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仕事と私生活の関係性に関する調査レポート —仕事と私生活は「区別」?「つながり」?その違いから見える仕事観の考察—

ヒューマンバリューでは、2011年に会社員を対象とした「働く意味調査」を実施しました。その調査では、「働く意味や使命感」を感じていることが、働きがいに大きく関わっていることなどが見えてきました。

それから十数年が経ち、働き方や仕事に対する考え方、組織との関わり方も変化してきています。そこで2025年、改めて約1,000人の働く人々を対象に、「人生や仕事で大切にしている価値観」と「大切にしている価値観を育む行動」に関して調査を行いました。この調査では、働く人々の価値観や仕事で重視している行動について、さまざまな角度から分析を試みました。

そうした中で、働く人々の仕事への向き合い方には、いくつかの違いがあることが見えてきました。具体的には、私生活も含めた人生全体の中で仕事をどのように位置づけているか、専門性をどう捉えるかなどが、働きがいや仕事への向き合い方に関係してくることが見えてきました。

そこで、今回のレポートでは、「仕事と私生活の関係」に焦点をあて、分析から見えてきたことを紹介します。

このレポートから見えてきたこと

1)「区別」と「つながり」は両立する
仕事と私生活を「区別」しながら、両者の「つながり」も大切にする人が、全体で最も多い約45%でした。

2)「区別」と「つながり」では、結びつく価値観が異なる
「区別」は内面的な安定、「つながり」は他者・社会との関わりや、自分らしく取り組む感覚との関連が見られました。

3)同じ「区別」を重視する人でも、「つながり」の有無によって違いが見られる
同じ「区別」を重視する人でも、「つながり」の有無によって、仕事を通じた実感や成長、社会との関わりへの意識に違いが見られました。
仕事と私生活を「分けるか、つなげるか」ではなく、一人ひとりが両者をどのように関係づけているのか。その違いに目を向けることが、人と仕事、組織との関係を考える一つの手がかりになりそうです。

1. はじめに:仕事と私生活の距離感から、人と組織の関係を考える

働き方が多様化する中で、仕事と私生活の距離感をどう捉えるかは、多くの人が直面するテーマとなっています。

リモートワークの広がりに加え、副業や学び、趣味や家族との時間など、仕事以外で大切にしたいことも多様化しています。働く人自身が、自分の時間やエネルギーをどこに使うのか、仕事とどのような距離感で関わるのかを選択する場面も増えてきました。

また、仕事と私生活の距離感をどう捉えるかは、働く人本人だけでなく、組織にとっても重要なテーマです。従来は、働き方の選択肢について、組織が決める部分が大きかった面もあるように思います。しかし現在は、働く人自身が、自分に合った働き方や組織との関わり方を選びとる場面も増えてきています。そうした中、一人ひとりが働きがいを感じ、力を発揮できる環境をつくるには、仕事と私生活の関係について、働く人がどのように捉えているのかを踏まえていくことが必要になってくるのではないでしょうか。

それでは、現在の働く人たちは実際に、仕事と私生活の関係性をどのように捉えているのでしょうか。

今回は、およそ1,000人の調査データをもとに、仕事と私生活の関係を「区別」と「つながり」という2つの視点から見ていきます。

ここでいう「区別」とは、「仕事と私生活を明確に分けることを大切にする意識」です。「つながり」とは、「私生活の充実が仕事の充実につながり、それが人生全体の豊かさにつながると捉える意識」を指します。

まず「区別」と「つながり」について、それぞれにどのような特徴や傾向があるのかを見ていきます。さらに、仕事と私生活の捉え方の違いが、仕事への向き合い方や働きがいなどにどのように関わっているのかをみていきます。

2. 仕事と私生活を「区別」する意識とその背景

6割を超える人が「区別」を大切にしている

まず、仕事と私生活の関係性を探る1つ目の視点として、「仕事と私生活の『区別』」に着目します。

設問「私にとって、『仕事は仕事』『私生活は私生活』と明確に区分けすることが極めて大事である」に対し、5段階評価のうち「あてはまる」または「ややあてはまる」と肯定的な回答をした人は、全体のおよそ64%、1,038名中667人でした(グラフ1)。

この結果からは、仕事と私生活を区別することが、一部の人だけのこだわりではなく、比較的多くの人が大切にしている価値観の1つであることがうかがえます。

また、年代別に見ても、「区別」に肯定的な回答をした人の構成に大きな偏りは見られず、20代から60代まで、各年代がほぼ同程度の割合を占めていました(表1)。

このことから、仕事と私生活を「区別する」ことを大切にする意識は、特定の年代に限られたものではなく、幅広い年代に見られるものだと考えられます。

区別の背景に見える、内面的な安定と報酬への関心

では、この「区別」という意識は、どのような価値観や関心と結びついているのでしょうか。ここでは、設問「私にとって、『仕事は仕事』『私生活は私生活』と明確に区分けすることが極めて大事である」と、他の設問との相関をみていきます(表2)。

この結果から、「区別」の意識は、「精神的な健やかさ」「マイペース」「不快のなさ」といった、人の内面的な安定に関わる項目と関連していることが見えてきました。また、「金銭的報酬」とも関連が見られることから、生活を支える物理的な側面とも結びついている可能性があります。

3. 仕事と私生活における「つながり」の意識とその背景

6割弱の人が、私生活の充実は仕事にもつながると捉えている

次に、仕事と私生活の関係性として、両者が互いに影響を及ぼし合う「つながり」の観点からデータを見ていきます。

設問「私は、私生活が充実することで仕事が充実し、それが豊かな人生につながると考えている」に対し、肯定的な回答をした人は、およそ59%で、1,038名中、606人でした(グラフ2)。

6割弱の人が、私生活の充実が仕事の充実にもつながるという感覚を持っていることがわかります。

また、年代別に見ても、「つながり」に肯定的な回答をした人は20代から60代まで幅広く見られました。50代がやや低めではあるものの、全体としては大きく特定の年代に偏ってはいません(表3)。

このことから、私生活の充実が仕事の充実につながり、それが人生全体の豊かさにつながるという感覚も、特定の年代に限られたものではなく、幅広い年代に見られるものだと考えられます。

「つながり」の背景に見える、他者・社会との関わりと自分らしい取り組み

では、この「つながり」という意識は、どのような価値観や関心と結びついているのでしょうか。設問「私は、私生活が充実することで仕事が充実し、それが豊かな人生につながると考えている」と、他の設問との相関をみていきます(表4)。

まず特徴として、「周囲の関係性への貢献」「社会と関われる実感」といった、他者や社会とのつながりに関わる項目との関連が見られます。「区別」は、自分自身の内面の安定に関わる項目との関連がみられましたが、「つながり」は、仕事と私生活がつながる感覚にとどまらず、周囲や社会との関わりを感じることとも重なっていると捉えることができます。

また、「区別」と同様に、「自分らしさ」との関わりもみられました。ただし、その関わり方には違いがあります。「区別」では、「マイペース」「自然体」といった、自分の状態やあり方を保つような項目との関連がみられました。一方で「つながり」では、「自分らしく取り組む」「自分らしく生きている」といった、自分の状態というよりは、仕事や人生に能動的に関わるような側面がみてとれました。

4. 「区別」と「つながり」の併存ーー4分類から見える仕事と私生活の捉え方

これまで仕事と私生活の関わり方として、「区別」と「つながり」をそれぞれみてきました。ただし、この2つの関わりは、それぞれに対して肯定的な回答が過半数を超えていることからわかるように、単独で存在しているというより、重なり合っていると考えられます。

そこで、「区別」と「つながり」それぞれへの肯定・非肯定を組み合わせ、4つの層に分けてみていきます(表5)。なお、ここでは「あてはまる」「ややあてはまる」と回答した人を「肯定的」、それ以外の回答をした人を「肯定的ではない」として分類しています。

「区別」と「つながり」の両方を大切にする人が最も多い

この4分類を見ると、最も多かったのは、「区別」と「つながり」の双方に肯定的な「A.区別&つながり肯定層」で、全体の約45%を占めていました。つまり、仕事と私生活を明確に分けたいという意識と、私生活の充実が仕事の充実にもつながるという意識は、必ずしも対立するものではなく、両方を併せもつ人が少なくないことがわかります。

その他にも、「B.区別肯定層」「C.つながり肯定層」「D.非肯定層」がそれぞれ一定数見られました。

なお、4つの層はいずれも20代から60代まで幅広い年代で構成されており、特定の年代だけに大きく偏っているわけではありませんでした。細かく見ると、「B.区別肯定層」では50代の割合がやや高いなど、一部に年代による違いも見られますが、ここでは、年代差の詳細には踏み込まず、まずは幅広い年代に見られる仕事と私生活の捉え方の違いとして捉えたいと思います(グラフ3)。 

同じ「区別」でも、つながりの有無で見られる違い

次に、4つの層の間で、仕事や人生に関する意識にどのような違いがあるのかを見るために、設問ごとの平均スコアを比較しました。特に違いが見られたのは、「A.区別&つながり肯定層」と「B.区別肯定層」でした。この2つの層はいずれも「区別」に肯定的ですが、「つながり」の意識を併せもつかどうかが異なります。

なお、「区別」に肯定的ではなく「つながり」には肯定的な「C.つながり肯定層」と、「A.区別&つながり肯定層」との間では、大きな差はあまり見られませんでした。

そこで以下では、「A.区別&つながり肯定層」と「B.区別肯定層」に着目し、平均スコアの比較から、仕事や人生に関する意識の共通点と違いを確認します。

仕事を通じた実感や関心の違いーー「生きている実感」や「社会との関わり」に表れる差

ここでは、「A.区別&つながり肯定層」と「B.区別肯定層」とで、各設問の平均スコアを比較します。そして、両層の平均スコアの差が小さい設問を見ることで、共通している傾向を確認し、差が大きい設問を見ることで、両層の違いがどこに表れているのかを見ていきます(表6・表7)。

まずは、平均スコアの差分の小さい設問を整理した表6を見ると、「金銭的報酬」や「人生への漠然とした不安」については、両層の間に大きな差は見られませんでした。つまり、「つながり」の意識を併せ持つかどうかにかかわらず、報酬や将来への不安に関する項目では、両層は比較的近い傾向を示していることがわかります。

一方で、平均スコアの差分の大きな設問を整理した表7では、「仕事を通じた生きている実感」「社会と関われている実感」「提供する価値の向上」「仕事を通じた人間的成長」などで差が見られました。これらの項目はいずれも、「A.区別&つながり肯定層」の方が高い傾向にあります。つまり、仕事と私生活を「区別」するだけではなく、仕事と私生活に「つながり」の意識を併せもつかどうかによって、仕事を通じた生きている実感に加え、社会との関わり、価値提供や自己成長を大切にする度合いが高まる可能性があります。

補足:「区別肯定層」における「区別」との負の相関

ここまで、「A.区別&つながり肯定層」と「B.区別肯定層」の平均スコアを比較し、仕事を通じた実感や関心の違いを見てきました。ここまでの比較は、層ごとの平均値の違いを見たものです。

これらの層は、いずれも私生活と仕事の「区別」を肯定的に捉えている層です。ただし、同じように「区別」を大切にしていても、その「区別」の意識が他のどのような意識と関連しているのかには違いがある可能性があります。そこで補足的に、それぞれの層において、「区別」の設問と他の設問との相関を確認しました。

相関係数はいずれも高いものではないため、「区別」の捉え方の違いを断定することはできません。また、「A.区別&つながり肯定層」の相関係数には、通常の有意水準では明確な関連とまではいえないものも含まれるため、参考として扱います。そのうえでみると、一部の項目では、両層の間で関連の表れ方に違いが見られました。

具体的には、「仕事を通じた生きている実感」「仕事を通じた楽しみや喜び」「より良い世界や社会の実現」において、「B.区別肯定層」では負の相関が見られました。一方で、「A.区別&つながり肯定層」では、同じ項目において、負の相関はみられませんでした。(表8)。

このことから、「B.区別肯定層」では、仕事と私生活の「区別」を重視する度合いが高い人ほど、仕事を通じた喜びや生きている実感、社会との関わりに関する項目が相対的に低くなる傾向がうかがえます。

ただし、これは仕事と私生活を「区別」すること自体の良し悪しではなく、同じように「区別」を大切にしていても、「つながり」の意識を併せもつかどうかによって、仕事を通じた実感や関心との結びつき方が異なる可能性を示していると考えられます。

まとめ:「区別」と「つながり」から考える、組織への示唆

今回の分析から、仕事と私生活を「区別」することも、私生活の充実が仕事の充実につながると捉える「つながり」の意識も、年代を問わず多くの人に見られることが確認されました。

それぞれの背景を見ると、「区別」は精神的な健やかさやマイペース、不快のなさといった内面的な安定に関わる項目や、金銭的報酬とも関連していました。一方で「つながり」は、周囲の関係性への貢献や社会と関われる実感、自分らしく仕事や人生に関わる感覚と関連していました。

また、「区別」と「つながり」は必ずしも対立するものではなく、双方を大切にしている人が最も多いことも見えてきました。仕事と私生活を明確に分けたいという意識と、私生活の充実が仕事の充実にもつながるという意識は、同時にもちうるものだと考えられます。

さらに、区別とつながりを併せて大切にしているのか、区別だけを単独で重視しているのかによって、仕事や人生に関する意識には違いが見られました。具体的には、つながりの意識をもつ「区別&つながり肯定層」では、仕事を通じた生きている実感、社会と関われている実感、提供する価値の向上、仕事を通じた人間的成長などは、高い傾向にありました。また、「B.区別肯定層」において、「区別」を重視する度合いが高いほど、仕事を通じた喜びや生きている実感、社会との関わりに関する項目が相対的に低くなる傾向も示唆されました。

こうした結果を踏まえると、組織としては、仕事と私生活の関係を「分けるか、つなげるか」という一律の枠組みだけで捉えるのではなく、一人ひとりがどのような意識で仕事と私生活の関係を捉えているのかを理解することが大切になるように思います。特に、仕事と私生活を区別したいという意識の有無だけでなく、そこに仕事と私生活の「つながり」の感覚があるかどうかにも目を向けることは、働く人の仕事への向き合い方を理解するうえで1つの視点になるのではないでしょうか。

次回のレポートでは、本調査から見えてきたもう一つの特徴である「専門性の捉え方」について紹介します。

調査概要

調査名:働く人々の価値観や大切にしていることに関する調査
調査対象:20代〜60代の働く人々(各年代がほぼ同数となるように構成)
回答者数:1,038名(全設問に対し、同じ回答をした人を除く)
調査時期:2025年
調査方法:インターネット調査
本レポート分析対象:「価値観や大切にしていること」に関する108問(5段階評価)

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