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Web労政時報 第6回:変革は一人から始められる~10歳の少女から学ぶこと~(全12回)

葛藤と向き合う中で、私自身がとても勇気づけられたストーリーについて紹介したいと思います。

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前回のコラムでは、「職場で始める小さな組織変革」をテーマに取り上げましたが、実際に変革の取り組みに臨むのは勇気がいることだと思います。想いやアイデアを持ちながらも、

「上司や周囲から理解が得られるだろうか...」
「失敗したらどうしよう...」
「こんなことをやって何になるんだという反応が返ってくるのではないか...」
「まだ自分たちの組織には早いんじゃないか...」

といった考えがよぎり、取り組みを始めることに二の足を踏んでしまう、といったこともあるでしょう。

今回のコラムでは、そうした葛藤と向き合う中で、私自身がとても勇気づけられたストーリーについて紹介したいと思います。

今年の2月にサンフランシスコで行われた「Wisdom2.0」というカンファレンスに参加したのですが、そのオープニングの基調講演で、突然小さな少女が檀上に上がりました。事前の知識がほとんどなかったので、最初は余興の一環なのかなと思っていたのですが、どうやらこの少女が2000人の聴衆の前で基調講演を行うようで驚きました。しかし、話が進むにつれ、私も含め聴衆みなが彼女のストーリーに引き込まれていきました。

彼女の名前はビビアン・ハー(Vivienne Harr)さんと言います。当時10歳にして、既に社会に大きなインパクトを与える仕事をしていました。彼女の取り組みのきっかけは、8歳のときに両親から1枚の写真を見せてもらったことでした。その写真には、少年2人が、大きな岩を背負わされ、ロープにつながれている姿が映っていました。少年2人は、児童奴隷だったのです。

現在世界で奴隷として扱われている児童は1800万人いると言われています。写真を見た彼女は、自分と同じ年くらいの子供が、同じ時代に奴隷として働かされている事実にショックを受けました。そして、何か自分にできることはないかと考え、次の日から、自分でレモネードを作って、道端で売り、そのお金で児童奴隷の解放に役立ててもらおうとしました(アメリカでは、夏になると、子供がお小遣いを稼ぐために、手作りのレモネードを露店販売する姿がよく見られます)。

「Make a Stand Lemonade」と名付けたスタンドで、その日以来、彼女は毎日、雨の日も風の日も自分の意志でスタンドに立ち、レモネードを販売し続けました。最初は1杯2ドルで販売していたのですが、途中からは、「あなたのハートにあるものを払ってください」という形で、寄付をしてもらうようになりました。すると、財布を丸ごと置いていってくれる人もいたそうです。

そうした姿がツイッターなどのSNSで話題を呼び、彼女の姿勢に心を打たれた人たちから次々と寄付が集まり、目標にしていた10万ドルに到達しました。目標の金額が集まったことで、両親は「もうこの辺でやめてもいいんじゃない」と問いかけたそうですが、「もう子供たちの奴隷はみんな解放されたの? まだなんでしょ。じゃあ、続ける」と言って取り組みを続けました。現在までに100万ドル以上の資金を集め、児童奴隷の撲滅に向けて、活動を続けているようです。

スピーチを聴きながら、印象としては、本当にどこにでもいそうな普通の少女でした。しかし、彼女のストーリーテリングからは、

  「私がやっているのは、"Giveness"です。
    Businessはもらいますが、Givenessは与えます(A business takes. A giveness gives.)」

  「行動を伴わない思いやりは、思いやりではありません」


など、10歳とは思えない印象的な言葉がたくさん語られました。

講演の最後に、司会者から「もし自分が『何かをやりたい』と思っているのに、一歩を踏み出せない人がいたとしたら、何とアドバイスしますか?」と問われたときに、

あなたは、自分が望むことを何でもできるのです。たとえ一人であったとしても気にする必要はありません。
なぜなら、一人いれば十分だからです(One Person is Enough)

というメッセージを投げかけていたことが、私自身の心にも特に響きました。

恐らく彼女も、最初から大きなことをやろうと思っていたわけではないように思います。たまたま知ることになった、自分と同じくらいの年代の子供たちのために何かできることはないか、と自分なりに考えたときに、これまで自分でもやったことのある「レモネード・スタンドを作る」という、できることから始めた結果、その後のいろいろな変化につながったのではないでしょうか。
彼女のストーリーと生きざまから、変革は最初の一歩から始まるということをあらためて学ばせていただいたように思います。

私も、これまで関わらせていただいたさまざまな変革の取り組みの体験を振り返ってみると、その多くは、組織的なイニシアチブというよりも、たった一人の想いと行動から始まったように感じています。
「職場をもう少し明るくできないだろうか」「お客さまに喜んでもらいたい」「チームメンバー全員の力が発揮できたら、もっと素晴らしい価値を生み出せるのではないか」といった、小さな想いを基に、自分が勇気を持って一歩踏み出してみると、そこに同じような想いを持った仲間が集い、予想もしていなかった未来が生まれてきます。

変革には、さまざまな形があり、成功の方程式があるわけではありませんが、一つ外せない要因を挙げるとすると、そうした想いと行動を少しずつ育んでいくことにあるように思います。

第6回:変革は一人から始められる~10歳の少女から学ぶこと~(2014年12月26日)

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