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ATD(The Association for Talent Development)

ASTD2002概要

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ASTDについて

ASTDは、1944年に設立された非営利団体で、世界中の企業や政府等の組織における職場学習と、従業員と経営者の機能性の向上を支援することをミッションとした、訓練・開発・パフォーマンスに関する、世界第一の会員制組織です。米国ヴァージニア州アレクサンドリアに本部を置き、現在100以上の国々に70,000人余りの会員(会員には20,000を越える企業や組織の代表が含まれる)をもっています。 ASTDは、トレーナーやトレーニング・マネジャーたちに専門的な開発材料やサービスを提供し、職場における学習促進を援助し、世界中の政府・企業等、各種組織に属する従業員や役員たちのコンピタンス・パフォーマンス・充足感を高める手助けをすることを使命としています。

ASTD2002

今年で58回を迎えるASTDコンファレンス(ASTD2002)は、6月2日〜6日(プレコンファレンス5月31日〜6月1日)の期間、米国ルイジアナ州ニューオリンズ市、モリアル・コンベンション・センターにおいて開催されました

ASTD2002の参加国・参加者数

今年の参加者数は以下の通りです。

・参加者総数:7,924名
・海外参加者:1,810名
・参加国数:77カ国

米国外からの主な参加者
  韓国:322名
  カナダ:221名
  日本:150名
  ブラジル:136名
  デンマーク:91名

ASTD2002の主要テーマ

ASTD2002は、次の10のテーマを中心に展開されました。

1.キャリア:あなた自身にフォーカスし、他の人々にもフォーカスする
  Careers: Focus on Yourself; Focus on Others

2.E-ラーニング
  E-Learning

3.パフォーマンス・コンサルティング
  Performance Consulting

4.リーダーシップ/マネジメント開発
  Leadership/Management Development

5.個人的、職業的効果性
  Personal & Professional Effectiveness

6.測定、評価
  Measurement & Evaluating

7.学習部署を管理する
  Managing the Learning Function

8.今日の変革をリードする
  Leading Change Today

9.トレーニング基本
  Training Fundamentals

10.職場問題
  Workplace Issues

ASTD2002のキーワード

今年のASTDコンファレンスのキーワードとして、ヒューマンバリュー主催の情報交換会では、次のようなものが挙げられました。

1.バリューシフト(Sep.11)

組織とリーダーのバリューが問われたり、バリューを高めることの重要性を訴えるセッションが多く、またそれが多くの参加者からの共感を引き出していた。 背景に2001年Sep.11のテロ事件がある。あの日を境に、アメリカ人のバリューが大きくシフトし、個人主義的な側面からコミュニティ(バリュー共有)へとシフトした。

2.バリュー・ベースド・リーダーシップ

人々が組織をコミュニティと位置づけると、バリューの共有がベースとなる。リーダーがどれほどすごい人でも、その人のようになりたいと思えるかどうかが問われる。人々への影響の源泉として、謙虚さ、誠実さ、尊敬が問われ、これをいかに高めるかが、組織の永続的なパフォーマンスにも大きく影響することが確認されていた。

3.ダイアログ

ダイアログという言葉そのものは10年ほど前から出ているが、この大会で随所に使われ始め、ダイアログの実践と、それなりの成果について発表されていた。 自分の枠組みからではなく、相手の枠組みから理解することで、お互いの関係が尊敬、誠実さにシフトすることが、協働する上で極めて重要な要素であることが確認された。

4.コミュニティ

コミュニティという言葉は昔からあるが、「組織をコミュニティにする」とか、「Eコミュニティ」などと頻繁に使われるようになってきた。そのコミュニティの概念は従来のコミュニティとは異なり、自立的な人間が貢献し合い、人間として大切にされていくこれからの人と人との関わり方を示すような意味で使われてきている。

5.メンタリング&コーチング

メンタリングとコーチングを比較すると、昨年まではコーチングが主であったが、今年は逆転し、メンタリングが主要なキーワードとして頻繁に登場した。その理由として、単にパフォーマンスを上げるための関わりを超えて、その人の全人格的な成長を図るということが組織の存在意味や将来のパフォーマンスの両面からも重要な課題として認知され始めていた。

6.リテンション

どうしたら人々が本当に組織に残って、コミットメントをしてもらえるのかということについて、具体的な事例や方法論が紹介されていた。しかしそれは単なる対症療法ではなく、リテンションがかかるようにそれぞれの世代別のニーズや価値観に合わせた機会提供や自由な責任領域の設定の仕方が議論されていた。

7.パフォーマンスコンサルティング

パフォーマンス・コンサルタントについての改善プロセスや技術論は、かなり精緻に完成されてきており、今回の大会では、パフォーマンス・コンサルタントの役割は、ビジネスユニットが抱えている「発生している課題」に対してソリューションを提供することだけでなく、その部門の将来的な成長を視野に入れたソリューションの提供にまで拡大し始め、そのために包括的なアプローチについて新たな議論が始まっていた。

8.エバリュエーションとROI

トレーニングを行った場合のエバリュエーションとROIを出すことは、常識化してきており、ROIのないものは存在できないような風潮がうかがえた。反面、それに対する反対意見も出始め、偶発的な学習や長期的な開発が短期的なROIを追うことで失われてしまう警鐘をならすセッションもいくつか見られた。

9.Eラーニングとナレッジマネジメントの融合

Eラーニングに対する考え方は年々変化を見せてきており、今年の議論ではEトレーニングとEラーニングを切り分けるべきだという提起もあった。これはマニュアル理解やパターン理解をすることは、ラーニングとはいわないのではないかというところから生まれている議論である。ラーニングになるためには、受講者間でのナレッジの還流や生成が行われる場をつくる必要があり、そういったオブジェクトを受講者が共有化できる場を設定しようとすると、それはナレッジマネジメントと区別がつかないものとなり、これらを融合しようとする動きが見えてきた。

ASTD2002の全体的な傾向についての考察

今年のASTDコンファレンスにおけるヒューマンバリュー主催の情報交換会での議論を踏まえ、全体的な傾向についての所感を以下のようにまとめてみました。

ASTDの今後の方向性

〇参加者人数の減少

ASTD2002コンファレンスに参加しての第一印象は、参加人数が大幅に減少したことである。

理由として、ドットコム・ショックと昨年9月11日のテロ事件の影響が、まだ尾を引いているのかもしれないと感じた。 また、別の理由としては、ASTDがEラーニングに傾斜していったため、Eラーニングの調査に来る参加者が増えた反面、逆に他のEラーニング関係のコンファレンスとの差別化が図りづらくなって、他のコンファレンスに分散してしまっていることも考えられる。

さらに、企業を取り巻く傾向として、バリューが人々を引き寄せる重要な観点となってきている。こうしたことから考えると、今のASTDが提示するミッションやバリューは、人々が魅力を感じ、集いたくなるという側面が、弱まっている可能性があるのではないだろうか。

〇カンファレンス単位での学習性の限界

また、これが一番大きな理由として考えられるのだが、今日の複雑で多様化した状況の中で、企業内の問題解決を図ろうとする人や、特定分野の実践を行っている専門家にとっては、コンファレンスにただ参加しているだけでは、獲得できる知識が不十分だと思われるようになったのではないだろうか。他者が何を行っているのかのベンチマークを行いたいのであったら、わざわざコンファレンスに参加しなくてもインターネットや企業間のアライアンス、情報交換で十分カバーできるであろう。

そこで必要になるのは、日頃接することの少ない参加者間での、オープンで深い対話の場である。そういった意見交換の中で生み出される知識や意味の共有こそが、混沌とした状況での解決策や方向性に気づきを与えることができるからである。そうすると、このような1万人規模のコンファレンスでは、場の設定が難しくなるため、専門分野別の参加者のレベルが高い小規模コンファレンスに分散せざるを得なくなると思われる。

今後のASTDは、新たなミッションとビジョンを打ち出し、サブグループとしてのコミュニティを確立していかないと、縮小傾向にならざるを得ないだろう。ASTDもその辺りは課題として認識しているようで、昨年からコンファレンス内の小コンファレンスを開いたり、今年からは話し合うコーナーを設けてランチを無料で出したり、休憩時間に無料のアイスクリームやコーヒーサービスの提供したり、毎年行うパーティの無料化を行うなど、コミュニティのための場の設定に努めていた。しかし、そのような場を設定する意味が参加者に伝達されておらず、またそれを回す黒子・触媒がいないため、うまく機能していないようであった。

2002年カンファレンスの内容の外観

〇Eラーニング・ROI・コンピテンシーの導入は当たり前

今年のASTDの流れを概観すると、まずEラーニングとパフォーマンスという言葉が目に付く。これはここ数年の傾向ではあるが、今年は特にコンセプトの議論から、実施方法や、または実行した結果どうだったのかという話題に移行してきた印象がある。

何らかの形でEラーニングを導入している企業が一般的になっているとともに、企業の研修では、ROI(投資効率)を出すのがあたりまえのようになり、パフォーマンスを出さない研修・トレーニングは存在できないような雰囲気がある。そしてコンピテンシーベースで研修を行うことも当然のようになりつつある。参加者が所属している企業でも、ほとんどの所が何かしらのコンピテンシーを扱っている状態になっていた。

セッションの内容はインプリメンテーション(実行)に

そして、セッションの内容は、具体的な実践事例とそれを振り返ってのポイントの確認などが多かった。また、複雑なものの浸透は難しいため、実行に焦点が移るとともに、プロシージャ−(手順)はシンプルになってきている。コンセプト的には目新しくなくても、実際にそのテーマに取り組んでいる人にはヒントとなるコツなどが随所に見られたと思う。

また、発表者の誰もが、いかにパフォーマンスを高めたか、言い換えるとコストを削減できたかを評価の基準にしている印象があった。そういった傾向から、全ての人材開発はパフォーマンスを生み出せるかどうかを証明しなければ、生き残れないような切迫感が感じられた。しかし、果たして人材開発が、コスト削減といった単一の尺度だけでの方向性で突き進んでいって本当によいのかという疑問を感じた。それは今回のツアー参加者からも声が聞かれたし、あるセッションでも、実際の知識の獲得は偶発的に行われるのだから、それでROIを取ることはできないという意見も提示されていた。

〇リーダーシップ論の傾向

また、今回は「ビジョナリーカンパニー」と「ビジョナリーカンパニーⅡ 飛躍の法則-Good to Great」の著者であるジム・コリンズのリーダーシップについての基調講演が行われるなど、リーダーシップのセッションも多かった。リーダーシップ論の変遷をみると、昔は特性論や資性論といわれ、どのような性格や属性・体格などをもった人が効果性の高いリーダーシップを発揮するのかという議論がなされていた。そして、ストッディルあたりから集団の目標達成に向けての影響力をみていくようになり、その後は状況によって望ましいリーダーシップのスタイルは変わるというスタイル論に移行し、最近はリーダーシップのコンピテンシーを明らかにする傾向が出てきた。 最近の傾向であるリーダーシップのコンピテンシーや特性と、以前のリーダーシップ論の大きな違いは、昔はリーダーが他者に対して何をするのか、何をさせるのかという「DO」が問われたのに対して、最近は、Waliking The Talkingという言葉にいわれるように、「あなた自身はどうなのか」という「BE」が問われるようになったことだと思われる。

これは昨年の9月11日の事件によって、人々のバリューシフトが起きたことが大きな要因といえる。事実、あるセッションでは9月11日以前のアメリカの組織人の最も大切にしていたバリューは「キャリア」であったのに対して、以降は「ファミリー」に変化しているという報告がなされていた。それ以外にも、「富」の順位が大きく後退し、逆に「GOD」が大きく上昇している。つまり、個人主義的な面から、コミュニティが重視される方向へと移行つつあることを示していると考えられる。コミュニティは価値(バリュー)を共有することがベースにあり、バリューの重要性がますます高まっている。

こういった傾向から、ジム・コリンズの話も、ケン・ブランチャードの話も、リーダーとしてどのように生きて何を実践するかという、人格またはバリューを問われている気がした。その内容はテクニックや方法論ではなく、生き様のようなもののため、シンプルで当たり前のような言葉にならざるを得ないのだが、そういったシンプルなメッセージを講演者の人格を通して語ることにより、参加者にインパクトを与えているように思われた。

また、コーチングからメンタリングへフォーカスがシフトしていた。メンタリングはその人の人格的側面やバリューにも関与することからも、バリューの重要性が高まっているという傾向を理解しやすい。

〇客観主義的学習と社会構成主義的学習の切り分け

いくつかのセッションにおいては、明言化はされていないものの、学習のスタイルやプロセスといった問題が意識されるようになっている感があった。

それはマニュアルに記述できるような知識、あるいはデータベースに格納したような知識は、あまり役に立たないということが背景にあると思われる。もちろん初期教育のトレーニングなどにおいて、多人数に効率的に低コストで、知識や技能を身に付けてもらうというニーズは、なおも色濃くある。 しかし、企業がいま必要としているのは、従業員のコミットメントや忠誠心、継続的改善、環境変化に素早く対応する知識や、エグゼクティブのリーダーシップなどを高めることである。こういった価値観や意味の共有化や一体感、、柔軟性、意思決定力、人間対応のスキルなどは、自分を囲む社会と関わる過程での体験や相互作用、協働の中でしか獲得できない。

前者のすでに形になった知識を身につけようとする学習プロセスを客観的主義的学習といい、後者の体験や相互作用に基づく学習プロセスを社会構成主義的学習という。 そこで、いくつかのセッションでは、社会的構成主義学習に関連するコラボレーションやコミュニティ、シミュレーション、またはメンタリング、ダイアログというコンセプトや方法論が取り入れられてきていた。これは社会構成主義的学習へ向かう傾向を表していると思うが、まだ模索段階にあるような気がした。

今後は、学習の目的に合わせて、どちらの学習プロセスを選択するのかを意識するようになるだろう。Eラーニングの進展のおかげて、インストラクショナル・デザインのモデルや方法論がかなり明確になってきたが、これも客観主義的学習のプロセスにおいてだけであり、社会構成主義的な学習のモデルはないようだ。

社会構成主義的な学習モデルは、単一のソフトだけで学習を完結させることは難しいと思われるので、どのように学習機会を設定し、何を組み合わせて、受講者にどのような学習体験をしてもらうかの設計の仕方が重要になると予想される。それは客観主義的学習モデルを含んだブレンデッドなものになると思われる。

〇Eラーニングのコンテンツ

そういった意味で、今年のコンファレンス参加者は、Eラーニングの新たなコンテンツに対する期待として、社会構成主義的な学習ができるソフトが出てくるのではないかと楽しみにしていたようである。しかし、コンファレンスおよびエキスポでは、社会構成主義的な学習ができる新しいアイデアをもったソフトは見当たらなかった。

客観主義的学習のソフト、つまり単純に覚えればよいような知識・スキル習得のコンテンツは多くあったが、気づきを促すようなものはなかった。進化しているのは、コンテンツや受講者を管理するマネジメントシステムの方だった。しかし、これは当然の状況であろう。社会構成主義的学習をする単一のソフトとしては、シミュレーションにならざるを得ないが、シミュレーションで学習が起きるのは、現実世界に容易に転移できるリアリティをもっている場合だけだと思われる。もし作ったとしても、複雑なソフトになり、かなりの売価になってしまうため、果たして市場性があるのかどうか疑問である。

社会構成主義的な学習は、社会的な枠組み・領域を広げさせたり、幅広く他者の体験や知識を交換したり共有化したりすることによって行われる。そういった意味で、今後はどのようなメニュー・機能を受講者に用意するのかという場の設計、学習体験の組み合わせが問題になるとともに、受講者間で知識が還流するナレッジマネジメントと一体化していく傾向になると思われる。

今後は、従来のトレーニングで見られたマニュアルやパターン学習はほとんどEラーニングに移行し、また、Eラーニングをそうした学習手段として使うことはごく当たり前になっていくだろう。その反面、中途半端な集合研修は立ち消えていく傾向にあり、周到に準備され、生成的な相互作用がある研修プログラムのニーズが、ますます高まっていくと思われる。

ASTD2002 エキスポジション

本年のエキスポの概要は以下のとおりでした。

出展社数

6月5日付のASTDのホームページによると、エキスポでの展示は350社を超えていた。

展示日時

・6/3 月曜日 4:00p.m.−7:00p.m.
・6/4 火曜日 10:00a.m.−5:30p.m.
・6/5 水曜日 9:30a.m.−4:00p.m.

エキスポの内容

〇全体の印象

本年度のASTDのEXPOにおいては、350を超えるブースが出展された。例年同様、それぞれのブースでは、人々の学習とパフォーマンスの向上をサポートする様々な商品やサービスが、デモンストレーション等を通して紹介されていた。ブースのカテゴリーは、Leadership、Organizational Development、Coaching、Retentionなど多岐に渡り、ASTDのホームページによると、カテゴリーの総数は140にものぼっていた。(重複カテゴリーを含む)

ASTD2002EXPOの様子

全体的な印象としては、年々派手さがなくなってきているような印象を受けた。昨年、多少見られたお祭りのようなデモンストレーションを行っているブースは、今年はほぼ皆無であったように思える。その分、各ブースはかなり実質的な説明を中心に行ってきていた。EXPOおいてもEラーニングなどのコンセプトを大々的に広告宣伝する場から、現実的なソリューションを紹介する場へと変遷している様子が垣間見れた。

テーマとして、多かったのは、今年もEラーニングであった。従来同様、自社のプラットフォームやコンテンツのデモンストレーションを行うベンダーが多かった。そのほかにも、EメンタリングやEコーチングなどのサービスのニーズも最近高くなってきたため、それらのサービスを展開するベンダーが表れてくることが予想されたが、まだそういったサービスの提供は十分に行われていないようであった。

以下に、エキスポで紹介されていたプラットフォーム、コンテンツの中でも、特に印象的であった部分を挙げてみたいと思う。

〇プラットフォームベンダー

プラットフォームベンダーの提供するシステムは、大きく分けるとすると以下の3つのタイプに分類される。

1) Learning Management System (LMS)

LMSでは、受講者の進捗状況や成績の把握といった受講者管理や、コンテンツの配信を主に行う。

2) Learning Content Management System (LCMS)

LCMSでは、LMSの基本的な機能に加えて、複数の人間がオーサリングツールを通してコンテンツの開発に携わることができるプラットフォームを提供する。

3) Live E-learning(同期型学習システム)

同期型学習システムでは、複数の受講者が、遠隔地にいる講師及び他の受講者と直接コミュニケーションを取りながら、同時に学習を進める(Live E-learning)ことができるプラットフォームを提供する。

(ただし、Eラーニングの業界では、異なる分野のベンダーの合併や買収も数多く行われているため、どのベンダーがどの分野に属するかといったことは、明確に分類できなくなっている。)

これらのプラットフォームを提供するベンダーに関しては、以下のようなポイントが見所として挙げられた。

LMSと他システムとの統合

Eラーニングのプラットフォームを、学習に限らず、他の情報システムと統合していこうという動きが2001年秋ぐらいから活発化しており、LMSの中にも、単に受講者管理を行うのみならず、コンピテンシー・マネジメント・ツールを用いてスキル・ギャップアナリシスを行えるものや、オンラインコミュニティを同プラットフォーム上で築くことができるものなども登場してきていた。エキスポに限らず、カンファレンスのセッションの中でも、Eラーニングとナレッジ・マネジメント等との統合の必要性が唱えられていた。このことからも将来的には、エンタープライズ・ワイドに展開するソリューションの一環として、Eラーニングと人事情報システム、及びEPSSやナレッジ・マネジメントシステムなどを1つのシステムとして包括していく流れにあることが予想された。

標準化

昨年度のASTDにおいては、自社プラットフォームがSCORMやAICCに準拠していることをうたい文句にしているベンダーも数多く見られたが、今年度はそのような傾向はなかった。既にプラットフォームはSCORMに準拠していることが当たり前になっていて、もはやSCORMやAICCに準拠していることが、他社製品との差別化にはならなくなっていると考えられた。

LCMSの現状

2001年秋に行われたOnlineLearning2001では、新しいコンセプトのプラットフォームとしてLCMSが大々的に取り上げられ、今後のビッグビジネスなるだろうとの予測がなされていた。

これまでLMSを販売してきた大手ベンダーの多くも、コンテンツ管理やチーム・オーサリングができる機能を自社のLMSに組み込むなど、その後米国ではLCMSの概念も着実に浸透をしているように考えられていた。しかし実際のところ、エキスポのブースで見られたLCMSはClick2learn社の「ASPEN」とLogicBay社の「LogicBuilder」ぐらいであり、それほど目立つことはなく、まだ米国においても十分に普及しているとは言い難い印象を受けた。

日本においても、まだその概念はあまり広く知られてはいないが、Click2learn社が、2002年の9月から、「ASPEN」の日本語版を販売すると発表しており、今後普及し始めることも予想される。

ITベンダーの積極的な参入

米国のEラーニング業界では、これまでEラーニングのソリューションを専門的に提供するベンダーを主導に発展してきた、2001年秋ごろより、OracleやSunMycrosystemsといったITベンダーが本格的にEラーニングのビジネスに参入する姿勢を見せ始めた。大手ITベンダーにおいては、単にシステムの構築のみならず、汎用コンテンツ販売、自社コンテンツ開発支援、Eラーニング導入コンサルティングというようなトータルなソリューションを提供しているのも特徴的である。

今回のエキスポにもSunMycrosystemsとIBMがそれぞれひときわ大きなブースを出展しており、注目を集めていた。このような大手ITベンダーの積極的な参入の背景には、将来的なシステム統合を念頭に置いていると考えられ、こういった大手ITベンダーの動きを押さえておくことも、今後のプラットフォームビジネスの動向を把握するうえで、必要となってくるであろう。

主なプラットフォームベンダーの紹介

その他出展していたE-Learning企業の情報を以下に簡単にまとめる。

〇SABA

Saba社の提供するラーニング・マネジメント・システムにおいては、コンピテンシー・モデルを用いたスキル・ギャップアナリシスが可能となっていた。求められるスキルのレベルと、上司、周りからのアセスメントやセルフアセスメントを経て評価された自己のスキルのレベルの差が点数で表れ、そのギャップを埋めるためのトレーニングが、自分専用のポータルサイトを通して提供されるようになっていた。また、その際に必要となってくる人事データに関しては、SAPなどのERPのデータからそれほど手間をかける必要なくコンバートできると述べていた。 また、同プラットフォーム上では、オンラインコミュニティの機能も付随しており、仲間や、エキスパートから学ぶナレッジマネジメントの側面も打ち出し始めているようであった。

〇Click2learn

Click2learnでは、ToolBook InstructorといったオーサリングツールやLCMSのASPENといった商品の提供を通して、コンテンツのオーサリング環境に優れたプラットフォームを前面に打ち出していた。 特にASPENのプラットフォームにおいては、ラーニングマネジメント(学習者管理)、ラーニングコンテントマネジメント、バーチャルクラスルーム、情報のマネジメントを1つのプラットフォーム上で提供できるようになっており、コンテンツの開発から、受講者への配布までのプロセスがより効率的になっているように感じた。

〇その他のプラットフォームベンダー

Centra、WebEx、RISC、THINQ、SmartForce...

〇コンテンツベンダー

コンテンツ制作技術の進歩により、昨年秋ごろからシミュレーションを活用したコンテンツが多々登場し始め、注目を浴びるようになった。OnlineLearning2001及びTechLearn2001においても、シミュレーションが今後のビッグビジネスになるだろうとの意見が多く、スライドやビデオに加え、アニメーションを駆使したインタラクティブなシミュレーション・コンテンツが多く登場し始めていた。

シミュレーションは大きく以下の3つに分けられる。

1) コンピュータソフトウェアの使い方などをハンズ・オン(実際に使ってみる)形式で学ぶもの
2) ファイナンス等の分野において、ケースを通して意思決定するプロセスを学ぶもの
3) 人間関係などのソフトスキルを学ぶもの

中でも、3)のソフトスキルをEラーニングでいかに学習するかに関しては、日本においても様々な議論を呼んでおり、このテーマに関するコンテンツのデモンストレーションは、今回のエキスポにおいて1つの大きな目玉となった。 実際のエキスポにおいても、AIを活用した高度なシミュレーションなども多く登場し始めていた。ただし、やはりまだゲーム感覚から抜け切れない部分もあり、リーダーシップなどのソフトスキルをEラーニングだけで学ぶのは難しいとも感じた。 その一方、ソフトウェアの扱い方や、機会操作のプロシージャーなどを教える教材を簡単にシミュレーション化できるオーサリングソフトも登場しており、この分野では、シミュレーション化も進むのではないかと予想できる。

主なコンテンツベンダー、オーサリングソフトベンダーの紹介

〇SimuLearn

今回のエキスポで、ブースこそ小さかったものの、かなりの注目を集めていたのが、このSimuLearnであった。同社の提供する、SimuLearn Virtual Learderにおいては、シミュレーションを使ってリーダーシップを学べるものとなっていた。同社はAIの専門化であるCushing Andersonにより発足し、2週間前よりコンテンツの提供を始めたばかりであった。

シミュレーションのストーリーは15分くらいのものが5話用意されており、その全てがミーティングにおいて意思決定をしていくものであった。同コンテンツはAI機能を有しており、毎回意思決定により進むストーリーが変化したり、ボディランゲージから場の状況を読み取ったりなどかなり高度な機能を有していた。シミュレーション終了後は、フィードバックのフェーズに進み、ミーティングの最中の周りのテンションや、自分のパワーといったものが時系列で点数化され、最終的に自分のリーダシップ度とシミュレーションのストーリーの中でのビジネスの結果が評価される仕組みとなっていた。

〇Nine House (IBM Mindspan Solution)

IBM Mindspan Solutionの一環であるNine Houseも、ソフトスキルをシミュレーションを通して学ぶコンテンツを提供していた。Nine Houseのコンテンツが取り扱うテーマには、イノベーション、リーダーシップなどが挙げられており、前者はトム・ピータース、後者はケン・ブランチャードがコンテンツに登場していた。コンテンツは主に2部構成になっており、前半はトム・ピータースやケン・ブランチャードによるストーリーテリングが行われ、後半はシミュレーションを通して、リーダーシップやイノベーションのプロセスを疑似体験してみるというふうになっていた。

〇X.HLP

同社では、主にソフトウェアの扱い方(プロシージャー)を学ぶシミュレーションを開発するオーサリングソフトと、それをEPSSなどの形で学習者に提供するプラットフォームを販売していた。シミュレーションのオーサリングは非常に簡単で、自分が実際にパソコンの画面上でやってみせた作業が、そのままHTMLとJAVAによる簡単なシミュレーションコンテンツへと変換させることができた。また、検索機能も充実しており、実際に作業をしている際に活用するEPSSとしても使え、大変便利であるように感じた。このようなプロシージャーやパターンを覚えこませるシミュレーションは、今後もますます多くなってくるように考えられる。

関連するメンバー

私たちは人・組織・社会によりそいながらより良い社会を実現するための研究活動、人や企業文化の変革支援を行っています。