ATD(The Association for Talent Development)

ATD2015概要

1945年から始まったATDコンファレンスは、今年は5月17日~5月20日(プレコンファレンス・ワークショップ:5月16日)の期間、米国フロリダ州オーランド、オレンジ・カウンティー・コンベンション・センターにて開催された。今年のセッションとワークショップの数は、450以上、また、エキスポのブースも350以上が開設された。

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ATD2015の参加国・参加者数

今年の参加国数と参加者数は、以下の通りとなっている。

参加国数と参加者数
 トータル:92か国、9,600名

米国以外での参加者が多い国
  韓国:291名
  カナダ:211名
  日本:172名
  中国:163名
  ブラジル:146名

ATD2015のコンカレントセッション

今年掲げられた14個のセッション・トラック、および各トラックのセッション数を以下に紹介する。
(※セッション数は事前の資料による)

・ラーニング・テクノロジー(Learning Technologies):44セッション
・リーダーシップ・ディベロップメント(Leadership Development):37セッション
・トレーニング・デリバリー(Training Delivery):31セッション
・インストラクショナル・デザイン(Instructional Design):31セッション
・ヒューマン・キャピタル(Human Capital):28セッション
・キャリア・ディベロップメント(Career Development):27セッション
・グローバル・ヒューマン・リソース・ディベロップメント(Global Human Resource Development):23セッション
・ラーニングの測定と分析(Learning Measurement & Analytics):21セッション
・ラーニングの科学(The Science of Learning):17セッション
・セールス・イネーブルメント(Sales Enablement):14セッション
・マネジメント(Management):9セッション
・ガバメント(Government):6セッション
・ヘルスケア(Healthcare):5セッション
・ハイヤーエデュケーション(Higher Education):4セッション

ATD2015の傾向

ATD2015International Conference & Expositionには、日本から170名が参加し、昨年の136名に比べ大幅に増えた形となった。ASTDからATDに名称が変わってから1周年であり、ASTDがスタートしてからは70周年になった節目の年である。日本から参加した多くの人から、今年のATDはいつもよりも素晴らしいという感想を聴いた。

今年は、新たなトレンドやバズワードといったものは見られず、全体的に内容や取り組みが大きく進化してきた印象だった。
もちろん、初めてこのATDに参加した人には、モバイル・ラーニングやインストラクショナル・デザイン、タレント・ディベロップメント、バーチャルラーニング、リーダーシップ、ストーリーテリング、ニューロサイエンスなどの言葉が頻繁に飛び交っているので、それらがキーワードに見えるかもしれない。

しかし、経年で流れを観てみると、ATDで設定されたトラックの分野ごとでは、それぞれの異なるトレンドを見て取ることが難しくなったと思う。それは、各分野で紹介されている方法論やツール、アプローチが、実は同じことを目指していることが多くなったからではないかと思う。
各分野の多くのセッションで、同じ一つのこと、つまり全体をさまざまな角度から語っているといった印象なのである。部分を語る時には、その背景にある全体を語らなければ、その意味が伝わらないのであるが、その全体が一つになってきたという感じなのだ。

その全体とは、個人のスキルを高めること、お互いの関係の中で学習すること、体験を通して学ぶこと、人間として成長すること、人々や社会をより良くしていくことに貢献するということは、みな繋がっている一つのことで、分断されていないということだと思う。
それを支援していくうえで、ITを活用したバーチャルラーニングやモバイル・ラーニングを行い、継続的に学習ができるようなラーニングエコシステムを創っていく。そして、そのための理論や方法論として、ニューロサイエンスや認知心理学の知見を活用していくのである。

より良い学習システム・学習環境を構築するためには、インストラクショナルデザイナーだけでなく、ITの専門家、マネジャー、そして仲間たちなど多くの人が協働して継続的に取り組むのが当たり前の世界が、今回のATD2015では現れていたと思う。
そこで今年は、ラーニングのあり方の変化とニューロサイエンスという切り口から、ATD2015の『全体』の傾向を紹介したい。

今年のトレンド(1)ラーニングのエコシステム(生態系)を築く~ラーニングの世界観の転換~

ATD2015の根底に流れる大きな動向の一つに、ラーニングのあり方やアプローチ、及びその背景にある世界観や哲学がシフトしてきていることが感じられた。
決められたゴールに向けて、権威から与えられる知識を適切に学ばせ、均質化した人材を育てるような機械論的・客観主義的な世界観から、一人ひとりの強みや主体性を大切にし、日々の経験や他者との関わりの中から自律的・協働的に学び、創造性を育んでいくような生命論的・社会構成主義的な世界観への変化が、理屈ではなく、着実に生まれていることを実感した。

カンファレンス3日目に行われた、スガタ・ミトラ氏の基調講演では、そうした世界観の違いが象徴的に打ち出されていたように思う。同氏が実施した「Hole in the Wall」や「School in the Cloud」などの取り組みでは、知識を教える教師は存在しない。
好奇心にあふれた子供たちの集団が、安全なスペース(公共の場)に集い、インターネットにアクセスし、自由に探索・活動できる環境を与えられると、子供たちはお互いに協力し合って、楽しみながら自分たちで学びを促進し、想像を超えた成長につながっていくという実際の映像を観て、私自身も感銘を受けた。

ミトラ氏は、学習者が自律的に学びを進めるこのような場のことを「Self-Organized Learning Environment(自己組織化する学習環境)」と呼び、そうした環境を生み出す重要性を語っていた。
今年のカンファレンスの中で発表されていた企業の取り組みも、プログラムを提供する側の視点からではなく、学習者を中心に置いて、学習者が自律的に周囲に働きかけて、学びの連鎖を生み出し続けていけるような「エコシステム(生態系)」をいかに築いていくかといったことを指向したものが多かったように思われる。

以下に、カンファレンスの中で実際に発表されていた内容をテーマごとにいくつか紹介し、企業の中でどんな変化が起きているのかを見てみることにする。

誰からでも学び合える環境を創る

ヒューマンバリューでは、カンファレンス期間中、視察ツアーに参加された方々と、毎晩情報交換会を行っているが、そのダイアログの中でとりわけ関心を集めていたのが、ランディ・エメロ氏による「SU117:あなたは、現代のメンタリングのための準備はできていますか?」であった。テーマはメンタリングであったが、ラーニングのあり方が変化していることのエッセンスが凝縮されていたように思う。

エメロ氏は、メンタリングを、「『他者』の『経験』から学ぶこと」と定義し、70:20:10(CCLが1980~90年代に行った研究で、人間は経験から70パーセントを学び、人との関わりから20パーセントを学び、クラスルームから10パーセントを学ぶというもの)の内、メンタリングは20パーセントに当たる部分として、重要視している。
しかし、これまで企業で行われてきたメンタリング、つまり、人事部のマッチングによって、シニアと若手リーダー層が同じ人と1対1の関係を結び、定期的に会って長時間をかけてメンタリングを行うようなスタイルでは、今の時代はうまくいかないと述べていた。その背景には、ソーシャル・ネットワークの環境で育ってきたミレニアル世代は、そうした硬直的で一方向的な学びのあり方を好まないことが挙げられていた。

そこで、今日的なメンタリングのあり方として、誰もが学習者であり、誰もがアドバイザーになれるような、メンタリングのネットワークを創り、より多くの人の経験やストーリーから、気軽に、短時間で、時にはバーチャルで、フラットに学び合えるような環境を創っていくことが推奨されていた。

そのような今日的なメンタリングの一つの例として、「TU414:AIGにおけるメンタリング・サークル:グローバル・リーダーシップ開発の事例」では、AIG社が、同僚同士のメンタリング・サークルを形成し、バーチャル、リアル(対面)の両方の活動を通して、リーダーシップ開発につなげていった事例が紹介されていた。

また、メンタリングに限らず、組織のラーニングのビジョンや戦略そのものの中で、誰からでも学び合える環境を創っていくことを重視している企業も見受けられた。

たとえば、「M109:人材開発を民主化し、活用することでタレント戦略を実行する」では、フェイスブック社の人材開発の取り組みが紹介されていた。その中で、同社がラーニングのデザインで大切にしている信条が語られていたが、その一つに、「I learn from everyone around me(私は、周りにいるすべての人から学ぶ)」が挙げられている。
これは、自分よりも経験のある人からのみ学ぶというのではなく、自分の身の回りにいる人、誰からでも学ぶといったところを重視しており、たとえばマネジャー同士のフェイスブック・コミュニティなど、社内にある多くのラーニング・コミュニティが紹介されていた。

また、「TU307:スケールの挑戦:増加している世界中の聴衆のために学習経験をデザインする」では、同じくシリコンバレーにあるグーグル社の事例が紹介されていた。その中では、グーグルのタレント・ディベロップメントの大きなビジョンとして、「どのようにして教師のいないクラスルームを作るか」「全ての社員をラーニングデザイナーにするにはどうするか」といった観点が掲げられ、みなで学び合える環境や仕組みづくりが推進されているとのことであった。

その他にも、ラーニング・コミュニティに関するセッションが数多く見受けられたが、こうした取り組みの多くが、単にネット上にバーチャル・コミュニティを作ればいい、といった表層的なものではないように感じられた。
教える人と教わる人というヒエラルキーのある関係性を脱却し、学びを民主化して、みなで学び合える風土や環境を築いていこうといった哲学に基づいた、本質的な取り組みが増えてきたように思われるのが印象的であった。

モバイル・ラーニングによる切片学習の促進

ラーニングのエコシステムを築いていくうえでは、人々が経験を通して学習を深めていける環境を創っていくことが重要となる。そのポイントの一つとして、今年のカンファレンスでは、「Bite-Size(バイト・サイズ)」という言葉が様々なところで聞かれ、現場において5分~7分といった短い時間で学習を起こしていくことを意図した取り組みが見受けられた。
この背景には、長時間のイベントとしての学習だけではなく、短い時間で繰り返し学習していくことが、行動変容や学びの定着に影響があることを調査した神経科学等の研究がある。ヒューマンバリューでは、そうした学習のあり方を「切片学習」と呼んでいたが、今年はその傾向が一段と強まったように感じられる。

切片学習を推し進める要因の一つに、企業において「モバイル・ラーニング」が進化、浸透していることが挙げられる。
オープニングのスピーチで、ATDのCEO、トニー・ビンガム氏は、現在では34パーセントの会社がモバイル・ラーニングを活用しているといった調査結果を報告するとともに、ボストン小児病院やホームデポなどの組織がいかにモバイル・ラーニングを活用しているかのストーリーを語っていた。モバイル・ラーニングについては、5年くらい前からATDのカンファレンスでその重要性が発信されてきたが、ここに来てそれが具体的な成果として現れはじめているように思われる。

具体的なセッションの内容も一部紹介したい。「SU221:ナノ・コーチング:オン・ザ・ジョブ・ラーニングとコーチングを実用的にするために、モバイルを活用」では、モバイル端末を用いて、ナノ・コーチングという、通常よりも、焦点を絞り、短いインタラクションで行う、切片学習的なコーチングを展開し、社員が経験や会話を通して学習することを促進するシステムを構築している例が紹介されていた。
具体的には、学習者がある課題(たとえばセールスのデモを行うなど)を実施して、それを自分の携帯で撮影し、ビデオやオーディオ、ドキュメントなどで提出する。そうするとコーチが、課題が提出されたことを認識し、成果に対してコーチングを行う(この際、コーチングを行うためのガイドラインがある)。
そして、コーチを受ける対象者に対して、短いフィードバックを行う。またコーチ同士がお互いのコーチングのあり方を学び合い、進化させていくといった一連のサイクルを、モバイルを通して行い、成果を上げているとのことであった。

その他にも、「SU405:モバイル・ラーニングをマスターする:成功のための秘訣とテクニック」「M308:ビジネスの成果につながるモバイル・ラーニングをデザインする」など、モバイル・ラーニングをテーマとした様々なセッションが行われていた。

また、モバイル・ラーニング以外のところでは、「M212:学習を定着化する6つの心理学のトリック」の中で、たとえば「自然が近くにある環境の方が行動を変化させやすい」「次のステップが具体的に示されている方が、アクションが起きやすい」「一度に全部やらないで、何回かに分けて定着させた方がパフォーマンスが高い」といった学習の定着や行動変容につなげるためのポイントが、心理学によるエビデンスに基づいて紹介されていた。
そして、そうしたポイントを「Bite-Size」の方法論として、日々の仕事や学習プロセスの中に埋め込んでいくことの重要性が述べられていた。

上述したフェイスブック社の発表の中では、同社が大切にしているラーニングの信条の一つとして、「Small size of real-time learning on the job are the most powerful”仕事上における小さなサイズのリアルタイムの学習が最もパワフルである」が紹介されていたが、今後ますます実践の中の学習を最大化するような、切片化された学習が進化していくと考えられる。

ストーリーテリングからの学び

人から学ぶ、お互いの体験から学び合うという文脈の中で、特に重視されるテーマの一つに「ストーリーテリング」が挙げられる。
ストーリーテリングという言葉は10年ほど前からASTDの中でも使われ始め、今では当たり前のようにタレント・ディベロップメントの取り組みの中で活用されている。カンファレンスの中では、人材開発に携わる人々に求められるこれからの重要なコンピテンシーのトップにストーリーテリングが挙げられていたとの発表もあった。

ストーリーテリングのアプローチにも様々なものがあると思われるが、ATDで最も多く見受けられるのは、「M312:効果的なストーリーテリングのための5つのステップ」のダグ・スティーブンソン氏に見られるように、基本的な構造に基づいた効果的なストーリーをあらかじめ組み立てて、相手の記憶に残したり、共感を生み出したり、行動を起こさせるようにするものである。
元俳優であるスティーブンソン氏の技術に学ぼうと、毎年多くの人がセッションに参加している。今年は、その他にも、「W315:ビジュアル・ストーリーテリング:写真を使って学習者を引き付ける」「M209:戦略的ストーリーテリングを使用したタレント開発」といったセッションが行われていた。

もう一つのアプローチには、ナラティブや語りが挙げられる。これはあらかじめ話すストーリーを決めるのではなく、今感じていることを話してもらい、それをリストーリー(語り直し)するプロセスを通じて、聴き手と話し手の中に大事な意味が生まれてくる。

ATDでは、こうしたナラティブの側面からのアプローチが扱われることは少ないが、「M106:在職者面談は、退職者面談を防ぐ:マネジャーが再びタレントを引きつけるのを助ける」の中で、ビバリー・ケイ氏が提唱していた「ステイ・インタビュー」のアプローチは、それに近いかもしれない。
ビバリー・ケイ氏は、エンゲージメントに関するレジェンド・スピーカーである。セッションの中で同氏は、退職する人にエグジット・インタビューを行って、「なぜ辞めるのか」を尋ねることにはあまり意味がないと言う。
それよりもまだ組織に残っている人に「ステイ・インタビュー」を行い、「なぜ組織に残っているのか」を訪ねて、この組織で働く意味を生成したり、辞めそうな兆候がある人に「なぜ組織を去ろうとしているのか」を尋ね、相手を理解し、自分の行動を変えたり、わくわくするような仕事にするにはどうしたらいいかを共に考えることが大切だという考え方や実践のあり方を紹介していた。

人と組織の成熟度に合わせた環境づくり

そして、実際に自律的な学習が促進されるような環境づくりを行う上では、働く人々や組織の成熟度に合わせてアプローチを変えていく必要があるのではないか、といった意見も見受けられた。

たとえば、上述した「SU117:あなたは、現代のメンタリングのための準備はできていますか?」では、組織の文化が保守的なのか創造的なのか、ヒエラルキーが強いのかアジャイルなのか、サイロになっているのか協働的なのかといった、組織のレディネス(準備態勢)によって、今日的なメンタリングを実施する際のアプローチを変える必要があると述べられていた。

また、「SU209:コンピテンシーを越えて:初心者から達人への旅路」の中で、ICTを活用した学習の権威であるマーク・ローゼンバーグは、学習者の成熟度を「Novice(未熟者)」「Competent(能力がある)」「Experienced(経験がある)」「Master(熟達者)」の4段階に切り分けていたが、それぞれの段階にあった学習を進められるようなラーニングとパフォーマンスのエコシステムを築いていくことが重要だと述べていた。

終わりに

ここまで、ATD2015で見受けられたラーニングのエコシステム(生態系)の構築に関わる取り組みや考え方について紹介してきた。
こうした変化の動向をあらためて眺めてみると、2年前のASTD2013の時に基調講演を務めたジョン・シーリー・ブラウン氏が、「企業が社員に学習を押し付けるようなプッシュ型の教育は、近い将来、姿を消していくのではないか」と話されていたことが思い返される。2年が経過した今、その言葉が決して大げさではなく、現実ものとして受け止められるように感じた。

しかし、日本の一般的企業や学校教育における既存の学習システムや施策のあり方を振り返ってみると、まだまだ旧来の機械論的な世界観に基づいて設計・運用されたものが大勢を占めていると思われる。
それは、現在という時代にすでに合わなくなってきていると危惧を感じている方も多いのではないだろうか。個人的な所感になるが、ATDでの学びを活かして、身近なところから、一人ひとりの可能性、創造性を育んでいけるようなラーニングのエコシステムを築いていきたいと思う。

今年のトレンド(2)ニューロサイエンス(神経科学)とタレントディベロプメント(人材開発)

2014年のカンファレンスから設けられたScience of Learning(ラーニングの科学)トラックで脚光を浴びたニューロサイエンス(神経科学)は、2015年のカンファレンスにおいても同トラックの中心的なテーマとして、多くの聴衆の関心を引き付けていた。

2014年では、脳の機能と人間の学習や行動の関係についての基本的な解説を行うセッションがほとんどを占めるなど、概ねニューロサイエンス(神経科学)の基本編といった内容であった。しかし、2015年は、ニューロサイエンス(神経科学)を実際の職場や日常業務における具体的な実践にいかに適用するかについて語る、より踏み込んだ内容のセッションが主になっているという違いが出てきた。つまり、ニューロサイエンス(神経科学)の実践編といった様相を呈していたと言えよう。

また、Science of Learning(ラーニングの科学)以外のトラックのセッションにておいても、ニューロサイエンス(神経科学)のデータや知見をエビデンスとして用いる傾向が見受けられた。ATDが標榜するタレントディベロプメントにとって、ニューロサイエンス(神経科学)はもはや切っても切り離せないスタンダードとして扱われ始めたと感じられた。

それでは、ニューロサイエンス(神経科学)がタレントディベロプメントの枠組みにおいて、どのように実際に語られていたか、特に注目を集めたセッションの紹介を通じて振り返ってみたい。

まずは、脳を活用したパフォーマンス向上のソリューションを提供するブレインスキルズ・アット・ワーク社のメアリー・ケーシー氏による「SU315:脳をベースにした戦略とツールを通じてパフォーマンスを高める」について紹介したい。

最近のニューロサイエンス(神経科学)の発見によると、職場におけるプレッシャーや緊急性、複雑性が、新しい行動の選択肢を発見したり、目標達成したりするための脳の能力を妨げ、情熱やモチベーション、エンゲージメントの維持に支障をきたすとのことである。そこで、ケーシー氏は、そうした状況において、自分を見失わずコントロールするために、日頃から自分の脳の状態を把握し、よりよい状態を維持することの実践を説いていた。実際に同社ではその脳の状態を自己認識するセルフサーベイを開発し、実用化している。

次に、ニューロサイエンス(神経科学)を応用したHRやOD、L&D、チェンジマネジメントに関するリサーチとコンサルテーションを行っているニューロリーダーシップ・インスティテュート(以下、NLI社)のCEOであるデビッド・ロック氏による「M304:なぜバイアスが持続するのか、そのために何をすべきかの神経科学」について紹介したい。

このセッションでは、NLI社が企業との共同研究によって導き出した無意識の5つのバイアスと、それに向けた対応の仕方について語っていた。その5つの無意識のバイアスとは以下の通りである。

・同質性(Similarity)・・・自動的に自分の同じグループか否かカテゴライズする<.li>
・便宜性(Expedience)・・・感覚的に正しいと感じるものを「正」とする
・経験(Experience)・・・自分が経験しているものは正しいとする
・距離(Distance)・・・時間的にも物理的にも近いものの方に価値があるとする
・安全性(Safety)・・・「よいこと」よりも「よくないこと」をより重視する

こうしたバイアスは無意識であるため、自己認識するのは難しく、そもそも個人のバイアスを変えることはできないとのことである。ただし、「仕事のプロセスにおいて発生するバイアスに対しては変えることができる」とロック氏は説明していた。つまり、個人としての無意識を、チームとしての協働を通じて意識化することができるということだ。

具体的な対応方法として、日々の仕事における重要な意思決定の場面において、事前に起こり得るバイアスとその対応法をガイドライン化し、それに基づいてチームとして意思決定するのが良いということ、また、意思決定後の結果もモニターし、その結果をチームとして振り返ることでガイドラインをよりよいものへと改編していくことが大切ということが紹介されていた。
さらに、意思決定を行うチームづくりの前提として多様性があるメンバー編成の方が、バイアスが是正されやすく、パフォーマンスも高まるということは、神経科学の研究上でも明らかになっていると説明していた。

それでは、上述した神経科学の知見を、タレントディベロプメント上の最も重要なレバレッジの一つである評価マネジメント(パフォーマンス・マネジメント)に活用した事例を扱ったセッションの「TU300:パフォーマンス・マネジメントの見直し(ケーススタディとトレンド)」を紹介したい。

本セッションのスピーカーであるNLI社のディレクター、ジョッシュ・デイビス氏は、ランキング(順位付け)やレーティング(評価段階付け)偏重による「ジャッジ型」の評価マネジメント(パフォーマンス・マネジメント)から、レーティング(評価段階付け)を行わず、部下の成長や育成を促進する構造的な会話による「コーチ型」の評価マネジメント(パフォーマンス・マネジメント)への移行を提唱していた。

その背景としては、前者のレーティング(評価段階付け)偏重による評価マネジメント(パフォーマンス・マネジメント)では、組織やチームにおけるコラボレーションやエンゲージメントが大きく下がり、期待されるパフォーマンスは上がらないという調査結果が多くあるからだという。
ここ5年のトレンドとして、レーティング(評価段階付け)偏重の評価マネジメント(パフォーマンス・マネジメント)をやめる米国のメジャーカンパニーの数が増加基調にあるという興味深いデータもある。2010年に5社程度だったのが、現在は40~50社へと増えているようだ。その中でよく知られている企業としては、マイクロソフト、GAP、ザッポス、FedEx、ブーズアレン&ハミルトンなどがある。

デイビス氏の調査によれば、レーティング(評価段階付け)の62パーセントは評価者のバイアスによるものであるため、そうしたパフォーマンス・マネジメントを行っても意図したパフォーマンス向上には繋がらないということである。
また、レーティング(評価段階付け)が評価者(上司)の無意識のバイアスを強化し、被評価者(部下)に対して恐れを抱かせてしまうことで、変化への適応やパフォーマンスを低下させるメカニズムが働いてしまうということも紹介されていた。
こうしたことに気づいた企業が、レーティング(評価段階付け)偏重の評価マネジメント(パフォーマンス・マネジメント)をやめようと取り組みを行っているようだ。

それでは、「ジャッジ型」のレーティング(評価段階付け)を完全にやめ、「コーチ型」に移行した事例として紹介されたマイクロソフト社では、具体的にどのように取り組んでいるのか。
セッションの中で紹介されていたところによると、マイクロソフト社では、レーティングに関連するドキュメンテーションを完全撤廃し、これまで1年に一度行っていたパフォーマンス・レビューをやめ、日常的に頻繁なパフォーマンス・レビューを行う「コネクトカンバセーション」に切り替えたという。
さらに、これまでトップマネジメントが持っていた報酬決定権限をマネジャーに委譲し、報酬決定はパフォーマンス・レビューと切り分けて実施するようにしたとのことである。

今回の移行で最も特徴的だったのは、「コネクトカンバセーション」の進め方である。その特徴は、上司がコーチに徹し、部下の成長と育成を促すことにフォーカスした内省的な質問を部下に投げかけることである。この会話を頻繁に行うことで、部下が抱きがちな恐れを軽減し、グロースマインドセット(自分はよりよく変化できる)を醸成し、洞察に満ちた新たなソリューションを生み出すことができるようだ。

こうした評価マネジメント(パフォーマンス・マネジメント)のシフトの考え方に関連したセッションとしては、「M311:パフォーマンス・マネジメントの取り返しのつかない状況を取り替える」があげられる。
このセッションでは、VUCAの時代において、組織のあり方が、機械的な組織から、生命体(Living Systems)としての組織へと変わってきていることを前提に置き、そうしたことが評価マネジメント(パフォーマンス・マネジメント)にどんな影響を及ぼすのかを探求し、人々のマインドセットを変革しながら、評価マネジメント(パフォーマンス・マネジメント)のリ・デザインを行う必要があると語られていた。

今回の所感としてあらためて実感したことは、このVUCAの時代にあって、よりよいタレントディベロプメントを推進していくためには、目先の出来事に対して、部分的なスキル習得やツール開発、仕組みやプロセスの変更などで対応するといった、対症療法的な解決策に目を奪われてはいけないということである。

まずは、きちんと企業の未来にとって大切なことを見定め、自分たちが実現したいタレントディベロプメントのありたい状態を描き、それらを羅針盤として、自分たちを取り囲む内外環境の事象の変化を敏感に知覚しながら、できることから着手し、実践し、仮説検証していくことが重要であろう。
そして、その実践を推し進めるうえでは、ヒューマンファクターをぜひ押さえておきたい。しかし、複雑な人間を対象としたヒューマンファクターを理解することは決して容易ではない。そこで、その糸口となるアプローチの一つとして、ニューロサイエンス(神経科学)の研究成果に学び、その知見を活かしていくことは、人材・組織開発を担う私たちにとって助けとなると思われる。

基調講演について

今年の基調講演には、AVONのCEOを10年以上務め、現在はグラミン・アメリカのCEOである著名な女性経営者アンドレア・ジュング氏、教育の新しいアプローチを提唱して2013年のTED Prizeを受賞したこともあるニューキャッスル大学教授のスガタ・ミトラ氏、国際的に有名なグラフィック・アーティストであり、コンサルタントでもあるエリック・ワール氏の3人が登壇した。

それぞれ、グローバルカンパニーをリードする経営者の観点、人間が本来持つ学ぶ力を研究・実践する学者の観点、アートやクリエイティビティの持つ力を信じる芸術家の観点から、人や組織にかかわる専門家に向けたメッセージが伝えられた。
人や組織にかかわる仕事が本来的に持っている価値や重要性にあらためて触れることができ、人々や社会に対してよいことを為そうとする際に大切にしたいスタンスを振り返る良い機会となった。
以下で、どのような話がなされたのかを紹介したい。

基調講演(1)アンドレア・ジュング

最初の基調講演では、アンドレア・ジュング氏が、1999年にAVONのCEOとなって以来10年以上にわたって経営者として過ごす中で学んできた、グローバル・ビジネスをリードする際の観点やソーシャルグッドに取り組むことの重要性といったことを経験談を交えながら語った。

ジュング氏はグローバルなビジネスをリードするうえでの一つ目のポイントとして、まず初めにビジョンとバリューの重要性をあげた。
「グローバル企業をリードするには、企業のビジョンとバリューが明確でシンプルであり、グローバルランゲージとして世界中の人々が理解できるようにすることが重要だ」と伝えていた。すべての言語に翻訳され、世界の隅々のすべての従業員がそれを理解し、従業員の団結と誇りの源となるようなものにすべきであるということである。そしてそのバリューとすべての取り組みや行動をしっかりと整合させていくことが必要となる。

ジュング氏は次に、二つ目のポイントとして、リーダーのインフルエンスについて言及した。「リーダーはビジネスをマネージするだけでなく、人々のことをよく理解し、成功を動機づけて、刺激を与え、高いレベルでのエンゲージメントを生み出す必要がある」と述べていた。
そうしたエンゲージメントは、コミュニケーションの副産物であり、「グローバルな組織においては、どんなにコミュニケーションをしてもコミュニケーションが過剰になるということはない」と強調していた。また、それは良いニュースの時も悪いニュースの時も常にコミュニケーションのラインは開放していることを意味するということでもある。

三つ目のポイントとして、「企業が継続的に成功したいのであれば、改革が大きな鍵になる」と述べていた。繁栄している時でも常に改革するビジョンを持ち、最もうまくいった戦略だけは残しつつ、他のものはすべて変えようとする意識を持つ必要があるということだ。
しかし、ジュング氏は「自分自身を改革することなく、組織を改革することはできない」という忠告もしていた。リーダーは毎週金曜日に自分をクビにして、月曜日に全く初めての仕事に就くように出社し、自分が下した決断を新しいレンズで見直すような気持ちで臨むと良いということだ。

四つ目のポイントは女性だ。社員としてもエグゼクティブとしても顧客としても、女性は最も急速に成長している新興市場であり、女性の持つポテンシャルは企業にとってクリティカルであるということだ。特にグローバル企業は指導的地位にある女性の活躍の場を平等にすることが重要だとジュング氏は訴えていた。

グローバルなビジネスをリードするうえでの最後のポイントとして、ジュング氏はソーシャルグッドをあげていた。「社会的に良い貢献をすることはすべての組織の成功のバロメーター」であるとジュング氏は考えており、社会的責任と地域社会への貢献は全世界の従業員を団結する強力な方法であるということだ。

その後、ジュング氏自身の個人的経験から得られた教訓として、目的を持つこと、パワーではなくコンパスをもって、失敗しても前進し続けることなどの重要性が語られ、最後に”Progress and leadership development is our only hope. Only people can drive change, only people can change the world.”というメッセージでセッションは締めくくられた。

基調講演(2) スガタ・ミトラ

二つ目の基調講演では、新しい教育のアプローチを提唱するスガタ・ミトラ氏が、彼がこれまで行ってきた先駆的な実験の過程とそこで得られた発見、その結果、彼が到達するに至った今後の教育や学習の展望について語った。

最初に、”この100年でいろいろなものが変化してきた。馬車は車に変わり、その車も自動運転に変わろうとしている。いつかは自分の孫に運転するってどういうことなのかと聞かれるかもしれない。タレントの開発においても、最初は命令を聞く、取り換えのきく人が必要とされ、その後、読み書きができ、計算できる機械的な人が必要とされてきた。
ただ今必要とされるのはそういう特徴をもつ人たちではない。モノだけでなくコンセプト自体も変化してきている。そういう中で、教育のあり方、学び方というのはどのように変化していくのか。”という投げかけがあった。

その後、ミトラ氏が行った取り組みの数々が実際の子供たちの様子を撮影したビデオなどを用いながら紹介された。
1999年にニューデリーのスラム街の壁にコンピューターを埋め込むことで開始された”Hole in the Wall”というプロジェクトでは、子供たちは初めてコンピューターに触って数時間以内にインターネットのブラウザを自由に見て、それをほかの子供たちに教えていることがわかった。

また、”Method of the Grandmother”という取り組みでは、スカイプなどで大人と子供のグループをつなぎ、おばあちゃんが子供と話す時のように、子供たちがコンピューターを使って学んでいることに対して、「へー、すごいね、もっとやって」「自分が子供の時はそんなことできなかったわ、すごいわね。どうやっているか教えて」などと会話してもらうことを行った。
そうした実験から、何を教えるわけでもないが、ポジティブに応援してくれる親切な関与者がいることで、子供たちの学びが加速されることが明らかになった。
このような取り組みの結果、どのような場所・地域においても、インターネットへのアクセスを与えられている子供達は、数か月で欧米の平均的なオフィス秘書のレベルまで学習することがわかった。”インターネットを使う子供のグループは、どんなことでも彼ら自身で学ぶことができる”とミトラ氏は力強く語っていた。

こうして、ミトラ氏はself-organized learning environments (SOLEs:自己組織的学習環境)という学習のアプローチを考案した。これは、ブロードバンドと励ましと管理監督のない環境を子供たちに提供するものである。この取り組みを行ったインドの最貧困地域の子供たちは、目覚ましい学習を行った。”It’s not about making learning happen; it’s about letting it happen”というポイントをミトラ氏は指摘していた。

こうした取り組みが評価されてTED Prizeを受賞したミトラ氏は、”Schools in the Cloud”というプロジェクトを開始し、SOLEsの自己学習の取り組みを世界中に広めていこうとしている。「こうして学んだ子供は、より探求する人になる。今あるものを知っていることよりも、知らないことを見つけ出すことのほうが重要であり、そうした人たちが将来の力になる」とミトラ氏は語っていた。

物理学を研究していたミトラ氏は、SOLEsで起きているのは”the edge of chaos”(カオスの縁)における学習だと指摘していた。退屈な状態や、本当の混乱の中からは何も生まれない。様々な自然現象と同じように、この二つの平衡点であるカオスの縁から新しいものが創発されるということだ。
最後にミトラ氏は、学ぶということは自発的にカオスの縁から生まれるものであり、ちょうどいいカオスがあって、そこでタレントが育成される、これがラーニングの未来だろうということを会場の参加者に伝えていた。

基調講演(3) エリック・ワール

最後の基調講演では、グラフィック・アーティストとして有名なエリック・ワール氏が、即興で絵を描くパフォーマンスを交えながら、クリエイティビティや情熱、枠を飛び越えることの重要性についてメッセージを伝えた。

最初に音楽が流れ、その中でU2のボノの絵を描いた後に、ワール氏は「高校に行って、 “絵を描ける人?” と聞くと、統計的に10~20パーセントしか手を上げないが、幼稚園に行って同じ質問をすると、みんな飛び上がって手を上げる」という話をして、すべての子供がアーティストで、創造力豊かであるにもかかわらず、どこかの過程でそれが失われてしまっているのではないかという投げかけを行った。

その後、会場にボールを投げ、それを拾って、勇気をもって壇上に上がってきた人に対して、絵をプレゼントするという一連のやり取りを通して、恐れや不安を超えてリスクをとることの重要性を伝えていた。

そのうえで、ワール氏は大人になる過程の中で我々はあまりに分析的、論理的に考えることを訓練され、効率的に問題解決して標準化していくことにあまりにも慣れすぎてしまっていると述べた。
お金や分析、直線的でわかりやすい論理的な考え方は必要ではあるが、十分ではない。いまは新しく、これまでとまったく異なるアイデアに価値がある。感性を解放し、感情的なつながりを生み出すこと、それが従業員のエンゲージメントを生み出す。そこにアートの力があるのではないかということを伝えていた。

その後も何枚かの絵を描くパフォーマンスを繰り返しながら、感性を大切に、失敗を恐れずに枠を飛び越えてチャレンジしていくことの重要性を訴え、タレントの開発にかかわるプロフェッショナル自身がそうした変化の一部となることで、従業員の力も最大限引き出されるのではないかというメッセージが会場の参加者に伝えられていた。

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