主への短期的な利益を第一とした成長のあり方を脱却し、従業員や顧客はもちろん、地域社会や環境に対して長期的な価値をいかに生み出していくかが問われるようになってきています。企業のビジョンにおいても、経済成長だけではなく、社会や環境にどう貢献していくかが打ち出されていくことが当たり前になってきました。

このように社会のあり方が大きく変わりつつあり、未来の不透明性が高まる環境において、企業で求められる人材像も大きく変化してきていると思います。

エージェンシー:正解が見えない中で、未来を切り拓く

最初にOECD(経済協力開発機構)の議論に着目してみたいと思います。OECDでは、2015年より「OECD Future of Education and Skills 2030」を立ち上げ、2030年に実現したい人材像を具体化してきました。

OECDでは過去(1997年〜2003年)にも、グローバルで取り組むべき教育の指針として「キー・コンピテンシー」や「21世紀型のスキル」を定義していましたが、本プロジェクトでは、それから15年余りが経過し、上述したVUCAに表されるような社会変化の中で、改めて求められる人材像を再構築したものと言えます。

そして今回新しく提言されたモデルの中核となる考え方に、「エージェンシー」という概念があります。エージェンシーとは、「変化を起こすために、自分で目標を設定し、振り返り、責任をもって行動する能力」と定義されています。(※2)

ここでいう目標とは、単に自分たちの欲求を実現し、自己満足的にキャリアを考えることではありません。一人ひとりが属する社会に対して責任をもち、何が必要なのかを自ら考え、影響を与えていくという意味が含まれています。

つまり、「自身が周囲の世界に良い影響を与える意志と能力を有している」という信念をもち、環境に働きかけながら、「自分の未来を自分で切り拓いていく力」がエージェンシーと言えるでしょう。

こうした提言がOECDからなされたことは、企業にとっても重要な示唆を与えてくれます。目標を与えてくれたらがんばります、やり方を教えてくれたら実行します、という世界観では、VUCAの環境の中で価値を生み出すことはできません。

一人ひとりが、社会や顧客への感受性や責任感を高めて、自身が何をなすべきかを考え、目的意識というコンパスをもちながら、仲間と共に行動を起こし、自らを振り返って着実に変化を生み出していけるような人材をいかに育てていけるかが今後の企業の生命線となるように思います。

ラーニング・アジリティ:素早く学び、変化し続ける

エージェンシーの議論と関連して、今後の人材開発の変化を考える上で重要なテーマに「リスキル」があります。現在多くの企業がDXを軸にビジネスモデルや事業戦略を大きく転換しようとしていますが、そのためには、戦略を実現する人材の能力やスキルをアップデートしていくことが不可欠です。

上述のダボス会議においては、「リスキリング革命」と称して、第4次産業革命に伴う技術の変化に対応した新たなスキルを獲得するために、2030年までに10億人に対して、より良い教育、スキル、仕事を提供するというイニシアチブが打ち出され、社会的な要請も高まりました。

こうした背景の中、働く人々に求められるものとして、現在どんな専門性やスキルを身に着けているか以上に、「環境の変化から素早く学び、自身を高め、変化し続けていく力」、つまり「ラーニング・アジリティ」が重要視される流れがあります。

先述したATDにおいても「ラーニング・アジリティ」はキーワードとして頻繁に取り上げられており、何を学ぶべきかというコンテンツの議論を超えて、人々の学ぶ技術や姿勢、スピード、そのためのマインドセットをどう高めていくかといったことへの強いフォーカスが伺うかがえます。

ヒューマニティ:人間らしさを解放する

並行して、予測可能でアルゴリズムで対応可能な仕事の多くが、AI等のテクノロジーに代替される可能性のある未来の社会において、「人だからこそ生み出せる価値」や「創造性」にフォーカスし、いかに人間らしさを解放していけるのかという議論も活性化してきています。

たとえば、毎年ヒューマン・キャピタルに関するグローバルのトレンドを分析しているデロイトでは、2021年のレポートにおいて、「人間らしい」特性を活かすことが組織の成長の鍵となり、全ての問い、課題、決定事項に「ヒト」 優先で取り組むことが求められると強く主張しています(※3)。

また、ATDにおいても、働く人々の「ウェルビーイング(幸福)」や「ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)」といったヒューマニティにかかわるテーマが、人材開発で取り組むべき大きなトレンドとして取り上げられていたことも注目に値すると思います。

ゲイリー・ハメルは、「企業の繁栄は、“あらゆる階層の社員”の主体性、創造力、情熱を引き出せるかどうかにかかっている」と述べていますが、今日の創造力の課題とは、もはや一部のクリエイティブ人材の話ではなく、すべての人々が人間らしい価値をどう生み出していくかという命題であるといえるかもしれません。

人材開発の役割はどう変わるのか?

ここまでいくつかの観点から今後求められる人材像がどうシフトしていくのかを述べてきましたが、すべてに共通するのは、VUCAな環境の中で「未来に価値を生み出す」という視点で人材像が語られている点にあります。

では、そうした未来に価値を生み出していくための学びや成長のあり方とはどのようなものでしょうか? 

たとえば企業における階層別研修や個別のスキル教育の受講、OJTなど、仕事をしていく上で必要なスキルや決められた要件を満たしていくような学習は、今後も必要になるでしょう。しかしそれが、企業側がゴールをすべて定め、学ぶコンテンツの仕様を定義し、学習者を受け身にして学ばせていくような「カンパニー・センタード」的な教育になってしまっていては、未来に価値を創造していくことは難しいと言えます。

未来を切り拓く学びのあり方とは、鋳型に流し込んで標準化された部品をつくるような静的なものではなく、一人ひとりが本来もつ学びへの好奇心、喜び、創造性を解放し、ありたい姿を描いて新たな経験へと足を踏み出し、仮説を立てて実験を試み、チャレンジや失敗から洞察を生み出し、信頼する仲間と共に学び合い、越境して自分の枠組みを広げていけるようなダイナミックな学習のプロセスになります。

そうした観点から、人材開発部門の役割を考える上で注目されるキーワードに「ラーナー・センタード(学習者中心)」があります。学習の提供者ではなく、学習者の視点に立って考えると、学習のフィールドはクラスルームに閉じずに無限に広がることになります。たとえば、顧客と接する瞬間、従業員同士の日々の会話、マネジャーとの1on1、新しい職場に配属された時、事業のビジョンや戦略を考える場、新たなチャレンジを振り返る場面、毎日の進捗ミーティングなど、すべての経験が学びとなり、クラスルームはそれを補完・サポートするものとして位置づけられることになるでしょう。

そこで私たちが向き合うべきは、「何をメンバーに学ばせるか」ではなく、「メンバー一人ひとりが、自身が働く環境や経験すべてを学びに変え、自らの視野と知識を拡大していけるようなマインドセットの転換や環境づくりにどう貢献できるのだろうか?」という問いになるのではないでしょうか。

そして、働くすべての人々が学習と成長への関心を高め、経験や関係性の中から自発的に学びが生まれていくような職場環境は「ラーニング・カルチャー」と位置づけられます。上述のATDにおいても、ラーニング・カルチャーがキーワードとして語られるケースが大幅に増えています。たとえば好奇心に基づくカルチャーを自社にどのように育むのかをテーマに掲げたノバルティス社のセッションなどが注目を集めていました。

これからの人材開発部門の役割は、個別の研修の企画やデザインを行うインストラクショナル・デザイナー的な役割から、人と組織への豊富な洞察を軸に、企業のなかにラーニング・カルチャーを醸成していく役割へとシフトしていくと考えられます。カルチャーは「耕す」を意味する「Cultivate」と語源を同じくしますが、たとえていえば、働く一人ひとりの情熱や目的意識を種に、草花が成長していくための土壌や環境をつくっていく「ガーデナー(庭師)」的な役割といってもいいでしょう。

図1:人材開発部門の役割のシフト

ラーニング・カルチャーを育む人材開発部門の実践

それでは実際に「ラーニング・カルチャー」をどのように育んでいくのでしょうか。カルチャーの変革は多肢にわたる取り組みですので、やれることはたくさんあると思いますが、ここではその核としていきたいアプローチをいくつか紹介してみることにします。

人材開発に関する対話を行う

カルチャーを築く上では、育成は人材開発部門が行って、事業部はそれを受けるものというスタンスを手放し、事業部が主体となって自組織の人材のケイパビリティを高めていけるようにしていくことが大切です。

そのスタートは対話になります。経営や事業部と対等な立場に立って、自社のビジョンやめざす方向に進むために、どんな人材を育てていきたいのか、人材を取り巻く環境がどう変わってきていて、これから何を高めていきたいのかといったことを丁寧に対話していくことが、学習と成長に関する関心を高めることにつながります。

たとえば私たちが支援している会社の中でも、経営ビジョンの刷新と合わせて、ビジョンを実現するための人材像や育成のあり方を革新する人材開発ポリシーを、全社的な対話を通じて策定するケースが増えています。

ある会社では、コロナ禍に入る前と後で、パフォーマンスを生み出す行動がどう変わったのかを事業部と協働で特定し、変化に対応する新たなコンピテンシーとして打ち出し、そうしたモデルをもとに職場ごとに対話やコーチングを行うことで、お互いから学び合う文化を築こうとしています。

また、ヤフー社の人財開発会議やサイバーエージェント社の人材覚醒会議などに代表されるように、一人ひとりのメンバーを、事業をとおしてどう育てていくのかを対話するタレント・ミーティング的な取り組みを人材開発部門がコーディネートすることも増えているように思います。たとえば、これまで期末に行っていた評価調整の会議の場などの目的を見直し、個々の強みを組織的にどう育むのか、そのためにどんな機会や経験を生み出していくのかをマネジャーも参画して検討する場へと刷新していくことが、育成の成熟度を高めていきます。

このような人材開発について、自分ごとで話せる対話の場づくりを、あらゆるレベルで広げていくことから始められるとよいと思われます。

学習のエコシステム(生態系)を築く

そして、ラーニング・カルチャーを築く上では、ラーナー・センタードな学習環境のデザインを実現していくことが不可欠です。現在の人材開発領域の議論においてもホットなトレンドとなっています。

たとえばATDのカンファレンスにおいても、「マイクロ・ラーニング」と呼ばれる5分程度の短い時間の学習機会を、モバイル技術を活かして日々の仕事の中に組み込んだり、AIを活用して、個々の能力や適性、学習スタイルに合わせたパーソナライズ化した学習を可能にする「アダプティブ・ラーニング(適応学習)」の取り組みなどが特に注目されたりしています。

ポイントとなるのは、いかに学習者の生態系を理解して、主体的な学びが起きるラーニング・エコシステムをデザインできるかです。

かつて米リーダーシップ研究機関CCL(Center for Creative Leadership)は、「70:20:10の法則」を掲げ、人がクラスルームで学ぶのは10%であり、70%は経験から、20%は人とのかかわりから学ぶという考え方を打ち出しました。

エコシステムを築くというのは、こうした原則をもとに、学習者が職場の経験をとおして得られる学びを最大化し、学びや知識の創造につながるような環境を構築していくことといえるでしょう。

たとえばそれは、学習者の好奇心を起点に、必要なことを必要なタイミングで学べるような学習リソースや、実践をサポートするツールを整え、チームでの学習や組織の垣根を超えてナレッジを共有できるようなコミュニティをつくり、多様なメンバーが集うワークショップにおける相互探求から新たなナレッジが育まれていくような、学習の循環を生み出していくことととらえられます。そして、テクノロジーはこの循環を生み出す助けとなります。

また、エコシステムと聞くと、プラットフォームやシステムの構築など、大掛かりで難しいイメージが湧くかもしれません。しかし、たとえば新入社員教育のような既存の学習機会でも、工夫次第ではエコシステムを築いていくきっかけとなりえます。

ある企業では、新入社員教育を抜本的に見直し、座学で知識を教え込むスタンスから、新入社員自らが探求したいテーマを掲げ、社内外に働きかけてインタビューを行い、必要なスキルを学びながら、自社の強みやバリューを明らかにしていく探求的なプロセスへと変革していきました。そして、そこで得られた発見を、新入社員自らが講師となって反転学習的に他の社員に共有しながら、共に事業やビジネスのあり方を考えていく機会をつくっていきました。

こうしたプロセスを通じ、新入社員にとっては、受身的に教えられるだけではわからなかった自社のリアリティへの理解を能動的に深めたり、社内外のネットワークを築くことにつながるとともに、組織側も新入社員の新しい発想から刺激を受けたり、自分たちのビジネスをとらえ直す機会になるなど、組織全体の学習性を高め、カルチャー変革の機運を高めることにつながりました。

ここにあげたのは一例ですが、大切なことは、仕組みを整備することがゴールではなく、好奇心⇒つながり⇒探求⇒価値創造のような学習のフローや循環をいかに育んでいけるかであり、それがラーニング・カルチャーの創造につながります。ガーデナーとしての腕の見せ所と言ってもいいでしょう。

図2:ラーニング・エコシステムを築く

パフォーマンス・マネジメントを革新する

さらに、ラーニング・カルチャーを築く上で、私たちが向き合うべきもう1つの大きなテーマとして、「パフォーマンス・マネジメントの変革」があります。

パフォーマンス・マネジメントとは、目標管理から人事評価制度に至るまでの成果を生み出す一連のマネジメント・プロセスを指していますが、2015年くらいから、このプロセスを大きく革新していこうという動きが活発化しています。GAP、アドビ、マイクロソフトなどのグローバル企業が、上司・部下・同僚間での頻繁な対話を軸にしたパフォーマンス・マネジメントに切り替えたことは、大きな注目を集めました。(※4)

各社によって変革の仕方は異なりますが、共通するのは、働く人々の「学習と成長」にフォーカスを置いていることです。

年1回の人事評価やフィードバックでは、評価の妥当性ばかりに目がいき、学習が起きません。目標設定をとおして、自分が何に貢献したいのか、チャレンジしたいのかを探求したり、定期的な1on1の対話の機会を利用して、実践の振り返りから学びを得たり、年に1度ではなく、頻繁なフィードバックを通じて、成長につなげていくことが大切です。

このように、パフォーマンス・マネジメントのプロセスを革新することは、日常のなかに学びを埋め込み、学習のフィールドを日々のすべての経験に拡大していく行為であり、ラーニング・カルチャーをつくる大切な営みであるととらえることができます。そのための仕組みづくりやマネジャーの教育も、今後の人材開発部門の大きな役割と考えられるでしょう。

これからの人材開発スタッフの学びと成長を考える

ここまでラーニング・カルチャーを育むための人材開発部門のアプローチについて述べてきましたが、ではそれを推進する人材開発スタッフ一人ひとりは今後どのように成長していくことが期待されるでしょうか。

参考となる1つの指針として、ATDが2020年1月に公開した「Talent Development Capability Model(※5)」があります。これは、これからの人材・組織開発に携わるプロフェッショナルに期待する能力のモデルとして打ち出されたものであり、個人、プロフェッショナル、組織への影響という3つの領域において、23の能力を具体化しています。

ATDは過去にもコンピテンシーモデルを出していましたが、今回のモデルは、より未来志向でつくられています。23の能力の中にも、たとえば、未来を洞察するための「Future Readiness(未来への準備)」、人材に関するビッグデータを価値につなげる「Data & Analytics(データ&アナリティクス)」、脳科学などの知見をもとに人の学習と成長を科学的に考える「Learning Science(学習の科学)」、そして組織学習を促進し、組織の力を高める「Organizational Development & Culture(組織開発とカルチャー)」などが取り上げられている点が新しく、興味深く感じられます。

こうした能力の項目を参考に、自分たちが高めていきたいものが何かを考えていくのもいいでしょう。

しかし、こうした個別の能力やスキルを高めること以上に大切なのは、人材開発部門で働く一人ひとりが、目的意識やビジョンをもとに働きかけていく姿勢にあります。これまで述べてきたように、たとえば漠然とアナリティクスがこれから必要になるからアナリティクスを勉強しようといったスタンスでは、未来に価値を生み出す学びにつながりません。

自らが、社会や事業環境に起きている変化や、組織で働く人々への感受性を高め、人と組織の領域でどんな価値を生み出していきたいのか、そのためにどんなチャレンジを行いたいのかを探求し、好奇心をもって学び、社内外に越境して働きかけて変化や影響を生み出していく、つまり人材開発部門スタッフが、前段で取り上げた「エージェンシー」を高めて、今できることに一歩を踏み出していくことこそが、ラーニング・カルチャー創造の起点となるのではないでしょうか。

参考文献

※1 ATD21事前レポート
https://www.humanvalue.co.jp/wwd/research/conference/atd/atd2021pre/
※2 『OECD Education2030プロジェクトが描く教育の未来』、白井俊、ミネルヴァ書房
※3 「デロイト グローバル・ヒューマン・キャピタル・トレンド2021」
※4 パフォーマンス・マネジメント革新フォーラムページ
https://www.pmi-forum.com/
※5 ATD Talent Development Capability Model
https://www.td.org/capability-model/about

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