効果測定

効果測定

多くの企業はパフォーマンスの改善(パフォーマンス・インプルーブメント)に注力しています。パフォーマンスを改善するには、パフォーマンスの測定が不可欠です。
なぜなら、改善効果は、パフォーマンスの測定によって評価されることになるからです。

関連するキーワード

パフォーマンスの向上につなげる効果測定の留意点

その際の課題の1つとして、改善活動が測定しやすいものだけに集中しがちな傾向があります。「測定できなければ管理ができない」という言葉がありますが、しかしマネジメント上で重要な要素の多くは測定しづらいものです。
例えば、信頼度、忠誠心、コミットメント、モチベーション、学習性、創造性、知識の創発度、協働性などは、パフォーマンスの向上において重要な要素であるものの、測定するためには工夫が必要となります。
改善効果の測定が財務的指標のみで構成された場合、システム的に組織を捉えることができなくなり、短期的な視野で対症療法的な手を打ってしまい、みかけのパフォーマンスは上がったものの、長期的には逆効果といったことが起きがちです。

2つ目の課題としては、事前に測定項目を決めなければならないということがあります。
一般的に、パフォーマンス改善のアプローチは、あるべき姿と現状とのギャップ分析によって問題を定義し、その改善策を作成し、実行するというプロセスを取ります。
この最初の段階で、あるべき姿がそもそも何なのか、それを測る尺度が何かをきちんと決めないと誤った改善を行いがちです。
そこで、効果測定に当たっては、最終的に何を高めたいのかを明らかにし、それが実現しているかどうかを何によって測定できるのかを究明します。
またその結果が出るのに時間がかかる場合は、先行して高まる指標を探す必要があります。
その関係を明確にしておかないと、改善への取り組みと結果との関係が説明不能に陥りがちです。
効果がなかったということを立証するのは簡単ですが、効果があったという原因・結果の影響関係を立証するのはきわめて難しいものです。
また、測定には手間とコストがかかるため、どの程度の精緻さで効果測定を行う必要があるのかについて、あらかじめ了解を取っておくことが大切です。
同時に、パイロットチームや対照チームの用意や事前・事後のデータの比較が必要なことから、効果測定の用意もあらかじめしておかないと、測定することができなくなります。

3つ目の課題として、効果測定した結果、それを次にどう生かすのかということを想定しておく必要があります。単に効果が出たか否かの結果評価に終わってしまって、それをさらなる改善に結び付けていない場合があります。
したがって、当初の段階から効果測定の結果を見てどのような手立てを打つのか、次にどのような試みをするのかをデザインしておく必要があります。

こうした分析手法や具体的改善策の提供と、そのプロセスおよびツールの教育を行う役割を担うのが、パフォーマンス・コンサルタントであり、企業の人材開発担当者の新たな役割の1つとして確立しつつあります。

私たちは人・組織・社会によりそいながらより良い社会を実現するための研究活動、人や企業文化の変革支援を行っています。

関連するレポート

人材開発の潮流を踏まえ、人材開発部門の役割を革新する〜未来に価値を生み出すラーニング・カルチャーの醸成に向けて〜

2022.03.17インサイトレポート

「企業と人材」(産労総合研究所)2021年12月号(No. 1106)掲載 株式会社ヒューマンバリュー 取締役主任研究員 川口 大輔

<HCIバーチャル・カンファレンス2021:Create a Culture of Feedback and Performance参加報告> 〜「フィードバック」を軸としたパフォーマンス向上の取り組み〜

2021.10.01インサイトレポート

2021年 6月 30日に、HCIバーチャル・カンファレンス「Create a Culture of Feedback and Performance(フィードバックとパフォーマンスのカルチャーを築く)」が開催されました。

コラム:『会話からはじまるキャリア開発』あとがき

2021.08.27インサイトレポート

ヒューマンバリューでは、2020年8月に『会話からはじまるキャリア開発』を発刊しました。本コラムは、訳者として制作に関わった私(佐野)が、発刊後の様々な方との対話や探求、そして読書会の実施を通して気づいたこと、感じたことなどを言語化し、本書の「あとがき」として、共有してみたいと思います。

「今私たちが実現したい成長やキャリアのあり方とは?」 −未来共創オープンラボから見えてきたもの−

2021.02.06インサイトレポート

2020年12月に開催した、企業の垣根を超えて人と組織の未来について探求する「未来共創オープンラボ・ウィーク2020」で行ったセッションのひとつ、「今私たちが実現したい成長やキャリアのあり方とは?」で探求してきた内容を、より多くの方と共有し、今後さらに探求を深めるきっかけとしていきたいという思いから、インサイト・レポートを作成しました。

コラム:万華鏡としてのキャリア観 〜ビバリー・ケイ氏著書日本語版発刊に寄せて〜

2020.09.04インサイトレポート

2020/08/29にヒューマンバリュー出版部より、ビバリー・ケイ(Beverly Kaye)氏らによる著書の日本語版として、『会話からはじまるキャリア開発 ― 成長を支援するか、辞めていくのを傍観するか』(原題:Help them grow, or watch them go、訳:佐野シヴァリエ有香)が発刊されました。 私自身にとっても思い入れのある本であり、多くの人にお読みいただくことで、キ

パフォーマンス・マネジメント革新における5つの”Rethink(再考)”  〜ニューロリーダーシップ・サミットにおける脳科学×マネジメントの議論から考える〜

2019.06.12インサイトレポート

脳科学者、グローバル企業のHR、コンサルタントが集い、脳科学の知見からマネジメントのあり方を探求する「ニューロリーダーシップ・サミット」の中で行われている議論をもとに、今、パフォーマンス・マネジメントの領域でどんな変革が起きようとしているのかの潮流を俯瞰してみたいと思います。

Web労政時報 第2回:すべての従業員のタレントを大切にし、持続的に成長できる組織を創る~スウェド銀行から学ぶこと~(全12回)

2015.07.24インサイトレポート

研修効果測定手法の進化と実施の課題

2012.10.16インサイトレポート

私がお手伝いしている組織においても、短期的な研修に限らず、長期的なリーダーシップ育成や組織開発のプロセスなどで、効果測定はごく当然のように行われている。しかし、効果測定を効果的に行うには、まだまだ工夫の余地が残されており、これからさらに進化していくものと思われる。

「ASTD2010」で見受けられたラーニングのパラダイム・シフト

2010.03.10インサイトレポート

ASTD2010 International Conference & EXPOが、2010年5月16日~19日に米国イリノイ州シカゴにて開催された。今年も8500名の参加者がシカゴに集い、4日間合計262本のセッションを通して多くの探求が行われた。

ASTD2009 国際会議に参加して

2009.09.15インサイトレポート

本年も5月31日~6月3日に米国のワシントンD.C.で、 ASTD2009 International Conference & EXPO が開催された。

もっと見る