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組織開発

自律分散型組織のさまざまなモデル

プロセスガーデナー 清成勇一

次世代の組織運営として、自律分散型・自己組織化・アジャイルなどのエッセンスを取り入れた組織形態・運営が、全世界で今なお進化し続けています。

筆者は、学生時代に「学習する組織」という理論に出会い、そこに管理・コントロールを主体とした組織運営ではなく、一人ひとりの主体性と情熱が発揮される組織運営の可能性を感じ、学習する組織づくりを実践しているヒューマンバリュー社に入社しました。仕事に携わる中で、「自己組織化」というキーワードに触れ、「組織の中で、どのようにして自己組織化を実現するのか?」という問いを持ちながら、「自律分散型組織」を調査・研究し始めました。

本テーマは、「自律分散型組織のさまざまなモデル」です。筆者の探求の旅路の中で出会ったモデル、得られた気づきやインサイトを紹介することで、「自律分散型組織とは何か?」「運営する上では何が大切なのか?」などについて関心をお持ちの方が、自律分散型組織の概要を知る一助となれば幸いです。

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【目次】
1. 自己組織化とは
2. 「自律分散型組織」を調査・研究を進める中で出会った古典的な事例や、さまざまな手法やキーワード
3. 「自律分散型組織」の実態調査 〜訪問やヒアリングをした事例〜
3−1. ホラクラシー  事例:Zappos社
3−2. 進化型組織(ティール組織) 事例:NPO法人場とつながりラボhome’s vi
4. 「自律分散型組織」を調査する中での気づき

1.自己組織化とは

筆者のスタートでの疑問は、「自律分散型組織を実現していくにあたり、何が重要なのか」ということでした。問いを探求するにあたり、自己組織化とは何か、その現象について考察することで、ヒントが得られるのではないかと考え、物理学・生物学における自己組織化ついて調べました。自己組織化は、生命・自然界の中にありとあらゆるところに存在する現象です。自己組織化に関してのさまざまな定義(以下参照)がありますが、調べていく中で、「あるランダムに存在する状態が、相互作用し、自律的に秩序化・構造化していく現象」であると理解しました。

「自己組織化とは、自律的に秩序を持つ構造を作り出す現象のことである」

出典:Wikipedia

「ランダムから秩序へ、またはミクロからマクロへと自分で組み上がってしまう現象のことを自己組織化と呼ぶ」

出典:都甲潔・江崎秀・林健司・上田哲男・西澤松彦『自己組織化とは何か 第2版』(講談社、2009年、P.6)

「自己組織化――それは「ランダムになろうとする力に秩序化しようとする力が打ち勝つこと」であった。それはまた、一足す一が二とはならない「非線形」の世界である」

出典:都甲潔・江崎秀・林健司・上田哲男・西澤松彦『自己組織化とは何か 第2版』(講談社、2009年、P.218)

「あるランダムな状態にある構成要素が、構成要素間に働く相互作用により自発的に特定の秩序構造を形成する現象」 

出典:“自己組織化” 北海道大学 物質科学研究室. http://wwwchem.sci.hokudai.ac.jp/~matchemS/research/self_organization.html

それでは、「ランダムさをどのように生み出すのか」「どのように相互作用し合うのか」「どのようにして、自律的に構造を生み出していくのか」ということが、疑問でした。その答えにヒントが得られたのが、クレイグ・レイノルズ氏によって考案された群知能をモデル化したもので、人工生命のバード(鳥)のアルゴリズムです。

① 分離(Separation):仲間が近づきすぎたら、ぶつからないように離れる。
② 整列(Alignment):仲間と同じ速度・方向で飛ぶ。
③ 凝集(Cohesion):仲間の多い方向に飛ぶ。

上記の3つの簡単な行動パターン・原則を持つことで、群れを成しながら自己組織化し、目的地に向けて飛ぶことができる。こうした原則は、組織運営においても同様に当てはまるのではないかと考えました。たとえば、あるプロジェクトにおいて、飛ぶというような共通の目的に対して、分離・整列・凝集などの自己組織化を促進するルールを採用することで、一人ひとりが自律的に判断し、協力しながら、遂行することができる。このように、自己組織化を生み出す上での原理原則を明らかにすることで、自律分散型の組織運営を実現できると考えました。

また、自己組織化を促進していくことで、ヒエラルキーが生まれてくるということも知りました。ドネラ・H・メドウズ著、枝廣淳子訳『世界はシステムで動く ―― いま起きていることの本質をつかむ考え方』(2015年、英治出版)の中で、「生命の基本的な特性として、新しい構造をつくり出し、複雑さが増していくプロセスの中で、自己組織的なシステムによって生み出されることが多いのがヒエラルキーである」と、紹介されています。ヒエラルキー構造を作ることで、その内部に含まれるシステムに、ダイレクトに影響を及ぼすことができます。組織に置き換えれば、ある部門において人数が増えてきて、全員への伝達がうまくいかなくなってきたときに、部長やマネジャーという役割をセットすることで、それらを介して、他のメンバーへの指示・命令を伝達可能にしようとする動きです。ヒエラルキー構造を設けることで、影響関係を広げることができるのです。このように、相互作用によって生成する自己組織化と、秩序化するヒエラルキーの働きを、うまく循環させるが必要であるということが見えてきました。この双方向のエネルギーをどのようにしてバランスを取りながら組織運営するのかが、鍵となりそうです。

「自律分散型組織を実現していくにあたり、何が重要なのか」という問いからはじまり、自己組織化を生み出す原理原則がどうやら存在するということ、そして、自己組織化を促進していくとヒエラルキーが生まれ、それらのバランスを取り、循環構造を生み出していく必要があるということが明らかになりました。

2.自律分散型「自律分散型組織」を調査・研究を進める中で出会った古典的な事例や、さまざまな手法やキーワード

古典的な自律分散型組織の取り組み

第2章では、自己組織化を組織運営においてどのように実現するのかを理解するために、具体的な手法や事例を調べていった中で出会った古典的な事例や、自律分散型組織に関連するキーワードについて、紹介していきたいと思います。

現在の事例を調べる前に、過去にどういった事例があるのか、リサーチしました。その中で、古典的な自律分散型組織の取り組みとして、2社の有名な事例がありました。
1社目は、1957年に設立した米国のゴア社(W. L. Gore & Associates, Inc)です。ゴア社は、ゴアテックスを開発した科学メーカーです。ゴア社を有名にした特徴の1つに、同社の組織形態として「一人のマネジャーも存在していない」ということが挙げられます。旧来のピラミッド型の管理組織ではなく、Lattice(格子)と呼ばれる、人と人とが網の目状につながったフラットな組織形態を取り、自己組織化したチームから次々とイノベーションが生み出されています。
2社目は、ブラジルで産業用工業機械やコンサルティング、不動産などを広く手がけるコングロマリット(複合企業)、セムコ社です。1980年、2代目のリカルド・セムラー氏は、21歳のときに父親の会社を引き継ぎました。当時のセムコ社は、倒産が危ぶまれる状況でしたが、組織階層や組織図が存在しない組織、ビジネスプランもなければ企業戦略、短期計画、長期計画といったものがないなど、大胆な組織改革を行い、従業員の意識改革や経営の参画の仕組みを作りました。日本でも2006年に、著書『奇跡の経営 一週間毎日が週末発想のススメ』(岩元貴久訳、総合法令出版)が出版され、有名になりました。社員を信頼し、コントロールを手放すための方法として、セムコスタイルの5つの原則(信頼、代替コントロール、セルフマネジメント、徹底的なステークホルダーアライメント、創造的イノベーション)に集約されています。

自律分散型組織に関するキーワード

次に、自律分散型組織をリサーチしていく中で、次のようなさまざまなキーワードに出会いました。「ソシオクラシー」「ホラクラシー」「アジャイル」「ティール」「DAO(Decentralized Autonomous Organization)」「アンチフラジャイル」「Responsive organization」「swarm organization(郡集組織)」「Language of spaces」「自然経営」「リーンスタートアップ」「かんばん方式」「スクラム」など、さまざまな手法や組織の形態の名称です。それらのキーワードの中で、取り組みとしてユニークなものや、学習理論や組織論、哲学が興味深いものを深堀りしていきました。ここでは、その中で、5つのキーワード「①アジャイル」「②ソシオクラシー」「③ホラクラシー」「④Language of spaces」「⑤ティール」について、その手法が生まれた背景や原理原則を以下に簡単に紹介していきます。

① 「アジャイル」
「アジャイルソフトウェア開発」の潮流から知られるようになった言葉です。1990年代半ばに、「パターン・ランゲージ」をヒントに、「重量ソフトウェア開発手法」に対する反対運動の一部から発展しました。その運動の中心となったのが、アジャイルアライアンスです。アジャイルアライアンスは、アジャイルソフトウェア開発の概念を推進することに専念する非営利の組織として2001年以来発足し、コミュニティ活動をしています。アジャイルアライアンスでは、「アジャイルとは、変化を創造し、変化に対応する能力。それは、不確実で激動する環境に対処し、最終的に成功するための方法である。そのためには、現在の環境で何が起こっているのかを理解し、どのような不確実性に直面しているのかを特定し、それに適応するためにはどうすればいいのかを考えていくことが必要である」と定義されています。この定義は、IT開発の文脈だけでなく、組織開発などあらゆる場面にも適応できる考えかと思います。現在では、組織開発においても取り上げられ、アジャイルという言葉が一般的に使われるようになっています。

② 「ソシオクラシー(Sociocracy)」
1970年に、ジェラール・エンデンブルク氏によって、個人や組織の平等な関係に基づくガバナンス・統治の形態をエンジニアリングの文脈で応用し、Sociocratic Circle-Organization Method(SCM)として開発されました。このソシオクラシーから影響を受け、「ホラクラシー」が生まれています。現在では、ソシオクラシー3.0にアップデートされ、小規模な組織から国際組織まであらゆる規模で、アジャイルに進化し弾力性のある組織のためのオープンなフレームワークとして、まとめられています。そのフレームワークを実現するために、7つの原則(経験主義、有効性、透明性、継続的改善、責任の所在、同価値、承諾)が定められています。詳しくは、実施のためのポイントや事例など、下記URLのページにまとめられています。
https://sociocracy30.org/

③ 「ホラクラシー(Holacracy)」
ブライアン・J. ロバートソン氏がソフトウェア会社の運用で新たな働き方を模索する中で生まれたものです。2007年に、ホラクラシーのフレームワークを開発する会社として、ホラクラシーワン社が創設されました。従来の階級や上司・部下の関係ではない、組織を管理・運営するための新しいソーシャルテクノロジーが採用されています。特徴として、権限を再分配するために、ホラクラシー憲章がまとめられており、実施するためには、その憲法に批准する必要があります。組織で働く人々の役割と権限の及ぶ範囲を規定し、具体的にどのような手順で連携するかなどが明確に書かれています。併せて、その手順を遵守しながら、常に最新の状態を相互に同期化し合い、一緒に仕事をやり遂げるためのミーティング・プロセスがあります。また、原則としては、パーパスフル(目的主導)、ホラーキック、ダイナミック(動的であること)、自律性、透明性があります。ホラーキックとは、部分でありながらそれ自体が独立した存在(ホロン)の秩序であり、自然の有機的な構造を意味します。詳しくは、ホラクラシー憲章など、下記URLのページにまとめられています。
https://www.holacracy.org/

④ 「Language of spaces(ランゲージ・オブ・スペイシーズ)」
自律分散型組織で仕事を進める中で必要となる中核的な能力を育むプログラムとして開発されました。自律分散型組織では、各人が自律性を持ち仕事を進めることが重要となり、人間関係をどのように構築していくのか、自分自身のキャリアをどのように構築していくのか、自分自身と組織の目的をどのように統合しながら働くのかといったことを実践しながら深めていきます。20年以上、リーダーシップ開発と組織開発に従事し、自己組織化組織を十数年経験してきたコンサルタントのクリスティアーネ・ソイス・シェッラー氏が、自己組織化を歩む中での経験を踏まえて開発しました。中核的となる具体的な能力は、差異化と統合、パーパスアライメント(目的との一致)、アイデンティティの明確化、内的なリーダーシップとして定義されています。

⑤ 「ティール」
ティールは青緑色を意味し、ケン・ウィルバー氏の人・組織・社会・世界の全体像を表すフレームワークである「インテグラル理論」による、状態のレベルを示したものです。フレデリック・ラルー氏は、その人の意識の発達段階と組織モデルの進化を5つの段階(レッド・アンバー・オレンジ・グリーン・ティール)に整理し、2014年に、Reinventing Organizations: A Guide to Creating Organizations Inspired by the Next Stage in Human Consciousnessを出版しました。PRなしで自費出版したのですが、2021年現在では約17カ国の言語に翻訳されています。日本では、2018年に翻訳・出版(鈴木立哉訳『ティール組織――マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』、英治出版)され、新しいマネジメント手法として「ティール組織」への関心を呼び、10万部を突破しました。ティール組織の特徴としては、組織を、機械のように一つひとつの部品で構成されたものとして捉えるのではなく、生命体のような、全体システムとして捉えています。それらを体現するための原理として、Self-management(自主経営)、Wholeness(全体性)、Evolutionary Purpose(進化する目的)の3つがあります。

自律分散型組織における原理原則

これらの自律分散型組織における手法の生まれた背景や哲学、原理・変化などについて、ヒューマンバリューの社内で対話しながら、自律分散型組織における、共通する原理原則とは何かについて、探求していきました。具体的には、各組織で行われている具体的な慣行・手法と、その背景にはどのような原理原則があるのか、対話をしながら整理していきました。対話の中で、私自身、印象に残っているのは、「組織のメタファーを機械ではなく、生命として捉える」「経営者がいかにして管理・コントロールを手放し、一人ひとりを尊重できるか」「外部環境のスピードが激しく予測がつかない中では、実験しながら小さなサイクルを回していくことが大事である」ということです。検討を進める中で、共通の法則が見出され、自律分散型組織を運営していく上での原理原則を5つ(リスペクト、目的主導、自律性、オープン性、実験性)にまとめました。自律分散型組織の取り組みは、今もなお進化し続けているので、さまざまな手法が現れては、消えていきます。しかし、その背景には普遍的な哲学や原理原則があり、その原則を押さえていくことが重要なのではないかと考えています。

その後ヒューマンバリューでは、どのようにして5つの原則を日常の仕事において実現するのか、そのためのプロセスを探求し、その手法を「チームステアリング」としてまとめました。社内でもチームステアリングを活用して、仕事のプロジェクトを進めるなど、実験を繰り返しながら、現在も更新し続けています。具体的には下記URLのページを参照ください。

3.「自律分散型組織」の実態調査 〜訪問やヒアリングをした事例〜

第1章、第2章を通して、自己組織化についての概要を紹介し、具体的な原理原則を取り上げてきました。では、具体的にどのように運営しているのでしょうか。筆者は、実際の場に触れたいという想いから、自律分散型の組織を実践している企業の事例を調べ、そこで働く方にヒアリングを行ったり、自律分散型組織の導入を行っているコンサルタントにお話を伺うなどをしてきました。その中から、2つの事例を紹介したいと思います。

3−1. ホラクラシー 事例:Zappos社
3−2. 進化型組織(ティール組織) 事例:NPO法人場とつながりラボhome’s vi

3ー1. ホラクラシー 事例: Zappos(ザッポス)社

米国のZappos(ザッポス)は、「Delivering Happiness(幸せを届ける)」という創業哲学のもと、独自の企業文化を育み、広告に一切お金をかけず急成長した、靴のネット通販の会社として有名です。また、世界最大規模でホラクラシーを導入したことでも注目されました。この事例紹介では、2018年5月にZapposの本社を訪問し、社内見学とランチを食べながら社員とQ&Aができる「Zappos Tour + Lunch」というコースに参加した際に感じた当時の社内の雰囲気や、そこで見た様々な取り組みをお伝えするとともに、その背景にある企業文化や自律分散型組織の運営のポイントを考察したいと思います。

【目次】
① Zappos社について
② Zapposツアーとは
③ Zapposツアーの記録
④ Zappos社員へのインタビュー

① Zappos社について

1999年にニック・スウィンマーン氏によって創業。創業メンバーとして、現CEOのトニー・シェイ氏が参画した。創業からわずか2年足らずで、売上高860万ドルを記録。その後、急成長を遂げ、2007年には8億4000万ドルまで到達している。2009年に、ネット販売の巨人Amazon.comに約12億ドルで買収され、当時、Amazonにとっての最大規模での買収としてニュースになった。また、2014年1月から正式にホラクラシーを導入。当時1500人を超える従業員が在籍する中、過去最大規模での導入となった。
ネットで「靴」を売るということは、当時は非常識とされていたが、送料・返品無料、24時間365日のカスタマーサービスなどの斬新なサービスデザインによって、ネットでの靴の販売モデルを成功させた。特に、カスタマーサービスにおける顧客との数々の感動のストーリーによって広がる共感のマーケティングが注目を集めている。

② Zapposツアーとは

Zapposでは、自社の経営哲学「Delivering Happiness(幸せを届ける)」を自社だけでなく、世界と共有することをミッションとするため、2009年にWebサイト「Zappos Insights」を立ち上げ、Zapposで実践してきたカルチャーの構築やコアバリューの推進、カスタマーサービスのトレーニングなどを社外にも提供しています。そうした取り組みの1つとして、Zapposのカルチャーを共有する専任メンバーが、イベントや見学ツアーを常時開催しています。ツアーには一人10ドル程度で参加でき、実際にZapposの社員(Zapponian:ザッポニアン)が働いている、ラスベガスのダウンタウンにある本社の中を見学することができます。なお、2021年8月現在、ツアーの実施を一時中断しています。

③ Zapposツアーの記録

Zappos本社ツアーを体験する中で、印象的だった3つの体験、(1)申し込みと送迎、(2)Zapposのカルチャー、(3)コネクトを生み出すオフィスや制度について、ご紹介できればと思います。

(1)申し込みと送迎
Zapposツアーへの申し込みは、Webサイトで行うことができます。フォームを送信すると、すぐに社員の方からメールで連絡が来ます。定形文句のやりとりではなく、丁寧にお返事いただいたことは好印象でした。宿泊先を伝えると、ホテルまで迎えに来てくれました。

車中では、ドライバーであるザッポニアン(ザッポス社員)がフランクに話しかけてくださり、会話が弾みました。ドライバーの彼は、ホラクラシーの導入の際にHRのロールで関わっていたことがわかり、いろいろと参考になる話が聞けました。「当時、ホラクラシーの導入の意思決定に関して、大変なことだと思った。導入後、約250人も辞めた社員がいた。辞めた人の多くは、マイクロマネジメントをするマネジャーと、マイクロマネジメントをしてほしいメンバーだった。もともとZapposのカルチャーはユニークだったので、導入後の変化といっても、ミーティングのやり方が変わっただけだった。私たちはいつも遊ぶように働いている感じ、最高だよ」と話していたのが、とても印象的です。

(2)Zapposのカルチャー

オフィス見学のはじめに、Zapposに関するオリエンテーションがありました。創業から現在に至るまでの歴史、Zapposのコアバリューやカルチャーの紹介がありました。下記がZapposの10個のコアバリューです。

1. サービスを通して、WOW(驚嘆)を届けよ。
2. 変化を受け入れ、その原動力となれ。
3. 楽しさとちょっと変わったことをクリエイトせよ。
4. 間違いを恐れず、創造的で、オープン・マインドであれ。
5. 成長と学びを追求せよ。
6. コミュニケーションを通して、オープンで正直な人間関係を構築せよ。
7. チーム・家族精神を育てよ。
8. 限りあるところからより大きな成果を生み出せ。
9. 情熱と強い意志を持て。
10. 謙虚であれ。

Zapposで新しい社員を採用する際は、スキル面とカルチャー面の両面について、必ずインタビューを行い、その両側面が基準に満たない人は採用には至らないそうです。スキルのインタビューについては、採用する部署の社員が行い、カルチャーのインタビューはHRの社員が行います。いくらスキルや能力があっても、バリューやカルチャーにフィットしなければZapposでは採用されないようです。採用のインタビューでは、たとえば、「あなたのお気に入りの曲は?」と聞いているとのことです。その答えに良し悪しは問わず、答えているときに現れる「その人らしさ」を見て、カルチャーフィットを判断しているそうです。案内人の方が、「その人の自然な姿がZapposに合っていないと、Zapposでは仕事ができない」と答えていたのが印象的でした。
カルチャーについては、Common Culture(共通のカルチャー)をどのように共有するかではなく、一人ひとりがコアバリューとのコネクションがあることが大事だとされているようです。一つの価値観があるのではなく、社員一人ひとりが異なる価値観を持ち、コアバリューとコネクトしている状態が、多様性が真に実現できている状態だそうです。Zapposで働く人は、皆、同じではなく、内気な人もいれば、よくしゃべる人もいるそうです。

また、カルチャーを象徴する言葉「Zapposは、たまたま・・・を販売しているカスタマーサービス会社である」が、壁紙に貼り出しされていました。Zapposの事業は、オンラインで靴を販売しているのではなく、想像を超える価値を提供することであると、話されていたのが印象的です。「すごい!素晴らしい!」という体験をお客様がすることで、口コミで、お客様の親戚や知り合いにストーリーを語ってくれます。Zapposの成長はそうしたお客様の紹介に支えられているということが感じられました。

では、このような感動体験を提供するために、Zapposのカスタマーセンターでは、具体的にどのようなマネジメントを行っているかについて伺ったところ、その取り組みがとてもユニークでした。基本的には、Zapposの利用者は、ウェブサイトで商品を購入し、必要に応じて、購入前後にカスタマーサービスを利用します。そのカスタマーサービスでの運営方針として、オペレーターをするザッポニアン一人ひとりには売上目標というような指標はないそうです。また、利用者との会話の品質向上のため、メンターを設置しています。メンターは、電話の会話を横で聞きながら、フィードバックを行い、オペレーターの成長の支援をしているそうです。このように、定量目標は存在せず、質的に評価し、改善を促す仕組みが機能しています。フィードバックの観点は、次の4つの観点で行っているそうです。

・ Connection:相手との会話において、話が弾んでいるかどうか。また、話を聞いてくれていると受け止められているかどうか。
・ Security:お客様の情報(メールアドレス、電話番号など)の取り扱いを丁寧に確認できているかどうか
・ Fulfilling costumer's promise:お客様の実現したいこと、ニーズを満たしているかどうか
・ Creating WoW:驚き(Wow)を作り出せているかどうか

また、利用者と直接会話するこの業務は、Zapposにとっては特別なものとして位置づけられています。顧客に関わらないロールの人も必ず1年に1回は、カスタマーセンターで業務を行うことがルールになっていて、当時CEOであったトニー・シェイ氏も例外なく、このルールが適用されていたようです。

(3)コネクトを生み出すオフィスや制度
社内の至るところには、ザッポニアンがオープンに交流し、コネクトするさまざまな仕掛けがなされていました。たとえば、ザッポニアンのデスクが個性的でした。シンプルな机もあれば、その人が大切にしているグッズなどが飾られていました。

こうした一人ひとりのユニークさが、オープンに共有されることで、コミュニケーションを生み出し、共に働く人同士をつなげるそうです。

また、机の上には、誰の机かわかるようにネームプレートが置かれており、社歴がわかるように、年数を色で表現したバッチも作られています。

 

その他、オフィスには、大小さまざまなタイプの会議室やフリースペース、キッチンスペース、ヨガ・ボクシングなどが行えるスポーツジムスペース、お昼寝ルーム、Zapposシアター、中庭などが併設されていました。その中でも、興味深かったのは、偶数階と奇数階で設置するものを分けていて、多少不便さはあるものの、欲しいものを取りに行くときに別のフロアまで移動するという力学が生まれるので、フロア間の交流が起こることを意図していることです。組織が大きくなっても、人の交流が生まれる工夫がZapposのカルチャーを支えているのかもしれません。

④ Zappos社員へのインタビュー

ツアーの終了後に、ランチを食べながら、Zappos社員へのインタビュー行いました。写真の左側の方が、たまたま通りかかってインタビューに答えてくださったカスタマーサービスの方、右側の方が社内を案内くださった方です。以下の4つの質問について行いました。

Q1、働いている中で、どんなときに幸せを感じますか?
「幸せを感じるのはカスタマーと話をしているときです。最長で、5時間半話したことがあります」 「ここで働く仲間と一緒に働けることが幸せです。家族はハワイにいるので、Zapposの人たちとのつながりが、心の拠り所となりました」

Q2、ホラクラシーを導入することで、仕事の進め方など、どのような変化が生まれましたか?
「基本的には変わっていません。これまでは、オンラインで靴を売っていましたが、ホラクラシーを導入することで、誰もが自分がやりたいということを表明できるようになり、新しいビジネス・サービス(Zappos Adaptive、Porta Party、Zappos at Work、B,I,R、Genysis など)が生まれました」

Q3、Zapposにおいて、キャリアはどのように捉えられていますか?
「昇進を目指すことは、競争を生み出すので、ヘルシーではありません。Zapposでは、キャリアという概念ではなく、ジャーニー(旅)であると、捉えられています。違う仕事をしたい場合は、勉強して違うところに異動することもできます。また、今後のキャリアについて相談する機会や、人生の中で何を達成したいかについて考える機会として、ザッポニアンは社内に相談できるコーチに、コーチングを受けることができます」

Q4、あなたが捉えている現在の課題やチャレンジは?
「ホラクラシーによって、セルフマネジメントや自己組織化を自分たちで生み出すことができるようになってきました。当初は、知識をつけながら手探りだったものが、運用できるようになってきました。今後は、ホラクラシーを用いなくても、そのような風土を高まってきているので、ホラクラシーは必要ではないかもしれません」

訪問を終えての感想

今回の訪問を通して、会社の規模が大きくなると、組織が縦割りになり、イノベーションが起きにくくなると言われている中で、自己組織化が生まれるさまざまな工夫がされていたがことが印象的でした。その工夫によって、ファミリーデイやコミュニティ活動、アーティストの活動など、新しい役割が生み出されていたり、社員の発案によって新規事業が生まれていました。自己組織化の原則をさまざまな場面で活用され、Zapposのカルチャーとして生態系に組み込まれていました。また、こうした取り組みは、社内だけに限らず、Zappos本社のあるダウンタウンにも広がっており、ダウンタウンプロジェクトとして、街全体に広げてチャレンジしています。自社にとどまらず、企業とその都市のより大きな循環を生み出すエコシステムづくりに意識を広げて、企業活動を生み出していくことが重要なのかもしれません。

3ー2. 進化型組織(ティール組織) 事例:NPO法人場とつながりラボhome’s vi

アジャイルな振る舞いを組織に取り入れ、自律分散型組織の文化を育んでいくチャレンジをされている実践者へのインタビューを行いました。インタビューをお願いしたのは、ティール組織の解説者でもあり、場づくりの専門集団NPO法人「場とつながりラボhome’s vi 」代表理事 嘉村賢州さんです。
嘉村さんは、「一人ひとりが人生の主役である」という信念を大事にしながら、プロジェクト・チーム・コミュニティなど、人が集まる場を研究し、場作りの専門集団を立ち上げ、活動されてきました。そんな活動を続ける中で、組織に集うメンバーが真の学習する組織を実現していくには、既存の組織構造=ヒエラルキーが大きな壁になっていると課題を感じていました。「どのようにすれば、学習する組織が真に実現するのか」、その問いを持ちながら世界中を旅する中で、嘉村さんは、「ティール組織」に出会い、感銘を受け、自組織にそのエッセンスを取り入れ、実践を積み重ねてきました。働く仲間と社会の双方の幸せの実現に向けて、いかにして働く一人ひとりの存在目的とhome’s viの存在目的が共鳴し合い、目的の実現に向けて協働していくことができるのか、嘉村さんの実践のストーリーを詳しく伺いました。

【プロフィール】
場づくりの専門集団NPO法人 場とつながりラボhome’s vi 代表理事 嘉村賢州さん

集団から大規模組織にいたるまで、人が集うときに生まれる対立・しがらみを化学反応に変えるための知恵を研究・実践。研究領域は紛争解決の技術、心理学、先住民の教えなど多岐にわたり、国内外を問わず研究を続けている。2015年に1年間、仕事を休み世界を旅する中で新しい組織論の概念「ティール組織」と出会い、今に至る。最近では自律的な組織進化を支援する可視化&対話促進ツール「Team Journey Supporter」を株式会社ガイアックス、英治出版株式会社と共同開発。2020年初夏にサービスをローンチした。

【目次】
① ティール組織との出会いのきっかけは?
② ティール組織を参考に、どのように取り組みましたか? その中で生まれた変化や価値、一方で難しかったことは何ですか?
③ 個人と組織の存在目的に耳を澄ますとは?
④ 組織のさらなる進化に向けて、今後、どのように取り組んでいきたいですか?
⑤ 実践者の皆さんへのメッセージ

① ティール組織との出会いのきっかけは?

嘉村賢州さん(以下、嘉村):結成当初からhome’s viは、始業時間や就業時間の決まりがなかったり、上司の承認に関係なくプロジェクトにアサインできたりするなど、ティール組織のような状態でした。20代の頃から立ち上げた組織で、経済的には豊かではない部分もあったものの、場作りの専門集団として10名前後で活動を進めていました。

創業して10年目を迎えた頃、2つの問題意識が私の中に生まれました。1つは場作りの仕事を行う中で、ヒエラルキー組織の限界を感じたことです。「人類は組織の作り方を間違えたのではないか?」という問いが自分の中で芽生えていました。もう1つは自組織の日常の場面でした。それは、ある日、外出から帰ってきた時に仲間が長時間雑談をしていることに苛立ちを感じたことです。本来、雑談は幸せな瞬間であるにもかかわらず、それを喜べなくなっている自分自身のサバイバルモードに驚き、このままでは自組織の10年後を描くことが難しいなと感じました。
そこで、1年間休み、旅に出ました。その旅路の中で、ティール組織に出会いました。その組織には、理想として考えていた組織運営とマッチするところがあり、home’s viの仲間にも共有し、自組織に取り入れ始めました。

② ティール組織を参考に、どのように取り組みましたか? その中で生まれた変化や価値、 一方で難しかったことは何ですか?

嘉村:ティール組織における原則や事例をもちろん参考にしていますが、何らかの形を目指しているわけではありません。私たち自身と社会の幸せの両立という実現したいビジョンに向けて、自分たちに合った組織形態を模索し続けています。そのような前提を置きつつ、ティール組織に出会い、取り組みとして始めたことは、あらゆる情報を見える化することです。具体的には、組織メンバー全員が今どのようなことに取り組んでいるのか、また役職でくくるのではなく、一人ひとりがどのようなロール(役割)を担っているかなど、あらゆる情報にアクセスしやすいよう、見える化することに注力しました。併せて、定期的なミーティングの中で、そのロールを流動的に修正・変更できるようにしました。そうすることで、一人ひとりが何に取り組んでいるのか、何に取り組もうとしているのか可視化することができました。また、心の状態も見える化することにチャレンジしました。具体的には、一人ひとりのタスクやロールに、「want/やりたい度(−2〜+2)」と、「can/能力度(0〜5)」を主観的につけるようにしました。一人ひとりがそれぞれのタスクに対して、やりたくてやっているのか、我慢してやってるのかなど、見える化されることで、もし、我慢してやっているなら、できるだけサポートして、そのロールを交代できるように工夫しました。取り組みはじめの頃は、これまでの既存のやり方との違いにギクシャクしたり、面倒さもありましたが、基本的に個々人が得意なことも苦手なことも全部自分でこなしてしまう、まるで個人事業主の集合体のような組織から、各自の仕事が見える化されることで、相互に仕事の連携が生まれたり、感謝が生まれるようになりました。また、新しいメンバーが入ってきてもすぐに即戦力として加わることができました。

一方で、難しかったのは、私が見ている世界観・実現したい組織像に対して、メンバーからの反対はありませんでしたが、メンバー一人ひとりが本当に共感しているのかというと、人それぞれでした。私が言うならついていくという状態では、自己組織化でも、自律分散型でもありません。その頃、私はある意味、ティール組織になることを過度に目標にし過ぎたような気がします。一人ひとり顔の見える存在としての仲間の集まりでなく、コンセプトとしてのティール組織をいち早く実現するように躍起になっていたのだと思います。進化型組織について語る人の間では、組織運営を畑の成長によく例えますが、無理をせず、急がないで、もっと腰を据えて、メンバーと語り合っていけばよかったと感じています。

③ 個人と組織の存在目的に耳を澄ますとは?

嘉村:情報をオープンにし、一人ひとりの存在目的を大事にしながら取り組んでいましたが、一方で、新たな課題も立ち上がってきました。一人ひとりが主人公であり、その声をリスペクトするがゆえに、全員が好きなようにプロジェクトを行うようになると、外から見てもhome’s Viがわかりづらくなりました。また、内部でもみんなが力を合わせて歩みを進めているような感じがせず。必然的に私のエネルギーも下がってきました。そして、「home’s Viで集まる意味があるのだろうか?」という違和感を感じるようになったのです。後で知ることになりますが、これが組織内で対話が広がる中で多くの組織で起こる「グリーンの罠」であることに気づきました。

そんな頃に、「ソース理論」というのを知りました。ソース理論とは、卓越した組織・プロジェクトには、天性の方向感について聞こえる存在がたった一人いるというものです。私はティール組織に出会い、魅了されましたが、その中でもヒエラエルキーではない自律分散組織の部分に強く共感し、変革を進めてきました。一人ひとりが人生の主人公であり、組織の中でも好きなように自己を表現してもよいし、ありとあらゆるプロジェクトが行えて当然だという発想になりました。その一方で、何でもありの集団になってしまい、組織の存在目的を失っていることにも気づかされたのです。私自身として、ソース役は手放してはいけないということを学びました。それは、決してトップダウンに戻ることは意味しません。オレンジ的なビジョンの力と自律分散組織のそれぞれの良さの統合こそが、ティール組織であると学んだのです。

一人ひとりの人生の存在目的のソース役は、自分自身であり、自分がやりたいことに向けて前進するのは誰の承認も必要ありません。けれども、そのやりたいことを、home’s viの中で取り組むのか否かについては、その境界線は引く必要があります。そうすることで、組織内での優先順位が明らかになり、各人が違う仕事していても、ストレスなく、整うようになっていきました。お互いのニーズの調整をするのではなく、一人ひとりが存在目的に耳を澄ませると同時に、組織の存在目的にも耳を澄ませるということ、これら2つの方向につながることが大事です。

存在目的については、組織全体で語ることももちろん大事ですが、進化型組織の文脈では、文言を作る必要はなく、探求し続けることのほうが大事であり、むしろ文言は弊害になりがちです。そのため、日々の中で弱いシグナル・テンションを感じることが重要となります。タスクやロールがあったときに、「締切や納期などの外的プレッシャーで動いていないか?」「無理やり、自分を納得させていないか?」など、一人ひとりが、自身の声に耳を澄ませていきます。具体的には、会議はいつ休んでもよいし、プロジェクトは上司の承認が無くても抜けてよいなど、一人ひとりの弱いシグナル・テンションを顕在化させる機会を作り、日々の仕事の中で気づける構造を取り入れています。そうすることで、ワークショップで対話するという機会は減り、日常の中で個々人が気づいたり、相互で対話するようになっていきました。

④ 組織のさらなる進化に向けて、今後、どのように取り組んでいきたいですか?

嘉村:ソース理論とティール組織を紐付けて発信し、世の中をサポートするフェーズだと思います。しかし、組織としてこれが次の存在目的からの呼び声だというのが、現在聴こえているわけではありません。ただそれは問題ではなく、良い意味で各個人が内省の旅路を進めて、さらに組織としても整いつつあります。整うことで存在目的が見えてきそうな感じなので、目の前のことを丁寧に取り組もうと思います。裏を返せば、身体的に合わないと仕事が進みません。そうした仕事ではなく、存在目的に耳を澄ませていくことで、応援したいクライアントに囲まれるようになると感じています。仕事において動けないことを我慢したり、罪悪感を感じると悪循環になるので、一人ひとりが自分の存在目的に耳を澄ませ、スムーズなエネルギーが流れるところを早々と見つけ、身体感覚とともに、正直に動いていけたらと思います。

⑤ 実践者の皆さんへのメッセージ

嘉村:ティール組織のように、ヒューマンの側面を大事にする組織を運営するにあたっては、「なぜ、そのような組織を目指したいのか?」を明らかにすることが大切だと思います。そうした組織論を学び始めると、どうしても、そうした組織になりたいということをゴールに設定してしまい、結果として、その組織になることが目的となり、コントロールの世界観を仲間や同僚に押し付けてしまうことになりがちです。そのため、関わる仲間とともに、目的を明らかにしつつ、「今、エネルギーの蓋になっているのはどこか?」「今、どこに痛みがあるか?」など、丁寧に対話しながら、進化させていくことが重要です。

インタビューを終えての感想

嘉村さんのストーリーを伺って感じたことは、アジャイルな振る舞いを組織に取り入れ、自律分散型組織の文化を育んでいくためには、組織を機械の部品として捉えるのではなく、構成する単位は一人ひとりの人間であるということを大事にすることでした。ティール組織になることを目的としてしまった瞬間に、構成する単位を部品としていかにして動かすかという意識が働いてしまうので、一人ひとりの背景にある文脈を大事にしていくということがあらためて大切だと思いました。また、次世代の組織運営では、一人ひとりが自律性を持って仕事を進められることが大前提なので、自分自身の目的を明らかにするということと同時に、なぜその組織が存在するのか、個人と組織の存在目的を日々の仕事の会話の中で、実現していくことが鍵ではないかと思いました。

4.「自律分散型組織」を調査する中での気づき

現在、地球上では、さまざまな異常気象や海面上昇など、地球温暖化の問題が注目され、国連でも2030アジェンダが掲げられ、持続可能な開発目標(SDGs)が求められています。こうした状況を受けて、大量生産・大量消費の経済活動を前提とした現在の企業運営は、今後どのようにしてシフトしていけばよいのでしょうか。それに対する方向性を探る上では、自律分散型組織の手法やその背景にある原理原則、自律分散型の事例の中に、次世代の組織運営のあり方として多くの示唆があるように感じました。

次世代の組織運営では、個々人により自律性が求められます。他者や会社に責任を求めるのではなく、個人が主体性と創造性を発揮して行動する。そして、組織の目的に共鳴した人々が集い、共に協力し合って、目的の実現に向けて歩んでいきます。自律した個人として、一人ひとりが実現したい状態や志を持ち、実践し、起きた現実を受けて、さらにリビジョンして歩んでいく重要性を感じました。また、これまで見てきた組織の目的の大半は、持続可能な社会の実現に向けて、働く一人ひとりが幸せであること、そして、より良い社会を実現していきたいという願いが込められていて、私自身も深く共感するとともに、自分自身のあり方を見つめ直す機会になりました。個人と組織の目的が相互に循環した組織運営を行っていくにあたっては、自己組織化などの、生命の根本的な原理を大切にしていく必要があります。組織は機械ではなく、生命体である。そのような原理原則を活用しながら、これからも実践の中から仮説検証を繰り返し、一人ひとりの身体知の次元で腑に落ちるものとしていくのが大切なのだと思いました。

今後も、次世代の組織運営は、より高い目的の実現に向けて模索され、進化し続けるでしょう。そうした新たな実践に触れ謙虚に学びながら、働く人々、顧客、社会、そして、地球全体がより良く循環していく運営のあり方を模索していきたいと願っています。

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