エンゲージメント

シリーズ:エンゲージメントストーリー第3話:「自然にできた壁新聞」

いま、エンゲージメントが注目されています。
エンゲージメントとは何かをお考えいただくために、実際に筆者が体験した4つのストーリーを紹介します。
この4つのストーリーが、働くこと・働く場・働く仲間といったものについての考えを整理する上でお役に立てばと思います。

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シリーズ:エンゲージメントストーリー第3話:「自然にできた壁新聞」

第3話:自然にできた壁新聞

101人ミーティング

化粧品製造・販売業のA社のある日の出来事です。社屋の至るところに、ポスターが貼り出されました。「101人ミーティング開催。あなたも応募しませんか?」という見出しです。

その見出しの下には、次のようなメッセージが書かれていました。
「すべての部署、すべての立場から仲間たちが集まって、私たちのA社そして一人ひとりが、未来に一歩を踏み出すための”自由で開かれた話し合いの場”です。
当日は、肩書きや職種も、社員、契約社員、パート社員も関係ありません。一緒に働く仲間として、”私たちのA社がこうなったらいいな”、”私たちの職場をぜひこうしていきたい”といった想いや願い、そしてアイデアをみんなで話し合い、共有し、これからの素晴らしい私たちのA社を共に創っていくスタートにしたいと願っています」

101人ミーティングは、平日の二日間を使った合宿です。神奈川県のマリーナに行って実施されます。平日の二日間ですから、行ってみたいと思った方は、上司や仲間と調整することが必要です。
それでも、みんな調整して、部署によっては仲間が集まって話し合って、何名かを代表として参加してもらおうというようなことが起きました。

当日は、ポスターで書かれていたとおり、社長から役員、管理職、そして一般社員、契約社員、パート社員の方々が集まりました。

最高の未来像を演じる

初日の最後は、探求を通して明らかになった「自分たちが心から望む最高の未来像」を寸劇で演じました。
グループに分かれて実施したのですが、その中の1つのグループは、「世界に一つだけの花」という歌を、手話で演じました。

その寸劇の中のリーダーは、聴覚障害者の方でした。彼女がリーダーになって、仲間たちがそれぞれ’一つだけの花’を演じ、最後にみんなで、この歌を手話で合唱したのでした。
いつの間にか、会場にいた全員が手話で、一緒に歌っていました。その中には、もちろん社長もいらっしゃいました。

そして、自分たちの会社が、どんな人も大切にしていく、それぞれの個性を活かしあえる会社こそが理想の姿だということが、演じる身体の中に染みわたっていったのでした。

私の中の、”A社らしさ”は失われていません!

二日目には、未来像を実現するために話し合いたいこと、検討したいことをみなで出し合い、各テーマに関心がある人たちが集まって話し合いをしました。
その話し合った内容を全体で共有し、全員がいちばん大事だと思ったものから順に、今度は全体で話し合いました。

その中に、「”A社らしさ”が最近失われてきている」というものがありました。「以前は、”A社らしさ”が至るところにあったよね・・・」「最近、ふつうの会社、他の会社と同じような感じがしている・・・」といった意見を社員の方たちが出しました。

すると、パート社員の方が、全員の前で立ち上がり、次のように言いました。
「私の中には、”A社らしさ”は、いまでもしっかりあります。失われていません。きっと他の人たちも同じです。だから、”A社らしさ”が失われたんではなく、お互いの中にある”A社らしさ”を今日のように話し合う場や共有しあう機会が減っているのです」

すると、ある管理職が「うん、そうかもしれない。会社が大きくなって、逆に僕らがそういうことをおろそかにしていたのかもしれない・・・」

自分を変えようと思った

そして、二日目の最後、参加した全員が輪になって座りました。そして、「二日間の率直な感想」を話すチェックアウトが始まりました。たくさんの人がいたので、スティックを持った人が話し、次の人に渡すという「トーキングスティック」というやり方が行われました。

昨日の「世界で一つだけの花」の寸劇でリーダーをやられた聴覚障害の女性の番になりました。彼女の横には、手話通訳の方がいます。彼女の「率直な感想」を、手話通訳の方がみんなに伝えました。

その内容は、

私は、この会社で働くことができて、とても感謝しています。私は聴覚障害を持っていますが、こうやって一緒に働かせてもらっています。でも、私はとても引っ込み思案で、人前で発言したり、積極的に働きかけることができませんでした。こうやって働かせていただいているのに、申し訳ないと思っていました。
あるとき、壁に貼られた101人ミーティングのポスターを見ました。中に書いてあった文章を読んだときに、「もしかしたら、これを機会に自分を変えられるかもしれない・・・」と思いました。そして、勇気を振りしぼって、参加の申込をみんなに相談しました。そしたら、「ぜひ行ってきたら」と言ってくれました。人事の方も、私たちのために手話通訳の方を手配してくださいました。
二日間参加して、私は、本当に良かったと思っています。勇気をふりしぼって本当に良かったです。この二日間で自分が変われたと感じます。職場に戻ってからも、積極的にみなさんとかかわっていけます・・・

壁新聞

それから1週間後、社員食堂に、イラストや写真が貼られた手書きの壁新聞が貼り出されていました。
その壁新聞は、二日間の101人ミーティングの様子が、書いた人の個人的なメッセージや感想を添えて紹介されていました。

壁新聞は、人事が貼り出したのではありません。マネジャーたちが指示したのでもありません。実は、101人ミーティングに参加したパートの方々が、参加できなかった仲間たちに紹介したくて、協力して作成したものでした。

パートのみなさんは時間で仕事していますから、席を立って見に行ったりすることは難しいです。そこで、休憩時間になると、101人ミーティングに参加したパートさんが、他のパートさんに101人ミーティングの内容を紹介し、共有する自主的な取り組みも行われていました。

この会社は、どんな文化を築いてきたのだろう・・・

A社は、20年と少し前に創業した会社で、1,000名を超える従業員がいます。際立った特徴の1つとして、定着率が非常に高いことがあります。これは正社員だけでなく。非正規社員も定着率が高く、パートさんの中には、現在の社長が一般社員だった頃からいらっしゃる人もいます。

また、”A社らしさ”の1つが、「人に優しい」です。これは製品にも反映されていて、A社が販売する商品に対して、消費者も「人に優しい」と感じています。
この会社は、どうやってこうした文化を築いてきたのでしょうか・・・。
この会社は、どうやってこの文化を今後も継承していこうとしているのでしょうか・・・。

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